翌週、翔人は風紀委員室に呼ばれていた。
翔人はめんどい…と思いながらも仕方なく行くことにした。
コンコンッ
「入れ。」
「失礼します。」
翔人はノックして、そういうと部屋に入った。
「おぉ来たか翔人君。模擬戦以来だな。」
「そうですね。お体の方は大丈夫ですか?だいぶ手加減はしたつもりなんですが…。」
「あれで手加減だと…?…まぁいい。私の体は問題ない。」
「なら良かったです。…それで今日は何の用ですか?」
おそらく風紀委員関連だと思うが…と翔人は心の中で付け加える。
「決まってるだろ?風紀委員の話だ。あれほどの実力を示されては入ってもらうほかないだろう。」
摩利はそう告げる。
「…ハァ。わかりました。入りますよ…風紀委員。」
溜息をつき了承する翔人。
このままではきっと入るまで呼び出されると確信した翔人は、仕方なく入ることに決めた。
「おぉそうか!入ってくれるか。それは心強い。」
入るまで何度でも呼び出そうとしたくせに…なんて翔人は思うが口にはしない。
「で、早速なんだが今日の放課後風紀委員が集まることになっている。そこに翔人君も来てほしいんだ。」
「了解です。何かの会議ですか?」
「あぁそれなんだがな―――――――」
そう告げると摩利は翔人に新入生勧誘活動について説明した。
魔法科高校にも普通高校と同じようにクラブ活動がある。
しかし、普通高校と違う点は魔法と密接なかかわりを持つクラブが多いことだろう。
メジャーな魔法競技なんかだと第一高校から第九高校までの対抗戦が行われ、その結果が各校間の評価の高低にも反映される傾向がある。
九校戦と呼ばれる対抗戦に優秀な成績を収めたクラブには、クラブの予算からそこに所属する生徒個人の評価にいたるまで様々な便宜が与えられている。
従って有力な新入部員の獲得は各部の勢力図に直接影響をもたらす重要課題である。
「―――――というわけでこの時期は毎年各部間のトラブルが多発するんだよ。」
その説明を受けた翔人はなるほどな~と思った。
勢力図にかかわるなら各部の勧誘が激しくなってしまうのも頷ける。
ただ、それを風紀委員が解決するのはめんどくさいな…とも考える。
「密かに出回っている入試成績リストと上位者や、競技実績のある新入生は各部で取り合いになる。むろん表向きのルールはあるが、影では殴り合いや魔法の撃ちあいになることも珍しくはない。」
その言葉を聞いて翔人は口角をあげる。
それを見逃さなかった摩利は翔人につげる。
「翔人君笑っている場合じゃないぞ?君は今年の主席なんだ。どのクラブも君を勧誘しにくると思うぞ?」
「まぁそこのところはどうにかしますよ。別に俺は入りたいクラブもないので色々見てから決めようと思ってますから。」
「そうか、ならいいが…。とまぁこういう事情でね、風紀委員は今日から一週間フル回転だ。いや、欠員の補充が間に合ってよかったよ。」
「まぁ風紀委員になったからには仕事はきちんとしますよ。放課後は巡回ですか?」
「あぁその通りだ。色々説明したいこともあるから先ほど言ったように授業が終わり次第、本部…つまりここに来てくれ。」
「了解です。」
そう翔人は告げ教室を出て行った。
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「翔人君~!」
午後の授業が終わり、風紀委員本部へと向かおうとした翔人を二人の女性が呼び止めた。
振り向くとそこには、ほのかと雫が立っていた。
「どうしたんだ2人とも?」
「翔人君は入るクラブ決めたの?決めてないなら一緒にまわろうかなって思って。」
ほのかがそう嬉しそうに話しかける。
「あぁ…悪い。実は今日から一週間風紀委員でこき使われることになってな…。」
そう翔人が告げるとほのかはあからさまに元気がなくなっていた。
そんなほのかを見て焦った翔人は、
「あちこちブラブラするのは結果的に同じだから巡回をしながらでもいいなら一緒にまわるけど?」
翔人がそう告げるとうつむいていたほのかが元気よく顔を上げ、
「それでいいよ!一緒にまわろっ!じゃあ私たち教室の前で待ってるね!」
ほのかはそう告げると雫と共に走っていってしまった。
…相変わらず感情の起伏が激しいな、なんてことを考えながら翔人は風紀委員会本部へと向かった。
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「あれ?達也も風紀委員なのか?」
本部に入ると達也が座っていたため声をかける。
「あぁ、翔人も入ったんだな。」
