さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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恐怖は悦楽の味

 

 

 

わいわい、がやがや。

 

王族と性悪エルフがやるんだってよお。

 

聞いた聞いた。

 

王族の方は前に聞いたこと無いか?歩く迷惑、あの嬢ちゃんがねえ。

 

歩く迷惑!町を半壊させたんだろ。

 

性悪エルフもさすがに泣いて謝んじゃねーかあ?

 

性悪エルフをやっつけてくれよっ。

 

俺の仲間なんかまだ部屋で震えが止まんなくなってんだぜ?ずっとこんじきの瞳が笑ってるとかぬかしてよ。

 

何にせよ、こうなりゃ賭だ賭だ、性悪エルフ、に賭けるやつは居るか!

 

割りといやがるなあ、さすがに歩く迷惑に勝てるか?

 

火山にエルフが勝てるかよ!

 

歩く迷惑に賭ける奴はどんだけいるんだ?

 

まあ、そうだよな。

 

2、8ってとこか。

 

 

 

なんてゆーかー、ざわめきが喧しい。

 

これから、本当にラストステージ開幕。

 

なのに、わたしが負けるって?負けて欲しい?そんな声ばかり。

 

耳に、響く。

 

 

 

大分、落ち着いてきた。

 

瞑想。

 

終わりっ!

 

 

 

パンッと拳を響かせて瞳を開くと、喧しいざわめきに紛れてゲーテの声がする。

 

 

 

「──姐さん、賭けになってますよ。」

 

 

 

溜め息を一つ。

 

まだ、イライザを見れない。

 

ビビッてしまったわたしの本能に喝!

 

といいたいとこだけど、捕食者への恐怖ってのはあるんじゃないの?克服はまだ出来てない、鼓動が早いまま。

 

 

 

賭けか、いいじゃない。

 

 

 

「ゲーテ、わたしに賭けといてよ金貨10枚。はい、これ。」

 

 

 

メニュー画面からアイテムをクリック、金貨をクリックで10枚、決定。

 

いきなり現れた金貨を、ゲーテが驚いてみてるけど、気にしないで握らせる。

 

 

 

今、わたし、笑えてる?解らないけど、恐怖で引き釣ってたりしないよね。

 

そんなのださっ、かっこ悪い。

 

成行きで子分にしたゲーテだけど、なんだろ・・・ゲームで言えばわたし、ギルマス、ゲーテはメンバーか。

 

メンバーにダサいとこ、見せらんないじゃん?わたし、慕われるギルマスに成りたかったし、うん。

 

ゲームじゃ成れなかったけど、さ。

 

 

 

「相手が歩く迷惑じゃぁ・・・」

 

 

 

歩く迷惑?何ソレ。

 

王族が歩いてたら、迷惑とかそんな意味かな。

 

ま?わたしには関係ない、今からぶっ飛ばしてやるんだから。

 

 

 

「わたしは負けない。」

 

 

 

お互いの血に塗れて、暴れましょう?きっと、これまでより楽しいから。

 

この心臓の高鳴りは嘘じゃない、どきどき・・・どきどきしてる。

 

 

 

「・・・姐さん・・・」

 

 

 

くしゃくしゃの心配なのか困った顔か解らない表情のゲーテ目掛け肩越しに振り返りウインクした。

 

 

 

あっちも熱くなっちゃってるんじゃない?何か一応、耳に届く。

 

何を言ってるのか解らないけど。

 

 

 

んー、風が強くなってきた、気持ちイイ。

 

準備とかでイライザの元からちょっと、離れてた内にダンゼがイライザに寄り添ってたけど今、名残惜しそうにイライザの元を離れていく。

 

と同時に、わたしがイライザの前に立つ。

 

 

 

準備はおっけー。

 

カエル皮のグローブで、二の腕まで覆ったからちょっとはイライザの殴りから守ってくれるだろうし、同じ様にカエル皮のタイツで太股までぴっちりと。

 

 

 

ん、鎧?そんなの重くて動こうにも動けなくて、いい的になるわよ?イライザってデカいのに速いもん。

 

 

 

「お、オレもう滾っておかしくなりそう、なんだよな。」

 

 

 

イライザの声がする方を見上げる。

 

わあ!

 

近くで見ると、わたしより頭三個分くらい大きく見える。

 

開始の合図代わり?もう、そんなに焦んなくて、いいのに。

 

わたし、逃げないよ、イライザと対等に本気で、本能に身を任せて戦ってあげるから!

 

イライザ、あなたも本能でぶつかって来なさいよ、ね?

 

 

 

「言葉がおかしくなってるわよ?っと。」

 

 

 

最初の攻撃はわたしが、イライザを見上げた瞬間に来た。

 

元のイライザの三倍、ううん5倍くらいに膨れ上がった腕が目前に迫ってくるのに気づいてバックステップ!

 

次はわたしの番!

 

 

 

「・・・ふぅうー!」

 

 

 

イライザの力強く一気に吐き出す空気。

 

おあいにく様、ソコを探してもわたし、潰れてないわよ?

