FF逃走中   作:知恵の欠片

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 新たなミッションが発動します。また今回は牢獄DEトークもウェートが増えます。


亀裂と修復

Rrrrr!Rrrrr!メールだ。

 

「クイナ確保、逃走者残り13名。またこれより校庭で学園祭ライブが始まる。開場は今から5分後である。ライブ中の5分間はハンターに捕縛されることはない。3名まで入ることができる。ただし誰かが入った瞬間その5分間はハンターが3体追加される…、まじかよ」

 

 メールを読み上げたファリスは絶句した。

 

「俺が逃げた時、あいつまだいたよな…。ずっとあそこにいたのか…」

 

 ノエルはクイナに対して呆れ気味だ。

 

 

「大丈夫、色男のアイテムがあればいくらハンターが増えても逃げられるって」

「リルム、1回しか使えないからね、束で来られたらおしまいだ」

 

 どうやらリルムは割とハンターが増えるリスクを考えていないようだ。エドガーが慌ててその危険さを説いた。

 

シドとラーサーは保健室よりのロビーにいた。さっき近くにハンターがいると話しかけられたにもかかわらずだ。

 

「ハンターは一定方向へと動いているような気がするんです、ノエルさん曰く、保健室から食堂側へ移動していったのであれば僕たちのいる方向に戻ってこないと踏んだわけです」

「お前さん、そんなところまで見てたのかい、やるなぁ」 

 

 シドはラーサーの明晰さぶりに相変わらず感心していた。ラーサーの仮説通り食堂から出てきたハンターは学生寮の方向へと歩き始めた。すると保健室から出てくる人影が見えた。ユフィだ。

 

「おい、ユフィ、お前今までどこにいたんだ」

 

シドが声をかけた。

 

「アタシはずっと保健室で隠れてたのさ」

「お前まさかライブ会場に行く気じゃねえだろうな?」

「まっ、まっさかぁ!?い、行くわけないじゃないののの」

 

 非常にわかりやすい反応だ。シドとラーサーはため息をつくと彼女に釘を刺して言った

 

「とにかくおめえは俺達のとこについて来い、いいな」

「えー…」

 

 シドの指示に渋々従うユフィなのであった。ユフィの行動が怖いのでライブ会場からできるだけ遠いところに移動した方が良いと判断、彼らはガーデンの入り口方向へ向かうことにした。

 

 ノエルはガーデンの入り口へと向かっていた。そこで彼はイデア、エリアと合流した。

 

「よう、そっちのほうは大丈夫だったか」

「ぎりぎりの所でしたが、シドさんのおかげでなんとか助かりました」

「そっか…あのおっさんやっぱりただものじゃないんだな…」

「ええ、とても優しい方です」

 

 そんな会話をする中で、エリアを見てノエルは少しばかり懐かしい気分になった。

 

「エリアって普段はどんなことやってんの?」

「水の巫女をしています」

「だからか…」

「え――」

「いや、なんでもない、とりあえず今この辺りは安全だが、どこか見つかりにくい場所を探そう」

 

 彼の脳裏にかつての仲間の、そして恋人だった巫女が浮かんだが、今はそんな時ではなく、気持ちを入れ替え辺りの警戒をしつつ、一同を安全な場所へと誘導した。

 

 ラーサー達が離れて、ライブ会場に一番近くなったのはミンウである。彼は運よく、先ほどのハンターに見つかることはなかったが、いつ何時襲われるかわからない。だが仲間を犠牲にして自分が助かるわけにはいかないのだ。だがかつて、アルテマの本の封印を解いた時はどうだっただろうか。自分が犠牲となり仲間を救った。今回ばかりはいい思いをしてもいいのではないだろうか。彼はジレンマに陥ってしまっていた。

 

「悩んでいても仕方ない…とりあえず近くへ移動しよう…。そこでまた改めて考えよう…」

 

 果たして彼はどんな行動をとるのだろうか…。

 

 学生寮にはアーロン、パンネロ、リディアの3人がいた。

 

「ライブかぁ…そのものに興味はあるけど…みんなに悪いよね」

 

 パンネロの一言にリディアも頷く。

 

「…っ、静かに下がるぞ」

 

