やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

27 / 55
雪ノ下√本編のアフターです。久しぶりなので内容を忘れた方はぜひ本編も読んでくれたら嬉しいです。ちなみに猫耳ゆきのんより前の話なので注意してください。


やはり俺が彼女にお持ち帰りされるのはまちがっていない。【前編】

「どうだった?」

 

「……ほんと美味しかった。ごちそうさまでした」

 

「ふふっ、それはよかったわ」

 

 俺は今、雪ノ下の家で夕食を食べ終えた。何でこんな状況かって? 一言で言ってしまえばあれだ。

 

 お持ち帰りされたからです、はい。

 

 デートに誘った俺が言うことではないけど、まさかここまで関係が一気に進展してしまうとは思わなかった。まぁデート中の雪ノ下意外とルンルンだったもんね。超可愛かった。

 ……それに最後の最後まで「欲しいもの」を取っといて言ってきたのがこの言葉だし。

 

『私が欲しいもの。比企谷くんをいただくわ』

 

 あんな可愛い顔でこんなこと言われたら落ちるに決まってるだろ……。欲しいものが俺とかもうほんと反則だと思うんですよね……。

 でもここからが問題だ。だ、だってお持ち帰りですよ? ここから先の展開って、そりゃもちろん……ねぇ?

 ……自分で言ってて気持ち悪くなってきた。

 煩悩まみれの頭で色々考えていると、食器の片付けを終えた雪ノ下がエプロンを着けたまま戻ってくる。ちなみに俺はソファーで寝そべってた。自堕落の極みである。

 

「そういやそのエプロンまだ使ってるんだな」

 

「ええ、もちろんよ。大事な物だもの」

 

 雪ノ下はエプロンを見て柔らかく微笑み、たたんだそれを大事そうにぎゅっと抱きしめた。

 

「へぇ、そんなにお気に入りなのか。あ、猫のマークあるからか」

 

「あなた、覚えていないの?」

 

「は? 何が?」

 

 俺の間抜け面に呆れるようにため息を吐く雪ノ下。そして、小さな声でぽしょりと──。

 

「……似合ってるって言ってくれたのに」

 

 呟く声があまりに小さくて聞き取れなかった。だが、雪ノ下の表情は少しだけ曇っていて、明らかに拗ねているのがよく分かった。

 何か悪いことをしてしまった気分だ。と、とりあえず何か言わなくては……。

 

「つーかほんと美味かったわ。まだまだ食える」

 

「今の比企谷くんは素直すぎて気持ち悪いわね。何を企んでいるのかしら?」

 

「いや、何も企んでないし本当に美味かったから言っただけだ。こんな美味い飯作れんならいつでも嫁に出れると思うぞ」

 

 嫁という単語に雪ノ下の動きがぴたりと固まり、顔を真っ赤にしたまま俯いてしまう。多分俺も真っ赤。

 うん、流れるようにやらかしちゃいました☆

 

「よ、嫁って……それは気が早いわよ比企谷くん。ま、まずはご両親への挨拶をしてからじゃなきゃ……」

 

「いや、さっきのはそういうことじゃなくてだな……。つーか話飛躍しすぎだろ」

 

 そういう関係になったばっかなのに何話してんだ俺ら……。これも全部雪ノ下がいつもとテンション違うからだ。まぁ可愛いからいいんだけど。

 そのテンションおかしめの雪ノ下はほっぺたをうにうにと動かしていた。何してんのこの子と思ったけどニヤけそうなの我慢してるのね。

 ……雪ノ下がデレデレすぎて辛いです、いやマジで。

 

「……ばか」

 

「いや、ほんとすみません……」

 

「……あなたは婿のがいいの?」

 

「だからそういうことでもなくてだな……」

 

 すごい、雪ノ下さんが浮かれてるよ……。こんな雪ノ下見たことないから可愛すぎるんだけど……。

 その雪ノ下はといえば、

 

「比企谷くんはもうお腹いっぱいよね?」

 

 唐突にそんなことを聞いてきた。

 

「そうだな。かなり食ったし」

 

「苦しいわよね?」

 

「ま、まぁ少しだけな」

 

 何が言いたいんだろうか。あれ? これもしかしなくても誘導されてない?

