FF逃走中   作:知恵の欠片

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逃走者説明が長くなりましたが、ようやく始まります。


逃走開始

 飛空艇が降下するころ、逃走者はモニターの見えるところに集まっていた。するとルーファウス社長が画面に現れ、簡単なブリーフィングを行った。

 

「今日、諸君に逃走したもらう会場は、バラムガーデンだ」

 

 他の逃走者が真剣に食いつく中、ただ1人、「俺の母校だぜー!」と騒ぐ男がいた。しかし、周囲は特に彼の言動に気を止めるものもなく社長の説明を聞いていた。

 

「まず諸君にはオープニングゲームを行ってもらう。単純に、ストップウォッチを止めてもらうだけだ。指定した時間の前後数秒、この範囲の間にストップウォッチを止めなければいけない。ゲームは3回、失敗した時点でハンターが放出される。成功すれば3分間の逃走の余地を与える。以後のことは以前説明した通り、捕まらず逃げ切ってほしい。自首を使うのもアリだ。自首用の電話は保健室と駐車場に1機ずつ用意されている。以上」

 

 飛空艇のエンジンが止まり、参加者が開催地に降り立つ。このバラムガーデンという場所は傭兵を育成する学校らしい。逃走者のエリアはこの広大な土地を隅々まで使うことができる。フロアは1階の2階が逃走エリアである。道路に面する入り口にはハンターボックスと大きなタイマーがあった。ハンターは3体、神羅カンパニー主催のためか、ハンターにはタークスのツォン、レノ、ルードが起用されていた。彼らは口を真一文字に固め、微動だにせず逃走者に恐怖を与える。

 

「さて、3人ボタンを押す人を選んでくれ」

 

 社長の言葉に逃走者たちは相談を始める。

 

「俺が行くぜ!」

 

 相談の声を遮るような大きな声、先ほども大声を出していたゼルであった。一同は驚いたようにゼルを見つめる。

 

「俺が行ってもいいよな?」

 

 特に異論が起こるわけでもなく周囲が頷いたので意気揚々とタイマーのボタンの前に立つ。もちろん失敗すれば彼だけがボックスの目の前にいるわけなので捕まるリスクも高まる。カウントする時間は12秒、前後1秒以内でクリアとなる。

 

(ピー)

 

 タイマーが動き出し、一同が固唾を呑んで見守る。

 

「ゼルならきっとやってくれるでしょう」

 

 イデアは優しげな表情でゼルを見守る。

 

「俺もガキの頃はあいつみたいに突っ込んでいたなぁ」

 

 ゼルと若いころの自分を重ね合わせ、しみじみと思うシドである。

 

「そこだぁっ!!」

 

 勢いよくタイマーを押すゼル。

 

「ちょっと早いんじゃないですか?」

「私もそう思う…」

 

 後ろで一緒に数えていたホープとリルムには不安の表情が見える。

 

 結果は……

 

 

「11.02秒!!」

 

「っしゃー!見たか!!」

 

 吠えながら勢いよく戻るゼルにメンバーはハイタッチで迎えた。

 

「あーっ、もう冷や冷やさせるんだから!」

 

 ユフィは興奮しつつも放出回避に喜ぶ。

 

「ちょっとせっかちだが、俺は嫌いじゃないぜ。次は俺が行く!」

 

 ゼルから勢いをもらったか、ファリスが自ら名乗り出る。

 

「ファリスー、頑張ってー!」

 

 クルルの声援に後ろ向きに手を振りながらボタンの前で静止する。大きく息を吐き、精神を集中させる。時間は16秒、前後0.7秒以内でクリアとなる。

 

(ピー)

 

「お願い…ハンター放出は避けて…!」

 

 エリアも一心に願う。

 

「だいじょうぶ、きっと。しんじる、あいつを」

 

隣にいたガイが彼女を気遣う。

 

「…、今だ!」

 

 ファリスが静かにボタンを押す。

 

「これは絶対大丈夫だ」

 

 エドガーの発言に周囲も頷く。

 

 結果は……

 

「16.12秒!!」

 

 逃走者たちに歓喜の輪が広がった。悠々と戻るファリスにみんながハイタッチを交わす。だがあと一回このゲームをしなければならない。時間の間もさらに狭まって25秒を0.4秒前後以内となる。だが、参加者の中からはこの人物を推そうというのがすでに広まっていた。

 

「ここぁ、やっぱりアーロンしかいねぇだろぅ」

 

 シドの発言により注目はアーロンが一手に引き受ける。誰も文句を言うものはいない。

 

「わかった、俺が行こう」

 

 アーロンはゆっくり踏み出し、ボタンの前へと移動する。その立ち振る舞いはまるでラスボスに立ち向かっていくかの如くである。

 

(ピー)

 

 1,2,3秒…、ごくごくわずかな時間なのに、とてつもなく遠く長く感じる。それは後方で眺めている逃走者たちにもアーロンにかかっているであろう重圧を感じることができたぐらいだ。いや、歴戦の戦士である全員が同じことを考えているに違いない。だがその緊張は次の言葉で解される。

 

「大丈夫です、僕たちはアーロンさんに信じて託したんです。なら僕たちにできることは決まっています」

 

 このメンバーの中で2番目に年下のラーサーの一言にユフィもそうだとばかりアーロンに声援を送る。ゼルもいつものようにやかましくアーロンの応援をする。もっともアーロンにはその声援があろうとなかろうと、彼の時間は明鏡止水のように穏やかで落ち着いていた。そして静かにボタンを押す。

 

「きっと…きっと、ぴったりだよ!」

「っしゃー!きっといける!」

 

 パンネロは小さく呟き、ゼルは言い聞かせるように喚く。周りの逃走者たちが大丈夫だなどと言いあっているそんな中、ただアーロンは静かに時間表示される画面を見つめていた。

 

「ただいまの結果……、25秒ジャスト!!」

 

 先ほどの声がさらにけたたましく広がった。あの緊張感の中よくジャストで成功したので盛り上がり方は尋常ではない。アーロンが戻ると真っ先にハイタッチをしに来たのは彼を推したシドだった。

 

「信じてたぜ」

「ああ」

 

 二人は熱いハイタッチを交わした。ほかの逃走者もそれ続く。

 

「さて、諸君は無事にオープニングをクリアした。今から3分間、諸君には逃走の時間を与える。3分後にはハンターが放出される、以上」

 

 そのセリフとともに逃走者たちは一気にバラムガーデン内へと向かって駆けだした。

 

「みなさん、またみんなで集まれるように頑張りましょう!」

「おうよ、てめぇも捕まるんじゃねぇぞ!」

 

 ホープのセリフにシドが応える。

 

「色男、余計なこと考えないで逃げるんだよ!」

「余計なこと?私にとっては大切なことだよ」

 

リルムの忠告もさらっと流すエドガー。

 

「パンネロさん、がんばりましょう」

「ええ、ラーサーも、健闘を祈るわ」

 

 お互いにエールを送る2人。

 

「おれ、まけない」

「逃走者のものまね…楽しみだ」

「ホブス山で鍛えた脚力を発揮してみせます」

「ミストのみんな…応援しててね」

「お金は全部ユフィさんがいただくもんね!」

「はしっぞ、おめえら!」

「食べ物のため、頑張るアル!」

「ふっ…行くか」

「行きましょう…各々の目的のため!」

 

各逃走者がそれぞれの思いを声に出し、散り散りになってゆく。ハンター放出まであと1分、彼らの命運や如何に。

 




 勝利の女神は誰に微笑むのか、次回、ハンター始動。さっそく誰かに捕まってもらう予定です。
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