さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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叶い難き幼き願い2

使用人と姫の結婚なんて、吟遊詩人の歌の中でだって悲恋に終わってたじゃないか。

 

あぁ、あれは騎士だったっけ。

 

 

 

幼い頃から、憧れて、欲しがったイライザ。

 

 

 

何が合ったって二人は幾年連れ添い、その関係はいつしか結ばれる。

 

 

 

そう・・・思ってたんだ。幼い日の時は、残酷だ。

 

それが叶うと心の隅で、使用人の子でしかない私が、信じてしまうほどに、その距離はそんなに遠くなくて、手を伸ばせば何時だってその手に届いたから。

 

 

 

だから。

 

だったから、幼い日にイライザから『大きくなったらわたくしとお前は一緒になるのよ?ね、指切り。』叶えられるとその時は、胸踊らせて。

 

指切りに、誓いを託して、祈ったのに。

 

それなのに。

 

騎士にすらなれない、側役止まりの私では満足行く暮らしを続ける事すら、出来ないんだよ?

 

 

 

「生活なんて・・・あー、ちょっと未練ある、うん。」

 

背中にラザの声を聞いて、悔しがる。

 

こんなに君を愛して・・・いや、とうに捨てた気持ちだ。

 

陛下に忠誠を誓ったあの日から、君をそばで見てるだけで満足だと思えたあの日、気持ちに蓋をした、二度と開けるつもりのない、そう決めた。

 

王族に未練が無いと、言われた所でどうする事もしてやれないんだよ。

 

 

 

「だろ?王族しか口に出来ない珍しい食べ物だってあるしな、昔、別けて貰ったっけ、なんだったか・・・」

 

 

 

甘い、甘いお菓子や飴だって君に我慢させる事になるだろう、もう二度と食べる事も出来ないかも知れない。

 

恋慕の思いだけではどうすることも出来ない壁がある。

 

田舎のおしゃまなお嬢様と言う肩書ですら、使用人とじゃ高すぎる壁なのに、よりによって、酷すぎるじゃないか、メルヴィ様の与えられた試練か何か知らないけど。

 

ラザを好きになる、愛することがこんなに難しいなんて。

 

幼い頃には、漠然と『大きくなったら一緒になろうね』なんて薄っぺらな指切りだったけど、お互いの感情は惹かれあって幼い時のあのままなのだと、思う。

 

それは、メルヴィ様!罪ですか?

 

 

 

「ケーキ?」

 

 

 

ラザが思い付いたように言う。

 

そう言うのをラザに我慢させなければいけなくなるのが嫌だ。

 

いっそ早く、ラザが誰かのものになってくれたら諦めが付くのに、バカラザは。

 

 

 

「そう言うのだ。甘えたのラザがそんなの捨てて使用人のガキとこ嫁ぎますって、そりゃあ、ギジュ様は怒るだろ?」

 

 

 

ラザのこんじきの双眸を覗き込む。

 

金色の眼球はキョロキョロと動いて、俯く。

 

ラザは幼い頃のまま綺麗だ。

 

可愛い。

 

こんなに可憐で、美しいのに貰い手が付かないのは、きっとラザが私を待ってるからだろう。

 

ラザの全てを許せるようじゃないと、このじゃじゃ馬を乗りこなせない。

 

乗りこなせないなら、命の危機だ。

 

落馬ならまだマシで、後ろ脚で蹴られて、全身の骨が砕かれる。

 

そんな、狂気と可憐さが共存してるのが私の好きなラザだ。

 

 

 

「父様が怖くて踏み出せない、そんなの・・・だっさ!ダンゼ、ださ。」

 

 

 

俯いたまま、頬を朱に染めるラザに気付いた。

 

ああ、でも獣化進んでるからね?どうみても獣です。

 

そんなラザでも可愛いとか、可憐で美しいのにとか思えてしまう私は、全然諦め切れていないんだなって気付いた。

 

気付いただけで、何が変わるわけでも無いのだけれど。

 

言葉で私を痛め付けるのも、陛下なんて関係なくてラザは、私に行動しろとそう言いたいんだろう。

 

無理だ。

 

ギジュ様にこの心の内を告げれば二人は引き裂かれる。

 

そう思えば、籠の中のラザを見てるだけで、ラザが笑っていてくれるだけで、私は生きていける。

 

 

 

「この話終りはないんだろ?頷くまでさぁ。」

 

 

 

んー、獣化が収まってきた。

 

愛しいラザの肢体を衆目に、いや叶うことなら誰にも、私以外に晒して欲しくないのに。

 

 

 

「決まってるじゃない!!そんなのっ、当然でしょ。」

 

 

 

それはね、嬉しいよ、嬉しいです。

 

でもね。

 

乗り越えるべき壁は高すぎて私はまだ登ろうとも考えれ無いんだ、途中で後悔するかも知れないし、壁から滑り落ちて後悔する傷を負うかも知れないし。

 

 

 

・・・素肌もとっても綺麗だ、ラザ。

 

 

 

「えぇと、役人の仕事に戻る。・・・その前に、っと。このマントでも着てろ。もうじき、頃合いだな。」

 

ラザは気付いてないけど。

 

獣化は完全に解けた。

 

つまり、今の、目の前のラザは裸体を晒している。

 

 

 

「んんんっ・・・!」

 

 

 

マントを投げると焦ってしゃがみこみ身に纏うラザ。

 

羞恥に顔を真っ赤にして、伏し目がちに私を見上げてくる。

 

どんな姿でもラザなら可愛いよ。

 

こんなに、こんなに、こんなに美しいのに、美しいと思えるのに。

 

乗り越えた壁の向こうにも壁がまだまだある気がして取っ掛かりにすらなれないんだ。

 

 

 

「ちっせえ時から見飽きてんだよ、そんな恥ずかしがんなよ。私が悪いことしたみたいじゃねえか。」

 

 

 

嘘。

 

嘘です。

 

見飽きることなんて無い。

 

何時だって瞳に灼き付いてラザの姿が離れない、放したくない。

 

 

 

「ダンゼ・・・いつから、私って言うの癖になっちゃったね。」

 

 

 

マントに包まりラザがぽつりと言葉に出す。

 

私が、ラザに相応しくないと心の内の気持ちに蓋をして諦めた時です。

 

陛下に忠誠を誓ったあの日から。

 

 

 

「ああ、そだな。いつから、だっけな。ま、仕事してくる。」

 

 

 

取り敢えずラザはこのくらいにしておしごとに行かないと。

 

自分の気持ちに正直になってしまっても、お互い困るだけだ、茨の途しか見えやしないじゃないか。

 

 

 

背中にラザの恥ずかしがる声を耳に届いていたのに私は聞こえなかったフリをして、その場を立ち去った。

 

 

 

「おっ、おーい!マントだけかよっ、ダンゼ!おいっ、どーすんのよっ、もうー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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