やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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実は大魔王が超絶ぴゅあぴゅあ天使なのはまちがっていない。【中編】

 

 陽乃さんとエンカウントしてから数日。あの日からは特に何もなく今は部室でのんびり放課後ティータイムをしている。

 てっきり陽乃さんから仕掛けてくると思ってけど俺の考えが甘かった。今更だけどあの時って俺が勝手に陽乃さんのこと抱きしめて、「また今度」とか勝手に言っただけなんだし陽乃さんから来るはずがないよな。

 うん、ほんと今更だわ。通報されないよね? 

 小町置いて捕まるわけにはいかないし今度会ったらまず土下座した方がいいのかな……。

 

「比企谷くん」  

 

 どうするべきかうんうん悩んでいると、雪ノ下が話しかけてくる。いつもは由比ヶ浜とゆるゆりしてるだけなのに珍しいな。

 

「ん、なんだ」

 

「動きが挙動不審で気持ち悪いわ」

 

「あ、そう……」

 

 珍しいのは俺の行動の方だったようです。そんなに挙動不審になってるつもりはなかったんだけどな……。 

 まったく雪ノ下さんったら酷いんだから。もうちょっとオブラートに包んでくれてもいいじゃないですか。ガハマちゃんも苦笑いしてないで助けてくださいよ。

 

「比企谷くん」

 

「……今度は何ですか」

 

「最近姉さんの機嫌が良いのだけれど何か知っているかしら?」

 

 陽乃さん機嫌良いのか。そりゃ良いことじゃないですか。問題なのは何故それを雪ノ下が知っているかだ。

 もしもあの日のことをこいつらが知っちゃったら俺死んじゃうわ。もちろん物理的にも社会的にもね!

 

「……いや、知らねぇな」

 

「何かしら今の間は……」

 

 じとっとした胡乱げな視線を向けてくる。ご、ごめんね? 今の間は色々と考えてたら返事遅れちゃっただけだから。八幡何も知らないよ? 

 

「そういえばヒッキーも最近明るいよね」

 

「そうね」

 

 何なのあなた達。俺のこと見すぎでしょ……。怖い。

 多分雪ノ下は感づいてるから根掘り葉掘り聞かれる前にこの際材木座でもいいから今すぐ来て欲しいわ。マジで助けて。

 やっぱ材木座は嫌だな、やっぱり戸塚に来て欲しい! それ以外ありえない! と戸塚に思いを馳せているとガラガラと音を立てながら扉が開かれる。確かノーノックで入ってくるのは平塚先生だけだよな。

 ……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。

 

「ひゃっはろー比企谷くん。それに雪乃ちゃんとガハマちゃんも」 

 

 わぁ……今ちょうど話題に上がってた張本人来ちゃいましたよ……。

 

「姉さん……」

 

「や、やっはろーです」

 

 雪ノ下は警戒しまくってるし由比ヶ浜はちょっと気まずそうだし空気がすごーく重い……。辛い。

 うん、俺は大人しく空気とフュージョンして存在を消しておくことにしよう。

 

「……それで、何の用かしら」

 

「あ、今日は雪乃ちゃんじゃなくて比企谷くんに用事があって来たの」

 

「え、ヒッキーにですか?」

 

「うん、そうそう。この前色々あったからね」 

 

 何であなたは自分からそれを言おうとしてるんですか……。

 え、何? 今日はそれを自慢しにでも来たの? 

 

「何があったのかしら?」

 

「んー、この前ね、わたし比企谷くんにぎゅーって力強く抱きしめられながら愛の言葉を囁かれちゃったんだ」

 

 少しだけ照れくさそうに笑いながら陽乃さんが言う。恥ずかしいなら最初から言わないでくださいよ……。

 

「比企谷くんが力強く抱きしめてくる……」

 

「しかも愛の言葉……」

 

 小さな声でぽしょりと何かを呟いた二人はもの凄い速度で顔を真っ赤にする。そして二人仲良くキッと睨みつけてくる。怖い。

 

「ヒッキーのバカ! アホ! ロリコン! え、ええとバカ!」

 

「……通報するわ」

 

 ガハマちゃんの語彙力ェ……。ていうか相手が陽乃さんなんだからロリコンではないだろ。

 雪ノ下はマジで通報する準備するなよ。携帯しまえ。死んじゃうから。

 陽乃さんは何が楽しいのか俺たちを見ながらくすくすと笑う。

 

「……何で言っちゃうんですか」

 

「んー、面白そうだったから?」

 

「はぁ……」

 

 うん、まぁそんなことだろうとは思ってたわ。ていうかこの人ならそれ以外ありえないわ。

 

「じゃあ行こっか」

 

「……行くってどこに」

 

「いいからいいから」

 

 陽乃さんに問答無用で手をぎゅっと握られてそのまま引っ張られてしまう。ちょっ、抵抗できないくらい力強いんだけど……。

 

「比企谷くん……」

 

「うう……ヒッキー」

 

 未だに顔を真っ赤にした二人からの恨めしそうな視線を背中に浴びながら俺と陽乃さんは部室を後にした。

 

 

「んで、どこ行くんですか」

 

 陽乃さんは雪ノ下が言ったように本当に機嫌が良いようで、握っている俺の手をぶんぶんと振り回す。脱臼しそう。

 

「静ちゃんに空き教室の鍵借りてきたからそこに行こっか」

 

「……そこで何すんですか?」 

 

 そこで一体ナニするんですか! わたし、気になります!

