カンピオーネ!~智慧の王~   作:土ノ子

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そのときふしぎな事が起こった!
ゴルゴムの仕業だ!
あ、ありのまま(ry

どう考えても恵那さんメイン。キャラ崩壊注意?



幕間 清秋院恵那

 

眼が覚めたら見知らぬ場所でベッドに横になっていた。

 

柔らかな色調の白い壁紙、窓からは朝日が差し込む。個人用の病室、それも居心地がよさそうな。唯一ベッドの横に取り付けられたゴツいモニター器具の機器が調和を損なっているが、気絶する前に負った負傷を考えればむしろ当然の処置である。

 

というかまだ身体の節々がズキズキと痛む、カンピオーネになってから一晩寝ていれば大概の怪我は全快してしまうのだが。

 

「様式美的に知らない天井だ、とかアンニュイに呟いた方が良いんだろうか」

 

「キャラ的に合わないなんてものじゃないから止めていた方が無難ですよ」

 

「おはよ、王様。大変だったねー。日天の系譜に連なる神さまと戦ったって聞いたよ」

 

眼が覚めて開口一番漏れだすボケに律義に突っ込む国家公務員。いうまでもなく正史編纂委員会の甘粕冬馬であり、続いてマイペースに挨拶したのは太刀の媛巫女たる清秋院恵那だ。

 

気付かなかったが眼が覚める前から病室にいたらしい。壁にかかった時計を見ると少し朝寝坊が過ぎるかな、といった時間帯だった。たっぷり半日以上は眠っていたらしい。いや、負傷の程度から考えると昏睡と言うべきだろうが。

 

「お、甘粕さんか。あと清秋院よ、何故お前がここにいる?」

 

「ヒドイよ王様! 山籠りしてた霊場から王様に助太刀しようと飛んできたのに」

 

「…そーなの?」

 

甘粕に尋ねるとすぐさま頷かれる。

 

「予備戦力として馨さんが呼びました。丁度将悟さんがカルナを撃破したのとほぼ同時刻に現地入りしました…結果的に病院に搬送された将悟さんと入れ違いになってしまいましたけどね」

 

「あー…相変わらず変なところで噛みあわないなァ」

 

「そうなんだよねェ。王様ってば年がら年中ドンパチしてる割に恵那と一緒に戦ったのって数えられるくらいだしー」

 

「いっつも山籠ってるからなー清秋院は」

 

「王様が外国に遠征してる間に神獣が攻めてきたの忘れてないよね? 王様が来るまで死ぬ気で凌いでたんだから」

 

あの時はすまなかったって謝ったじゃないですかーダメです許しませんー、などと完全に友人同士のだべり合いになりつつあるのを遮って甘粕は話を軌道修正する。普段なら乗っかって茶々の一つも入れるのだがガラにもなく真面目にせざるを得ないほど事後処理が切羽詰まっているのだ。

 

「つい三時間前まで緊急治療室で生死の境を彷徨っていた割にお元気そうでなによりです。自覚症状があるならこの後医師の先生が来ますので仰ってください。その際に色々痛くない腹を探られるかもしれませんが」

 

「…あ、やっぱヤバかったんだ」

 

「カンピオーネの生命力をもってして綱渡りの連続だったそうですよ。立ち会った病院の先生方は人類の奇跡だと興奮しておられました。是非身体を調べさせてほしいと言ってましたよ」

 

「ノ-センキューで」

 

「そういうと思って『名伏せ』の媛巫女に連絡してあります。退院したら彼女たちが先生方の記憶に念入りに処置を施しますのでご安心を」

 

うやうやしく一礼するエージェントに頷きながらも一言付け加える。

 

「頼む…あ、でも死にかけたときのバイタルデータとかは破棄せず、直接俺のところに送ってくれ。ある意味滅多に取れないデータだし」

 

「…死にかけてすぐにその発言が出るあたり将悟さんもまともそうに見えてやはりカンピオーネですなァ。ご命令とあらば否やはありませんが」

 

今度は呆れたようにため息を吐く苦労人。

いや実際神さまやカンピオーネと殺し合った時くらいしかこんな負傷はしないわけで。ある意味カンピオーネの秘密を解き明かしたい魔術師連中にとっては垂涎の的のデータじゃないだろうか。そんな命知らずがいるのかは知らないが。

 

「差し当たって他にはなにかご要望はありますか?」

 

「とりあえず退院したいんだが」

 

「…不遜ながら半日はベッドに縛り付けさせていただきますので悪しからず。我らの王が死に瀕していることを報告したら『絶対死なせるな』とのご命令が届きまして。少しでも破ったら今月のお給料がピンチなんです―――それ差し引いても自重してくださいよホント」

 

「あ、恵那も同感。駆けつけた時には小康状態だったけど思わず治癒の術かけようか迷ったくらい酷い傷だったんだよ」

 

魔王の持つ影響力をいい加減自覚しろ、少しは自分の体調を慮れと苦言を呈する忍者。あと媛巫女。

なんだかなァ…元々遊び人精神と苦労人精神が同居したような飄々としたおっさんだったがここのところ苦労人成分が増加しつつあるのはやはり自分のせいなのだろうか。

 

「他にはないですね」

 

「他にはないですね(断定)。面倒臭くなってるのがモロに副音声で聞こえたからな」

 

「…それは申し訳ございませんでした。昨晩から病院の手配に事後処理の手続き、人員の差配と現地の統括を押し付けられてましてね」

 

かなり荒んだ目を向けてくる甘粕さん。忙しく立ち回っていたというのは真実らしい。

正直かなり派手な戦いだったと思う。だが俺が壊したのは公民館くらいでなおかつそれを巻き込んで完全にぶっ壊したのはカルナだ。だから俺は悪くない。

 

「…いいですよ。最早諦めの境地に達してますしねー。将悟さんの出陣を願った時点で織り込み済みです」

 

やれやれと頭を掻く苦労人。

頑張ってとエールを送る巫女にやる気なさげに礼を言っている。

 

「ま、本来ならここで偉い人からまつろわぬカルナの撃破に『王』へ最大限の感謝と寿ぎが奏上されてしかるべきなんですがね。現在東京分室の人員はほぼデスマーチに参加しておりまして。正式な挨拶はまた後ほど―――」

 

「面倒なのでパス。気持ちだけ受け取っとく」

 

「ですよねー。お偉方に伝えておきます。

あ、それではそろそろ事後処理に戻りますので失礼します」

 

「いやちょっと待ってくれ。四つばかし頼みごとがある」

 

一礼とともに退出しようとした甘粕さんを呼び止め、話をしている最中に思いついた案件を依頼する。事後処理で大変そうだが、一応最大の功労者なのだからこれくらいの我儘を言っても良いだろう。

 

「内容次第では後回しにしますがそれでよろしければ」

 

当然のごとくぶった切る甘粕にやはり慣れた様子で承諾する将悟。なんだかんだ四六時中トラブルに見舞われた一年をともに過ごしたのだ、既に気心は知れている。

 

「たぶんそこまで手間じゃないだろうから安心してくれ。一つ、広い土地の用意。俺が暴れて被害が出ない場所で」

 

