やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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折本√ラストです!


何故か、俺は中学の同級生と再び関わり始めることになる。【後編】

 

 翌日の昼。仲町さん(そろそろチカちゃん呼びはヤバいって気づいた。あ、名前は折本から聞いた)の友達とは現地集合らしく、初めは俺と折本と仲町さんでとりあえず集まるらしい。

 集合場所に行くと、折本はまだいないようで仲町さんだけがいた。……うん、気まずいな。

 

「あ、ど、どうも」

 

「お、おう」

 

「えっと、比企谷くんですよね?」

 

「あ、はい。そうです」

 

 仲町さんに釣られて俺まで敬語になっちゃったよ。マジで気まずいんですが……。

 

「あ、今日は急なのに来てくれてありがとうございます」

 

 ぺこりと頭を下げてくる仲町さん。やだ、超いい子じゃん。

 

「あー、何か折本に無理やりな。仲町さんは気にする必要ないから。あとできれば敬語もやめてくれ」

 

「う、うん。わかった。あ、そういえば見た目結構変わったね」

 

「あぁ、これも折本に無理やりな」

 

 あれ? そういや俺って全部折本に無理やり何かされてるよね? 

 

「昨日写真見たときはびっくりしたよ。あのときと同じ人だとは思わなかった」  

 

「俺もまさかこういう状況になるとは思わなかったわ」

 

「なにそれ」

  

 仲町さんはおかしそうにくすりと笑う。お、おお……結構いい感じに話せてるな。

 

「最近……っていっても冬休みが終わったあとからかな? 何かかおりがよく比企谷くんの話するようになったんだよね」

 

「え? なんで?」

 

「クリスマスイベントだっけ? そのとき比企谷くんもいたんでしょ?」

 

「いたな」

 

 妖怪ろくろ回しの記憶でいっぱいな俺のトラウマイベントですね。もう二度とあいつらとは会議したくない。

 

「そのとき比企谷くんがマジウケたーとか色々言ってたんだよね」

 

「そうか」

 

「それで昨日もかおりめっちゃ楽しそうでさ。写真送られてきたの見てお腹抱えながら笑ったり、昼休みは電話してくるとか言ってどっか行っちゃうし」

 

「そうか……」

 

 俺が精神的疲労で死にかけてる間ずっと楽しんでたのかよ……。楽しんでもらえて何よりです(白目)。

 

「私思うんだけどさ。もしかしてかおりって無意識に比企谷くんのこと意識しちゃってるんじゃないかなーって」

 

「いや、それはねぇだろ……。俺中学の時振られてるの知ってるだろ?」

 

 前に告白もしてないのに俺が彼氏とかやっぱ無理って言われてるしな。

 

「……うん、そうだね。比企谷くんサイゼ選ぶとかセンスないもんね」

 

「なんだよサイゼいいだろ。今度行ってみろよ」  

 

「ふふっ、やっぱりかおりが言ってた通りだね」

 

「は?」

 

「人がつまんないのって、結構見る側が悪いのかもって。かおりが言ってたの」

 

 言い終えて、仲町さんは少し陰りのある笑みを浮かべる。

 

「……それで?」

 

「それ聞いてあのときのこと思い出したらやっぱ悪いことしちゃってたなーって思ったの。私の勝手な決めつけで比企谷くんのことバカにしちゃってたからね。だから、ごめんなさい」

 

 ……うん、まぁ一言でいうとあれだ。仲町さん超いい人だわ……。過去に俺に黒歴史を植え付けた奴ら全員にこの素直さを見せたい。

 

「……別に仲町さんが気にすることじゃねぇよ。ていうか急にそんな優しくされたらうっかり惚れそうになるからやめてくれ」

 

「ふふっ、そうだね。比企谷くんにはかおりがいるもんね」

 

「や、俺とあいつはそういう関係じゃないから……」

 

 やだ、この子全然話聞いてないじゃないですか……。もう俺振られてるって言いましたよね?

 

「あ、あれかおりじゃない?」

 

「ん? ああ、多分そうだな」

 

 ていうかあいつ来るのおせーよ。こんなに話してたら仲町さんと仲良くなってほんとに惚れちゃうじゃねーか。

 折本は俺たちに気づくと、大きく手をぶんぶん振りながらぱたぱたと此方に走ってくる。

 

「千佳ー! 比企谷ー!」

 

 いや、うるせぇよ。周りから注目集めちゃうから勘弁してください……。

 

「おいっすー」

 

「よっ、かおり」

 

「……おう」

 

 挨拶をし終えると、折本は不思議そうに俺と仲町さんを交互に見る。

 

「何か千佳も比企谷もすっきりした顔してんね。何話してたの?」

 

「や、まぁ別に、な?」

 

「うん、別に、ね」

 

 色々話して気まずい部分はとりあえずなくなったからな。そういうことなら確かにすっきりはした。ただ今からのことを考えるとやっぱり憂鬱になるけど。

 

「ふーん……まぁいっか」

 

 なんだよその意味深な「ふーん」は……。ちょっと気になっちゃうだろうが。

 

「……んじゃ、とりあえず行こうぜ。カラオケだろ?」

 

「うん、そだね」

 

 そのまま適当に話しながら俺たちは歩いて行く。何故か折本と仲町さんに挟まれながらだけど。いや、ほんとなんで……?

