さいよわ───チートなエルフと魔人が護る最弱な彼女が綴る異世界黙示録   作:ぴんぽんだっしゅ

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焼き肉のタレ、失敗作

 

 

どうしてこうなった・・・

 

 

 

グラクロが、ぐーちゃんが、わたし(偽)になった。

 

そして、そのわたし(偽)はレースもふりふりのピンクの可愛い系ワンピースを着て、わたしに抱き付いているんだけど・・・変な気持ち。

 

無口なボナールさんだって、こっち見てる。

 

苦笑いしか出て来ないわよ。

 

お腹がとても空いているから、ボナールさんに肉を焼いて貰う。

 

確か、『ボナールのランチ』みたいな名前で唯一、ここの店で出されてる料理だった気がするんだけど。

 

一つしか品が無いんだから、食堂擬きになっちゃうのも頷けるわね。

 

 

 

「ん?また、クドゥーナ言ったぁ。」

 

 

 

考え込んでたんだ?ピタッと笑うのをやめたと思ったら、この子は。

 

どっちの名前使ってもいいじゃん、クドゥーナでも愛那でも。

 

びしぃ!っと人差し指で愛那はわたしを差しジト目で見詰める。

 

 

 

「──クドゥーナと言ったらいけないのか?」

 

 

 

すると、わたしが答えるより早くわたし(偽)が愛那に振り返り、複雑な笑顔でそう言う。

 

あ、なんか解った。

 

なんで無表情なのか。

 

表情の作り方、まだ解らないんだ、わたし(偽)は。

 

・・・今までは表情ある無しは瞳で語ってた気がするしね、グラクロ。

 

 

 

「ぐーちゃん、あのね。愛那って呼んで欲しいの、ホントはね。」

 

 

 

だから話し掛けられても、今だって愛那と会話してるのにおかしな笑顔だし、それは嬉しいのか、悲しいのか判別できないカンジの。

 

 

 

「でも、ずっとクドゥーナって呼んでたんだから、すぐには癖抜けないわよ?愛那。」

 

 

 

「うー、仕方無いなぁ。」

 

 

 

変な顔するくらいなら、無表情のままの方がずっといい気がする、わたし(偽)。

 

 

 

クドゥーナでずっと通してたから、簡単にはその癖抜けないと思う。

 

そう言うと愛那も渋々理解したみたい。

 

 

 

「それより、何食べてたの?匂い的に宿の焼いた肉じゃないと思うんだけど。」

 

 

 

テーブルには、わたしが部屋から降りてくる前に食べ終わったと思うんだけど、何かのソースの着いた皿が。

 

 

 

それに、ボナールさんの料理とは違う匂いがする。

 

 

 

「あ、焼肉のタレを作ってみたんだよぅ、その結果がねぇ。」

 

 

 

え、愛那。今、何て?

 

何かを思い出して、テーブルに突っ伏す愛那が口にしたのは間違いなく焼き肉のタレって。

 

 

 

「焼肉の、・・・タレって!わ、すぐ食べたい。」

 

 

 

ニクスで舌が日本人に戻ってしまったわたしには、村の料理はどれも薄味だったり、極端に濃かったりでとても、心から美味しいと言えるものじゃ無かった。

 

あるなら言いなさいよ、マスタード味だって飽きてた、とっくに!

 

 

 

「最後まで聞いて?・・・失敗だったんだよねぇー。」

 

 

 

「えーーー。」

 

 

 

期待したのに何?焼き肉のタレ無いの?

 

 

 

「じゃぁ、食べれないの?もう、焼肉の、舌になってるのに。」

 

 

 

甘辛のあのタレを求めてるのよ、期待させるから、わたしの舌が。

 

 

 

「失敗だけどぉ、マズいーってほどじゃないから食べれなく無いよ。只・・・舌には悪いかもー。」

 

 

 

「京ちゃん。ホント、マズくはないんだよー。イメージあるからその味と違うだけって。」

 

 

 

愛那が舌に悪いと言い、それを聞いた凛子がフォローする。

 

二人とも?そんな事はどうでもいいよ、マスタード味でも、薄味でも無いの食べたいの!