「…承知しました。馨さんに連絡しておきます」

 

甘粕曰く事後処理があっても三日ほどで、都内から数時間の距離にある委員会の土地を提供できるという。一体何をやらかすつもりだと盛大な疑惑の目を向けられたが華麗にスルー。

 

「二つ目は清秋院をその場に呼んでくれ」

 

「恵那を? 一体なにをすればいいの、王様?」

 

「そりゃ清秋院にしか出来ないことを」

 

などと疑問の声をはぐらかして続ける将悟。はぐらかされた恵那だが将悟がまた何かやらかすことを期待しているのかやたらとキラキラした目で見つめていた。

 

「三つ目は姫さんにアポ取っといて。あ、次の休みにイギリス行くから」

 

「…プリンセス・アリスと会談を? それはまた急な話ですな」

 

「ま、いろいろなー」

 

恵那も行きたーいと挙手する媛巫女及びよーしお兄さん頑張っちゃうぞーと懲りずに寸劇を繰り返す魔王陛下を丁重にスルー。ニヤーッと悪戯を企む悪童めいた笑みにロクでもない予感を盛大に抱きながら予防線を張る甘粕。経験上ここで押さえておかないとなにか一波乱起こすのは確実である。

 

「あとで絶対に(・・・)私か馨さんに企んでることを吐いてください。でなければそのご命令は承諾しかねます」

 

「なんでだよ!? ミス・エリクソンを説得するの凄い面倒なんだぞ!!」

 

「普段の行いを顧みてそれを言えますかアナタは!? こっちだって無駄に振り回されるのはもうコリゴリなんですよ! いい加減私に有給休暇を使わせてくれたっていいじゃないですか!?」

 

休みを取ろうとするたびに仕事が出来るんですよ、あなたのお陰で…。

などと半ば本気でやるせなさを込めた絶叫を向けられると流石に気まずげに眼を逸らすしかない将悟。ちなみに媛巫女は可哀そうだけど王様のやることだし仕方ないよねと競りに連れられて行く子牛を見る目で忍者を眺めていた。

 

少しして正気に戻り恨み言を中断。長々とため息を付きながら最後の案件を促す。

 

「それで最後の四つ目は?」

 

「退院する。手続きよろしく」

 

ビシッと無駄に鋭く敬礼を決める馬鹿。

天を仰ぎ馬鹿に付ける薬って無かったかなと思案し始める甘粕。王様…、と悲しげに上目遣いで将悟を見る恵那。それを見て慌てて弁解を始める将悟。

 

「いや、本当に大丈夫なんだって」

 

と言ってホラ、と包帯やらなにやらを無造作に剥がし出す。それを慌てて止めようとする。甘粕の見立てでは魔王カンピオーネと言えども回復するまでもう一日はかかるだろう負傷だ。持ち直した以上そうそう容体が急変、などということは考えづらいがせめて全快するまで静養してもらいたいのが公人・個人どちらにおいても本音である。恵那は言うまでもない。

 

だが、

 

「ほらな?」

 

「…あれ?」

 

見ると既に包帯が取り除かれた場所からのぞく素肌には傷一つ残っていなかった。

ちなみについ三時間前まで全身に火傷や切り傷が残っているのを確認したばかりである。この一年、将悟の死闘による負傷と回復の経過を見てきたのは伊達ではない。明らかに今までとは怪我が治る速度が違っていた。

 

疑問を顔に浮かべる甘粕と恵那に向かって、

 

「種明かしはコレだよ」

 

と右腕を差しだす。よく見ると手の甲の当たりに走る傷が奇妙な光に覆われ、たちまちの内に傷跡が治癒していく。柔らかな温もりを放射する、よく晴れた日の陽光を思わせる光だった。

 

そうか。

太陽を思わせる陽光を見て甘粕は悟った。

 

「カルナから奪った権能ですか」

 

「ご名答」

 

やがて柔らかな光は将悟の全身を覆い、時間経過に伴ってどこかぎこちなかった全身のこわばりが融けるように消え去っていく。将悟は一つ頷くと軽やかな動作で身を起こし、ベッドから下りると全身を動かして不具合をチェックしていく。一通り身体を動かすと満足が行ったのか無駄に朗らかな笑顔を向ける。

 

「これで文句ないだろ?」

 

「…念のため検査を受けてください。それが済めば退院してくださって結構ですから」

 

「やっりー。王様、退院したら恵那と一緒に遊ぼうよ」

 

病院の関係者をどうやって言いくるめるか考え込んでいる表情で甘粕は仕方なく答えた。将悟としてもそこまで逆らうつもりはなく、素直に承諾する。恵那に至っては諸手を挙げて喜び、午後の予定を立て始めていた。

 

「それにしても回復の権能ですか…なるほど、だから病院に着くまで持ちこたえられた訳ですね」

 

病院へ搬送する途中で何度も心停止したがその度に奇跡的なリカバリーが起こっては再び心停止するという関係者としては胃が締め付けられる事態になっていたのだが、それを思い出した甘粕だった。

 

「一部当たりだが大部分ハズレだよ。回復“にも”使える権能だ」

 

「ははァ…言霊の権能に続いてまた汎用性のある代物を手に入れたと。一体いかほど手札が増えたのやら」

 

そこできょとん、と首を傾げる将悟。

まるで何言ってるんだこの人は、と疑問がありありと浮かぶ表情で。

 

「何言ってんだ甘粕さん?」

 

当たり前のことをわざわざ伝えなければならないことを、心底不思議そうに思っている様子で続けた。

 

「―――だからそれを清秋院相手に試すんだろ」

 

「おおっ、流石王様。ホント楽しそうなこと思いつくよねェ」

 

「…なるほど、委細承知しました」

 

無邪気に笑う魔王と媛巫女に頭痛を覚えながらも甘粕は思い出す。

赤坂将悟は『智慧の王』などという賢しげな称号を得ながらも普段は知性よりも動物的な感性の鋭さが目立つ『王』だ。だが同時に権能や魔術に関する研究と実験は赤坂将悟のライフワークでもある。そして彼の『実験』はしばしば騒動を引き起こし、世間を賑わせる騒ぎになることも珍しくはない。

 

今回も新たに得た権能の性能実験と称して神がかりの遣い手、清秋院恵那相手にまた一暴れするつもりなのだろう。

 

なんでこうカンピオーネという生き物は…、と彼らに関わった人間が一度は必ず思う慨嘆を甘粕もまた共有するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして甘粕が立ち去り恵那と午後のプランを立てながら数時間経つと各種検査がとり行われ、結果は当然の如く体調不良の影すら見えなかった。

 

これで義理は果たしたとばかりに軽い足取りで恵那を伴って退院し(検査に立ち会った医師は怪物を見る目を向けていたが最低限の言葉しか交わさなかった。十中八九委員会から警告かなにかを告げられたのだろう)、午後は地元の名産品をふんだんに使った料理店で大量の料理を貪り喰らった。回復にエネルギーを使い果たしたせいか凄まじい空腹感に襲われた将悟が注文したのだ。ちなみに恵那は文句一つ言わず楽しそうに暴食の欲望を満たす将悟の横顔を見詰めていた。

 

