FF逃走中   作:知恵の欠片

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 最後のミッション発動。前の話でルーファウスの不敵な笑みはこのミッションの恐ろしさを物語っていたのだ。その中身とは…!


アウザー邸に潜り込め

(ドドドドドド……)

 

 小気味よい低音が空に響く。2機の飛空艇にはそれぞれ一人ずつ操縦士がいた。片方は銀髪の傷だらけの男で、片方は金髪の長髪の女である。プロペラの音が鳴り響く中、両者はトランシーバーで会話をしていた。

 

「まさかこんなところでお前と再びこの空を飛ぶとはな…」

「なんだい、不満なのかい?」

「俺たちのこの仕事はスピード勝負じゃないからな」

「はっ、この仕事であろうと、勝負であろうと、あんたはただ私の尻だけ見てればいいのさ」

「何を!?こんどこそぶっちぎってやる!」

 

 二人はかつて競えなかった勝負をこのゲームが終わり次第果たそうとしているようだ。

 

 アウザーの屋敷の中でも3人の男女が話し合っていた。男は1人、女は2人である。男はバンダナをし、女の片方は青髪でもう片方は金髪だった。どちらの女性も男より若く見える。後半戦開始直後はリディアを驚かせたハンターの服装をした人物たちである。

 

「不思議なことってあるんだな」

「そうね」

 

 神妙そうに話す青年の脇に立っている少女は笑顔で返した。

 

「まさか俺がこの仕事を受けた時に、俺の手伝いをしたいっていう女の子がいると聞いて、誰かと思えばお前とは…」

「いいじゃない。あの時あなたの手伝いをできなかったんだもの、ここでくらいやらせてよ。それにあの人もいいって言っているんでしょう?」

 

 青髪の少女があっけらかんとして金髪の女性の方を見て言う。

 

「あぁ…、とにかく俺達の仕事を頑張ろう、いいな」

 

 彼がそう伝えると彼女はもちろんと短く返事をした。

 

 

 

Rrrrr!Rrrrr!残り20分になり逃走者にメールが入った。

 

「これよりミッション『大空の支配者』と『アラームを解除せよ』を同時に行う。『大空の支配者』についてはこれよりジドール上空に『ファルコン』と『ブラックジャック』という2機の飛空艇が逃走者の位置情報をハンターに逐一連絡を入れる。また『発信機を解除せよ』は逃走者が身に着けているバングルが徐々にアラーム音を発生させ近くのハンターをおびき寄せる。どちらの解除もジドールの街のアウザーの屋敷の中の装置を停止させなくてはいけない。両ミッションは、一つの装置を停止させることで終わらせることができる。アウザーの屋敷の中にいる間、アラームは停止するが、屋敷の絵画が並ぶ部屋から奥は、今活動しているハンターとは別に3体のハンターが活動する。なおミッションをクリアするとハンターから100メートル以上離れた場所に自動的に転移される…。またミッション終了後は再度アウザーの屋敷に入ることはできない。説明が長いですね…」

 

 メールを読み上げていくうちにエリアは気が遠くなるような思いになった。読むのも大変なのだが、実際にこれをやるとなるともっと大変に違いない。

 

「おいおい、これはやべえんじゃねえのか、二つのミッションを同時になんてありえないぜ…」

 

 舞台袖に隠れていたシドは両手を上げて降参するようなポーズを取った。実際彼の足はもう悲鳴を上げている状態だ。しかしミッションを諦めれば捕まるリスクは高まる。何より彼は逃げるのが嫌いだ。なんだかんだ言って足を引きずってでも参加するに違いない。

 

「アウザーの屋敷…ここから北にある場所ですね」

 

 大きな屋敷に隠れていたアーシュラが地図を広げて確認する。

 

「そこに行ってミッションをさっさとしないといけないわけだが…」

 

 ファリスが空を見上げると先ほどはいなかったはずの飛空艇が2隻も居座っている。そこから人力で監視しているようだが、こちらからではどこを見ているか把握できない。行動が把握できないまま動くのはとても危険だ。

 

 ノエルたちはジドールの街に来ていた。メールを確認すると二人は素早くアクセサリー屋の屋根の影に入る。彼はハンターが近くにいないことを確認すると、一緒に行動していたリディアに話しかける。

 

「あんた、自首はしなくていいのか?」

「本当はお金欲しいから今すぐにでも自首をしたいわ。だけど私を守るためだけに犠牲になった人がいる…、そんな中で自分だけ助かることなんてできないわ」

「そっか…あんたが守られる理由がなんとなくわかるような気がする」

 

 と、二人で会話をしていると何か音を感知した。

 

「これは…ミッションのブザーかしら…」

 

 彼らの肩につけている装置からうっすらと音が出ている。

 

「これが大きくなったら隠れるどころじゃないな、この建物の壁を伝いながら、宿屋に向かうぞ!そして地下を通ってアウザーの屋敷に潜り込むぞ」

 

