FF逃走中   作:知恵の欠片

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 最後の突入、復活者は誰になるのか…。


購買のパンを手に入れよその2

 逃走者たちが集まるゲート前、突入わずか数秒前の出来事である。一同に年長者のアーロンから最後の確認をしていた。

 

「一つだけ確認がある。この作戦は誰が生き残るかは運だ。失敗したら自分の運がないと思え」

 

 これに皆が同意した。そしてノエルの掛け声とともに7人がガーデン内へ突入した。

 

「今よ、放って!!」

 

 シュウの掛け声とともに魔法を放つ学生たち。だが最初の関門の弾幕で慣れたのか、ラ級の攻撃をなんとか躱していく逃走者たち。

 

「先頭を狙え!」

 

 先頭集団のアーシュラ、ノエル、パンネロ、ホープに攻撃が集中する。

 

「きゃぁっ!」

 

 サンダラが足に命中し動けなくなったパンネロに攻撃が集中した。他の逃走者も崩れるパンネロに目をやったが、皆避けることに必死で彼女のことには手が回らない。だが唯一彼女を守った人物がいた。ガイだ。先頭集団から遅れた場所にいた彼はなんとか追いつき、彼女に降りしきる魔法の雨を身を挺して守った。

 

「このくらい…おれ、びくともしない」

 

 根性で耐えきったのだろう、だが限界だったのは見て取れた。

 

「私は大丈夫、だから…」

 

 パンネロが言いかけたその瞬間ファイラが彼を直撃。彼は優しい笑みを浮かべたまま静かに崩れ、姿を消した。

 

「立て!」

 

 うつむくパンネロにすでに彼女の前方に進んでいたアーロンが言った。あまりの口調の強さに一瞬驚くものの、彼女が今すべきことは悔やむことではなく前に進むことと諭されたのだ。よろよろと立ち上がり、満足に動かない足を引きずりつつ、魔法攻撃を転がりながらも彼女は避けた。

 

(あの人のためにも…何とか行かなきゃ…!)

 

必死の思いで何とか駐車場付近の先頭集団にパンネロたちが追いつくと、そこにいた刺客と逃走者たちがにらみ合っていた。刺客はバラムガーデンの風紀委員たちだった。リーダー格の男は駐車場へ向かう通路の中央に、その両腕となる人物が水上ボートの上でにらみを利かせていた。

 

「…ママ先生」

「サイファー…」

 

 かつて魔女だったイデアとその騎士だった風紀委員のリーダー格、サイファーが向かい合っていた。お互いの動きの様子をうかがうため両者に沈黙した。ホープがにじり寄ると風紀委員の女性がエアロを牽制に放ってくる。動きをお互いが牽制し合う中、沈黙を破ったのはイデアだった。

 

「手加減は無用です。ここを突破してみせましょう」

 

 イデアの宣言にサイファーも吹っ切れたようで、「わかった」と短く答えた。逃走者たちは覚悟を決め、突進を仕掛けた。

 

「一撃で決めてやらぁ!!行くぜ!」

 

サイファーがファイガを発動、ほぼ同じタイミングで両サイドの風紀委員もサンダラ、トルネドを放ってきた。大爆発が起き、火花が周囲を飛び散り、その黒煙をトルネドの風で吹き飛ばす。幕切れはあっけもなかった。

 

「跡形無消失」

「俺達が組めば無敵ってもんよ」

 

 逃走者は跡形も無く、また悲鳴を上げることなく撃退したため二人の風紀委員は胸を張った。一人を除いて。

 

「いーや、俺達の負けさ」

 

 サイファーはあきらめたように両手を挙げた。2人が驚き振り返ると食堂には2名の逃走者が向かっていた。彼らの魔法は全部イデア中心に放たれていた。イデアに直撃し、その近辺にいた人物にも被害を与えた。だが2人の内片方はイデアに直撃する前に前進し、爆風を受け加速、一気に包囲を抜け、もう一人はとっさにイデアから離れ伏せをとったため防御姿勢をとり、トルネドが黒煙を吹き飛ばすわずかな間に走り去っていったのだ。

 

 入り口には風紀委員に迎撃されたメンバーと、ゴゴ、クイナ、ゼル、クルルがいた。ゼルとクルルに関してはまだ伸びている。

 

「けったいなもんや、フェニックスの尾を使ても失神しとるって」

 

 ケット・シーは諦めて降参するように腕を開いた。他の者たちは回復したが、もうゲームは終わったため、お互いを労ったりしていた。その中パンネロはガイに申し訳なさそうに話していた。

 

「あの場面で私を助ける余裕なんてなかったはずなのに、どうして助けてくれたの?」

 

「おれ、つよい。おんな、まもる、だいじ」

 

 片言の口調だが、彼の意志がはっきりわかった。パンネロは「あなたってば優しいのね」と言い、握手をすると彼は少年のような図体に不釣合いの笑顔を見せた。

 

 イデアはイリーナと話していた。

 

