4月。
満開の桜の木々を抜けた先には「国立魔法大学付属第一高校」の文字が見えた。
「へぇ、ここが第一高校かぁ~」
パンフレットでは何回も見た建物ではあるが実際に見てみるとまた違う風に感じられた。
まだ見ただけではあるが好きになれそうな学校であると思う。
そう考えながら校門を過ぎる。
「中も綺麗なんだな。」
素直に関心する俺。
しっかりと管理が行き届いているあたりさすがだなぁ~なんて思いながら歩いているとベンチに腰掛けて何かを読んでいる学生が目に入った。
その学生のあたりを眺めていると、過ぎ去っていく生徒があからさまに彼を侮蔑の目で見ていた。
どうしたんだろう?と思い近づいてみるとその理由が分かった。
(二科生…か。噂には聞いていたがここまであからさまだと怒りを通り越して呆れるよ…。)
そう思いながら彼のもとへ近づいていく俺。
「おっす!」
俺は彼にそう元気に話しかける。
「えっと…君は?」
「おっと自己紹介してなかったな。俺は斎藤翔人。気軽に名前で呼んでくれ。」
「了解だ翔人。俺は司波達也だ。」
「達也…ね、よろしくな!」
「あぁよろしく。…それにしても翔人は変わってるやつだな。」
自己紹介したところで達也に変人扱いされてしまった。
俺何か変なこと言ったかな…?
「変わってるって…俺何か変なこと言ったか?」
「変なことというか…二科生の俺に一科生の翔人が話しかけてくるなんて少々驚いたんでな。」
「なんだそんなことか…くだらない。俺は一科生でも二科生でも差別するつもりはない。同じ人間なのに何を差別する必要があるんだ?さっきちらっと見てたがどうもこの学校はそういう差別意識を持ってる奴が多いみたいだな。」
実際俺は人を能力や見た目だけで判断しない。
大事なのは中身なのだ。
「そうか。そう言ってくれるやつがいるなんて驚いたよ。」
そんな会話のあとも、色々達也と話していると入学式まであと少しだった。
「新入生ですね?開場の時間ですよ。」
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時計で時間を確認した達也は翔人に会場へ行こうぜと促そうとするが、後ろから来た人に声をかけられその行為は失敗に終わる。
振り返ってみるとまず目に入ったのは制服のスカート。それから左腕にまかれたCAD。
CAD-術式補助演算機のことだ。
そのCADだが記憶によれば学内でCADを常時携行できるのは、生徒会役員と特定の委員会のメンバーのみのはずだ。つまり今目の前にいる女性は生徒会役員であろう。
「すみません。すぐに行きます。」
「謝ることはないですよ。時間ならたっぷりありますから。」
そう笑顔で告げる上級生。
どうやらこの人は珍しいくらい人懐こい性格のようだ。
他の新入生もいて俺たちだけに構っていてもしょうがないだろうに…。
「あっ、申し遅れました。私は生徒会長を務めています、七草真由美です。ななくさ、と書いて…」
生徒会長が自己紹介したところで達也たちのまわりに強い殺気がうずまいた。
(な、なんだこの殺気は!?)
達也は驚いていた。
ここまでの殺気は軍でも感じた事がないと。
真由美は恐怖していた。
自分に向けられてるであろう殺気に。
「七草…。十師族…ね。」
翔人はそう言い残すと一人で会場へと向かっていった。
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「七草先輩、大丈夫ですか?」
そう言って達也は真由美へと手を伸ばす。
先ほどの殺気で真由美は腰を抜かしてしまっていた。
しかし無理もないだろう。達也でさえあのような殺気を感じたのは初めてなのだから。
「え、ええ。ありがとう。…えっと君は?」
「申し遅れました。自分は司波達也です。」
「司波達也君……そう君があの司波くんね……。」
目を丸くして驚きを見せた後、何やら意味ありげに頷く生徒会長。
「先生方の間ではあなたの噂で持ちきりよ?入学試験7教科平均96点。特に圧巻だったのが魔法理論と魔法工学。合格者平均が70点に満たなかったのに両教科とも小論文を含めて文句なしの満点。前代未聞の高得点だって。」
手放しの称賛に聞こえるのは自分の気のせいに違いないだろう、と達也は思った。なぜなら、
「ペーパーテストだけの成績です。情報システムの中だけでの話ですよ。」
「でも私にはマネできないわよ?でもそれが今年は2人もいるんだもの。ちょっと悔しいわ。…でも先生方も私も今年の新入生には期待してるのよ。」
達也は2人いるということに驚いた。
自分でもペーパーテストだけは人一倍できたと自負しているのだ。
それがなければここにはいないだろうから…。
「2人と仰いましたが、差し支えなければその生徒の名前を教えていただけませんか?」
「早速ライバル発見かな?その生徒の名前は斎藤翔人君。彼は実技も素晴らしい結果を残して総合成績が1位。本当だったら今日の新入生代表も彼のつもりだったのだけれど断られてしまって…。それで達也くんの妹さんに新入生代表を務めてもらうことになったのよ。」
真由美がそう告げると達也は驚いた。
まさか自分の妹よりも魔法士として優れている人間がいるという事実に。
しかもその生徒が先ほど殺気を放っていた人物だということに。
そして警戒もしなければならない。
妹に先ほどのような殺気を向けるのなら排除しなければならないからだ。
「七草先輩…先ほど自分と一緒にいた生徒がその斎藤翔人です…」
「えっ!?さっきの彼が斎藤くん!?」
今年は忙しくなりそうだ、と思い溜息をつく達也であった。
翔人君は十師族に殺気を出すほど憎んでいます。
その理由は今後明かされていきますのでお楽しみに!