 彼の指示に彼女は頷き慎重に動き始めた。二人はミッションに参加するようだ。

 

 ミンウとエリアは屋根裏にいた。

 

「弱ったな…さっきより音がはっきり聞こえる…」

「それに、この場所、音を反響しているような感じがするんです…」

 

 彼女の言う通りオペラを鑑賞する場所であるためわずかな音でも簡単に響いてしまう。

 

「さっきハンターがステージを降りて行かなかったら、きっとこの音でばれていたに違いないな…」

 

 彼は考えただけでぞっとした。

 

「ねぇ、今からでもミッション参加しませんか?」

 

 彼女は訴える。

 

「確かにこのまま待っているだけでは動かずに捕まるのを待つようなことだ。だが、いいのか?」

「ええ、私が得たいものはお金じゃありませんから。ミンウさんだってそうでしょう、シドさんを助けようとして叫んだのは私と同じような理由があるはずです」

 

 彼女の笑顔に押されてか、彼も納得したようだ。かつて仲間を救うため命を懸けたあの時の自分が蘇ってくるようだった。

 

「なら善は急げだ、行くぞ」

 

 彼らが客席の方へと向かう。その先には無情にもハンターがいた。客席と客席を隔てる壁があり彼らは知らず知らずのうちにハンターに接近する、ミンウが向こう側を除いた瞬間に目が合った。「戻れ」と短くミンウが言い素早く反転するが、ハンターにそのまま見つかってしまった。悲鳴を上げる間もなく、ハンターの足にかなわずそのまま2人とも御用となった。

 

「すまない、エリア。私がミッションに参加すると決定しなければ…」

 

 申し訳なさそうにうなだれるミンウを見てエリアはそうじゃないと彼に優しく言った。

 

「ミッションに初めて私とあなたで参加したようなものです。あなたと一緒にできただけで私は満足ですわ…」

 

 薄暗い中ではあるが、彼女の瞳は潤んでいて、顔もいくらばかりか紅潮していた。

 

 (ごくり…)

 

彼女は静かに目を閉じる。彼は唾を呑んだ。そして二人の顔が少しずつ狭まる。

 

「こほん…、あなたたちを護送しに来たのですが、よろしいですか?」

 

 捕獲者を連れに来たイリーナがあまりの甘酸っぱい光景に耐え切れず話を切り出した。

 

「「!!?!?」」

 

二人は突然の登場に驚いて慌てふためく。

 

「こんなところは本番に使えませんね…」

 

 イリーナは嘆息して二人を魔法で送り飛ばした。

 

 Rrrrr!Rrrrr!メールだ。

 

「逃走者のミンウ、並びにエリア確保。残る逃走者は5名…けっ、しくじりやがって…」

 

 シドは彼らの確保情報を見て悪態を吐いた。シドにとって彼の行動はあまり好感を持ってはいなかったが、それでも彼がリスクを冒してでも自分を助けてくれたこともあって複雑な思いを感じていた。その彼は今オペラ劇場の入り口に立っていた。行き先はもちろんアウザーの屋敷である。スタッフが「足は限界なのでは?」という趣旨の質問をする。

 

「そりゃもう限界さ。だけど黙って捕まるってのは俺の性に合わねぇ。俺の生き様見せてやるよ」

 

 彼はカメラを背にし、ふらつく足を何とか動かし、片手を上げながらワープしていった。彼の行動は簡単に予想できた。だが、満身創痍の体でこなせるほど甘いミッションではない。

 

 上空にいた傷だらけの男――セッツァー――と金色の長髪の女性――ダリル――はそれぞれ飛空艇から街の監視に当たっていた。

 

「そっちに誰かいるか?」

「みんなビビって出てこれないようだな…っと女っ子2人発見、競売場から北方向に移動しているな。位置情報を送るぜ」

 

 彼女は情報をハンターに送ると彼女たちに最も近いハンターが動き出す。武器屋のそばにいたハンターは北方向へ全力で駆けだす。ファリス達は気づいてはいなかったが、もともと飛空艇の監視下にある以上ハンターに見つかるリスクを考慮してすでに全力でアウザーの屋敷に駆け込んでいた。二人は中に入り、アーシュラがドアを閉めようとすると、ハンターが後方に迫っていることに気付く。

 

「来てます、走って!」

「わかった!」

 

 二人は正面突き当りの階段を上る。ちょうどその時ハンターも家の中に侵入、ドアが勢いよく閉まる音が響き、彼女らに戦慄が走る。彼女らは足音を立てないように小走りで、絵画のかかっている部屋を慎重に探索する。すると部屋の一番奥の絵画をかけるスペースがドアに変わっていた。だが彼女たちに選択の余地はなかった。背後に迫るハンターから逃れるためドアに意を決して入る。入ると階段がありすかさず駆け下りる。だが後ろからハンターが追ってくる気配はない。