 

 

 

「いいから。食べよ。ボナールさんの焼いた肉あるじゃん。」

 

 

 

丁度ボナールさんの料理が、まだ昼には早いけど焼いて貰った肉がカウンターの上に置かれた所だし。

 

失敗だっていい、日本人寄りの味が食べたい。

 

 

 

「焼き肉って言うのは、タレに染み込ませて焼くんじゃないっけ?」

 

 

 

「凛子?お腹空いてるから、待てないの。」

 

 

 

凛子、あのね。

 

タレを付けて食べるモノよ、焼き肉って。

 

 

 

ってゆーか、タレがあればわたしはそれで良いんだ、別に。

 

 

 

焼きもちするわたしの前に凛子が差し出してきたのは、

 

 

 

「愛那が金網を作ってたんだよー。元々コンロもあるでしょ?」

 

 

 

金網。

 

これにコンロを足すと、なるほどね。

 

 

 

目の前には、こんがりと焼けた肉、ボナールさんが焼いてくれたもの。

 

と、まだ焼いてないBOXから愛那が出したばかりのロカ肉がある。

 

解った。

 

 

 

「ん、んー、ああ!そっか、このままここで焼く?ってコト。・・・なる、そうよね。」

 

 

 

そう言うわたしの声を聞いて、愛那が瓶詰めのタレらしき失敗作を出し辛そうに出して見せる、

 

 

 

「これなんだけどぉ。」

 

 

 

その見た目には求めてるタレっぽい色をしてるのにな。

 

失敗作なのかー、手に取って蓋を開けるとスパイスの匂い。

 

でも、この時点で物足りない。

 

例えるなら辛口の日本酒を頼んだのに甘口のフィズが来たくらい。

 

ゴクリっと喉を鳴らして、焼けた肉にナイフを入れ、タレを食べ終わった皿の方に適度に垂らして、切り取った肉をフォークで刺してから、ねっとりした赤茶色のタレを付けて口に運ぶ、んぐんぐ・・・んー、ごっくん。

 

 

 

「・・・ん、びみょー。」

 

 

 

「美味しいんだけど、ね。イメージあるから・・・」

 

 

 

凛子が言う通り、焼き肉のタレって言えば!なイメージがどうしてもある、そのイメージからはこのタレは遠く及ばないと言っていい。

 

失敗作と言うだけあって、物足りなさが拭えない・・・それでも、薄味の焼けた肉のままより美味しかったりするのは発見だと思う。

 

 

 

「焼肉のタレって、あのクドい甘辛の味があってこそだと思うのよねぇ・・・。このタレはボナールさんの今後の為に上げたらいいと思うわ。」

 

 

 

「──美味しいがな、俺は。」

 

 

 

わたしが思案しながら、これは違うなと思っていると、眉を吊り上げながらわたし(偽)がいつの間にかわたしの切り取った肉を手で摘み、タレに付けて口に運んでから反論する。

 

手掴みってとこは、グラクロぽいわね。

 

でも、外見はわたしそのものでわたしが行儀悪いみたいじゃない?

 

 

 

「マスタード肉より?」

 

 

 

「──あれより美味いものは無いのでな。」

 

 

 

凛子が横から口を挟むと、わたし(偽)はやっぱり眉を吊り上げて答える。

 

 

 

「・・・。んー、やっぱり、甘さが足りない?」

 

 

 

タレを指で掬い凛子が一舐めして逡巡する。

 

ニクスで散々美味しい料理を食べて、凛子だって舌が日本に居た時に戻ってると思うんだけど。

 

細目で渋い顔をした凛子から出てきた言葉に思わず頷く。

 

 

 

「そっか、そうだ。うん、甘さが足りないと思うな。」

 

 

 

何かの蜜っぽい甘さは、このタレから感じられるんだけど、求めてるタレの甘辛さとは全く違う。

 

 

 

「うぅわ、凹むー。これ地味に10日掛かったんだよねーぇ・・・」

 

 

 

テーブルにコンロを構え、金網をセットした愛那がわたし達の会話を聞いて悔しそうに声をあげた。

 

だって、ホントに足りないんだから仕方無いじゃない。

 

ん、10日これで使うの?

 

 

 

 

 

「生産って結局、一度も自分でする必要なかったからしなかったんだけど、どーなって生産してるの?」

 

 

 

「メニュー画面のね?見ないと、わかんないけどログアウトのアイコンの二個上が生産のアイコンでーぇ、生産してるとね?アイコン、光るの。終わるとアイコン光らなくなって完成品が出来てますって、ポップアップするー。」

 

 

 

聞いてみたら、あっさり愛那に教えられて生産のアイコンを見つける事が出来た。

 

良く良く見れば、使ってないアイコンまだまだあるなー、生産は特化してやってるフレ任せにしてたから使って無い。

 

 

 

「・・・知らなかった。」

 

 

 

「あ、確かにあるや。わたしにも・・・」

 

 

 

わたしは思わず声が溢れて、釣られたように凛子もメニューを確認して感心するように口ごもる。

 

ヘルプすら使ってない生産なんて、わたしには興味が抱けなくて凛子と愛那の会話をBGM程度に聞き流しながら、メニュー画面から酒を出してグラスに注ぎ本格的に食事をする事にする。

 

ロカ肉を適度に薄く切る事から始めようかなー、愛那に完璧な焼き肉のタレを作って貰いたいと願いつつ、失敗作のタレでボナールさんが焼いた肉を平らげたの、ごちそう様でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

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