九校戦二日目。
翔人は昨日と同じで競技を見に来ていた。
いや、昨日とは少し違うだろう。
なぜならここには翔人、ほのか、雫の三人しかいない。
達也がエンジニアとして動くため、今日は普段のグループで行動せず、各自自由行動となっていたのだ。
そのため昨日と同じで翔人は今日こそはホテルにいよう!と思っていたのだが、雫に部屋まで押しかけられまたもや断念。
男の部屋に押しかけるなんて普通じゃない、なんてことを言いたかった翔人だったがそこは雫だ。
いつものポーカーフェイスで乗り切られることだろう。
ほのかだったらその手が使えたのになぁ…なんて考えながら座りながら考える翔人。
(もちろん雫はそこまで考えて翔人の部屋に押しかけた)
「アイス・ピラーズ・ブレイクは二人とも参加する競技だから、しっかりと見学した方がいいよね」
座りながら告げるほのかの言葉に雫は頷く。
一方翔人は、
「そうか?戦い方なんて人それぞれだし他人の競技を見ても得られることなんてないと思うけど…」
と告げる。
そんな翔人の言葉に苦笑いのほのか。
「翔人はすぐそういうことを言う。まぁ間違っているとは思わないけどね。…でもいいことだってあるんだよ?この競技は魔法の殺傷性ランクが関係ないから、強い人が出るとかなり盛り上がるし」
「へぇ、そいつは楽しみだ」
そんな二人に置いていかれてると思ったほのかは、慌てて話題を自分から提案する。
「そういえば二人はもうどうやって戦うか決めてあるの?」
「あぁ、もう決まってるぞ。一条までは、それなりにほのかたちでも楽しめるような魔法を使うつもりだ」
「私も達也さんと話してもう決まってる」
そう告げる翔人と雫。
その中で翔人の言葉に疑問を持ったほのかが尋ねる。
「翔人君は楽しめるような魔法って言ってたけど、本気は出さないの?」
「まぁな。さすがに一条には力の差を見せつけるために全力で行くが、それ以外で本気出したら相手がかわいそうだからな」
「そ、そうなんだ」
「翔人の練習見てたけどあれなら納得」
そんな翔人の言葉に苦笑いのほのかと、あきれ顔の雫だった。
そんなことを話してると選手が入場を始めた。
「あっ千代田先輩だよ!」
ほのかのその言葉に三人はステージに視線を向ける。
「始まる」
試合開始と共に、ステージから地鳴りが生じた。
「へぇこれが地雷源か」
地雷源…振動系統・遠隔固体振動魔法、その中でも特に、地面を振動させる魔法だ
土、岩、砂、コンクリートなど、材質は問わない。
とにかく’地面’という概念を有する固体に強い振動を与える。
翔人がそう嘆くと相手陣内の氷柱が一度で五本、轟音を立てて倒壊する。
相手選手は移動速度をゼロにする魔法で防御を図るが、標的を変えて次々と炸裂する地雷源に切り替えが追いついていかない。十二本の柱の内、九本を倒されたところで、相手は防御優先から攻撃優先に切り替えた。
しかし、すでに時は遅し。
攻撃に切り替えようとしたところで相手の氷柱はすべて倒壊してしまった。
そして試合終了のブザーが鳴ると、翔人はつぶやいた。
「やけに思いっきりのいい戦法だな…嫌いじゃないけど」
「「うん…」」
花音の試合が終わり、現在は昼食中だ。
三人で話していると、ふと思い出したのか雫が二人に話しかける。
「あっ、そうだ。私この後、五十里先輩と達也さんとでスタッフ席で千代田先輩の試合見るんだけど、翔人も来る?」
「ん~…俺はやめとくよ。行ってもいいけど、そうするとほのかが一人になっちゃうからな」
「えっ!?」
翔人のその言葉に顔を赤く染めるほのか。
(えっ!?今翔人君私と一緒にいたいって言ったよね!?)