 ていうか周りから見たら俺って今超リア充じゃね? 周りからの視線が結構怖いんだけど。マジっべーわ。

 

 

××××××

 

 

 一言だけ言わせて欲しい。どうしてこうなった……。

 相手の方は男三人と女二人の計五人。チャラいけど優しそうな人は仲町さんと楽しく談笑中。何かもうチャラすぎて一周回って戸部よりウザく見える二人は折本を挟んで談笑……というかナンパみたいになってるな。

 んで、一番の問題は俺。な、何で俺が女子二人に挟まれてるの……? 君たちと俺って初対面だよね?

 

 うん、やっぱり伊達眼鏡ってマジっべーわ。

 

「ねぇ八幡くん聞いてるー?」

 

「は、はひっ。き、聞いてるけど」

 

「はひってなにー! 超可愛いんですけど」

 

 なん……だと……。ていうか八幡くんってなに……。

 これじゃカラオケじゃなくて合コンみたいになってるな……。いや、歌うのはもっと嫌なんだけど。

 まぁ自分で言うのもなんだけど、折本が言っていた通り、やっぱり今の俺は結構イケてるらしい。それにこの子たちはクラスで俺がぼっちの嫌われ者っても知らないからな。だからこそ今の状況になっているのだろう。

 ……うん、まぁいい。ここは無心だ。無心無心!

 

「あ、そうだ八幡くん」

 

「な、なに?」

 

「私らと一緒に歌わない?」

 

「へ……?」

 

 ねぇ折本さん! こんな状況になるなんて聞いてないんですけど!

 恨みがましい視線を折本に向けると、折本も困ったような笑みを浮かべた。あぁ……そっちもそっちで大変なのね……。

 

「折本ちゃんって彼氏いる感じ?」

 

「俺最近別れちゃってさー。でもその彼女より折本ちゃんのが可愛いなー」

 

「ちょっ、何お前折本ちゃんに可愛いとか言っちゃってんの?」

 

「いや、別にお前のでもねぇだろ」

 

 いや、君のでもないと思うんですけどね。ていうかコミュ力高いなこいつら。はひっとか言ってる俺超恥ずかしい。

 チャラ男君二人の猛烈なアピールに困ってる折本と再び目が合う。いやまあ、俺も困ってるっちゃ困ってるんだけどね……。

 仲町さんと優しそうなチャラ男君のとこは仲睦まじくて羨ましいです……。俺もそっちに行きたい。

 

「あ、そうだ。二次会的なやつ? 俺ら二人と遊び行かない?」

 

「もちろん俺らが奢るからさ」

 

「え、えーっと、あはは……」

 

 ……はぁ。まぁ、あれだよな。やっぱり知ってる女の子が目の前で困ってるなら助けるしかないよな。わだかまりがあろうがなかろうがそこは関係ない。

 それに前に似たような状況あったけど、あの時の三浦のが怖かったしね! うん、余裕余裕!

 もちろん、ちゃんとこの状況を切り抜ける方法もある。思いついたのは一つだけだけどな。

 

「なぁ」

 

「ん? 比企谷君だっけ? どうしたの?」

 

 今、俺にできる一番の方法は──。

 

「悪いけど、そいつ俺の彼女だからそこらへんでもう勘弁してくれねぇか?」

 

 うへぇ……言ってみたはいいけど超恥ずかしいなこれ。いったいいつから俺はこんな恋愛脳になってしまったんだ……。どう考えても少女漫画とかの読みすぎですねはい。

 ベタすぎるけど今の俺の見た目ならいける! いけると信じたい! イケてるって言われてるしいける! いけるがゲシュタルト崩壊してんなこれ。

 

「あ、そうだったの? それならそうと最初から言ってくれればよかったのに」

 

「いや、すまんな。俺も言い出せなくて」

 

「つーかよく考えたらそりゃそうだよなー。比企谷君イケメンだし俺らが適う相手じゃないわ」

 

「ははは……」

 

 ちょっと不機嫌そうな顔もされたけど話の分かる人らで本当によかった。それよりも隣の女子二人の反応がヤバい。どっちからも「んだよ彼女持ちなら最初から言えよハゲ」みたいな視線がめっちゃ飛んできてる。死にそう。ていうか死んだ。

 

「ちょ、ちょっと席外すわ……」

 

