ミッションが無事終了し、ノエルはリディアと別れることにした。ジドールで2体のハンターに加えラーサーを捕らえたハンターを考えるとオペラ劇場には一人のハンターもいない計算となる。その計算通りであれば、ここは現在安全地帯だ。
「お互い無事に逃げ切ろう」
「あなたもね」
一応誤解は解けたのだろうか、リディアも返事はして、お互い別々の方向に向かっていった。
ジドールの街にいたのはファリスとアーシュラのみだった。リルムと別れてから誰とも会っていない二人は他のメンバーがどんな状況か知るすべがなかった。
「ちっ、あの時エドガーかリルムにこいつの使い方聞いときゃよかったぜ…」
ファリスは携帯電話を恨めしそうに見つめた。
「メールは入ってくるだけですから、私たちも何とか通話できるようにならないと…いろいろいじってみましょうか」
ここの2人は一度逃走中そっちのけで、お互い慣れない手つきで携帯電話をいじり始めた。
シドはオペラのスイッチを操作する場所に来ていた。
「ミンウの野郎…ここに何しに来たんだか…」
彼に対し憤りを覚えずにはいられないシドだった。彼とは最初のバラムガーデン脱出の際にはチームを組んだものの、仲間のために命をかけてミッションに挑んできたラーサーと色惚け青年とではどうしても比較せざるを得ないからだ。
「ラーサー…、お前の想い、全部俺が引き受けてやるぜ」
シドは熱い思いは約30分の時間を耐えることができるのだろか。
一方ミンウ達は場所を少し移動し、ステージから見て右手場所にいた。ここの位置のほうが入り口の監視をしやすく、その奥の屋根裏も道が入り組んでいてそれなりに逃げる時間も稼げると踏んだのだ。
「くしゅっ…」
「大丈夫ですか?」
いきなりくしゃみしたミンウをエリアが気遣う。
「何でもない、誰かに何かを言われたような気がしただけだ」
「それだけならいいのですが…」
きっと気のせいだろうと願うミンウ。彼らはそのまま何もせず客席にじっと留まり、ハンターの警戒に当たっていた。
一方ラーサーは確保されて飛空艇に護送されていた。
「あっ、ラーサーだ!」
牢獄にたどり着くと真っ先に声をかけたのはパンネロだった。
「素晴らしい活躍でした」
「すごい、おまえ、ほんとうに」
「素質があるな」
「次このゲームに参加するとしたらお前のものまねをしてみよう」
「ほんとすっげーぜ!」
彼女の一言に皆が彼に称賛の拍手を送った。
「とんでもない…僕は結局捕まってしまったんです。褒められるようなことではないですよ」
恥ずかしそうな笑みを浮かべてラーサーは謙遜する。
「やっぱ王子様ってのはこういう人のことを指すんだよねー?」
「なぜ私に言うのだ…」
ユフィの発言でイデアを除く女性陣から冷たい視線が注がれるエドガー。どうやらまだ彼は年頃の乙女たちには許されてはいないらしい。だがそのラーサーは彼を援護する。
「エドガーさんの行動は素敵ですよ、僕も見習いたいものです」
「ふっ…君もなかなか見どころがあるな、私が直々に…」
「「「ラーサーはラーサーのままでいいの!」」」
「…はい」
年頃の乙女たちのエドガー批判にエドガーは落ち込みラーサーは苦笑した。
「ここにはいろんな方々が揃っていますから、僕はたくさん学べます。そして、まだ頑張っている方たちからも…皆さんに感謝です」
(なるほど…、道理でアタシは捕まるわけだよ…)
ラーサーは心の底からそう思っていたようだ。チームで支え合い生き残っていく、本当に優等生なんだなとユフィはつくづくそう感じた。
場所は戻ってオペラ劇場へ、シドのもとに電話が入る。ファリスからだ。
「よう、シド。今どこにいる?」
「俺ぁオペラ劇場の中さ」
「ハンターのことはわかるか?」
「いや~、まだこっちに来てから女優のミッションの時のハンターしか見てねえなぁ」
「そっか、サンキューな」
ファリスは通話を切った。彼女らはなんとかこの機械を操作することができるようになった。
「どうでした?」
「う~ん、やっぱりこっち側にハンターが集まっているのかな…」
先ほどファリスが機械いじりをしている間上のほうに登っていたアーシュラがこの街で2人ほどハンターを確認したらしい。それをもとにシドの話を考慮した結果ハンターがジドールに集中しているという結論に落ち着いた。
「でもそのハンターはワープクリスタルの近くにいました」
「もしかすると向こうに一気になだれ込むかもしれんな。そうなったら俺達としちゃ好都合なんだがなぁ」
「それを考慮して私たちも移動した方がいいですね」
「街の北側…、だな」
彼女たちは隙を見て移動する算段らしい。
リディアはステージにいた。
「ここであのマリアさんがオペラをしているのね…」
自分が女優になったつもりで舞ってみるリディア。様々な観客が見る中で演技をする。それは彼女の想像の範疇を超えていた。だけど間違いなくわかるのは、演技を通して心を伝えることではないかと彼女は思う。そう想像しただけで彼女はわくわくしてくる。と、同時に今は逃走しなければならないことを思い出す。
「あっ、こんなところにいたらどこにいても見られちゃうわね。誰も見てないかしら…」
彼女は不安になり辺りを見回したが、特に人が見ていた様子ではなかった。
「…ふぅ、よかった」
彼女は何事もなかったかのように舞台袖へと向かった。だがその彼女を見つめる2つの視線があった。