あげく翌日には休み明けの憂鬱な気分を引きずりつつも在籍している私立城楠学院にもキチンと登校したあたり流石はカンピオーネ、デタラメな生命力とバイタリティである。

 

土日の休みに生きるか死ぬかの殺し合いをして生死の境を彷徨ってきたことなど欠片も思わせない自然体で過ごし、約束の三日後になると躊躇わず授業をサボった。しかも遠慮なく王様権限を濫用し、公欠扱いになるよう取り払わせてである。学業の成績は良い(無論卓越した霊視能力とマークシート方式テストの因果関係に由来する)ため一日二日くらいなら問題にならないとはいえ、大して後ろめたさを感じてないあたり倫理的な道徳観が薄い男なのだ。

 

ちなみに恵那の方は万里谷祐理の実家に泊まり込みつつ放課後になると帰宅路に待ち伏せて帰り道を共にしていた。遊びに誘われて承諾することもあった。といっても奔放な性格に反して散歩や剣術談義など割合大人しめなものばかりだったが。

 

将悟としても一年近い付き合いの中で恵那に対して持った認識は気の合う友人だ、まれにその一線を踏み越えて“女”を感じさせる言動を繰り返すが幸い“お妾さん”だの“都合のいい女”などとカルチャーギャップを感じさせる恋愛観の差が将悟の理性を保っている。

 

神殺しだの非常識な天災だの色々言われるが所詮は奥ゆかしい一夫一妻制に慣れ親しんだ島国の住人である。魔王と言えどその男女観、女性関係まで破天荒ではないのだ…。“後輩”が出来るまで将悟は素直にそう思っていた。

 

閑話休題。

 

約束していた三日目の朝には恵那と家の前で待ち合わせ、委員会の車に乗り込んだ。

 

道中は委員会のスタッフ(甘粕は今もデスマーチ中である)に乗用車の運転を任せながら爆睡。いつでもどこでもどんな状況でも三分以内に熟睡できるのは将悟の密かな特技であったりする。

 

そして乗用車が進む道はどんどん人気が少なくなり、道幅が狭くなっていき、ついには無舗装の山道に突入した。出発から三時間以上経過したあたりで、ついに目的地へと到着した。

 

外観は山間に建てられたやや老朽化した感のある旅館というのが近いか。スタッフ曰く、私有地に建てられた委員会に所属する人員のリラクゼーション施設なのだと言う。温泉も湧いているとか。

 

ここから10分ほど歩いた場所に人払いの結界が敷かれただだっ広くなにもない広場があり、そこは普段魔術や体術の訓練ができるよう開放されているのだと言う。今日は安全のため貸し切られており、思う存分暴れても良いらしい。

 

施設を一通り案内し、食糧の在処などを告げたスタッフは三時間後に迎えに来る旨を伝えると乗用車に乗り込み速やかに去って行った。巻き添えを喰らうのを避けたのだろう、賢明な判断である。

 

関わりたくないと露骨に態度で示された二人は思わず顔を見合わせて苦笑した。

 

「うーん…腹ごしらえをしてから始めても良いんだけど、実は三日前からこの手合わせ楽しみにしててさ。王様さえよければもう始めない?」

 

「おお、珍しく血の気が多いな。なにがあった?」

 

天叢雲劍を取り出して好戦的な笑みを無邪気に浮かべながら将棋に誘うくらいの軽さで太刀合わせに誘う太刀の巫女。さながら大型の猛獣が仲間同士で遊ぼうと誘っているような邪気のない笑顔だった。

 

「や、ちょっと前におじいちゃまと話してさ。男と女ってどんな時に仲が深まるのかなーって」

 

「…あのジジイそろそろ始末した方が後腐れないか?」

 

予想外の返答に嫌な予感をそこはかとなく感じながら、ある意味純真無垢な太刀の媛巫女に性質の悪い考えを吹き込む幽世の守護神の排除を検討する。些かならず魅惑的に思えてしまったのはやはり普段の人徳の無さからか。あの神様が口を出すと大抵ろくなことにならないのだ。

 

「おじいちゃま曰く分かり合うにはやっぱり身体を重ねるか生死を共にするか―――または互いに殺し合うのが一番手っ取り早いんだって!」

 

すごいでしょ、とばかりに須佐の老神から吹き込まれた現代の価値観にそぐわない知識を披露する媛巫女。もう突っ込みどころがありすぎて逆にどこから突っ込めばいいのか分からない台詞である。が、さしあたって問題が生じそうな部分をまず問いただすことにする。

 

「ちょっと待て。一番目と二番目は―――倫理上の問題はさておいてまあ分からんでもない。だが最後の三番目は明らかにおかしいだろ! 少しは疑問に思わないのか、殺し合いの部分とか!?」

 

「え、でもおじいちゃまは現世をほっつき歩いてたときにギリギリまで殺し合った相手がどんな奴か理解出来たって体験談を語ってくれたよ。王様も覚えがない?」

 

「あるか!? 俺も大概非常識だと自覚はしているがそこまで一線を越えて向こうにイッっちゃった奴じゃないぞ!」

 

何故か己を引き合いに出され全力で不本意だと訴える将悟。だが恵那は否定されることこそ不本意だと言わんばかりに、過去の事例を持ち出して持論を主張する。

 

「えー、でも前に東欧の侯爵様について恵那が意見を言ったら王様ってばやけに断定的に否定したじゃん。すっごい自信ありげだったよ。確か会ったのって一回だけだよね。しかも全力で殺し合った時の!」

 

「いや、それは、だな…」

 

…確かに、ヴォバン侯爵と邂逅したのはわずか一度、しかも話などロクに交わさずほぼ権能のぶつけ合いに終始したが関わり合った時間の短さの割にその人柄は嫌と言うほど理解できた。しかしそれはあの戦闘狂の強烈な個性を戦闘という密度の濃い時間の中でぶつけられたからであって…アレ、論破されてないか。

 

「なん…だと…」

 

まさか俺が一線を越えて向こうにイッっちゃった奴として自分で認めてしまった!?

 

「ほら、やっぱり王様も覚えがあるでしょ!」

 

どや、と鬼の首を取ったように勝ち誇って胸を張る清秋院。

思い返せばカルナとも和解とか話し合いだとかヌルイ妥協案は全く思い浮かばなかったが、その“英雄”たらんとする人格・こだわり・誇りを理解できたし今でもはっきりと思いだせる。

 

これは…つまり、認めざるを得ないのか…俺がキチ○イだと…!?

 

―――馬鹿なっ!?