 

 

 

「・・・ドコだ?」

 

 

 

足元からイライザの、わたしが居ない事に気づいて探す声がする。

 

そう、今。

 

 

 

「上よっ!」

 

 

 

わたし、あなたの上空から渾身の力で踏みつけてやろうと!

 

急降下してるのよ、驚いた?でも太陽が真上にもう無いから、影を追えばバレバレだけど・・・そんな経験、無いわよね?イライザ。

 

 

 

経験無いものはやろうとしても、出来ないもの。

 

この場合は、わたしの影を追うって事で楽勝に反撃出来たのに。

 

わたしが踏みつけた筈。

 

だったのに。

 

 

 

「ゴァアアアアッ!」

 

 

 

イライザが一声吠えてその場を転がる。

 

え、転がる?

 

 

 

「んんっ!」

 

 

 

外した。

 

避けられた。

 

デカく膨れ上がった腕が間髪入れずに横払い飛んでくる。

 

うっわ、わ、ヤバい。

 

 

 

それを何とか、使い込んで愛用の青い長剣を翳すように剣の腹を左手で押さえ、やり過ごす。

 

 

 

「やるじゃない、褒めたげる。アアっ!」

 

 

 

喋ってる暇も無いのに。

 

ドキドキが止まらない。

 

別の意味でヤバいかも。

 

 

 

ホントにそんな暇なかったや。

 

やり過ごしたイライザの腕が引かれ、次は天高く両腕が握られたまま振り上げられた。

 

 

 

あれはやり過ごせないわねー、ぺちゃんこか、イライザが言ったみたいに骨、持ってかれてゲームオーバー?凛子、まだ店かなー?わたし、死、死んじゃうかも、あはは!

 

 

 

「グォウウウゥゥゥ──ッン!」

 

 

 

振り上げられたのが解ったので、絶望する脳裏に凛子の困った顔が急に映り込み、おかげか、絶望を振り払い笑って脳をリセットするのに成功し、横転びに転がった。

 

今日も凛子は可愛かったよ!

 

 

 

その背中でイライザが一声吼える。その刹那、爆発的な衝撃を感じて戦慄する。

 

 

 

躱せたってだけだ、一つ動作を間違えて遅れたら、あんな風になる。

 

膝立ちに起き上がり、視線を土煙の上がるイライザの足元に移す。

 

そこにはクレーターが。

 

羆族だっけ?あいつでもそんなにパワーなかったわ。

 

イライザ、怪力か。

 

堪んない。

 

スゴい、コレ凄い、クる!

 

嬉しいなーぁ、絶望的に強いじゃん、楽しぃー!

 

何だよ、リオグリス凄ーい。

 

 

 

イライザ、凄い。

 

興奮して訳解らない事を思考してしまう脳をリセット、いけないいけない。

 

喰らったら死ぬから。

 

死んだら、街に帰るとかじゃないよわたし。

 

気持ち良くなって、楽しんでる場合じゃないの、に。

 

 

 

「吠えるな、でかい猫って、だけの、くせにっ!」

 

 

 

ダメだ。

 

わたし、ニヤけてる、絶対。

 

イライザ目掛け駆け寄って、まず下段。

 

つぎ、腰を捻って中段。

 

と、上段いきたいけど。

 

 

 

影で解る。

 

どっちかの腕が振り上がり。

 

その刹那、イライザの胸を蹴って離れた。

 

コンビネーションキックはキャンセルされましたー、気付かずに上段に行ってたら、あそこでクレーターの一部になってたかもだわ。

 

 

 

「オオオオオ!」

 

 

 

イライザが急速に近寄る。

 

地響き混じりに吼えながら右手を引き絞り、わたし目掛けて放つ。

 

ドンマイ、それは残像だ。

 

わたしは横っ飛びにイライザの視界からひとまず離れて、呼吸を整えるのに専念する。

 

 

 

 

 

すぅー

 

すぅー

 

はぁーー。

 

すぅー

 

はぁー。

 

 

 

空気が美味しい、わたし、生きてる。

 

あ、避けてばっかで手応え無いけどね?

 

 

 

「ちょ、つよっ!」

 

 

 

思わず声に出た。

 

なんか野次が喧しいなぁー、組み合えって・・・無理よ?大きさ考えなさいよ。

 

精一杯やってるんだから、脳が訳解らない事を考えるのを振り払って頑張ってるんだから。

 

 

 

「姐さん、あんなの食らったら!骨がっ。」

 

 

 

心無い野次に雑ざってわたしを心配する声が、ジピコスか。

 

 

 

「うっさい、勝つのはわたしだ、わたしなんだっ!!」

 

 

 

返事代わりに、雑念を振り払う様に、わたしがわたしを鼓舞するように叫んでいた。

 

 

 

「オオオオオッ!」

 

 

 

あ、真後ろに居るね、イライザ。

 

影が急速に落ちる。

 

両腕か、片腕か解らないけど吼えるイライザのパンチが飛んでくる。

 

気付いて横転びに転がる。

 

判断は間違いだった。

 

前転してれば良かった、大丈夫だったかも。

 

 

 

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