魔法科高校の劣等生 ~幼馴染たちと共に~   作:ローニエ

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懇親会

翔人たちが戻るとちょうど来賓の挨拶が始まった。

挨拶が始まると、集まっていた主役たちは食事の手を止め、談笑を中断し、真面目な態度で大人たちの声に耳を傾けていた。

ただし翔人は一人だけ食事を食べていたため、白い目で多くの人に見られていた…

 

 

 

 

 

 

「本日の九校戦懇親会にあたり、多数のご来賓の方々にお越しいただいています。ここで魔法協会理事、九島烈様より激励の言葉を賜りたいと思います」

 

そう司会者が告げ、会場の電気が消えると、懇親会の場が少しざわざわし始めた。

もちろん一高sideも例外ではない。

 

「十師族の長老だって」

 

と、雫がほのかに告げる。

 

「私直接お顔を見るのは初めて…」

 

と、ほのかは告げると横目で翔人を見る。

十師族に憎しみを持っている翔人君は、嫌な気分になるんじゃないか、と。

しかしそんなほのかの考えは杞憂に終わる。

なぜなら…

 

()()()…?)

 

翔人は食事の手を止めると、そう心の中でつぶやく。

顔に微かな微笑を浮かべながら…

 

 

そして壇上にライトが照らされる。

しかしそこに現れた人物は予想しない人物だった。

なぜなら、現れたのは誰も知らない若い女性だったからだ。

その事実に会場にざわめきが広がった。

 

壇上に上るのは九島老人ではなかったのか?

なぜ、こんな若い女性が代わりに姿を見せたのか?

 

そのような囁きが増えるなか、翔人は心の中で溜息をつく。

 

(まったく…()()()()()だな烈さんは)

 

そう思い翔人は壇上の後ろにいる列に訝し気な視線を送る。

そんな翔人の視線に、女性の背後の老人が、にやりと笑った。

まるでいたずらを成功させた少年のように…

翔人がそう思っていると、老人の囁きを受けた女性はスッと脇へどいた。

更にライトが老人を照らし、大きなどよめきが起こる。

ほとんどの者には、九島老人が突如空中から現れたように見えたことだろう。

そんなどよめきの中、老人の目は、再び翔人を見た。

翔人はそんな烈に、苦笑いを返す。

 

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する」

 

その声は、とても九十歳に近いとは思えぬ若々しいものであった。

 

 

「今のはちょっとした余興だ。魔法というより手品に近いな。だが、今の手品のタネに気づいたものは、私の見たところ六人だけだった。つまり」

 

老人が何を言い出すのか、何を言いたいのか、大勢の高校生が興味津々で耳を傾ける。

 

「もし私がテロリストで、来賓に紛れて何かを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こすことができたのは六人だけ、ということだ」

 

烈がそう告げると、会場は先ほどまでとは違う静寂に覆われていた。

 

「魔法を学ぶ若人諸君。魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない。それを思い出してほしくて、私はこのようないたずらを仕掛けた。私が用いた魔法は規模こそ大きいものの、強度は極めて小さい。だが、君たちはその弱い魔法に惑わされ、私を認識することができなかった。魔法を磨くことは大切だし、魔法力を向上させる努力は、決して怠ってはならない。しかし、それだけでは不十分だということを肝に銘じてほしい。使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ。明後日からの九校戦は、魔法を競う場であり、それ以上に魔法の使い方を競う場だということを覚えておいてもらいたい。魔法を学ぶ若人諸君。私は君たちの()()を楽しみにしている」

 

そんな烈の言葉が終わると、翔人は誰よりも早く手をたたいた。

そしてそれにつられてか、聴衆全員が手をたたく。

 

魔法の使い方次第、それはすなわち、魔法を道具として割り切っていることを意味している。

それは翔人が掲げている目標でもある。

しかし、それは現在のランク至上主義の社会に異議を唱えるものである。

つまり、今の魔法師社会の在り方に逆らうことを意味している。

 

そして烈はそれをわかりやすい形で実演してみせた。

翔人には思いつかない方法でだ。

 

(さすがだよ、烈さん)

 

今日は来てよかった、とこのとき、初めて翔人は思った。

 

 

 

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懇親会が前々日に行われるのは、前日を休養にあてるためでもある。

技術スタッフや作戦スタッフは最後の追い込みに余念がないか、選手は各自のやり方で明日からの戦いに備えて英気を養っている。

そしてそれは翔人も例外ではなかった。

 

「なぁ雫、九校戦って屋台とかでるのか?」

 

「出るよ。各国の料理がたくさんある。中でもナインティワンアイスの会場限定フレーバーはおすすめ」

 

「さすが雫!毎年来てるだけあるね」

 

「気を付けないと大会中に太っちゃいそうだよ~」

 

現在翔人は、ほのかの部屋で雫、ほのか、エイミィと談笑中だった。

 

「そんなにたくさんあるのか~今から食べるのが楽しみだよ」

 

「翔人君は相変わらず、食べ物のことになると目が変わるね…」

 

呆れながら翔人へ告げるほのか。

 

「まぁまぁ、ほのか。ジョーだって初めての九校戦で舞い上がってるんだよ」

 

「舞い上がりすぎだと思う…」

 

そんな会話をしながらも、話は九校戦のことばかりだ。

 

「それよりさ、明日からいよいよ始まるね~。いやぁ緊張するよ」

 

「エイミィでも緊張するんだな」

 

「そりゃあ私だって緊張くらいするよ。ジョーは私のことどう思ってたわけ?」

 

「あほ」

 

「あっ、ひどい!雫とほのかも、なんか言ってやってよ!」

 

エイミィはそう告げるが、ほのかと雫は苦笑いだ。

 

「そんなことよりさ、そろそろ腹減らないか?」

 

「ちょ、そんなことって…「確かに少しお腹減ったかも!レストランでも行く?」

 

言い争いになりそうな雰囲気を察したほのかは、エイミィの言葉に自分の言葉をかぶせる。

 

「まぁ、ちょっと早いけど、混んでからよりはいい」

 

「ちょ、雫まで「だよね!じゃあ行こう!」

 

雫も賛成したことで、ほのかは話をまとめ翔人とエイミィの手を引いてレストランへ向かった。

 

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