どうやら盛大に勘違いしているようだ…
「……そっか。そうだね、ほのかのこと考えてなかった」
そんなほのかを見て少し考えた後、雫は告げる。
「じゃあほのか、翔人のこと頼んだよ。ホテルに帰らせちゃダメだからね(このチャンスをものにするんだよ)」
「う、うん。分かってるよ!(む、無理だよ雫~)」
いやいやお二人さん、とツッコむ翔人は、ほのかと雫が心の中で会話をしてるなんて翔人は思う由もなかった。
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昼食を食べ終わり、雫と別れた二人は現在翔人の希望で屋台を散策していた。
「お昼食べたばっかなのに食べれるの?」
「男子高校生の胃袋なめんなよ」
そんな会話をしながら歩いていると、翔人の足が急に止まった。
それを疑問に思ったほのかは翔人に尋ねる。
「どうしたの翔人君?」
「………」
返事がない。
そのことにさらなる疑問を抱くほのか。
「おーい、ひーろーとーくーん」
「………こ」
「こ?」
「これはステイツにいたときの大好物、カリフォルニアチキンアボカドバーガーだ!!」
「え?」
やっと話したと思ったら、何やら興奮している様子の翔人。
その光景にほのかが唖然としていると、
「おじさん!これ二十個くれ!!」
「はいよ。でも兄ちゃんそんなに食えるのかい?」
「もちろん。俺の好物だからな」
「そいつは良かった。ほらよ出来立てだ」
「ありがとう、おじさん!」
翔人は包みを持って帰ってきた。
「ほのか!これ食べてみてくれよ!絶対うまいから」
翔人はそう告げると、包みの中から一つ取り出しほのかに渡す。
見るからにくどそうなハンバーガーだったが、翔人の好意に答えられない、なんてことできるはずもなく食べ始める。
「……え!?おいしい!」
「だろ!」
「見た目はくどそうなのに、随分さっぱりしてるんだね。これなら食後でも食べられるよ」
「だろだろ!…あっ!あれはニューヨークパインカレー!?あんなマイナーなものまであるのか!?もしかしたら他にも…あっ!あれはチョコチリコンカ―ン!?ここは天国なのか!?」
翔人がそう告げると、そこからは次々店に行っては買い、店に行っては買いの繰り返しだった。
最初こそはほのかも頑張って着いて行っていたのだが、時間が経つにつれ翔人に着いていけなくなったのか、今ではベンチで腰かけている。
というか荷物番だ。
翔人は無駄に買ってくるため、量がものすごいことになっていた。
そのため買うたびに戻ってきては、買いに行くの繰り返しなのだ。
普通ならそんな翔人に呆れるところだが、ほのかは違った。
(あんな楽しそうな翔人くん久しぶりに見たな…)
そう心の中で思い笑っていると、流石に疲れた顔を見せながら翔人が戻ってきた。
「あぁ…さすがに疲れた…」
「お疲れ様っ。それじゃあ冷めないうちに食べよ?」
「そうだな。じゃあ最初はこのミルクキャセロールから食べようぜ!これはな――――――――――」
そうして翔人の解説を聞きながら、ほのかは翔人と一緒に仲良く料理を食べ始める。
たまに通りかかる選手たちに、
「リア充め…」
なんて囁かれるが、自分の世界に入っていたほのかの耳には入らなかった。
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「おっ!これが最後か。これはな…「本日の競技は全試合終了いたしました。また明日のご来場をお待ちしています」
「「………」」
そのアナウンスに二人は固まる。
そしてあたりを見渡すとすでに日は落ち始めていた。
その事実に額から冷や汗が流れる翔人とほのか。
一分ほど固まっていた二人だったが、徐々に思考を回復させたのか翔人がほのかに告げる。
「なぁほのか…雫…さんには何て説明しよう…?」
「う、うん…ありのままのことを言ったらきっと怒ると思う…」
「だよな…よしっ、じゃあ口裏を合わせよう。雫は俺たちのこと会場で探してないだろうし、何とかなるだろ」
「そ、そうだね!なんとかなるよね!」
そう自己解決し、二人はホテルへと戻った。
P.S.
「あっ、ほのか、お帰り」
「た、ただいま、雫」
ほのかが自室に帰ると雫はラフな格好で端末を眺めていた。
そしてほのかが帰ってくると、すぐに話しかける。
「それにしても今日の試合はかなり見ごたえがあったよね。でもまさか千代田先輩が予選なんかで負けるとは思ってなかったけど…」
「えっ!?千代田先輩負けちゃったの!?……ってあっ!!」
「ほのか、わかりやすすぎ…」
騙した雫でさえ、ほのかの純粋さには呆れてしまう。
しかし、すぐに真面目な顔に戻りほのかに向き直すと、雫は告げる。
「…じゃあどこで何してたか吐いてもらおうか」
「えっ!?ちょ、ちょっと雫怖いよ!?」
「問答無用」
「きゃ、きゃー!!」
そうしてほのかと、部屋に呼び出された翔人は、仲良く説教されたんだとか…
P.S.のP.S.
「せっかく二人きりだったんだから、何か進展くらいしとけ!!」
「し、雫!?何か口調が変わっちゃってるよ!?」
「手をつなぐくらいじゃダメ……かといってキスも……やっぱりここはほのかの豊満な体を使って…」
「し、雫!?それ以上はダメだよ!」
どうやら雫さんは相当ストレスがたまっていたようです。