FF逃走中   作:知恵の欠片

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 ミッション発動前まで7人いたはずが、あっという間に2人になってしまった。このミッションさえクリアすれば144万ギルはもう目の前と言っても同然の状態である。


復活したもの達の意地

 指令室にいるルーファウスとイリーナは残った逃走者の話をしていた。ノエル、並びにアーシュラは奇しくも復活イベントを経てきた二人だ。

 

「ところで君はどっちが生き残ると思うかい?」

 

 社長の問いかけにイリーナは戸惑った。ゲームの進行に気を取られていて、この後の段取りを考えなければならず気を取られていたのだ。彼女は答えられずにいると社長は楽しそうに自論を語った。

 

「私はアーシュラだと思う。二人とも確かに足が速い。だが前半戦は不運にもそれを活かしきることができず捕まってしまった。後半戦は彼らが運よくハンターを躱しているとはいえ、見つかったとしてもどこに隠れ、どこに逃げ込めばいいかわかっているような気がする。だが、特にアーシュラは場の状況に応じて予想もしないような動きでハンターを翻弄している。咄嗟の事態に咄嗟にどう動くかが生き残りに大きく影響を与えるわけだ」

 

 イリーナは状況を見守りながら、彼の話を聞いていた。彼は話を続けた。

 

「もちろん結果は誰にもわからない。だがその予想を立てるのもなかなかの一興なのだよ」

「はぁ…」

 

 イリーナは生返事をした。彼女には今なぜ彼がそんな話をしているのかが理解できなかった。

 

「わかってなさそうだな…、まぁいい。この勝負の決着が付いたら話をしよう」

 

 彼らは再びモニターを食い入るように見つめたのだった。

 

 牢獄は人数が相当増えて賑やかになっていた。彼らの中でも今の話題はアーシュラとノエルでもちきりだった。二人はいわば敗者復活組。牢獄にいた者にとっては共に戦った仲間であり、このゲームの最後の希望の星なのだ。エリアは前半戦のノエルとのやり取りを思い出していた。自身とイデアを守るため犠牲となった彼ではあるが、持ち前の身体能力を発揮し、復活ゲームを勝ち取った。きっと彼ならばこのミッションを突破し乗り越えられると信じていた。

 

「ノエルはきっと乗り越えられるわ」

 

 隣にいたイデアがエリアの考えていることを察し、話しかけてきた。彼女は短く「ええ」とだけ答えた。残り時間が9分をすでに切っていた今では、あれだけやかましかった牢獄もしんと静まり返り、今まだ逃げ続ける逃走者たちの成功を祈っていたのだった。

 

 その残ったうちの一人であるノエルは絵画の間に現れたドアを通って階段を下りていた最中だった。この先には同じく復活組であるアーシュラがいるのは間違いない。彼女に任せてもいいのかもしれないが、その場合万一彼女が失敗するとミッションの影響で自分も助からないだろう。彼はあたりを注意深く警戒しながら、ハンターがいないと確認すると素早い走りで移動していく。彼は道中蹴破られたドアを見かけるが、考えている暇はなかったのかそのまま過ぎ去っていった。

 

 一方もう一人の逃走者、アーシュラはこの屋敷の最深部へと来ていた。ドアを開けると薄暗い部屋の中に壁しか見えなかったが、そろりそろりと近づくと両側から2階へと伸びる階段であることがわかった。

 

(これまでに会ったハンターは2体……、きっと最後の一体はこの上の階に潜んでいるのだろう……)

 

 残り時間が8分を切る。これ以上考える猶予もない。彼女は意を決しゆっくり階段を上った。階段を上り切ると、本棚がぎっしりあたりを覆っていた。道はだいぶ入り組んでいる。この中のどこかにハンターが潜み、そしてミッションを終了させる装置が存在するのだろう。足音を消してそっと侵入する。棚を一つ一つ丁寧に確認し奥へと進む。するとわずかばかり物音がした。

 

(足音…!? それも近い!!)

 

 彼女は身を翻し速やかに棚の影に隠れる。ハンターは気付かず、そのまま歩いているようだ。

 

(っ…、慎重に、慎重に……)

 

 自分に言い聞かせつつハンターが遠のいてくのを見計らってその奥へと進む。だが彼女が進んだ先に驚く人物がいたのだ。彼女が先ほど倒してしまったあお神のハンターだ。ハンターはここで復讐とばかり勢いよく彼女へと突進した。だが彼女より遅いため、彼女は大きめにバックステップを取り、一つ後ろの本棚の通路へと移動。だが大きな足音が響いたためか、もう一体のハンターにも気づかれた。音のする方向へ素早く駆けだした。彼女はそのハンターを確認すると、その初動を見ただけで相当足が速いと判断、方向を転換し本棚で体を隠しながら逆側へと移動する。片方のハンターからは距離をとることはできたが、もう片方は距離を稼ぐこともできないほど速い。彼女はそのまま猛スピードで奥を目指すと、この建物に入って見たこともないような巨大な絵画が目の前に現れ、その下部にはミッションにかかわっていそうな機械を発見した。彼女はスピードを緩めることなくそれに接近する。ハンターもすぐ真後ろに迫っていた。

 

(お願い、届いて!!)