 

「……ひざまくら」

 

「はい?」

 

「ここで横になってもいいのよ?」

 

 頬をほんのりと朱に染めながら、俺の隣に座ってぽんぽんと自分の太ももを叩く。ちなみに雪ノ下はまだ着替えていないので下の服装はミニスカの黒タイツのまんまです。

 うん、こんなの断れるわけないよね!

 

「……お邪魔します」

 

 言って、俺は雪ノ下の太ももに仰向けで頭を乗せる。

 

「ん……」

 

 くすぐったかったのか、雪ノ下は小さな吐息を漏らした。

 

「ふふっ」

 

 何が楽しいのか雪ノ下は穏やかな微笑を浮かべながら俺の頬をゆっくりと撫で始める。

 ……何か恥ずかしいんだけど。

 

「……この後はどうすんだ?」

 

「お風呂はもう少しで大丈夫だけれど先に入る?」

 

 言いながら雪ノ下は小首を傾げる。下からのアングルだとまた別の可愛さが……。

 ていうかいつまで俺の頬撫でてるんだよ。やめろむにむにさせないで恥ずかしいから。

 

「あー、俺が先でもいいのか? その、気持ち悪くないか?」

 

「今さら何を言うのよあなたは……。私が先に入ったらあなたがそのお湯で何をするか分からないからそっちの方が気持ち悪いわ」

 

「そこまでイカれた性癖は持ってません……」

 

 この子俺のことなんだと思ってんの……。あ、あれ? 俺って雪ノ下の彼氏になったんじゃないの……?

 

「へぇ、比企谷くんはそこまでじゃないにしても特殊な性癖を持っているのかしら?」

 

 くすくすといたずらめいた表情で微笑み、そのまま俺のほっぺたをうにうにぐにぐにと動かす。

 な、何か悔しいので反撃しなくては……。

 

「……ま、まぁ強いて言うなら雪ノ下フェチ……とか?」

 

 ……自分で言ってて吐き気がしてきた。今なら材木座と同じくらい気持ち悪い自信がある。

 

「あ、そ、そう。ずいぶん変な性癖を持っているのね……」

 

 悪態をつく雪ノ下だが、その頬は真っ赤になりながら緩んでいて。

 やっぱりそんな彼女が心底可愛いと思えてしまう自分がいた。

 あー、つーかほんと恥ずかしいわ……。雪ノ下の顔見ると俺まで顔赤くなりそう。

 仰向けの状態の俺はぐるんと半回転してうつ伏せの状態になる。……膝枕されてるの忘れてた。

 

「ひゃっ!」

 

 急に動かれたことにくすぐったかったのか雪ノ下が可愛らしい声を上げる。

 

「急に動かないでもらえるかしら。そ、それにあなたは足フェチの気もあるの……?」

 

 頭上から聞こえてくる雪ノ下の声音は少しだけ不安そうに震えていて、それでいて期待も入り混じっていた。

 

「……どうだろうな」

 

 その期待に答えるように俺は雪ノ下の太ももに顔を埋めながらつつーっとその太ももを指で撫でた。

 

「んんっ……」

 

 甘い吐息を漏らす雪ノ下。顔は見えないがきっと頬を真っ赤にさせながら震えているのだろう。

 その姿を想像しながら俺は少しずつゆっくり、ゆっくりとその指を少しずつ上に這わせていく。

 

「んっ、んふぅ……あっ、だっ、だめ……」

 

 吐息混じりの甘ったるい声が少しずつ大きくなり、そろそろヤバいと思ったところで雪ノ下が手をぎゅっと握って止めてくる。もう片方の手は俺の頭を撫でてきた。

 ……危なかった。正直興奮しすぎて止めるタイミングが分からなくなってた。

 

「今はまだ……ね?」

 

「……ん、分かった」

 

 むくりと身体を起こすと、頬を上気させて息を荒らげた雪ノ下がいた。顔を合わせるのが恥ずかしいのかすぐにぷいっと顔を逸らさせる。

 

「……そろそろお風呂も大丈夫かしら。タオルは後で持っていくから先に行ってていいわよ」

 

「でも俺こんなことになるとは思ってなかったから下着とかないぞ?」

 

「それは大丈夫よ。男性用の物は昨日のうちに揃えておいたから」

 

 雪ノ下のその言葉に違和感を覚える。昨日のうちに揃えておいた……?