「私たちはゲームに敗れ去りました。あの者たちを回復させてあげたいので魔法を使ってもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 許可をもらうと彼女は素早くアレイズの詠唱に入る。どんなに伸びている人でも完全回復できる優秀な魔法だ。天使の羽が舞い落ちてくるような神々しい光がゼルとクルルを包むと2人はゆっくりと目覚めた。

 

「さすが、本物の魔女は違いますね」

「元、ですわ。さぁ、あの子たちを祝福しましょう」

 

 イデアはホープに優しく言い、モニターへ注意を向けると、無事に残った2人は食堂にいた。2人が食堂の購買のおばさんに話しかけると約束のパンを受け取った。

 

「こいつはご褒美だよ、たんとお食べ」

「ありがとう」

 

 受け取るやいなや、真っ先にかぶりつく男、ノエルだ。

 

「ただのパンだが…確かにこいつはうまいな!」

 

 感動するノエルの後ろでやや冷ややかな視線を彼に送る少女、アーシュラだ。

 

「もう少し上品な食べ方を知らないのかしら…」

 

 小声でつぶやきながらちぎったパンを口に運ぶと、「あ、おいしい」と感嘆の声を上げた。とにもかくにも復活イベントは無事終了した。2人が3階へ移動しようとすると、逃走者たちが見送りに来た。真っ先に二人に声をかけたのはゼルだった。あのアレイズがなければ依然として伸びたままだったに違いない。

 

「悔しいけど、頑張ってくれ」

 

 ゼルはノエルとがっちり握手をした。アーシュラはゼルから握手を求められるがそっぽを向く。だがクルルが彼女の手をとりゼルと握手させた。

 

「っ、な、何をさせるんです!」

「意地張らなくてもいいじゃん、一緒に戦った仲間なんだし」

 

 クルルが笑顔で話しかけた。

 

「いや、いいですけど…」

 

 申し訳程度にちらっとゼルの方を見ては目をそらすアーシュラに対し、隣にいたノエルが皆を納得させる一言を放った。

 

「しょうがないさ、思春期ってのはそんなもんだ」

「そんなことはありません!」

 

 彼の一言でムキになって返したアーシュラだった。

 

「あんがとよ、楽しかったぜ」

 

 ゼルは気にしてないかのように、にかっと笑って彼女に語り掛けた。彼女は無言で顔をそらしたが、割とまんざらでもない表情だった。彼らはほかの逃走者からも祝福、激励(とわずかばかりからかい)の声をかけられ、エレベーターで3階へと向かった。

 

「私たちができなかったこと…彼らならきっとやり遂げてくれます…」

「ああ、きっとな」

 

 アーロンはイデアの呟きに同意した。。彼はこのゲームに参加しながらも終始一歩引いて若者を助けていた。もちろん彼の友人に対しては最後まで残ることができなかったため申し訳ない気持ちこそあったが、こういう役割が彼自身ここに存在する理由なのだと考えていた。

 

(死人に口無し…か…。悪いなジェクト、俺には目立つような活躍はできないさ…)

 

 彼はその後何もなかったかのように口を噤む。男はやはり背中で語るという言葉が彼にとってこそふさわしい。

 

「なんとか仲直りできてよかったですね」

「そうそう、最初はどうしようかと思った」

 

 ゼルに話しかけるホープとクルル。ゼルは自信たっぷりにこう言った。

 

「そりゃ俺がお兄さんだからな、年齢的に!」

 

 他のメンバーからどの口がそれを言うのかと突っ込まれるが、もう2人の間にわだかまりはないことは証明できた。

 

一方3階にたどり着いた2人は拍手で迎えられた。

 

「よし、これで全員揃ったな、じゃあ学園長、あれを頼む!」

 

 ラグナに促されシドは巨大なクリスタルを用意した。

 

「これはワープクリスタル…、別世界からいただいたものですが、これに触れることであなたたちはラグナロクの中へと移動することができます。それでは順番にどうぞ」

 

 シドが言うと次々に逃走者たちが触れて移動していった。全員が移動すると、ラグナロク内にはラグナ、そしてパネル越しにルーファウスが待っていた。

 

「やぁ、みんなご苦労さん、これで全員かな」

 

 ラグナが逃走者たちを労った。メールの文面でもそうだったが、大統領の割に口調がやたらフランクな感じがする。だがすでに王族の人間であったとしても性格が濃い人が多かったため誰も何も思わなかったようだ。

 

「じゃ、社長がお待ちかねだ」

 

 ラグナの掛け声のもと、ルーファウスが話し始めた。

 

「逃走者諸君、よくぞ前半のバラムガーデンで逃げ切ってくれた。次なる舞台…それは『ジドール』という街だ――」

 

 この街は上流階級の人間が多く暮らしている場所らしい。街には大きな建築物が並び、また北側には大豪邸の家もある。

 