 軽く挨拶をしてからそそくさと部屋から出る。少し歩くと肩の力が抜けると同時に大きなため息が漏れてしまった。

 ……も、もう戻るの怖いしこのまま帰ってもいいかな? あとは折本も適当にやってくれるだろうし。

 それに家に帰ったら多分小町が頑張った俺を褒めてくれるはずだしね! うん、早く帰る理由が増えてしまった。

 善は急げ的なノリで俺は偉大なる一歩(お家へ帰るための一歩)を踏み出そうとすると、後ろからとんっと肩を叩かれる。振り向くと少しだけ疲れた顔をした折本がいた。

 

「よっ、比企谷」

 

「お、おう。お前も便所か」

 

「女子に普通そんなこと言わないでしょ。ウケる」

 

 折本はさっきの困った笑いとは違う、いつも通りの明るく楽しそうな表情で笑う。

 

「じゃあ何しに来たんだよ」

 

「お礼言いにきた。さっきはありがと」

 

「……ん、どういたしまして」

 

 まぁここは素直に受け取っとくか……。実際は女子二人から俺への興味をなくさせるためにあの方法でいったのもあるんだけど。ちょっとだけ自分の為だったってことは内緒の方向で。

 

「やっぱ比企谷ってウケるよね。それにあたしが何か言う必要もないくらい自分に自信あったし」

 

「そりゃあれだ。俺は自分に自信ないとか一言も言ってないからな」

 

 見た目変えるってのも勝手に折本が言い出したんだし。そのせいで割と大変なことになったんだけど。

 ……まぁそれでも、彼女にも俺に対して何か思うところはあったんだろう。だからこそ、やっぱり俺は彼女に負担はかけたくない。

 

「……ただまああれだ。お前からもらったコレがあったから俺はいつもよりちょっとだけ勇気出せた。ありがとな」

 

 眼鏡の縁を軽く指で触れながら、いつもより柔らかい声音で言えた……と思う。ま、これが俺のできる一番のフォローだな。

 

「……はぁ。やっぱ比企谷変わったよね」

 

「そりゃ見た目とか超変わってるし」  

 

「ううん、そういう意味じゃなくてさ。やっぱり比企谷って友達としてはありかな。ウケるし」

 

 話の繋がり方がめちゃくちゃすぎんだろ……。何をどうしたらそうなるんだよ。

 ……友達、か。これから彼女との関係を深めていくとするなら一番ベストな形なんだろうな。

 

「……まぁ、別にいいんじゃねーの。じゃあ、その、……友達として一つ頼みがある」

 

「ん? なに?」

 

「もうあそこ戻んの嫌だし俺と一緒に帰らねーか?」

 

 俺の言葉に折本はぷっと吹き出し、お腹を抱えて笑い出した。え、そんな面白いこと言った?

 

「あはははっ! 友達としての最初のお願いがそれってほんとにウケるんだけど!」

 

「や、だって今それ以外思いつかないし」

 

 ていうかうるせぇよ。どんだけ笑うんだよ。

 

「はー、お腹痛いっ……。うん、いいよ。帰っちゃおっか」

 

「おう」

 

 出口へ歩き出した折本の後ろをついてくと、急に折本がくるりと後ろを振り返る。そんなことをされれば当然そのまま彼女にぶつかってしまうわけで。

 

「わっ、ちょ、急に止まるなよ……」

 

 俺とぶつかった彼女をそのまま床に押し倒さないように抱き寄せる形になってしまった。左手は彼女の頭に優しめに、右手は背中に回してがっちりと。

 ……な、何かやっちまったかも。折本動かないで固まっちゃってるし。

 

「あの、折本さん? そろそろ離れてくれない?」

 

「あっ、そ、そうだね」

 

 俺から離れた折本は頬を真っ赤に染めて少しだけ照れたように微笑んだ。意外と初心なんだな……。

 

「……つーか何で急に振り返ったんだ? 危ないだろうが」

 

「ごめんごめん。ちょっと言い忘れてたことあってさ」

 

「は? 何が?」

 

 俺が聞くと、折本は今日一番の明るい表情でにこっと微笑む。

 

「比企谷がさっき助けてくれたときさ、ちょっとだけかっこいいって思ったよ」

 

 言って、彼女は少しだけ頬を朱に染めながら、ぱちっと可愛らしくウインクをした。

 

「はぁ……そりゃどうも」

 

 彼女との関係が少しだけ変わり、これからは色々と騒がしくなることを不安に思いつつ。まぁそれをちょっとだけ楽しみにしてる自分もいるんけど。

 ……あとはあれだ。最後のは少しだけ可愛く見えてしまったのは彼女には内緒だ。

 

 




とりあえず折本√のパート1は終了です。やっぱり折本は他のヒロインとは違って友達からのスタートですよね。
折本√はアフターではなく続編ということでいつになるかは分かりませんが投稿することになります。
次の折本√ではお互いのことを少しずつ意識させてイチャイチャさせられればいいなと思いつつ……。

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!

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