 アーロンの見た先にハンター。3人は学生寮の他フロアへと移動する。最強のガードがいればわざわざライブ会場に隠れに行かなくても大丈夫そうだ。

 

 図書館では作戦会議が行われていた。

 

「私が見たハンターは2階にいたよ」

「さっき私は保健室側を歩いているハンターを見たな」

 

 それぞれが見たハンターの情報をまとめてどこに逃げるかの算段を行っているようだ。

 

「そうだとすればハンターはガーデン入り口の方に行けばなんとかなりそうじゃないか?」

 

 リルムがそこで口を挟む。

 

「私の仲間だった傷野郎が言ってた。今考えていることの逆が正解だって」

 

 リルムの一言にエドガーもその人物の言動が脳裏に一瞬思い浮かんだ。

 

「それはともかく、リルムはどこが安全だと考える?」

「2階だよ、そのためにはエレベーターホールの付近に隠れよう」

「なるほど、あえて敵の懐に潜り込むってことか、面白い、やろう!」

 

 ファリスの後押しによって3人はエレベーターホールへと向かうことになった。

 

 時は数分前に遡る。牢獄の中では数は賑わってきたが、実際は重い空気が漂っていた。

 

「……」

「……」

(話しづらい…)

 

 ゼルとアーシュラが放つ殺気に誰もが口をつぐんでいたのだ。

 

(ホープ、何かいい方法ない?)

 

 クルルが必死に訴える目でアイコンタクトを飛ばしてくる。

 

(誰かこんな時に雰囲気を変えてくれそうな人が良かったのですが…)

 

 ゼル、アーシュラを除きここにいるのは大食いの人外、片言の大男、謎のものまね師という異色メンバーのみで、ここの14歳の少年少女には頼ることができる人物がいなかったのである。

 

(そういえば逃走者のリストを見たらアーシュラさんは王族だったと思う。クルルなら話せるチャンスがあるんじゃない?)

 

 逃走前に他のメンバーの情報をちらっと聞いていた彼は彼女に伝えた。

 

(私にそんな大役を押し付ける気!?)

(そ、そんなことを言われても…)

(…、はぁ、わかったわよ。私だってこの空気はやだからね)

 

 彼女は折れ、意を決してアーシュラに話しかける。

「アーシュラさん、バル城王女のクルルと申します。お初にお目にかかります」

「これはこれはご丁寧に。ファブール王女のアーシュラです。よろしくね」

 

 クルルは内心焦った。アーシュラの口調はさっきまでの恐ろしい気配を微塵にも感じさせることがないほど穏やかだったからだ。

 

(あれ、意外と大丈夫じゃない?)

(いや…クルルの敬語に僕はびっくりで…)

(うるさいな…、まぁなんとか見ててよ)

 

 気を取り直しクルルは再びアーシュラと会話を続けた。

 

「アーシュラさんって走るのすごく速かったですよね」

「ええ、毎日山を走って鍛えてますから」

「王女様なのにすごいですね、なんでもモンク僧が集まるところだとか」

「ええ、心を鍛えるのにはもってこいです。誰かと違って」

「……」

 

 ゼルが小刻みに震え始め和やかな空気が一変ぴりっとする。口調こそ穏やかだが、アーシュラは笑ってはいなかった。

 

(話をうまくそらしてください)

(うん…やってみる)

 

 ホープのアイコンタクトで再び話を逸らす試みをするクルル。

 

「お父様はどんな方ですか?私には祖父しかいないのでよくわからないの」

 

 アーシュラはそれはそれはとばかり残念な表情を一瞬浮かべたが、彼女の父の姿をクルルに伝えようとした。

 

「どんな時でも強く厳しく、そして優しい方です。髪も辮髪で整ってますわ、どこかの鶏みたいな方とは違って」

 

 なぜかゼルに対し毎回一言一言棘のある言葉を吐いた。とうとうゼルが耐えかねて怒鳴る。

 

「うっせえよ!!王女様だかなんだか知らねえけど人をけなすだけしかできねえのかよ!!」

 

 ゼルの怒号に牢獄はさらに静まる。だがアーシュラは何も動じていないようだった。

 

(この人一応だいぶ年長者だよね…?)