 

「ええい、ナシだナシ。いまのはノーカン! 清秋院に言い負かされたと思ったけどそんなのは全部錯覚だったんだよ!!」

 

「ええっ、なにそれズルイ!?」

 

ひとしきり子供の悪口合戦にも劣る低レベルな水掛け論を繰り返したあと、腕に覚えがある者同士自然と話が一つの方向へ向かっていく。すなわち、

 

「勝った方が強くて正しい、これで文句ないな!?」

 

「乗った! 一太刀入れたら恵那の勝ちだからね!! あと言霊の権能もナシ!」

 

「ははは、魔王(オレ)に挑むか清秋院(ヒーロー)! 粉々に打ち砕いてくれるわ!」

 

なんとも笑えない将悟の悪乗りが過ぎる台詞。本来の趣旨を忘れつつも予定通りに進んでいく今日の目的だったはずの新しい権能の実戦試験。最早子供同士の意地の張り合いの道具と化した感があるが、対戦に臨む双方は神殺しと神がかりの巫女。

 

周囲に与える影響は割と洒落にならないのだがそれを自覚していない、あるいは自覚していてもブレーキを踏まず逆にアクセルベタ踏みかます連中なのだ。正史編纂委員会の苦労が偲ばれる光景だった。

 

額がぶつかり合いそうな距離で舌戦を演じていた両者は話がまとまった途端に俊敏な身のこなしで距離を取る。そしてそのままゆっくりと、かといって油断の欠片もなく例の決闘場へと歩調を合わせて歩いていく。

 

なにはともあれ、実戦試験を兼ねた意地の張り合いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《清秋院恵那》

 

“相棒”を手に決闘場へと足を向けながら、神がかりの遣い手は考えていた。此度の勝負、あるいは己の存在意義を問い直すいい機会かもしれない、と。

 

―――清秋院恵那は赤坂将悟にとって果たして如何なる存在であるだろうか。王の剣? 傍に侍る女? 気の合う友人? 恵那としてはその全てでありたいと思う。

 

では逆に清秋院恵那にとって赤坂将悟とはいかなる存在だろうか。決まっている―――全てだ。赤坂将悟はその存在だけで清秋院恵那が命を懸けて仕えるに足る王なのだ。

 

何故そこまでかの王に肩入れするのかと問われれば、恵那は答えに窮するだろう。根本的な原因は清秋院恵那という人間の特性と人格を形成する過程にまで遡れるからだ。

 

己がズレている、と恵那は昔から言われることがあった。恵那は子供のころから五感が人並み外れて鋭い上に理屈を抜きに最善手を選び取る第六感の持ち主だった。

 

人間が進化の過程で捨て去ったであろう獣の感性、それを恵那は先祖返りかはたまた媛巫女の血か生まれながらに強く獲得していた。その野生じみた感性がズレを生む要因だった。

 

見ている世界が同じでも、そこから生まれる感覚が異なるのだ。例えば肉食獣が獲物のはらわたを食い破る光景を見れば普通の人間なら嫌悪感を持つなり怯えるなりするが、恵那はその光景をあるがままに受け入れる。脅威として捉えても過剰に怯えることや嫌悪することは無い。

 

感覚のズレは認識のズレを生み、神がかりの修行のために深山に籠もるようになってから修正する機会も無く、いつの間にか普通の人間と恵那を隔てる深い溝が出来ていた。

 

恵那としてはそれを不満に思ったことは一度も無い。自由に、自分らしく振る舞えないなど馬鹿らしいにもほどがあったし、そもそも神がかりの基本は己を空とすること。普通の人間とズレているからどうこう、などと思うのは修行不足に他ならない。

 

そうした事情を差し引いても際立って優れているものは往々にしてどこかズレている部分があるのが普通だ。そういった意味では恵那はスサノオの巫女に選ばれた上に四家の一たる清秋院家の跡取りである。むしろズレていて当然と周囲からも看做された。

 

そんな経緯から赤坂将悟と出会うまで恵那は己と同じ感性を持った人間に出会ったことはなかった。

 

まっとうな人間から外れた、ヒトと同じ形をした一匹だけの“獣”。己はそういうモノなのだと恵那は諦観も高揚も浮かべることなくあっけらかんと認識した。

 

不満も、寂しさも感じなかった。万里谷祐理という友人もいたし、スサノオも庇護者として不足ない振る舞いをしてくれた。理解し合うことはできずとも楽しく交じりあうことは出来るのだ。

 

そして一年前日本に『王』が誕生し、スサノオの命により恵那は端女として『王』の傍に侍ることになった。

 

最初はどんな王さまであってもお仕えしよう、胤をもらいたいけど楽しければなおよし。そのくらいの気持ちだった。例え神さまとの戦いだろうと剣として役に立つ自信はあったし、実績も積み上げていた。

 

しかしその期待とも言えない無邪気な思いは良い意味で裏切られる。

 

初めてあった時にはなんとなく気になり、やがて共有する時間が増えるにつれて恵那は確信を深めた。すなわち赤坂将悟は己と同じ種類の“獣”。理性ではなく感性で、知識ではなく直感で真理を掴み取る智慧の持ち主であるのだと。

 

己の赴くままに行動しては騒動を巻き起こして暴れまわる、恵那以上の問題児。恵那に追随するどころか唖然とさせ、胸を高まらせる破天荒な振る舞いが恵那の中で眠っていた“女”に火を灯した。

 

深山のなか一匹で暮らしていた“獣”は遂に自らと同種の“獣”、比翼連理の一対、あるいは魂の“つがい”を見つけ出したのだ。一般的な“恋情”とはかなりかけ離れたその感情に、恵那は一瞬たりとも迷わず自ら進んで身を委ねた。

 

“女”として傍に侍りたいし、“剣”として戦場で彼の役に立ちたい、理解しあえる“友達”として遊びまわりたいとも思った。そのどれもが恵那にとって新鮮で、彼と会って話をするだけでドキドキした。

 

彼ともっと近しくなりたいと欲した。そしてその目論見は三分の一だけ成功した。

 

“女”として侍るのは認めてくれないし、なんの因果か“剣”としてはそれ程役に立てていない。唯一友人としての距離は縮まったといえるが…。生憎と清秋院恵那は自己の欲求に忠実な少女なのだ、だからもっと距離を縮めたいし、役に立って「よくやった」と褒められたい。

 

そう考えると今回の勝負、密かな好機ではあるまいか。

 

“女”としての魅力は一先ず脇において、“剣”としての恵那の力を認めさせる。いや、認めてはいるのだろう。だがともに戦うに値しないと思われているのではないか? 恵那が抱いていた密かな疑惑だった。

 

彼らが共通する戦場で戦うことが少なかった理由には巡り合わせが悪かったというのもあるが将悟が恵那を戦場に伴うのに消極的だったというのもあるからだ。今回の実戦試験という名の模擬戦に向けてやけに発奮していたのはそういう事情もあってのことだった。

 

故に清秋院恵那は考える。

 

天上の覇者たる神殺しに挑む不遜を承知の上で、必ずや勝ってみせん。そして我が魔王が戦場へ伴うに足る一振りの“剣”であることを認めさせるのだ、と。

 

己のアイデンティティに揺れる少女は上辺からは想像もつかないほどこの勝負に入れ込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《赤坂将悟》

 

委員会のスタッフが伝えたとおり、10分ほどで例の広場に到着した。鬱蒼と生い茂った森の中に突然切り開かれただだっぴろい空間だった。

 

向かい合って程々に距離を取ると、無駄な口上を述べる気などない二人は早々に臨戦態勢に入った。

 

肩に背負っていた三尺を超える規格外の神刀、天叢雲劍を恵那が構える。彼女に加護を与える老神スサノオの佩刀であり、剣の形をした神。神に属する剣と魔王ということで嫌われている間柄だ。まあそもそもろくに話したことが無い訳だが。