 

「…追ってこないな」

「ええ、ですが、ここから先だけでハンターが3人いるわけですから…覚悟しましょう」

 

 二人が階段を下り、その先の角を曲がる。

 

「ここも絵が飾られているんですね」

「そうだな…」

 

 二人が絵を見ると、突然後ろに飾られていた額が落下、中からハンターと思われる女性が出てきた。

 

「「っ!?」」

 

 二人は大慌てで次の部屋のドアへ向かう。ドアは二つ。選択は二つに一つだ。ファリスは左、アーシュラは右のドアを開けた。

 

「行き止まり!?」

 

アーシュラが進んだ先は奥行きが5mほどしかなく細長い道だった。天井は比較的高いくらいの部屋だ。狭いが絵画はいくらか飾れるだろう。そんな思考が一瞬頭をよぎる。とはいえハンターはもう後方に来ているはず。そんな暇はないと思いつつ、後ろを見やるが、ハンターは意外と遅かった。思ったほど距離は詰まっていないが、隣のドアを開けている暇はなさそうだった。彼女は覚悟を決めると行き止まりの部屋の奥に入る。ハンターは追い込んだとばかり突っ込んでくる。

 

(今だ!!)

 

 アーシュラは左に跳躍し、壁蹴りの要領でジグザグに飛び、あっという間にハンターの頭上を飛び越える。ハンターもとっさに反応するが、彼女には一歩届かない。彼女はドアのところまで一気に移動、ハンターも戻ってきていたその時だ。

 

(バン!!)

 

 アーシュラはついドアを閉めるため、強烈な蹴りを一発ドアに入れる。あまりに強烈な一撃だったため、ドアはものの見事に蹴破られた。ただそのドアが吹っ飛ぶ方向にちょうどハンターがおり、そのドアに巻き込まれた。

 

「……、あっ…」

 

 アーシュラがはっとしてゆっくりハンターをのぞき込む。

 

「……ロック~…私…ダメだったよ~…」

 

 目を回しながら倒れる青髪のハンター――レイチェル――がドアの下敷きになって伸びていた。

 

 この状況を見ていた指令室では彼女の処遇を考えていた。

 

「ハンターへの攻撃行動は反則行為だったはずです、彼女を失格処分にすべきかと」

「ふむ、そうだな…」

 

 イリーナの提案に返答するルーファウス。

 

「だがやられたハンターは幸いにもあの3人の中で最遅である。残った手練れの逃走者たちを追いつめるには少しばかり役不足だ…、彼女を含め他の逃走者に警告しつつ、次同様の行為があれば即失格としたい」

「だいぶ甘い判定ですね」

 

 彼女は不服そうに答えた。彼は一度ワイングラスを口に流し込んでから言った。

 

「そうでもない、あの追いつめられた中華麗な逃走を見せてくれた彼女を反則と言う形で終わらせるのは少々無粋に感じたからさ」

「そうであるなら私は社長の判断に従うだけです、メールを今すぐ転送します」

 

 彼女は逃走者全員に警告文を通知した。

 

Rrrrr!Rrrrr!メールだ。

 

「逃走者に警告。ハンターへの攻撃は本来認められていない。たとえ不慮の事故であったとしても以後失格措置をとる。か…、やっぱりあいつのあれはダメだったんだな」

 

 牢獄として機能している飛空艇にいたゼルがメールを読み上げていた。捕まった逃走者たちはモニターに集まって各視点から逃走者たちの動向を見ていたのだった。

 

「何々、アーシュラが気になるの?」

 

 隣にいたクルルが彼に話しかけた。心なしかにやけているようだったが彼は何気なく答えた。

 

「そりゃあ俺が認めた相手だからな。あいつとはいずれ決着をつけなくてはいけないと思うんだ」

 

 それを聞いた彼女はきょとんとした。

 

「へ…、アーシュラが気になるってそっち…?」

「それ以外に何があるんだ?」

「はは…、いいです…」

 

 クルルは頭を押さえて嘆息する。彼女はどうやらアーシュラがゼルに片思いをしていると思い込んでいるようだった。

 

「残り15分…頑張れよ、アーシュラ…」

 

 そんなことを気にせず彼はアーシュラの活躍を祈っていた。彼の声援は彼女に届くのだろうか…。現在の賞金は126万ギルまで膨れ上がっていた。

 




FF6の時点ですでに故人だった二人に登場してもらいました。ダリルは必ず通るイベント、レイチェルはサブイベであるにも関わらずどちらともFF6を語るには欠かせないイベントだったと思います。残念ながらレイチェルの方はハンターのため会話させた部分はわずかしかありませんが、カメラの回っていないところでもっとロックとしゃべってセリスが嫉妬してるとか、セッツァー、ダリルのゲーム後の戦いとかエピローグで書けたらいいなと思います。
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