「断るのも面倒で嫌々だけどね。」
俺が達也にそう告げると、俺もだ…と達也が小さく呟いたのを俺は見逃さなかった。
「全員揃ったな?」
俺と達也がその後も話していると2,3年生が次々に入ってきて、室内の人数が9人になったところで、摩利が立ち上がった。
「そのまま聞いてくれ。今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間がやってきた。風紀委員会にとっては新年度最初の山場となる。くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすような真似はするなよ?」
一人ならず首をすくめるのを見て、翔人はこいつら…と少し呆れていた。
「今年は幸い、卒業生分の補充が間に合った。紹介しよう。立て。」
事前の打ち合わせも予告もなかった展開だが、2人ともすぐさま立ち上がった。
「1-Aの斎藤翔人と1-Eの司波達也だ。今日から早速パトロールに加わってもらう。」
摩利がそう告げるとざわめきが生じた。それは達也のクラス名を聞いたからだろう。
NGワード取り締まりの総本山だけあって
「誰と組ませるんですか?」
「前回も説明した通り、部員争奪週間は各自単独で巡回する。新入りでも例外じゃない。」
「役に立つんですか?」
その言葉はあきらかに達也に向けていた。
達也は予想された反応だったので丸投げの意味を込めて摩利を見た。
しかし丸投げされるまでもなく、摩利はうんざりした顔で言い返そうとしたのだがそのとき、ガタッと誰かが立つ音がした。
「アンタなぁ、見た目だけで人を判断するんじゃねーよ。おそらく戦ったらあんたなんて一瞬で負けるぞ?なんせ達也は服部副会長に余裕で模擬戦に勝ったんだからな。」
いわずもがな言ったのは翔人だ。
その言葉を聞いた反応は2つに分かれていた。
達也と摩利はよけいなことを…という反応を、他の風紀委員はまさかっ…という反応だ。
「信じられないなら今からでも達也と戦ってみればいい。そうすれば達也をそんな目で見れなくなるはずだ。」
「…委員長、本当なんですか?」
信じられない!と言った顔で摩利へと質問する2年の風紀委員。
「…心配するな。2人とも使えるやつだ。司波は斎藤が言ったように模擬戦で服部に勝っているし、斎藤今年の主席ということで何の問題もない。」
その摩利の翔人の話した模擬戦の結果を否定しない言葉に場は急に騒がしくなった。
無理もないだろう。
入学以来負けなしの服部が新入生に…それも二科生に敗れたのだから。
しかし、そんなうるさい場を摩利が「うるさい!」と一喝し黙らせる。
「他に言いたい事のあるやつはいないな?」
穏やかとは言えない喧嘩腰の口調だったが誰も気にしてはいないようだった。
「よろしい。では早速行動に移ってくれ。レコーダーを忘れるなよ。司波、斎藤両名については私から説明する。他の者は出勤!」
全員が一斉に立ち上がり、踵をそろえて、本部を出て行った。
「まずはこれを渡しておこう。」
横並びで整列した2人へ摩利が腕章と薄型のビデオレコーダーを手渡す。
そうして摩利から説明をうける翔人と達也。
「一応これで大体のことは話したが何か質問はあるか?」
「はい。」
「なんだ?」
そう言った達也は本部にある備品の使用許可を求めた。
話を聞くとこれまでガラクタ扱いされていたCADだが実は結構な高級品なんだそうだ。
それを黙って聞いていた翔人は片付けは大事だな~なんてことをのんきに考えていた。
「質問がないならこれで君たちにも出勤してもらうことになるが…翔人君、あまり先ほどのような真似はしないでくれ。私も腹が立ったのは事実だがあまり揉め事を風紀委員内で起こしてもらいたくはないんだ。」
ずっと黙っていた翔人へ摩利が告げる。
「はぁ…。まぁ気を付けますけど風紀委員も一科生と二科生を差別してるんですね。生徒会と言い風紀委員といい役職をもっている人たちがそれじゃあ一生かかっても差別は解消されないと思いますよ?」
翔人は呆れた声色で摩利に告げる。
摩利はその言葉を聞くと一瞬苦い顔をしたが、すぐにきりっとした顔に戻ると翔人に告げた。
「私も翔人君の意見には賛成だ。私も一科生と二科生の差別はなくしたいと思っているからな。もちろん差別をなくせるよう色々策を巡らせてはいるんだが…。」
「いえ、渡辺先輩は悪くないと思います。そのような意識を持った人がトップで少し安心しました。…それじゃあ俺たちはそろそろ行きますね。」
「あぁ、頑張ってくれ。」
そして翔人と達也は本部を後にした。