 

 彼女は手を思いっきり伸ばす。ハンターも飛びついていた。その軍配は…。

 

 別の場所では、ノエルがこの部屋に接近していた。彼はハンターに遭遇し危機に瀕していた。追いつめられ確保されたと思った瞬間、体の力が一気に抜け、意識が別の場所へと瞬時に移動していく。ミッションをクリアしたことで魔法「テレポ」が発動したのだ。

 

「っ!? た、助かったのか…?」

 

 彼は周囲を見渡す。ミッション終了時の条件に「テレポ時はハンターが周囲100メートルにいないことが条件」であるためすぐさま捕まるような恐れはない。だが見たことのない建物の中にいた。

 

「せめて窓を探さないとな…」

 

 彼が窓を覗くと、ジドールの街の中であり、近くにはアクセサリー屋が見えた。そして向かいには武器屋があることから宿屋であると判断できる。そして先ほどまで上空を支配していた飛空艇2隻もミッション終了を受けて姿はどこにも見られない。

 

「残り時間は…、6分か、この中で隠れて待つか…」

 

 彼は残り時間を隠れる選択肢をとるようだ。

 

 一方ミッションを無事成功させたアーシュラは薄暗い場所にいた。

 

(…鉄骨の上……?下には木製の床…?ステージかしら…)

 

 そう、彼女が飛ばされた先はオペラ劇場の屋根裏である。そして構造上建物の端に存在するので、万が一ハンターが追って来たら逃げ道はない。この細い鉄骨を走って逃げるのは彼女にとっても、追うハンターも一苦労するかもしれない。アーシュラは残り時間を見ながらゆっくり考えた。

 

(万一ここから飛び降りて移動することはできるかもしれないが、着地時の音はきっと防げない…。あくまで奥の手としてここに潜伏してましょう…)

 

 残り時間が5分を切った。ハンターも残り時間わずかとなってからか、怪しいところを念入りに調べ始めた。そのハンターたちの姿が確保された逃走者たちからは丸わかりだった。あるハンターは競売場の近辺を、他のハンターはチョコボ屋の中を、そしてもう一人はオペラ劇場の客席だ。

 

「どっちにもハンターが近い…!」

 

 クルルは逃走者が見つからないよう必死に祈った。その気持ちは他の逃走者たちも同じだった。

 

「きっと、にげる、あいつら」

 

 ガイも同じ気持ちで呟く。

 

「あの二人を信じて待つしかないです」

 

 ラーサーは共に戦った仲間を信じ呟く。

 

「黙ってあいつらの無事を信じて待つしかねぇのか、じれったいぜ」

 

 シドは決着の時が待ちきれないようだった。

 

「私のように優雅に舞いながらハンターからかいくぐれば問題ないだろう」

「あなたこっち来てから割と早く捕まってなかったっけ?」

 

 エドガーの呟きにリディアがすかさずツッコむ。彼らが祈っている間にもハンターは動き続ける。そして逃走者のうちの一人であるアーシュラはハンターとの距離を詰められた。

 

「ッ!?」

 

 見つかった。客席にいたハンターは移動し屋根裏に入るとそこにいた彼女は姿勢を低くして慎重に足場を踏みしめできるだけハンターから距離をとろうとした。彼女の体幹の力は鍛えられて、正確なステップを刻むことができるのでよっぽどのことがない限り、細い鉄骨を踏み外すことはないだろう。だが行き止まりへとたどり着いてしまった。ハンターも慎重に彼女を追いつめた。彼女は目を閉じすっと息を吐くとその場からステージへ向かって飛び降りた。

 

「「!!?」」

 

 確保された逃走者たちは彼女の意を決したダイブに度肝を抜かれた。ただ一人、ゼルだけは何も驚いてはいなかった。

 

「あいつはその場の地形なんて関係ないんだ。ガーデンの時だって、あのでっけえ屋敷の中でだって、そうだった」

 

 彼の予想通り、ハンターも一旦は躊躇し立往生をしていたが、すぐさま飛び降りる。だが彼女はすでに着地するとすぐさま駆けだしていたので、ハンターからわずかばかり距離を稼いだかのように見えた。彼女はそのまま正面の出入り口に向かって駆けだしていたのだが、不運にも街の方から別のハンターに遭遇してしまった。

 

「くっ…」

 

 彼女は短い声を出して急ブレーキをかけると右手側の客席へと向かう。だが今の急ブレーキの衝撃からか、少しばかりスピードが落ちていた。向きを変え再び駆けだすが、彼女はそのまま階段を上ったところでハンターに確保された。

 

「ここまで…ね。まだまだ力不足でした…」

 

 彼女は自分を捕らえたハンターの方へ向き直ると右手の拳を左手の掌に合わせた。彼女なりのハンターへの礼儀なのだろう。

 

 彼女が確保された瞬間、牢獄では衝撃が走っていた。この逃走者たちの中で何回もハンターから逃げ延びた彼女が捕まってしまっては逃走者に勝ち目がないものだと錯覚させてしまうからだ。そしてその連絡は唯一の逃走者――ノエル――にも届いた。

 

「あいつが捕まったか…、俺はこのまま隠れているべきか、それとも動いた方がいいのか…?」

 

 彼がそう考えている間にもハンターは競売場を出て、ノエルのいた建物へと迫っていた…。残り時間は4分。最大の賞金144万ギルはもう目の前である!

 




 出番があんまりだったレイチェルさんは復活してここで出てきましたが、このハンター自体しゃべらせることがほとんどないので結局空気になってしまいました。一応次回で逃走中のゲームは終了しますが、エピローグとしていくらか紹介していきたいと思います。
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