 

「……なぁ雪ノ下」

 

「なにかしら?」

 

「何で昨日のうちに男性用の下着を買ってるんだ?」

 

「あ……」

 

 赤みが引いてきた頬が再び真っ赤に染まる。墓穴を掘ったようです。

 デート中はさんざんドキドキさせられたからな。今こそ攻めるチャンスだ……!

 右手は雪ノ下の頭の裏に回し、左手は腰に回してそのままドサッとソファーに押し倒す。

 

「あ……っ」

 

 押し倒された雪ノ下は恥ずかしそうに顔半分を手で覆う。覆っていない瞳からは何かを期待するような熱の篭った視線を送ってくる。ドキドキしすぎて死にそうだけど今は俺の番だ。

 

「なぁ、どうして買ってたんだ? 最初からずっと俺のこと連れて帰ろうとしてたのか?」

 

「あ、や、そ、そんなこと……」

 

 覆っている手をどかして、まっすぐと雪ノ下を見つめる。

 

「どっちなんだ?」

 

「……言えないわ」

 

「何でだ?」

 

「だ、だって、恥ずかしいもの……っ」

 

 雪ノ下は顔を真っ赤にして羞恥に泣きそうな表情を浮かべながら小さな声でぽしょりと呟く。

 ……駄目だ。雪ノ下相手に攻めようとすると俺が恥ずかしくて死にそうになる。

 

「そ、そうか……」

 

 そんな空返事をして身体を起こそうとすると、雪ノ下は俺の首に両手を回してきて──。

 

「んっ……」

 

 唇が触れると、甘い吐息が漏れて唇にとろけるような甘さが染み込んでいく。帰り道にした時よりも熱のある唇が俺の唇が、もっともっとと言わんばかりに何度も、何度も唇を重ねてくる。

 積極的な雪ノ下の行動に頭が焼かれるような感覚に陥りながら、俺はただそれを受け入れるしかなかった。

 

「ぷはっ……ゆ、雪ノ下……」

 

「……もう。あなたがあんなに言ってくるのが悪いのよ?」

 

「や、だって雪ノ下の反応があまりに可愛いすぎてな……」

 

「そ、そう……それなら、その……許してあげなくもないわ」

 

 雪ノ下は嬉しそうに笑みを浮かべ、頬を朱に染めた。

 あまりに可愛いすぎて何で上から目線なのかはもう気にすることもできなかった。

 

「じゃあそろそろ風呂入るわ」

 

「ひ、比企谷くん」

 

 立ち上がると、雪ノ下に服の袖をきゅっと掴まれる。振り返ると雪ノ下は何か言いたそうに口元をもにゅもにゅと動かしていた。

 

「どうした?」

 

「そ、その……」

 

 珍しく歯切れが悪い雪ノ下だが、その恥ずかしさを我慢したように顔を真っ赤にしながらまっすぐ見つめてきて──。

 

「……お風呂、一緒に入らないかしら……?」

 

「へ……?」

 

 今この子、何て言った……?

 




次回、ドキドキです。あ、話の順番を変えてみましたがどうでしょうか……?

このゆきのん√アフターと同じタイミングに「この素晴らしい世界に祝福を!」のssを投稿しました。作者のページからならすぐに読めると思います!
このすば好きな方でも知らない方でも見てくれたら嬉しいです!

pixivのほうでは同級生いろはすを書いてます。こっちのイチャイチャよりちょっとだけ過激に書いたりしてます。こちらもよろしければぜひ!

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。