国語教師の平塚 静は青筋を立てながら、俺の作文を読み上げた。
こうして聞いていると、自分の文才の無さに泣きそうになってしまう。それを補うために小難しい単語を並べたりとそれなりの工夫を施したはずなのだが、もしかして俺の作文の出来が良かったから先生からのご褒美が貰えるかもしれない。
絶対違うよね。分かります。
平塚先生は読み終わると額に手を当てて俺を少し見ては深々とため息をついた。
「上崎、私が授業で出した課題を言ってくれないか」
「はぁ、『高校生活を振り返って』だと思いますが」
「そうだな。それでなぜ君は女性の胸の素晴らしさを事細かく書いているんだ?君は風俗ライターにでもなるつもりか?それともバカなのか?」
平塚先生はため息をつきながら俺に冷線を送ってくる。Mなら大歓迎だろうが俺は残念ながらMではない。……すみませんやっぱMです俺。
そういえば、今の状況だと周りの先生を除けば平塚先生と俺だけという状況だ。
即ちあんなことやこんなことが出来るのではないだろうか……ゴクリ。
そんなことを考えていると、紙束で頭をはたかれた。
「真面目に聞け」
「無理です」
「はぁ、君はあれだな存在自体が下ネタなのだろうな」
「それは褒め言葉として受け取ってもいいですか?」
ひくっと平塚先生の口角が吊り上った。
「上崎。お前の作文は何なんだ?一応言い訳なら聞いてやる」
先生の鋭い目がさらに鋭くなり俺を睨み付ける。だが、その目線など快感に変えれるんだよ。平塚先生あまりMを甘く見ないほうがいい。
「お、俺はちゃんと高校生活を振り返ってますよ。その作文にも書いてありますけど俺にとって青春とは女性の胸なんですよ。男が胸が好きで何か文句があるんですか!?」
人に自分の言いたい事を伝えるのは難しいことなのに、それが年上の女性だとなおさらだ。
「普通こういうときは自分の生活にを省みるものだろう」
「何言ってるんですか先生?ちゃんと省みてるじゃないですか性活を」
「性活じゃなくて生活だ!」
「だったらそう前置きしてください。性活じゃなくて生活だぞ間違えるなよ~、とか一言言ってください。これは先生の出題ミスであってですね」
「屁理屈を言うなガキが」
「確かに先生から見たら俺はガキですけど、何時かは大人の階段は昇るつもりでいますから安心してください!」
風が吹いた。
グーだ。ノーモーションで繰り出されるグー。先生の握り拳は俺の頬を掠めていった。
「二度は無いと思え」
目がマジだった。
「すみません。書き直します」
上崎は謝罪した。しかし、平塚先生はまだ許してくれない様子。いかん、土下座するしかないのか。そしてヒールとかで頭をぐりぐりと抉るんですね分かります。
「私はな、怒ってるわけじゃないんだ」
……また、このパターンか。
面倒くせぇパターンだよ。「怒らないから言ってごらん?」と同じパターンだよこれ。正直に述べたのに長い時間説教されたことは今も忘れない。
だが、平塚先生は本当に怒ってるわけではないらしい。俺は先生の様子を慎重に伺う。
平塚先生ははちきれそうな胸ポケット……俺と変われ。じゃなくて、セブンスターを取り出すと、フィルターをとんとんと机に叩きつける。おっさんくさい仕草だ。葉を詰め終わると、百円ライターでかちっと火をつける。ふぅっと煙を吐き出すと、至極真面目な顔でこちらを見据えた。
「君は部活をやってなかったよな」
「いいえ。やってますよ」
「嘘はやめろ」
平塚先生は右手に握り拳を作る。
「え、えと、すみませんやってませんから殴らないで!」
「……チッ」
舌打ちしやがったこの教師。
「……上崎、お前友達はいるか?」
友達がいない前提で聞かれた。
「精神感応能力を使ってるんですけど効果がなくて……」
「……いないんだな?」
「は、はい」
俺がそう答えると、平塚先生はやる気に満ち溢れた顔になる。
「そうか!やはりいないか!私の予想通りだ。君のように腐った性根をした奴はだいたい友達がいないことぐらいすぐにわかったぞ!」
分かってるなら聞くなよ。そこ指摘されると俺自身が悲しくなるから。
平塚先生は俺の顔を伺いながら、
「………彼女とか、いるのか?」
もう、先生でもいいやって思った俺は負けだろうか。
「PCにならたくさんいますけど?」
いやー、困るよねホントに。俺ってすごくモテるからってその目やめろ生暖かい目線を俺に向けるんじゃねぇ!。
「まだ、いませんよ」
可能性があると信じて、「まだ」の部分を強調して言った。
「そうか……」
先生は少し潤んだ目線を送ってくる。タバコの煙が原因だと信じたい。だからやめろってば!一番つらいのは俺なんだよちくしょう!。
先生はふぅっとため息混じりに煙を吐いた。
「よし、こうしよう。レポートは書き直せ」
ですよね。分かってましたよ、はい。
先生って絶対Sだよね。ここまで俺の心の傷を抉って何が楽しいの?しかも散々俺の心の傷を抉った挙句レポートを書けとかマジキチすぎる。
まぁ、しかしここまでは予想通りだ。多分、罰として何かしらの荷物運びなどの手伝いをさせられるのだろうと俺は予想していた。しかし俺の予想は外れた。
「だが、君の心ない言葉や態度は私の心を傷つけたことは確かだ。女性に年齢の話はするなと教わらなかったのか?よって君には奉仕活動を命じる。罪には罰だ」
「年齢のことやっぱ気にしてたんすね」
傷つていていると述べたが、とても傷ついているとは思えなくてむしろ俺に罰を与えれることを喜んでいるようだ。……俺のこと嫌いだろ先生。
しかし、罰を与えるのが嬉しいとかどんな性格だよ。仮にも俺は生徒だぞ。
「具体的に奉仕活動って……何するんですか?」
もう、嫌な予感しかしない。人間嫌なことがあると現実逃避をするが俺が今、ブラウスからのはちきれんばかりのけしからん先生の胸を凝視していることなのだろうな。
「ついてきたまえ」
灰皿にタバコを押し付けて平塚先生は立ち上がった。説明も前ふりもない急な提案に俺が止まっていると、扉の前で平塚先生はこちらを振り返った。
「おい、はやくしろ」
「……はい」
俺は項垂れながら重い足取りで先生の後を追った。
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