 

「八雲立つ出雲八重垣、妻籠みに…八重垣作る、その八重垣を! 天叢雲劍よ、我が祈りに応え給え!」

 

神力をその身に降ろす言霊を唱えると、たちまちの内に恵那から《鋼》にして暴風の神たるスサノオの力が充溢していく。神力の高まりに応じて魔王の肉体もまた臨戦態勢に入る。

 

やはり初っ端から最大の切り札を切って来たか。

 

まあ確かに魔王相手では神がかりを使わねば対抗すらできないだろう。最も使いなれた言霊の権能を使えないが将悟は神殺し。互角の条件で戦えば百戦して百勝できる。

 

とはいえこの勝負は一太刀でも入れられれば敗北、しかも使えるのは掌握したばかりの新しい権能。もちろん殺さないように手加減は必須。これだけ縛りが入って神獣と同格の達人が相手では手こずることは間違いない。“殺し合い”なら神がかりの遣い手と言えども相手にならないがこうした“試し合い”ならば彼女は油断できない強敵と化すのだ。

 

清秋院恵那。

 

日本呪術界トップの四家の一、清秋院家の跡取りであり日本最高の霊能者集団、媛巫女の筆頭。神と交信し神力をその身に降ろす荒業、神がかりの遣い手でもある。

 

対外的には古老と清秋院家から差しだされた愛人、供物、または戦力として認識されているが将悟から見ればやたらと馬の合う友人以外の何物でもない。とにかく呼吸が合う、意見が合う、たまに行動を先読みされることすらある。割とその場のノリと欲求に従うまま生きている自覚がある将悟としてはここまで相性のいい人間と会ったのは初めてのことだった。

 

そして実はそこらへんに恵那との共闘する回数が少ない理由の一端があったりする。

 

山籠りやら海外遠征やらでタイミングが合わないのが半分、神さまとの相性を考え一人で戦った方が効率がいいと判断したのが更にその半分、最後に神さまと戦う“程度”の出来事で馬の合う友人を失うリスクを背負い込むのは割に合わないという露骨な個人的感情その他諸々が重なって低い共闘率となっていたのだ。無論神殺しの業として、己一人では荷が重いと判断した時は躊躇なく戦場へ伴っていったが…。

 

男女、互いの心知らず。

相性が良いくせにおかしなところで噛みあわない二人だが、いままさにその擦れ違いと意地の張り合いによって全力でぶつかりあおうとしていた。

 

実戦試験の名目で始まった模擬戦、まず仕掛けたのは先手必勝を好む太刀の媛巫女だった。

 

「行くよっ、王様!」

 

心に秘めた思いを外に出さず、快活に笑いながら風の速さと獣の身ごなしで瞬く間に間合いを詰める少女。十メートルはあった間合いがたった三歩で踏破され、駆ける勢いのまま上段からけれんのない唐竹割りをくりだす。この程度の斬撃で死ぬはずがないと思っているのか躊躇わず脳天の急所を狙ってきている。

 

凡百の達人なら反応叶わず頭頂から断ち切られる技量。

 

しかしいざ臨戦態勢に入ると薄気味悪いほど集中力が高まるカンピオーネの動体視力と反応速度ならなんとか避けられる速度にすぎない。

 

だが将悟は避けなかった。元を糾せばこれは掌握した権能がどれくらい使えるかを確認するテスト。何よりバカげた運動能力に任せて白兵戦を挑んでくる相手に一度くらいは思い切り殴り返してやりたいと常々思っていたのだ!

 

「不滅の生命たる我が命ずる。生を享け、生を謡い、生を寿げ。されば我は汝らに授けよう、遍く照らす太陽の恩恵を!」

 

掌握したばかりの太陽の権能を引き出し、制御するための聖句が自然と口から零れ落ちる。身の内から汲みだす呪力は権能によって変質・加工され、眼に入れてもまぶしくない、柔らかな燐光となって将悟の全身を覆っていく。

 

恵那もまた何らかの対策が取られることを予想していたため容易く鉄を断ち、神獣すらも傷つける神刀を一分の躊躇いもなく振り下ろす。

 

将悟は心なしか権能を使う前よりもゆっくりと感じられる恵那の唐竹割りを交差した両腕で真正面から受け止めた!

 

拮抗は一瞬にも満たなかった。

 

恵那が感じた手応えは骨が折れる固い感触ではなく、分厚いゴムを叩いたような天叢雲劍が弾かれる感触だった。まるで竹刀で防具越しに打ったかのような感触に一瞬だけ混乱し、その隙に神刀を受け止めた将悟が強烈なミドルキックを恵那に向けて繰り出した!

 

それをとっさに獣のような動作で後ろに飛び、四つ足で着地する。幸い当たっていない。しかし体重が存分に乗ったそれは直撃すれば神がかりした恵那と言えども軽く十数メートルは吹っ飛ばされていただろうと恵那の勘が伝えていた。

 

将悟は権能の性質上完全な中後衛型だが運動神経が悪いわけではない、ただ神さま相手に権能の補正なしで白兵戦を挑める技量には全く足りなかっただけだ。恵那もその技量をよく知らないが護身術レベルくらいなら修めていてもおかしくはない。

 

無論その程度では恵那が脅威と思うレベルには到底達しないが、カルナから簒奪した権能が将悟の身体能力に下駄を履かせ、恵那をして咄嗟の回避行動を取らせる威力に引き上げたのだろう。

 

権能の具現たる陽光を身に纏い対峙する将悟を見やる。手に握る天叢雲が緊張と警戒を伝えてくる。おそらく身体能力が段違いに向上している。それも神がかりを行った恵那に対抗できるほどに!

 

そしてかの権能の性質、おそらくかなり単純な理屈で動いていると直感する恵那。

 

「肉体を強化する権能かな? 病院では傷を治す力を、今の蹴りは身体能力を権能で強化した」

 

「…ま、外れてはいないと言っておこう」

 

蹴りを放った体勢のまま器用に肩を竦めて韜晦する将悟。だが生憎と恵那はそんな韜晦に付き合えるほど頭が良くないのだ。太刀の媛巫女が得意とするのは何時だって勘と野生に頼った遊撃戦なのだから!

