やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。 作:部屋長
あれから由比ヶ浜との一戦を終えて一時間ほど経った(言い方がおかしい)。今はソファでくつろいでる。
俺の腕に抱きついている由比ヶ浜を見て、この子が俺の彼女なのかと半ば信じられない気分になる。
というか、俺の腕がメロンに挟まれててやばい。でかすぎでしょ。ぜひぱふぱふしてもらいたい。
「えへへぇ……ヒッキー……ヒッキー」
俺の腕に頬を当ててころころと甘えてくる。可愛すぎて持ち帰りたい。
と、ここで疑問に思ったことがあったので聞いてみることにした。
「なぁ由比ヶ浜」
「んー? どうしたのヒッキー」
「お前さ、何か今日積極的じゃなかったか? 小町に何か言われたんだろ?」
あの由比ヶ浜がこんなに積極的になったんだもんな。由比ヶ浜はおバカでも空気を読むおバカだ(失礼)。自分から積極的に何かをすることは基本的にはないから疑問に思ってしまう。小町ちゃん一体何て言って由比ヶ浜をこんなにしたんだよ……。鏡花水月なんですか? 妹が完全催眠使えるとか怖すぎだな。
まぁ、最近はちゃんと自分の意見も言えるようになってるとは思うんだけど。
俺何様なのん?
「うーんとね、……えへへ」
やだ、やっぱりこの子ただのおバカだわ。頬が緩みきっててちょっとだらしないです。
まぁ今はそれも可愛らしく見えちゃうんだけど。恋は盲目ってのは言い得て妙だな。
「……で、なんなんだよ」
「えっとね、小町ちゃんが昨日の夜に教えてくれたんだ。ヒッキーがあたしと二人きりになりたいって言ってたって」
「それは今日来た時に聞いたな。それで?」
「あとは今のヒッキーならどんなお願いでも聞いてくれるって言ってたよ」
おうふ。小町ちゃんさすがに言い過ぎだよ……。
由比ヶ浜はお団子髪をくしくしいじりながら、更に爆弾発言をぽしょりと呟く。
「それを聞いたら我慢できなくなっちゃって……えへへ、ほんとにヒッキーとキスできちゃった」
「そ、そうか」
顔あっつ……。え、まじで? 由比ヶ浜さんちょっとデレすぎじゃない?
というかその言い方だと、由比ヶ浜俺にキスしてってお願いするつもりだったの?
俺が謎の俺様系を発動してなかったら「ヒッキー、あたしとキス、……して?(裏声)」とか言われてたのかな。なにそれ最高なんですけど。でも俺の裏声だから気持ち悪い。
「ヒッキーはさ、嬉しかった? その、あたしとキスできて」
上目遣いで瞳を潤ませて聞いてくる。これで普段から雪ノ下を落としてるのか……。
今度俺も試してみよ。完全に放送事故になりますねはい。
「……言わせんなバカ」
ここで素直に「結衣とキスできて俺も嬉しいよ!」なんて言えないわ。まず俺はそんなこと言うようなキャラじゃないし。
「むー! そこは嬉しいって言ってよー!」
駄々をこねながら俺の肩を揺する。ぐらんぐらんする。
腕はメロンに挟まれたままだから、揺らすたびに形を変えてむにゅむにゅされてる。
うん、今はこの感触を楽しもう。まじ天国。
「あー、はいはい。嬉しい嬉しい超嬉しい」
「言い方が雑すぎだし!?」
案外、付き合ってみてもいつも通りなんだな。付き合ったら目線も合わせられないくらい恥ずかしい! 的なことにならなかったぶんましか。
変わったのは体の距離くらいだな。この一時間腕にずっと抱きつかれてるし。
「ねぇねぇヒッキー!」
お前さっきからテンション高いな……。ずっとニコニコしてるし。八幡今日はもう疲れたよ。
「ん、なんだ?」
「ぎゅってして!」
「は?」
「だから、ぎゅってして!」
「え、なんで?」
「……だめ?」
その上目遣いずるいんですけど……。それすれば何でもできると思うんじゃないぞ!
「はぁ……ん」
由比ヶ浜には勝てなかったよ……。フラグ回収速度の速さにびっくり。
由比ヶ浜の目の前で手を広げる。はい、いつでも飛び込んで来てください。
「えへへ!」
満面の笑みを浮かべ、由比ヶ浜は俺の腿の上に乗り首に手を回して抱きついてきた。
顔が近いし吐息が甘くてくすぐったい……。
「……お前恥ずかしくねぇの?」
率直な質問をすると、由比ヶ浜はにひっと微笑む。なんかそれ小町っぽいな。
「恥ずかしいけどヒッキーとぎゅってするほうがいいもんね!」
「……そうですか」
「うん! そうですよーだ!」
なんでそんな小っ恥ずかしいことを言うんですかね……。
今のって恥ずかしさより嬉しさのが上回ってるってことだろ?
