翔人たちと夕食を食べた後、ほのかは自室で深雪、雫と共におしゃべりをしていた。
女の子三人が集まると言ったら、極々自然な光景だ。
その話題はやはりというか九校戦のことだ。
女の子の話と言えど、話題はオシャレや恋愛話だけではない。
三人が話していると、扉をノックする音が聞こえた。
「あっ、私が出るよ」
ノックの音に反応したほのかは、扉を開ける。
「こんばんは~」
「あれっ、エイミィ。他のみんなもどうしたの?」
開けたドアの先にいたのは、昼間ずっとおしゃべりをしていたエイミィだった。
そして後ろをよく見ると、四人の同級生がいた。
つまり、一高新人戦女子のメンバーがほぼそろっていることになる。
「うん、あのね、温泉に行かない?」
その突拍子もないエイミィのセリフに、三人は顔を見合わせる。
そんな中、雫が代表してエイミィに質問する。
「入れるの?ここ、軍の施設だけど」
「ためしに頼んでみたら、許可くれたよ。十一時までならいいって」
「そうなの?じゃあ、ご一緒させてもらおうかしら。着替えを取ってくるから先に行っておいて」
別に断る理由もないので深雪はそう答える。
そんな深雪の答えに、エイミィは嬉しそうに頷いた。
「オーケー、急がなくて大丈夫だからね」
そんなエイミィの言葉に深雪は軽く手を挙げて、チームメイトと別れた。
地下の大浴場はなんと一高女子の貸し切りだった。
貸し切り状態だった、ではなく、十時から十一時まで本当に彼女たちの貸し切りだったのだ。
「わぁ………」
そんな大浴場に入ると、エイミィがほのかを見て溜息をもらす。
そんなエイミィに羞恥と警戒を感じるほのか。
「な、なによ…」
ほのかはそう言いながら胸元を隠す。
なぜならエイミィの視線は、ほのかの胸に向けられていたからだ。
「ほのか」
「何よっ?」
エイミィから漂ってくる空気に、ほのかは後ずさる。
「むいてもいい?」
「いいわけないでしょ!」
そんな会話をしながら騒いでいると、深雪もシャワーを浴びなおして戻ってきた。
そうすると、浴室は賑やかなさえずりで満たされた。
女の子のお喋りといえど、話題はオシャレと恋愛話だけではない。
しかし、、オシャレと恋愛話がお気に入りのテーマであることも事実だった。
故に、お湯に浸かりながらのお喋りは自然と昨日の懇親会で見かけた男性の話になっていた。
「―でさ、ドリンクバーのバーテンさんが素敵なおじさまだったってわけよ」
「えっ、あの人?あんな中年は好意もてないなぁ~」
「ナイスミドルといってほしいなぁ。私から言わせてもらえば、高校生なんて子供よ、子供。全然頼りにならないし」
「確かにね~。でも翔人君なんてどう?強いって噂だよ」
誰かが言ったその言葉に、ほのかの肩はビクッとあがる。
(どうしよ…雫の言ってた通り、翔人君はもてるのかな…?)
「確かに強いことには強いんでしょうよ、仮にも学年トップなんだし。でも私はまだ子供っぽいと思うな~」
「そう?私は充分大人だと思うよ。森崎とかに比べれば全然。それに顔もかっこいいし!」
「確かにかっこいいよね~。一高一年の男子の中じゃ間違いなく一番かっこいいよね!」
誰かがそう言うと、全員頷く。
(もちろん、ほのかや雫、深雪は除くが…)
「でもあれだけかっこいいんじゃ、彼女とか絶対いるよね…」
「そうなの、ほのか?」
そんな会話を聞いて、エイミィが疑問に思ったのか、ほのかに尋ねる。
「な、なんで私に聞くの!?」
明らかに動揺しながら、そう告げるほのか。
「?だって幼馴染でしょ」
何を動揺してるかわからないといった口調でほのかに告げるエイミィ。
そんな彼女の一言に、大浴場にいる女生徒全員の視線がほのかに向けられる。
「えっ?ほのかって翔人君と幼馴染なの?」
「う、うん。言ってなかったっけ?」
「聞いてないよ!それでどうなの!?翔人君に彼女はいるの?」
「い、いないと思うよ。まだ誰とも付き合ったことないらしいし」
動揺しながらも、なんとか言い切るほのか。
そのことに内心ホッとするほのかであったが、直ぐ後に投下される爆弾を彼女は知らない。
「そうなんだ~じゃあ私翔人君狙ってみようかな。顔はもちろんのこと、性格もいいし」
誰かがそう告げると、ほのかの顔は真っ青になる。
そしてそんなほのかを見かねた親友、もとい雫はこの日最大の爆弾を投下する。
「みんなだめだよ、ほのかをいじめるのは。ほのかは十年以上翔人に片思いしてるんだから」
「え?」
「ちょちょちょ、ちょっと雫!?」
「雫、それってどういうこと?」
そんな彼女の問いに雫は答える。
「私もほのかと同じで、翔人と十年以上の腐れ縁なんだけど、初めて会った時からほのかはずっと翔人のことが好きだったんだよね?」
答えておきながら、最後はほのかに疑問する形で終わる。
「ほのか!それ本当なの!?」
そう告げると、雫、深雪以外の全員がほのかに詰め寄ってくる。
そんな彼女たちに屈したのか、ほのかは本当だよ…、とゲロってしまった。
「おぉ~」
そんなほのかの言葉に歓声が上がる。
「でもさ、十年以上も好きなのに告白したりしないの?」
ぐはっ
何気ない質問にほのかはダメージを受ける。
(そ、そんないストレートに聞かなくても…)
そう思うほのかであったが、その質問には雫が答える。
「翔人は一高に入るまで数年間USNAに住んでたから。それに連絡先に連絡しても返事がなかったし、数年なんの音沙汰もなかった。…とは言っても、ほのかは翔人が日本にいても、告白してなかっただろうけど」
「雫!?」
雫がしっかりと説明してくれたと思ったのも束の間、最後にきちんと毒を入れてきていた。
そんな会話を聞いていたメンバーは、皆で顔を合わせ頷く。
そんな彼女たちを疑問に思ったのか、ほのかは質問する。
「皆、どうしたの?」
「ほのか…私決めたよ!ほのかにはジョーと付き合って、幸せになってもらうって!」
と、エイミィが彼女たちを代表して告げる。
「え、えぇぇ!?」
「十年以上も同じ人を好きでいられるなんて、なかなかできることじゃないよ!」
まぁほのかはエレメンツの末裔で依存癖があるのだが、と雫は言おうとしたが、面白くなりそうなので黙って話を聞いている。
「だからほのか、サポートは私たちに任せて!私たちのすべてをもってほのかとジョーをくっつけて見せるから。…みんな、異存はないかー!」
「「「おー!!」」」
そうして彼女たちは自分の握りこぶしをたたく掲げた。
そして、そんな彼女たちの勢いについて行けないほのかは、ただ茫然とその場を眺めていた。