さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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悪魔はいつも微笑み、そして美しく

カイオットが見た目で、シェリルさんを舐めて掛かったというのはトロかったというシェリルさんの発言から予想がつく、しかし、羆族の強みは固さ故のタフさだと思っていたんだが、完全体になる暇が無いほどに、微笑みを浮かべる悪魔はカイオットという羆族を手玉に取り、瞬殺したとでも言うのか。

 

 

 

あ、カイオット死んでないらしいですけどね。

 

シェリルさんの仲間からヒール貰ってなきゃ、顎は諦めなきゃならない惨状だったと報告文にあります。

 

 

 

「笑いごとじゃないんですけどね、我が国でも強い部類ですよ、羆がですよ?カイオットなんて小物じゃありません、そこは心に憶え置きを。最後に、あの“百腕”を飼い慣らしたそうじゃないですか、凄いですね。ピューリーは誇りを尊(たっと)び、何より気高さを汚されるのを嫌うと、ご存知でしたか?」

 

 

 

ゴーギャニルはまだ物分かりのいい方だ、強い相手だと解ればその瞬間に大人しくなる。

 

 

 

だが、ピューリーは違う。

 

 

 

おのが誇りが全て、われが我がで我儘気ままで、サーゲート国内にあってサーゲートでないとまでピューリーのテリトリー、ケツァーシンの事は呼ばれている。

 

 

 

未だに陛下に忠誠すら誓わない、そんなピューリーの端くれであるはずの百腕を手懐けたと言うのだ。

 

報告文に目を通して一番目を疑い、二度見した程でもある。

 

 

 

ピューリーならば、下になるくらいなら死を望み、死の間際まで勇敢に立ち向かい、立ったまま死ぬと、本で読んだ。

 

 

 

そのピューリーのテリトリーから出たはぐれ者とは言え、ピューリーであるなら敵わない敵だろうと構わず、どちらが死ぬか?それを競うものだと思っていた・・・実際、彼らを大人しくする方法が無く、陛下が平定に赴いても骸がいくつ並んでも誇りが為にとか、我儘放題に暴れ、たとえピューリーの頭領を倒し平定が叶っても次の日には役人を叩き出して、次のピューリーの総代が現れるという。

 

 

 

強い相手だから従うという訳ではない、家族が全てで仲間が全て。

 

 

 

取り巻きの一人が私の言葉に含み笑いを漏らし、布で頭を巻いている方の取り巻きが不機嫌そうに私を睨んでくる。

 

私、何か悪い事を彼らに言っただろうか。

 

 

 

もしかしたら、あの取り巻きは百腕と呼ばれるゲーテで、やっと瘡蓋になった傷を私はゆっくりだろうが、ひっぺり返してしまったのかも知れない。

 

悪い事をしたとは思うが、おしごとなんでな。

 

 

 

「ん?ぺらぺら囀ずってたから、誇りだろうが、尊厳だろうとへし折って後悔させてあげたのよ?」

 

 

 

そして、何よりピューリーは強い。

 

タフさも相当なものだし、平定に繰り出せば甚大な被害を被って来た。

 

強靭な顎と牙、硬く鋭い爪、そして我儘気ままの彼らも亡国の、家族の危機となれば物凄い統率力で弱った所、防御の薄まった所から蹴散らされて、羆族や象獣人で固まった場所以外で被害が極端に高まると教えられている。

 

 

 

ピューリーの絶対存在意義である誇りを、尊厳をへし折るとは如何な状況だったのだろうか、興味を引かれる。

 

報告文では、警備が呼ばれて行ったものの群衆に阻まれすぐには辿り着かなかったとあり、警備が後で聞いた話でしかないのが悔やまれた。

 

 

 

倒れる度、ヒールを貰って百腕ゲーテは雄々しく立ち上がりピューリーらしく、誇りが為に性悪エルフに襲いかかったが、悉くを槍とそのすらりと細く長い脚から繰り出される蹴りによって阻まれ一度と触れることも出来ずに敗北した・・・と書かれている。

 

 

 

ピューリーが一度と触れることも出来ないとはどういう状況だったのか、不意打ちをされ縛られたか起き上がれないほどメッタ打ちにされたのか?

 

いやまて、倒れる度のヒールで痛みや怪我は和らいで、気分は悪いだろうが反撃が出来ないという事ではない。

 

 

 

縛られていたと報告文に記述もない。

 

目の前の、美しい黒髪のエルフがますます私の中で、悪魔なのでは無いかという疑惑が膨らむ。

 

 

 

しばしの逡巡の後、思い出した様にシェリルさんいやいや、微笑みを絶やさない悪魔のこんじきの双眸を覗き込み、

 

 

 

「ピューリーの端くれとは言え・・・。えー、結論です。あなたを我が国の筆頭生にスカウトしたいと思います、如何かな?」

 

 

 

本題に移ることにする。

 

この報告文は、陛下が強者を集める為の言わばテストで、私の立ち位置は面接官だ。

 

 

 

今までの会話は、面接ということになる。

 

手元の報告文が事実であると、本人の口から証明されたのだから、面接官である私は合格と言わざるを得ない。

 

陛下が好きそうな強さだ、化け物じみている無慈悲ぶりも含めて。

 

相手の名乗りも聞かずに勝負は始まる、そんな暇は無いという事かも知れないな。

 

 

 

合格であるなら、即引き込みに掛からねばならない。

 

何とか切っ掛けだけでも、デュンケリオンに向かわせねばならない、絶対に。

 

それが。

 

面接官である、私の義務だと思うからだった。

 

筆頭生ともなれば幹部候補中の一番だ、次のステップは鍵十二騎士か近衛か親衛隊か、である。

 

 

 

私が連れ帰る事が叶えば、私の監査としての地位も上がるだろうし、どうせこの悪魔は筆頭生に実力でなれる。

 

 

 

 

 

上手くデュンケリオンに来てくれさえすれば・・・、全てはその一言に尽きるんだけど。

 

性悪エルフはデュンケリオンに来てくれるだろうか。

 

 

 

 

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