それ、言われたこっちは恥ずかしいだけわ。
いや、まぁ、嬉しくないこともないんだけど……。
「だからさ……、ヒッキーもあたしにぎゅってして?」
さすがに恥ずかしくなったのか頬を朱に染めた。多分俺は真っ赤になってる。
……まぁ、可愛い彼女のお願いだしな。
「……はいよ」
背中に手を回して抱きしめると甘い吐息が漏れる。
「んっ……ありがと」
「……ま、このくらいならいつでもしてやるよ」
「ふふっ、なんかヒッキーらしくないね」
「うっせ」
俺だってそんなこと分かってるわ……。
「えへへー、ヒッキーっ」
由比ヶ浜は抱きしめる力を強めて、耳元で楽しそうに俺の名前を呼ぶ。
「ん、今度はなんだ」
「あはは、呼んでみただけだよー」
……んー、ちょっと可愛すぎる。
なんというか、幸せってこういうことなんだなって思ってしまった。気持ちが満たされるというかなんというか……。
「てかあたし重くない? お正月食べすぎちゃったからなぁ……」
「いや、全然重くないぞ。むしろ柔らかい」
女の子に重いなんて言ったら小町に殺されるしな。
というか、本当に重くないし。心地よい重量感って表現の仕方が正しい気がする。抱き枕にしたい。
「や、柔らかいって……。ヒッキーのえっち……」
恥ずかしそうに目を伏せる彼女を見て、ちょっと意地の悪いことを思いついてしまった。
さっきから色々とやられっぱなしだからな。もっと恥ずかしがってもらうとするか。
「えっちなのはお前の体だろ? それとも今押しつけてるのも俺を誘惑するためか?」
右手で頭を撫でて左手は抱きしめる力を強める。
そして、耳元で吐息混じりの声で囁くと、由比ヶ浜は面白いほどぷるぷる震えた。
というか、全然俺っぽくないな。この人誰ってレベル。
「あうぅ……そ、そんなこと……」
身体をよじりながらも、俺に抱きつく力を強めてくる。
え、なに、やっぱり誘惑してるの?
「結衣……可愛いよ……」
よし、これでチェックメイトだ。うん、完全に自爆してますね。
くっそ恥ずかしい……。名前で呼ぶのはもう少し先になりそうだな。
「……う、嬉しい! ヒッキーが初めて可愛いって言ってくれた!」
顔から湯気が出るんじゃないかというくらいに恥ずかしがるだろうと思っていたが、由比ヶ浜は俺の予想の斜め上の反応をした。
あんれー? なんで恥ずかしがんないの?
これだと俺が恥ずかしい思いしただけなんですけど……。
「ヒッキー大好きっ!」
嬉しそうに笑みを浮かべて、唇を重ねてきた。ほんと唇柔らけぇな……。
はぁ……やっぱり由比ヶ浜には敵わないわ……。
「ん……お前なぁ……。不意打ちはずるいぞ」
恥ずかしくて彼女の顔を見れないからそっぽを向いて言うと、俺の言うことなど意に介さずに幸せそうに笑う。
「あはは、またヒッキーとキスできたー」
なに、この子酔ってるの? って思うくらいにバカ面してるわ。そんなに可愛いって言われるのが嬉しかったのか。
じゃあもっかい試してみるか。
「由比ヶ浜ー、可愛いぞー」
うん、超適当。また「言い方が雑すぎだし!(裏声)」とか言われそう。似てないからもう真似すんのやめよ。
「えへへ……、ヒッキーもかっこいいよ!」
「そ、そうか」
もうこの子だめなんじゃないだろうか……。
学校で同じテンションで来られたらちょっとやばいな。主に周りの視線とか。
「ね、ヒッキー」
今度はなんなんですかね……。さっきから無茶振りばっかりだからつい身構えてしまう。
「ん、なんだ」
「今日お泊まりしていい?」
「へ? まじで?」
えぇー……。それは色々と心の準備が……。
確かに小町も結果次第じゃ帰ってこないって手紙に書いてあったけど。
しかもご都合主義で親はどっちも仕事。しかも帰ってこないんだよな。
……これなんてエロゲ?
「……今日はヒッキーと一緒にいたいな……、だめ……かな」
少し困ったように眉尻を下げ、瞳を潤ませながら上目遣いでこちらを見てくる彼女に。
「……喜んで」
結局俺は、そう答えるしかなかった。
だからその上目遣いずるいんだよ。それされたら何でもお願い聞いてあげたくなっちゃうだろ……。だからむやみやたらに連発しないで欲しい。
や、可愛いから別にいいんですけどね。完全に由比ヶ浜の虜にされてるな俺……。
さすがビッチだわ。これ言ったら本気で怒られそうだな。
「やったー! ヒッキー大好き!」
はぁ……彼女と一緒にいると色々と騒がしくなりそうだし、色んなとこに連れ回されたりして大変なんだろうなーと思ってしまう。
それでも、彼女とならそれもいいんじゃないかと。
不思議と、そう思えた。
……ま、今はこれからのことより今日の夜について考えなきゃな。
理性が崩壊しないことを祈りつつ、満面の笑みを咲かせる彼女を、俺は優しく抱きしめた。
初めての連日投稿です。これにてガハマさん√終了ですがいかがでしたか?
アフターを匂わせる終わらせ方ですがもちろん書く予定です!更に甘いお泊まりデートにできるよう頑張ります。そのアフターがいつになるかは分かりませんが……。
次回のヒロインは未定です!なるべく週一更新はできるように頑張ります!
ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!