やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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ゆきのん√ラストです!


やはりどこまでいっても、雪ノ下雪乃には敵わない。【後編】

 

 特に目的もないので何か目に付いたらそこへ行くという方針が決まった。なので適当にぶらぶらと歩いているけどさっきからもの凄く居心地が悪い。

 なんでかって? そりゃもちろん視線がめっちゃ痛いからです。

 なんというか、あれだ。雪ノ下の雰囲気がいつもと全然違うのだ。

 柔らかい雰囲気というかなんというか。まぁ手も柔らかいんだけど。それによって雪ノ下が人目を集めている。

 そんな感じで通りすがる人らにめっちゃ見られる。特に男。

 雪ノ下に見惚れてから俺のことを見て「なんでお前みたいな奴がそんな美人とデートしてんだよ!」的な視線がやばい。

 怖い。死んじゃう。

 

「お前すげぇな……」

 

「なにがかしら?」

 

「や……別に何でもない」

 

 俺の辛さなど知らないかのように、ぽけっとした表情で首を傾げられた。

 そういうのやめろよ。ちょっと普段より幼い感じに見えて可愛いから。

 

「比企谷くん、あそこ」

 

「え、なんで服?」

 

 雪ノ下が指さす場所はメンズファッションが人気なブランド店だった。別にファッションとか興味無いから人気かは知らんけど(矛盾)。

 

「比企谷くんに似合う服を見繕ってあげるわ」

 

 ふむ。今までデートとかしたことないから分からんけど、人のを選ぶのも楽しいものなのか。

 ぽぽちゃんの服を着替えさせる的な感じだな。それは違うか。まずあれ知育人形だし。

 

「…………」

 

 雪ノ下はむむむっと悩みながら服を選んでいる。

 でも手は繋ぎっぱなしです。片手で頑張ってるけど手に持っている服はぷらんぷらん揺れている。

 

「手、離すか? それじゃ服持ちづらいだろ」

 

「……でも」

 

 ちらっと繋いである手を見ながら何かを迷ったように口をもにゅもにゅと動かす。

 

「はぁ……別にまた繋げばいいだけだろ」

 

「……そうね」

 

 雪ノ下は手を離して服選びを再開した。その顔はどこか嬉しそうで思わず見惚れてしまった。

 ……ひとつひとつの行動の全部が可愛すぎる。なんでそんな嬉しそうなんですかね……。萌え死んじゃうよ?

 

「これなんかあなたに似合うんじゃないかしら?」

 

「ええ……そんなん葉山が着るようなやつだろ」

 

「デート中に他の男の名前を挙げないでくれるかしら」

 

「え」

 

 それ普通女の名前のときだけだろ……。

 

「いいから。とりあえず試着しなさい」

 

 まさかの命令形です。拒否権はないらしい。

 試着室に入りぱぱっと着替える。多分暖房ついてなかったら寒さで死んでた。

 

「……どうだ?」

 

 調子に乗ってくるっとターンしてみました。

 

「……やっぱりいつも通りのがいいわ」

 

 どうやらダメだったようです。うん、知ってた。

 だって葉山レベルのイケメンじゃなきゃ似合いそうにないもんこれ。

 多分、分かってて雪ノ下はこれを選んだと思う。だって肩震わせて笑うの堪えてるし。

 げんなりしつつも自分の服に着替え直してから店内を後にする。

 ……あ、自分で言ってたのに忘れてた。

 

「ん」

 

「……ふふっ」

 

 手を差し出すと顔を綻ばせながら雪ノ下が手を握ってくる。

 本当に可愛すぎて辛いんですけど。

 周りからの視線を浴びながら(怖い)、いい店ないかなーと歩き続ける。

 

「なぁ雪ノ下」

 

「なにかしら?」

 

「お前何か欲しいものあるか? せっかくのデートだしなんか好きなものがあれば言ってくれ」

 

 自分で選ぶのも有りだろうけど俺センスないからなぁ……。それにこっそり一人で買ってサプライズは不可能だろうし。だって雪ノ下さん手離してくれないと思うしね。

 ……それに俺もあんまり手離したくないしな。

 

「あなたにしては気が利きすぎて怖いわね」

 

「まぁ普段から小町にしつけられてるからな」

 

 小町が言わなきゃまず今日のデートもなかったしな。 

 

「……なら欲しいものはデートの最後に言うわ」

 

 神妙な面持ちで雪ノ下が言った。そんなに欲しいものがあるのか。

 ……雪ノ下が欲しいものってなんだろうか。考えてもパンさんくらいしか出てこないな。あとは猫。

 

 その後も。

 

「これ何に使うんだ?」

 

 雑貨屋でよく分からないものを手に取って二人で悩む。

 

「……分からないわ。あなたみたいね」

 

「なんでだ?」

 

「あなたもこれも使い道がなさそうだもの」

 

「人をガラクタ扱いするのやめてね?」

 

 雪ノ下に楽しそうにいじられたり。

 