 

「どうでもいいや! 次々行くよ!」

 

分析だとか戦略だとか出来なくはないが面倒くさい! それよりも神がかりで引き上げられた身体能力と野生的な危機察知能力で対処したほうがよっぽど早いし分かりやすい。いっそすがすがしいほどに単純思考。だがそれゆえに強く、速い。

 

再び俊足で間合いを潰し、真っ向から太刀合わせを挑む恵那。

 

なるほど、確かに将悟の身体能力は恵那に脅威を抱かせるほど高まっているだろう。だがそれは恵那もまた将悟に対して脅威であるのだとも言える。恵那の嗅覚は、あの太陽の権能は汎用性が高い故に個々の強化にそこまで劇的な効果が望めないだろうと嗅ぎとっていた。そもそも神獣すら圧倒できるほど強力なら恵那があのミドルキックを避けられたはずがない。

 

見せ付けられた運動能力に一切ひるむことなく、真っ向から振り下ろす。あっさりと避けられた。が、迷いを見せず次々と連続して斬撃を繰り出していく。

 

袈裟がけに斬り下ろし、斬り上げる。翻って太刀を振るう。

 

天衣無縫の闊達さで次々と繰り出される太刀の乱舞はそのどれもが予測不能。だが将悟の動きはそれ以上にメチャクチャだ、不可能と判断した体勢から光を纏った拳で迎撃し、時には目で見てから防御に移るなどという人間の反射神経に喧嘩を売る動きを披露している。

 

一見良く似ている風に思える両者の動きだが、達人が見れば一目瞭然な差があった。

それは技量、あるいは修練の量。

 

恵那の太刀が己をいじめ抜いて基本を収めたうえで敢えて型を崩した動きだとすれば、将悟の体術は最早習った型など何もない素人同然の動き、しかし引き上げられた運動能力が予測不可能な軌道を生み出すのだ。

 

似ているだけで、技量の差は明白だった。

だというのに近接戦は互角の戦況となっている。

 

恵那の振るう天叢雲劍はことごとくが回避されるか、四肢で防御される。時折権能の具現たる不滅の陽光を天叢雲で吸い取るが、元々神殺しの権能に通じるほどの威力はない。防御の上からでもそれなりに痛手は与えているようだが嫌がらせ以上のダメージにはなるまい。

 

デタラメな身体能力が恵那の神がかりと技量を帳消しにする働きをしているのだ。

 

嗚呼、と恵那は思う。

 

たった一つの権能を得ただけだと言うのに昨日まで武術のぶの字も知らなかった少年が、恵那が半生をかけて積み上げた修練をことごとく無に帰してしまう。なんという理不尽、なんというデタラメか―――それでこそ我が背の君(・・・・・・・・・・)

 

そうだ。

 

恵那が恋した少年は、デタラメで理不尽でハチャメチャで非常識で人外でなくてはならない―――そうでなくてはこの恋情が生まれることもなかったのだから!

 

むしろ喜びさえ感じながら喜々として太刀を合わせる恵那。まだだ、まだまだ。恵那はまだ半分も自分の力を見せられていない。

 

「倭は国のまほろば―――たたなづく青垣山ごもれる、倭しうるわし!」

 

一息に距離を取り、スサノオから賜った神力を行使する。将悟も受けて立つという姿勢なのか邪魔はしない、やや後退し素早く周囲の様子を確認するだけだ。

 

ありがたい、ただでさえ格上の相手になりふり構わずかかってこられたら付け入る隙さえなくなってしまう。

 

神力を行使して産み出すは暴風の権能、たちまちのうちに上空には濃い雨雲が立ち込め、ざあざあと雨粒交じりの強風が吹き始める。そう、恵那の武器は天叢雲と武芸だけではない。

 

スサノオの巫女たる恵那は暴風の神力をその身に降ろし、自在に操ることができるのだ。人間の術者が使う術などとは比較にならない、一風吹かせれば巨木をもなぎ倒す颶風を!

 

「いざ、尋常に勝負―――!」

 

とはいえこのまま暴風を叩きつけても桁外れの魔術耐性を誇るカンピオーネには通用しまい。将悟の虚を突くにはもう一工夫加える必要がある。

 

「我、いまこそちはやぶる御剣を振りかざさん! 一太刀馳走仕る!!」

 

そう、将悟へ使えないのならば―――己に向けて使えばよい。

 

渦巻く烈風を身に纏い、その背に吹き付ける追い風に助けられ、今までよりも明らかに速い身のこなしで斬りかかってくる恵那。今までも風のような俊足であったが、追い風に助けられる今は疾風の速度すら瞬間的に上回る。

 

流石にこの戦法は予想がつかなかったのか、見事に虚を突かれた表情。このテの奇襲は初見でこそ最大の効果を発揮する。叶うならばこのまま懐に入り太刀を衝き込む―――!!

 

恵那が魅せた決死の突撃戦法に見事、とばかりに獰猛な闘争心溢れる笑みを見せる将悟。ドンッ、と将悟を中心にほとばしった呪力の波が恵那の全身を叩いた。

 

その総身から活火山の爆発に例えるべき呪力が放出され、比例するかのようにひと際強烈な光輝があふれ出す! 神をも殺すほどの負けず嫌いが遂に自重をやめ、カルナから簒奪した太陽の権能を全開にしたのだ!

 

だからといって今更止まれるはずもない、恵那は乾坤一擲の心意気で更に暴風を強力に吹かせた。突撃の軌道が恵那自身細かく制御できないほどに!

 

―――両者の影が交差する時間は刹那に満たなかった。

 

両者の位置は間合いを詰め合い、激突したことでそっくりそのまま入れ替わっていた。両者は微動だにせず沈黙している…その光景は例えるなら西部劇のウェスタンガンマンの決闘、互いの銃声が一発ずつ鳴り響き、ギャラリーは息を飲んで勝負の結末を見守る―――。

 

張りつめた糸のような均衡が崩れ、ドサリと倒れ伏したのは……当然と言うべきか、清秋院恵那だった。今までの戦いは将悟が恵那を殺さぬよう力を抑えていたからこそ成り立っていたのだ。本気ではあっても全力ではなかったというべきか…。

 

故に抑制を開放し、最低限の理性を残して全てを刹那の交差に注ぎ込んだ魔王の前では神がかりの巫女とはいえ荷が重かった。紙一重の回避はカンピオーネの勝負勘に全てを任せ、交差する刹那に打撃を入れるのに全神経を集中。そしてそれは辛うじて成功した。

 

将悟の拳は恵那のわき腹にかすっていた。恵那が崩れ落ちたのはそのダメージによってだ。カンピオーネの振るう全力とはそういうものなのである。

 

逆に言えばそれほどギリギリの攻防だった。権能を全開にするタイミングが一瞬でも遅れていれば逆に恵那が見事に天叢雲劍を突き入れていてもおかしくはなかった…。いや、この勝負強さこそがカンピオーネである証なのかもしれないが。

 

ツツツ…と将悟の頬に一筋赤い線が入り、鮮血が流れ出す。唇の端にたどり着いた生温かい血液をぺロリと舐めとる。なんとも鉄臭い味だった。恵那の太刀もまた将悟にカスっていたのだ。

 

将悟は思った―――見事、と。

そして感じた、強烈な自己嫌悪を。

 

いまの心情を率直に表現するならその二つで十分であっただろう。格で言えば神がかりの巫女より神殺しの魔王たる己の方が遥かに上なのだ。本気を出さなくても勝てると思っていた己を恥じる……真剣勝負に手を抜くなど、何時からこんなにも己は腑抜けたのだと。

 

神、魔獣、同格の魔王。言葉で表現できない正真正銘の化け物たち―――奴らを相手に戦い抜くことが出来たのは、何時だって己の命すら躊躇わずチップに差し出し、運を天に任せずその剛腕で勝利の糸を手繰り寄せてきたからではないか!!