「リディアさん、楽しそうでしたね」
エリアが呟いた。客席にいたミンウたちからはリディアの姿がばっちり確認できたのだ。
「ハンターがいない今だからできることだな…だが私たちは油断しない。そして最後まで一緒だ、いいな」
「はい」
二人は最後まで戦い抜く決意をした。
ノエルは階段を上って台本置き場に通じる部屋の手前に来ていた。壁越しにホールを覗き見る。ここからであれば入り口に誰が通るか一目瞭然であるうえ見つかりにくい。そして彼はハンターを目撃した。
「お、来たか…さて、どうでる?」
ハンターは左手に回り、ステージの方の扉を開けた。最悪裏手に回り込まれてしまうかもしれない。
「ひとまず様子見だ…」
息をひそめ彼は移動するチャンスを覗う。
「あれ、あなたここにいたのね」
背後からの声に振り向くとリディアがいた。
「ああ、実はハンターがステージのほうに向かっていてな。隙を狙って街に戻ろうかと思う。だが俺らが来るときに向こうのクリスタルの近くに2体ハンターがいただろ?移動中に向こうから来られたら困るからな」
「そっか、じゃあ前後に気をつけながら進まないとね」
結局二人で活動することになった彼らは慎重に前へと進んだ。
シドはまだスイッチの部屋に隠れていた。
「それにしてもこのスイッチ見てるとやっぱりいじりたくなるよなぁ」
なぜスイッチがあるといじりたいのだろうか、やはり答えはそこにスイッチがあったからではないだろか。彼はその答えが出る前にもうスイッチを押していた。彼が押したのは左から2番目のスイッチであった。
「照明が!?」
突如照明が消えたことに驚くミンウとエリア。薄暗いステージ、観客席がさらに暗くなったのだ。
「おっと、やべえやべえ」
シドは慌ててスイッチを元に戻した。照明が再び点灯し、明るくなる。
「一体何だったんだ…」
「さぁ…」
唖然とする観客席の二人。だが今の操作で気付いてしまった人がいた。ハンターだ。彼は静かにステージから舞台袖へ向かう。どうやらそのままゆっくりシドのいる場所に向かっているようだ。だがその通り道にはノエルたちがいた場所も含まれている。だが彼らはすでに移動を終えていて、ワープクリスタルの手前にいた。
「この先は大丈夫そうだな」
ワープクリスタルの脇のモニターを確認し、転移先が安全であることを確認したノエルはリディアとともにジドールへ移動した。彼らが無事移動を終えたためハンターはそのまま客席の方へと向かった。
「…!?」
ミンウはハンターの姿を捉えた。だがハンターの向かう先は自分たちとは反対方向である。
「さっき照明をいじった人の所に向かっているのかしら…」
エリアが推測する。ただ次の瞬間ステージの上で何とも間抜けな悲鳴が響いた。シドがうつ伏せになって倒れていたのだ。
「ってー!!どんな仕掛けなんだ…ったく…」
頭を掻きながら痛がるシド。だがその様子を見てか、ハンターは素早く舞台装置の部屋へと走っていった。
「シド、逃げろ!」
ミンウは咄嗟に叫んだ。彼はハンターに見つかるかもしれないというリスクもよぎった。エリアとももちろん逃げ切りたい。だがためらわなかった。バラムでの思いが彼をそうさせたのだろか。
「あ…!?わかった!」
シドが走り始めると、動物の鳴き声が響き渡る。どうやらハンターもスイッチの操作になれていないようだ。それから数秒ほどすると彼が出てきた穴からハンターが滑り出てきた。ステージ下の出口にいたシド目がけて突っ込んでいく。彼はドアを開け、閉めると同時に左に曲がる。舞台袖の方向だ。ハンターは一瞬彼の姿を見失ったが、階段を駆け上って舞台袖へと行く彼の姿を見て追撃を開始した。だが彼の体力も限界だった。彼は台本の部屋をどうにかして潜り抜け舞台袖の荷物の中に身を隠す。
(頼むぜぇ、このまま気付かずどこか行ってくれ…)
彼は必死に祈る。少しばかり遅れてハンターが部屋にたどり着き部屋を調べていく。静寂が痛いほど彼にのしかかる。だがハンターはこの部屋にいないとみたか、そのまま舞台の方へと去っていった。
「ふぅーーっ!終わったかと思ったぜ…それにしてもミンウの野郎…あいつに貸しを作ってしまうったぁ俺もまだまだ情けねえぜ…」
極度の緊張感から解放された彼は足をもみほぐしながら大きく息を吐いた。彼の酷使し続けた足はしばし休息が必要なようだ。その一方でミンウがいなかったらどうなっていたことかと悔しさも感じているようだ。
一方指令室では次のミッションが用意されていた。
「ここまでくると残りの逃走者たちも本当の実力者が揃っていますね。おかげで全然捕まりません」
イリーナが呟く。
「そうだ、残り時間が20分と少しあるのに逃走者が7人も残っているからな」
だがそう言うルーファウスはすごく愉快そうな表情をしている。
「よく言いますよ…こんなミッション、本当はたった7人しか逃走者がいないようなものじゃないですか…」
「さぁ、このゲームのフィナーレを飾るのにふさわしいこのラストミッション、耐えぬいて見せよ!!」
彼はミッションを発動する。次回その恐怖のミッションが明らかになる!残り時間20分、賞金は120万ギル!
次回はミッション関連でFF6の世界の住人が一気に登場します。(と言っても一部です)最終ミッションを経て生き残るのは誰か!?