「猫……」

 

 ペットショップにて猫に夢中の猫ノ下さんです。

 

「可愛いな」

 

「ええ」

 

「……雪ノ下のが可愛いぞ」

 

「猫のが可愛いに決まっているわ」 

 

 勇気を出したのに予想の斜め上の反応をされたり。

 

「眼鏡?」

 

「かけてみて」

 

「……ん」

 

 手近にあった黒縁の眼鏡をかけてみると雪ノ下はぽかんとした表情になる。

 

「……誰?」

 

「え、そんな変わる?」

 

「え、ええ。見違えるほどに変わっているわ」

 

 試しに近くにある鏡を覗いてみた。

 

「お、おお……」

 

 なんか目の濁り具合が隠されてて気持ち悪い。誰これってレベル。

 

「やっぱりあなたはいつも通りの方がいいわ」

 

「え、なんで?」

 

「……見てくれだけで他の女性があなたに寄ってきたら困るもの」

 

「……そうか」

 

「ええ、そうよ」

 

 恥ずかしい思いをしたりしているうちに時間はあっという間にすぎていった。

 

 時間もいい頃合になったので、あと一つくらいどっか寄ってから帰ることにしようという話になった。どこにするかと周りを見渡すとゲームセンターが目に入る。

 と、ここで雪ノ下の足がぴたっと止まる。なんか既視感があるぞコレ……。

 雪ノ下はその中のクレーンゲームに視線が釘付けになっている。

 あぁ……そういうことね。

 

「……行くか?」

 

「……ええ」 

 

 おお、燃えていらっしゃる。前はクレーンゲーム失敗してたしな。負けず嫌いさんのことだし今回はやる気満々ってことか。

 千円札を両替機に入れてきてからクレーンゲームの前に立つ。

 

「……今回の私は一味違うわ」

 

 クレーンゲームにそれ言っても返事ないからね? どんだけ闘争心むき出しなんだよ。

 百円玉を入れると「ふええ……」と間抜けな機械音がする。なに? パンさんの奴は全部間抜けな声がすんの? 

 もうちょっと「キュインキュイン」みたいな音出せよ(どうでもいい)。

 

「…………」

 

 今回は以前とは違くやり方は分かっているので俺は雪ノ下に後ろでぼーっとしてることにした。邪魔なんてしたら殺されそうだし。

 クレーンを右方向へ移動させて、今度は奥へと動かす。相変わらず上手いな。こいつ何でもセンスあんじゃねぇの?

 そしてクレーンは「ふええ……」と言いながらパンさんを掴みあげようとした。

 うん、クレーンあざとい。

 

「…………」

 

 雪ノ下さんは動かずにクレーンを無言で見ていらっしゃる。後ろにいるから表情は見えないけど「勝った……!」って感じでドヤ顔になってるんだろうな……。

 まぁ例のごとくクレーンは「ふええ……」と言って、パンさんをぽろっと取り落とすと、そのまま所定の位置へと戻る。

 この後、何度も繰り返したが、結局両替した千円全てがクレーンちゃんに飲み込まれてしまった。

 止めればよかったと思うけど雪ノ下やる気満々だったしな。

 

「比企谷くん」

 

 こっちを向かずに声だけで呼ばれたので雪ノ下に横へ行く。

 

「ん、なんだ」

 

「……とれない」

 

 俺の服の袖をぎゅっと掴みながら上目遣いの涙目で見つめてくる。可愛いすぎて死ぬ。

 まぁ実際のところ、パンさんの位置はあと何回か繰り返せば落ちそうなんだけど、10回も連続で失敗したからだろうか。雪ノ下はもう冷静な判断ができなくなってるっぽい。

 クレーンちゃん(あざとい)恐るべし。雪ノ下に勝ちやがった。

 

「よし、任せろ」

 

 両替機に千円札をぶっ込んでから速攻で戻ってくる。

 今回は『代わりに取ってくれるサービス』は使いたくない。なんかさっきの「……とれない(裏声)」でやる気出ちゃったし。俺が言っても気持ち悪いだけだな。

 百円玉を投入して、クレーンを動かす。

 クレーンを動かしていい位置に持っていくと、クレーンはパンさんを掴みあげようとするがほんの少ししか動かない。

 

「……もう一回」

 

 2回目も見事に失敗する。5回やって無理なら店員に頼もう。やっぱ無理だよこれ……。よく雪ノ下こんなに動かせたな。これがパンさんに対する愛か。

 雪ノ下は俺の隣で固唾を呑んで見守っている。

 3回目の投入。クレーンを動かす。クレーンが「ふええ……」と言いながらパンさんを掴みあげる。

 もっと気合い入れろ! その鳴き声そろそろイラッとしてきたから!