(ガイさんよりは若そうだけど…でも沸点低すぎよね)

 

 怒号によりかえって冷静になったホープとクルルが諦めかけたその時だった

 

「はいはい、喧嘩はそこまでですよ」

 

 突如どこからともなく現れたイリーナが二人の喧嘩を遮った。

 

「あなたたちは確保されたとはいえ、ここも放送で映る場所なんでお願いしますね」

 

 淡々とした口調で二人を諫めた。2人が何とか落ち着いたところでイリーナがリモコンを取り出し、ボタン操作するとこの檻は移動し始めた。ガーデンの中の方へと向かっているようだ。

 

「ど、どこに向かっているんですか?」

 

 ホープの問いに対して、「今から皆さんをライブ会場へとお連れ致します」との回答が返ってきた。どうやらこの檻はラジコンのように操作するらしい。タイヤも伸縮自在に操ることができ、段差があるところでも難なく上り下りができるらしい。彼らが真っ先に会った逃走者たちはノエルたち3人だった。

 

「ホープ、どこに向かうんだ?」

「僕たちはライブ会場に連れていかれるみたいです」

「おまえたち、いく?」

 

 ガイの問いかけに対し、ノエルたちは首を横に振ったので、一同はほっとしたようだ。

 

「ノエルって言ったな、今度飯行こうぜ!」

「ああ、頑張って逃げ延びるからな」

 

 ノエルのインタビューを聞いていたゼルはその話を持ち出し彼にエールを送った。

 

「ワタシも行きたいアル!」

 

 ご飯と聞き勝手に便乗するクイナ。だがご飯は人数が多ければ多いほどおいしく感じるものだ。ノエルが「できるだけ大勢で飯を食おう」と告げると、この檻は3人を見送り、中へと進んでいく。ゲートも車両用の所を通過し、中へと入る。次に会った逃走者たちはエドガー達とシド達であった。

 

「こんなところに密集していると危ないぜ」

 

 ゼルが叫んだ。

 

「ちょうどここで出会っちまってな、これから別れるとこよ」

 

 シドが冷静に返す。

 

「トサカ頭、声大きい!」

 

 リルムの相変わらずの悪口は火に油を注ぐような形になりそうだったが、エドガーが申し訳なさそうに謝るのでなんとか冷静さを保つことができたゼルであった。一行と別れ再び檻は進み始める。ライブが始まるまで残り2分。中庭に入るとある男がそこにいた。ミンウである。檻のメンバーから驚きの声が上がる。

 

「おまえ、いくのか?」

 

 ガイが心配そうに彼に問いかける。問いかけに答えないミンウだった。彼はまだ悩んでいた。入って助かりたいという気持ちが強かった。ゼルやクルルが語り掛けてもうつむくのみだった。ライブ開始まで残り1分。だがミンウの迷いを断ち切ったのは意外な人物だった。

 

「あなたは自分に誇ればいい。昔の自分はこうだったからと今の自分に妥協したら、きっと未来の自分は後悔する」

 

 アーシュラである。ミンウはアーシュラの発言に一瞬ぼうっとしていたが、我に返る。

 

「そうだな…、私としたことが…。一時の感情に流されちゃいけないな」

 

 彼の眼差しに光が再び灯った。

 

「お前、いいとこあんじゃん」

「静かにしてください、気が散ります」

 

 そっぽを向くアーシュラに対し、なんでだよと言わんばかり大げさなポーズをとるゼル。だがその姿は…、

 

「なんだか兄妹喧嘩みたい」

「こいつが兄妹!?んなわけあるか!」

「ッ!?そんなことはない!」

 

 クルルの一言で二人とも揃って同じように否定したため、一行は笑わずにいられなくなった。その後ミンウと別れ、檻はライブ会場へ入る。今回のミッションでは参加者はおらずハンターは追加放出無しで終わる結果となった。残り時間は75分、賞金は54万ギル。

 




解説
ノエルの言っていた巫女:ユールのこと。時詠みの巫女。
リルムの言っていた傷男:セッツァーのこと、エンディングの名言
さて、次回はライブです。FF8のライブと言えば…

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