 

「あ、比企谷くんえっちだなぁ。ナニするとこ想像しちゃったの?」  

 

 陽乃さんは目を細めながらにやにやと笑う。エスパーかよ。

 

「発音おかしいですから。何も想像してませんよ」

 

「ちぇー。つまんないのー」

 

 ……この人はマジで何がしたいんだ? この前はでこに手を当てただけなのに大胆って言ってきた人なのに、今は普通に手握ってきてるし。

 もしかして自分が主導権握っていると平気ってことなのか? ふむ、なら試してみるか。

 俺の予想が合ってるならこの前みたいな普段と全く違う陽乃さんが見れるかもしれないし。ぶっちゃけあの時の陽乃さんは超可愛かったからまた見たいっていう気持ちが大きい。

 

「ちょっとすみません」

 

 断りを入れてから力を入れてなかった手にぎゅっと力を入れて陽乃さんの手を優しく握りしめる。そして、しゅるしゅると指を動かして陽乃さんの細くて長い指に絡ませた。

 所謂恋人つなぎってやつだ。恥ずかしいけど今は我慢だ。

 

「ひ、比企谷くん?」

 

「……手、繋いできたのは陽乃さんなんですから別にいいですよね?」

 

「う、うん……」

 

 頬をほんのりと朱に染めながら陽乃さんは俯いてしまった。

 ううむ、これは予想的中ってことでいいのか?

 

 

 それからずっと陽乃さんは俯いたままで、気づいたら空き教室に着いていた。

 繋いでいた手を離すと陽乃さんはいつも通りの表情に戻っていた。早いな……。

 何か後ろで鍵を閉めた音が聞こえたような気もしたけど知らなかったことにしよう。

 

「椅子持ってきます?」

 

「うん、よろしく。あ、椅子は一脚でいいよ」

 

「? はい」

 

 言われた通りに椅子を一脚だけ持ってくると陽乃さんがそれを指さす。

 

「はい、比企谷くん。お座り」

 

「え? 陽乃さんは? ていうか何で俺犬みたいな扱いされてんの……」

 

「えへ、まぁとりあえず座って?」

 

 さっきから本当に全く理解できない。この人はマジで何がしたいんだ?

 

「お邪魔しまーす」

 

 とりあえず椅子に座ると陽乃さんがケロッとした顔で俺の上を跨って首に両手を回して抱きついてきた。

 ……や、何で?

 

「ちょっ、いきなり何してんすか……」

 

「この前のお返し、かな?」

 

 陽乃さんは唇に指を当ててんーと考える素振りをしながら言う。

 

「……あれはその、すいませんでした」

 

「全然謝ることじゃないよ。お姉さんもちょっと嬉しかったしね」

 

 陽乃さんは楽しげな声で言うが俺にそんな余裕はないです。鼻先が触れそうなくらい顔が近いとかほんと無理なんだけど……。

 これ陽乃さんに心臓の音聞こえてんじゃねーか? やだ、超恥ずかしい。

 

「ねぇ、比企谷くん」

 

「……何ですか」

 

 聞くと、陽乃さんが唇が触れそうになるくらいまで顔を近づけてくる。

 

「……今、2人きりだよ?」

 

「っ……」

 

 蠱惑的な笑みで誘惑をしてくる陽乃さんに声が詰まってしまう。

 

「……性欲の塊のような男子高校生にそんなこと言っていいんすか?」

 

 俺の苦し紛れの反論に陽乃さんはにやぁと意地の悪い笑みを浮かべる。この人自分が主導権握ってるとめっちゃ楽しそうだな……。

 

「ふふっ、比企谷くんは理性の化物なんだからそんなことありえないって」

 

 かっちーん。この人超余裕ぶっこいてるな。ならそろそろ俺が主導権を握らせてもらいますかね……。

 

「ひゃうっ!?」

 

 陽乃さんの背中に両腕を回してぎゅっと力いっぱい抱きしめると、陽乃さんは可愛らしい声を上げた。

 え、何それ本当に超可愛いんだけど。まさか陽乃さんからそんな声が出るとは思わなかった。

 

「……陽乃さんが悪いんですからね?」

 

「や、やぁっ……」

 

 耳元で囁いてはぁっと吐息を吹きかけると、陽乃さんの身体がぶるっと震えた──。

 




お久しぶりです!UA200000突破しました!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!

陽乃さん√は久しぶりに中編②の出番が来ます。もしかしたら中編③の出番も……。そのくらい陽乃さん√は書きたいことが山盛りです(๑•̀ㅁ•́ฅ✧

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!

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