 俺の願いが届いたのかクレーンがパンさんの首にいい感じに引っかかり、そのままごとっと落ちる音がした。

 うん、二度とクレーンゲームはやらない。「ふええ……」がイラッとした。

 

「ほれ」

 

 雪ノ下にパンさんを渡すとほんの少しだけ困った顔をする。

 

「……いいの?」

 

「そりゃな。お前があそこまで動かさなきゃ取れてなかったんだし」

 

 多分俺の場合は何回か繰り返せば誰でも取れたしな。

 

「……ありがと」

 

 顔半分をパンさんに埋めながらぽしょりと嬉しそうに呟いた。

 うん、いい仕事した。

 

 

××××××

 

 

 時間もいい頃合だったのでパンさんを取ってからそのまま帰宅することになった。

 なので今は雪ノ下を送って帰っている最中だ。雪ノ下は平気だって言ったけど外は暗いしな。これで送ってないとか言ったら小町に何て言われることか……。

 今はお互い無言で歩いている。なんかパンさん取った後からお互い気恥ずかしくて顔を合わせられなくなってしまった。

 もちろん手はずっと繋いでいる。なんなら電車内でも繋いでたまである。周りの視線はもう気にするのはやめた。

 ……あえて言及はしなかったけどデートの序盤から恋人つなぎになってたんですよね。雪ノ下が乙女すぎて辛い。

 と、ここで雪ノ下の住んでいるマンションに着く。相変わらずでかいな……。

 どちらも名残惜しいのか手を離せないでいると雪ノ下がこっちを見る。

 

「比企谷くん」

 

「ん、なんだ」

 

「……手、離してもらえるかしら」

 

「す、すまん」

 

 どうやら名残惜しかったのは俺だけだったようです。やだ、自意識過剰すぎて顔が熱いわ。

 急いで手をぱっと離すと雪ノ下は呆れるようにため息を吐く。

 

「別に嫌というわけではないのよ? ただもう家に着いたから」

 

「お、おう」

 

 ふー、よかった。うっかり死んじゃうとこだったぜ。

 

「……そういえばあなた、私に欲しいものがあるかと聞いてきたわよね?」

 

「そうだな」

 

 完全に忘れてたけど。結局親父にもらった金ほとんど使ってねぇな。

 

「……私、欲しいものがあるの」

 

「なにが欲しいんだ?」

 

 聞くと、雪ノ下が俺に近づいてきて両手を首に回してきて、そのまま唇を重ねてきた。

 …………は? え、どういう状況?

 

「んっ……」

 

 唇を重ねながら雪ノ下が甘い吐息を漏らす。

 やばいやばい近い近いいい匂い柔らかい!

 いきなりのことすぎて思考が定まらなくなる。ただ分かっているのは雪ノ下の唇が柔らかいってことだけだ。

 

「私が欲しいもの。比企谷くんをいただくわ」

 

 唇が離れると、雪ノ下は俺に抱きついたまま頬を桜色に染めた。

 そして、目を細めて、いたずらっぽく笑いながらとんでもないことを言ってきた。

 ええ……まじで? ここに来てそれってあり?

 俺が言葉を詰まらせていると雪ノ下は気まずそうに目を泳がせる。

 

「なにか言ってくれないと恥ずかしいのだけれど……」

 

「……ぜひよろしくお願いします」 

 

 この返事の仕方が正しいのか分からないけど、雪ノ下は満足したのか嬉しそうに微笑みながらもう一度唇を重ねてきた。いや、ここ外だからね?

 はぁ……完全にやられた……。結局最後の最後で思いっきり心を持ってかれたのは俺だな……。

 

「もちろん今日は私に家に泊まっていくわよね?」

 

 抱きつくのをやめ、俺から離れた雪ノ下が言う。

 

「え、まさかのお持ち帰りですか?」

 

「ええ、もちろんよ」

 

 どうやら今日で俺は食べられてしまうそうです。

 ……まぁ雪ノ下が嬉しそうだしいいか。

 温かな微笑を浮かべた雪ノ下と、どちらかともなく手を握って俺たちは歩き始めた。




UA11万、お気に入り1300突破です!いつもありがとうございます!ゆきのん√いかがでしたか?もちろんアフターもありです。

と、ここで2つほど宣伝です。長くなるので今回の内容忘れる前に先に感想や評価お願いします!

では、お話します。

・活動報告でリクエストを取ることにしました。内容は「どのヒロインで〜をやって欲しい」みたいな感じです。自分ネタを思いつくまでめっちゃ時間がかかるので参考にしたいので是非お願いします。書けるかは分からないですけど書けたら書きたいです(多分)。
皆さんの意見が多ければ多いほど更新頻度も早くなるかと思います。

・ツイッターやってます。

@qZqlIQCHmc3Bmsi

こちらでもリクエストを取りたいと思います。DM待ってます。今は他の書き手さんとそれなりにお話したりと仲良くさせてもらってます。
それにほら。活動報告だとあれじゃないですか?味気?とかないですよね!なので皆さんとお話もしたいなと思いまして。ある程度仲良くなれたらちゃんとフォロバします!

長くなりましたが以上です。ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!

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