「また君たちの逃走範囲はこれだけだと少ないのでワープクリスタルを介し、オペラ劇場にも逃げ込むことができる――」

 

 ワープクリスタルの隣に反対側の様子が見えるモニターも設置されてある。ただし触れて反対側に移動した後10秒間、その人物は逆方向へ移動できない仕組みになっている。ハンターに追いつめられた時ワープのみで逃げられないようにするためだ。最後に自首電話だが、今回は1つに限られ、チョコボ屋に設置されることになった。この2つの逃走エリアのちょうど中間地点にあるのだ。

 

 一通り説明が終わり、逃走者たちは会話をしたり休憩したりと別々の行動をとっていた。

 

「ねぇ、色男、あそこって…」

「ああ、私たちの知っている場所だ」

 

 リルムとエドガーが話していた。

 

「まぁとりあえずなるようになるしかないさ」

「さっきのトサカ頭もそうだったんだけど、同じ世界の人が何らかの形で出番があるみたいね」

「そう言われるとそうかもしれんな…」

 

 自身の仲間の顔を思い浮かべると少しだけ憂鬱になる。味方にいればとても心強いが、その分的に回れば脅威だからだ。

 

 一方復活組はそれぞれ会話をしていた。ノエルはユフィと保健室以来の再会を果たしていた。

 

「そういえばあんたずっと隠れてただけだったのによくあのミッションから助かったな」

「そりゃユフィさんの足ならハンターからも逃げられるからね、なんとか隙を見てエレベーターに駆け込んだのさ。いやー、ぎりぎりだったよ」

 

 彼女は自分の自慢話に花が咲いているようだ。その近くではアーシュラとリディアが対面していた。

 

「リディアさんも参加されていたのですね、挨拶もできずすみません」

 

 アーシュラが恭しく頭を下げるがリディアは口を開けて固まった。

 

「あの…どこかでお会いしましたか…?」

 

 彼女の一言にアーシュラは驚いたように目を見開いた。それも一瞬のことですぐに自己紹介を行った

 

「ファブール国王ヤンの娘にございます」

「ヤンの娘…?まだシーラさんの出産は…」

 

 そこまで話して二人は気付いた、時間の流れが異なっていたことに。ただ二人はそのギャップを埋めるかのように会話が弾んでいった。中でも特に二人の話題が共通したのは、リヴァイアサンに襲われた時、傍にいて助けたのがヤンであったという点である。奇妙な縁もあるもんだと二人は打ち解け、お互いの健闘を誓った。

 

 数十分後、移動し終わったラグナロクが着陸態勢に入ると、美しく立派な建物の数々が目に入った。

 

「やはり私の時代の建物とは違う、真新しい感じだ」

「私の世界とも違います、こうして旅をするのも悪くないですね」

 

 同じ白魔法の使い手であるミンウとエリアが美しい街をバックに会話をしていた。世界は違うもの同士だったが、なぜかこの二人は飛空艇の乗ってから会話のウマがあった。

 

「なんでも、あなたも私と同じように道中で命を落としたと聞きます」

「ああ、仲間を信じ、すべてを託す形でな…まさかあなたも?」

「ええ、なんだか私たち似たもの同士ですね。…このゲームが終われば離れ離れになってしまうのでしょうか…」

「…それは…」

 

 ミンウが答えを出せずにいるとエリアは笑ってみせた。

 

「ふふっ、なんでもないです。このまま頑張りましょう」

 

 わずか十数分のやり取りだったが、似た境遇の者同士は惹かれあうようだ。

 

 別室では先ほどの空気を吹き飛ばすような舌戦が繰り広げられていた。

 

「宇宙は男のロマンだからな」

「へっ、海の上だって退屈はしないさ」

 

 シドとファリス、こちらはこちらで議論が白熱していた。お互いが一歩も譲ることなくそれぞれのこだわりを主張し合っていた。

 

「お二方、間をとって空はいかがでしょう?」

 

 二人の間を割ってラーサーが入ってきた。二人の様子を見かねて仲裁しに来たようだ。

 

「「空は生憎飛空艇があるからいいや」」

 

 二人が口をそろえて言うのでラーサーは苦笑いする。どうやらその必要もなかったのだと彼は気付いた。そんなときちょうど今までなかった揺れが起こるやいなや、コックピットにいたラグナから艦内への連絡が入った。

 

「着陸完了だ、逃走者諸君、気をつけて行ってくれたまえ!」

 

 逃走第二幕が始まろうとしていた…。

 




 アーシュラは一人っ子だが、ヤンから稽古を長い間あまりつけてもらえず、また甘える相手もいなかった。セオドアという一つ年下の弟分もいたが、兄のように頼れる人はいなかった。僧兵はいたでしょうが、さすがに王の娘に近づくような輩は確実に折檻されてしまいますからね。このような私なりの思春期の反応の見解のため、彼女はツンデレキャラで落ち着きました。めでたしめでたし。
 最後に風神雷神も名前を出すタイミングを逸してしまいました。残念。
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