 

対して大事なことを忘れた己の隙を突き、全力を引き出した清秋院はなんと賞賛すればいいのかすらわからない。ただただ見事とか言えまい…。

 

 

 

……最早この試合が“試し合い”であったことすら忘却し、真剣勝負で青天井に上がったテンションに脳味噌をやられた馬鹿一匹。異常なまでに勝負事にこだわる傾向にある神殺しが陥りがちなある種の視野狭窄であった。

 

とはいえ勝負事にこだわるが故に馬鹿はプライドが高かった。そう、将悟は“一太刀入れられたら負け”なのである。そして頬には一筋の太刀傷…負けを認めるのに寸毫の不足もない。

 

ゆえにこの勝負。

 

「お前の勝ちだ、清秋院」

 

将悟は静かに負けを認め、勝者を称えた。

だがそれを認める者は誰もおらず、ここにいるのは『王』の裁定に反抗する剣客が一人。

 

「まだ…だよ」

 

「? 清秋院?」

 

「まだ恵那はなにも見せてない!」

 

ふらふらとした頼りない足取りで天叢雲を支えになんとか立ち上がる恵那。

わき腹にかすった程度とはいえ余波によるダメージもあり、負傷は決して軽くない。まともにヒットしていれば神がかりの巫女が即座に病院行き間違いなしの一撃である。その威力は推して知るべし。

 

「天叢雲劍に願い奉る! 今ひと度我に須佐之大神の御霊を降ろし給え!」

 

『応! 是所謂(これいわゆる)天叢雲劍也! ちはやぶる千釼破の鋼也!!』

 

ただ“剣”たることを望む巫女が願い、最源流の《鋼》である神刀が応えた。心身に流れ込むスサノオの神力が一時的に増大し、巫女の肉体が悲鳴を上げる。ただ一撃、いま振るう最後の一太刀を放てることさえできればいい。だからそれまででいい、保って―――!!

 

意識が届く限り轟々と暴れ回る風を統御し、一か所に集めて圧縮していく。圧し固めて、圧し固めて、圧し固めて、圧し固める。圧縮されつくした大質量の空気が光すら歪ませ、うっすらとその巨大な輪郭を形作る。

 

―――それはまさしく暴風からなる破城鎚。

―――抗う愚者を余さず打ち砕き、蹂躙し尽くす神威の鉄槌であった。

 

恵那は最早言葉を発することさえ辛そうな様子で今にも弾け飛びそうな破城鎚の維持に全精神力を注いでいた。この大技、神獣にすらノックアウトするであろう強烈な一撃だが制御をしくじればたちまち超圧縮された大気が荒れ狂い、さながら大量の爆薬による爆発と等しい衝撃をまき散らすだろう。

 

無論至近距離に位置する恵那の肉体は無残に引き裂かれ、あっという間にボロボロになるのは間違いない。

 

将悟としては可及的速やかに止めたい、カンピオーネだろうと無傷で助け出すにはかなり厳しいからだ。が、どうも下手に手を出せばそれをきっかけに暴発しそうなギリギリ感が濃厚に漂っている。爆発物処理班の気分が嫌と言うほど味わえる状況だった。

 

加えて圧縮に次ぐ圧縮を施した莫大な質量の大気の処理にかなり手間がかかるだろうが恵那の体調を考えると悠長にやっている時間はない。

 

―――わざと撃たせて真っ向から潰す

 

それが一番手っ取り早くしかも比較的安全であると将悟は一瞬で決断した。両者の命にも関わる決断を一瞬で為すことができる、これもまたカンピオーネの資質なのかもしれない。

 

間違いなくこれが今採りうる最適解だと判断した。

 

「来い、清秋院! 撃ってこい!!」

 

「あっ…」

 

だがなにより受け止めてやらねばと思ったのだ。悲壮ささえ感じさせる泣き顔で満身創痍に鞭を打ってなんとか立っている恵那の思い、そして全てを振り絞った一撃に!

 

「あ、あ…うああああああああああぁっ!!」

 

駄々をこねるように、積りに積もった感情をぶちまけるように喉も裂けよと絶叫を挙げる恵那。普段なら飄々とした立ち居振る舞いで隠し、決して表に出さないだろう激情を今この時ばかりは思う存分に吐き出す。

 

―――轟、と。

 

放たれるは人の身で望みうる最強の奇跡、かつてランカスター城を一撃で粉砕した聖騎士パオロ・ブランデッリの突撃に比すべき暴風の鉄槌だった。

 

迎え撃つは眩いほどに輝く黄金の剣。言霊の権能で『創造』した剣に不滅の陽光を宿した神獣すら一振りで斬り伏せる太陽の太刀。

 

刹那の間を置いて鉄槌と剣はぶつかり合った。

 

驚くべきことに暴風の鉄槌は魔王の全力が込められた剣と数秒間とはいえ拮抗したが、やがて暴風の神力は太陽の剣に屈した。ものの見事に真っ二つに断ち切られ、解放された大気が颶風となって荒れ狂った。余波が木々を揺らしたがカンピオーネの魔術体勢の前には微風と同じだ。

 

(負けちゃったなァ…)

 

元々勝てるはずもない力比べだった、だが今はなんとも言えぬ爽快感が残っていた。溜まっていたものを思い切りぶつけ、そして正面から受け止められたからかもしれない。

 

(あー…なんか気が、遠く…)

 

満足感と爽快感を抱きながら目の前がどんどん暗くなっていく。そして今度こそ精魂尽き果てた恵那は意識を薄れさせながら静かに気を失ったのだった。

 

 

 

ちなみに。

最後に見せた暴風の破城鎚で全精力を使い果たし、直前の負傷も相まって倒れ込んだ恵那に焦った将悟が委員会に連絡するも携帯の電波が届かないことに遅れて気付き、施設へ大急ぎで取って返し固定電話を探し回ったのは完全な余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《赤坂将悟》

 

恵那との模擬戦が行われた同日の夜半、将悟の自宅にて―――。

 

己以外の家人がいないだけでやけに広く感じる自宅で将悟はパソコンと向き合っていた。脇に置いたメモに目を走らせながら、調子よくキーボードに打ち込んでは見直し、なにがしかの文書を作成しているようだった。

 

メモに書かれているのは昼間の模擬戦の経過。どうもカルナから奪った権能についてのレポートを纏めているようだ。やがてキーボードを打ち込むのをやめ、独り言を呟く。

 

「…予想はしていたが掌握は進まなかったな。流石に荷が勝ちすぎたか」

 

模擬戦で披露したのは既に何となく“できるだろう”と思っていた権能の使用法ばかりで、あわよくば更に深い部分まで掌握したかったのだがどうにもムシのいい期待は叶わなかった。

 

まあ権能の掌握というのは把握している部分の権能を用いてもどうにもならない状況で起こることが多い。“今のままではどうにもならない”から“どうにかしよう”と新たなステージに駆け上がるのだ。『電光石火』の攻撃形態『黒き雷霆』然り、『死せる従僕の檻』を応用した復活劇然り。

 

そんな状況、言うまでもなく神様相手との殺し合いくらいしかありえない。太刀の姫巫女と言えどもそれを望むのは酷すぎるだろう。

 

と、一人ぼんやりと考え込む将悟の背後からするすると影が忍び寄っていく。抜き足、差し足、忍び足。足音一つ立てない、それどころか空気の揺れさえ最小限に抑える手練れの隠行。

 

優秀なスキルを活用し、パソコンに向かう将悟の真後ろに立った。そして音もなく両手が手刀の形で将悟へと向けられ―――、

 

「だ~れだ?」

 

目隠し。

突然目の前が真っ暗になった状態の将悟だが慌てることなく口を開く。家族はいないが、今日のお礼に夕食に誘ったのが一人いるのだ。奮発して外食にしたのだがお嬢様らしい上品さをいかんなく発揮しつつもかなりの量を平らげ、満腹になって家まで付いてきた挙句ソファーでゴロゴロしていたはずなのだが…。

 

「…消去法で考えると該当者は一人なんだが? というかいきなりなんだ? 清秋院」

 

「えー、恋仲の二人がよくやる遊びだって雑誌に書いてあったよ」

 

だからいいよね? と邪気のない笑みで既成事実を成立させようとする恵那。どんな雑誌だ、と突っ込み、はぐらかす将悟。どちらも慣れたものだった。

 

「ちなみに冷たくあしらってきたら恥ずかしがってる証拠だからどんどん積極的にアタックすべしだって!」

 

「清秋院、賭けてもいいがその雑誌はいわゆる三流ゴシップ誌とかいう当てにならないデマ情報を山ほど乗せた紙くずだ。というか嫌よ嫌よも好きのうち、というのは大抵の場合ストーカーや性犯罪者がよく使ういい訳だからな?」

 

言うまでもなく将悟の知り合いにここまでゴーイングマイウェイな真似をしてくるのは一人しかいない、度胸的にも技術的にも。本来ならば神がかりの後遺症と模擬戦のダメージのダブルパンチで静養していなければならないはずの清秋院恵那だった。どんな手品を使ったのかやけに元気溌剌としている。

 

そりゃ野生の獣並みに隠行が上手い恵那がその無駄に優れたスキルを存分に活用すれば、元が一般人である将悟が気づけるはずがない。もとは気配だとか武術だと無縁に育ったパンピーなのだ。

 

恵那のペースに付き合っていては話がちっとも進まない。レポートを纏めている最中ではあったが将悟はしばらく彼女との雑談に付き合うことにした。

 

「そういえばそろそろ山に籠るんだったか?」

 

「あー、うん。あんまり俗世の気が溜まると神がかりが上手く使えなくなっちゃうから」

 

普段から五穀を断ち、己を苛め抜かなければたちまちスサノオの巫女たる資質が薄れてしまうのだとか。故に彼女はあまり長い間人里に下りていることが出来ないのだ。

 

特に今回は色々遊んだり美味しいもの食べたりしたから俗気が溜まるの早かったしねー、と恵那。

 

本来なら高校に通って友人と楽しい時間を過ごしているべき少女が身を置くには過酷すぎる環境。だが恵那は骨身に染みた苦労も血の滲むような努力もまるで無かったことのように見せることなく飄々と笑う。

 

「赤坂さんも何時か一緒に行こう、恵那しか知らない本物の秘湯があるんだよっ」

 

資質があり、それを育てる環境に生まれたというのが間違いなく一番大きな要因だ。媛巫女として神話の災害たる『まつろわぬ神』撃退を義務付けられているというのもあろう。

 

だが自惚れでなければ恵那が自らに一層苛烈な修行を課しているのは、少なからず己の存在が関わっているのだろう。恵那が向けてくる好意が本物であることは…というかそんな裏表のある真似ができる性格ではないのは分かりすぎるほど分かっている。

 

将悟はいままで己一人で十分だと判断した相手には恵那を敢えて伴わず戦場へ向かっていった。無用な危険に晒させないためである。そのくせ神殺しの業として一人では厳しいと感じた強敵には躊躇わず恵那を使った。

 

(我ながら業の深い…いや、とんでもないロクデナシだよなァ)

 

危険から遠ざけながら、己の都合で危険に晒す。ダブルスタンダードもいい所だ。己の矛盾を自覚していたからこそ一層恵那と顔を合わせづらかったのではないか。カルナの一件、確かに緊急性の高い問題だったが到着して時間を置く素振りすら見せずすぐに挑んだのはそうした心理も関係していなかったか?

 

自問する。

 

今回の恵那の暴走ともいえる感情の発露だが、己の持つ矛盾に目を向け恵那との関係を見直すキッカケにすべきではないか? 

 

自問する。

 

少なくとも本当に危険な局面で巻き込まないという選択肢を持たない以上、恵那の立ち位置を今の友人とも共闘者ともいえる曖昧なものから“命を預け合う仲間”へと改めるべきなのだ…。

 

「どうしたの? なにか悩みごと?」

 

下から上目遣いにのぞき込むように見つめてくる恵那。合わせる顔がなく思わず目を逸らしてしまう、それがますます疑念を呼んだのかジーっと強い視線を向けてくる。

 

「…いや」

 

清秋院恵那は将悟が思っているよりも強く、将悟は自分が思っているより未熟な魔王だった。成り上がってから一年の新米だから未熟なのは当たり前だが、ともに戦う仲間に対してはどうだっただろうか?

 

そろそろ巡り合わせが悪いという言い訳を止め、腹を決めるべきではないか?

 

神さまとの戦いは過酷と言う言葉では追いつかない。死ぬかもしれない、守りきれないかもしれない。それでも俺に付いてこい(・・・・・・・・・・・)―――きっとそう言葉に出して求めるべきなのだろう。

 

「これからもよろしく頼む。そう言いたかっただけだ」

 

今はこれで精一杯。

だが次こそは絶対に―――。

 

「変な王さまー。そんなの恵那ならこう返すに決まってるじゃん」

 

カラカラと快活に、しっとりと淑やかに。

相反する要素を渾然一体に溶け込ませて笑みを浮かべながら恵那は誓うように、当然のように告げる。

 

「幾久しく御傍に。例え御身の往く王道が血に濡れ、死で塗れていようと」

 

将悟は二人の距離を隔てる己の心の重石が一つ、崩れる音が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 




ヒロイン不在と言ったな。あれは嘘だ…

うん、甘粕さんと野郎二人で枯れた会話を書くつもりだったのに恵那を絡ませると筆が進むこと進むこと。書き出す前は予定しなかったヒロインの位置すら獲得しやがったでござる。ポルナレフさんの出動を要請するレベル。

本来なら恵那の登場はササッと済ませてアリスとの交渉に移り、過去語りへとシフトする予定だったんです。この話は『英国争乱 前編』だったはずなのに恵那に関する分量が増えまくり遂に幕間として一話ぶんどりました。約二万字ワロス

どうしてこうなった…書いてて一番思った感想はほんとコレです。正直思いつくままに筆を滑らせたので楽しかったけどなんか矛盾、キャラ崩壊が出てるかもと危惧しています。なにか発見したら感想の際に一言付け加えていただければ出来る限り修正したいと思います。

まだまだ後書きを連ねたい気もしますが既に蛇足な気もしますのでここらでシメます。

感想くださった方、お気に入り登録していただいた方にこの場を借りてお礼を申し上げます。
次回もよろしければ読んでやってください。

P.S.
仲間に対しては護堂さんよりダメダメなうちの王様ェ…。

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