やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。 作:部屋長
という訳で、久しぶりのオリキャラ√です。本当に久しぶりなので1話目から読み返すことをオススメします……。
葉月双葉、彼女と色々あって男子に慣れる練習(意味深)をしようと約束した翌日。
いや、別に色々あったわけじゃないけどね。ただ俺が図書委員をほぼ一年サボり続けたのを謝っただけだし。原因が酷すぎる。
あの後、仕事を終えた俺と葉月はすぐに解散した。葉月が「が、頑張ります……!」と妙に意気込んでいたのが気になりはしたが、恥ずかしがり屋な彼女のことだしそこまで心配することもないだろう。
そんな感じで昨日のことを適当に振り返りながら教室へ入る。葉月は既に席についていて、歩いてくる俺をそわそわしながらちらちらと見てくる。
……大丈夫だろうか、この子。というか本当に隣の席だったんだな。今まで気づかなかったって俺の目腐りすぎてて笑えない。
とりあえず、なるべく自然に席に座ろうとすると、ガタッと音を立てて葉月が立ち上がった。
「お、お、おはっ、おひゃようございます……っ!」
「お、おう……おはよう……」
は、葉月さん……これはちょっとマズいんじゃないでしょうか……。ほ、ほら、周りの視線とか特にヤバい……ヤバいンゴ。ンゴ……。
「……」
「……」
「…………」
「…………す、座んねーの?」
「あ、そ、そうですね……」
顔を真っ赤にした葉月はそそくさと席に座る。それに合わせて俺も静かに座った。
うん、これはヤバいですね。何がヤバいかって顔真っ赤にした葉月があうあう言いながら恥ずかしがってるせいで、俺が彼女に何か悪いことしたみたいな雰囲気がすごい。
「はぁ……」
まぁ、うん、葉月が挨拶してくれたのは素直に嬉しいとは思う。彼女自身も男子に慣れる練習をしようと頑張ってくれている訳だし。
でも例の件については話したんだから、教室では話しかけないようにした方が良いのは確かなんだよな。このままだと教室でまた何かありそうだし先に伝えとくか……。
『改めておはよう。突然で悪いが、教室で俺に話しかけるのはなるべくやめてくれないか?』
切り取った紙にメモをして、ぺいっと彼女の机の上に紙を投げる。よし、乗った。
しばらく待っていると、ぺしっと音を立てて机の上に紙が飛んできた。
『やっぱり噂のことを気にしてるんですか?』
『葉月が気にしないって言ってくれたのは素直に嬉しいが、お前に迷惑かけることになっちまうからな』
『比企谷君がそこまで言うなら分かりました。でも、多分この手紙のやり取りもみんなにばれてる気もしますけどね』
こんな感じで何度か手紙でやり取りを繰り返す。まぁ、葉月の言う通り、そろそろやめといたほうが良さそうだな。
……この紙ってどうすりゃいいんだろ。隣にいるのにぐしゃぐしゃにするのもあれだし、かと言ってどっかにしまうのも気持ち悪いし。
つーか何でこの子はこんなそわそわしてるんだ。え、なに? 俺が返事するの待ってるのん……?
『んじゃ、これでこのやり取りは終わりでいいから。紙は適当に処分しといてくれ』
うん、多分これが無難だろう。読んだであろう彼女は俺に見えるように小さく頷いてから、紙を丁寧に折って筆箱にしまった。捨ててもいいのに律儀だな。
まぁ結局の所、俺と彼女の関係はこんなものなのだ。お互い話下手の時点でこうなるのは正直分かっていたし。そもそも片方が俺の時点で何しても基本駄目だってのはお察しだしな。
だから今回関わったのも何かの縁だし、今後はお互い迷惑にならない程度で無難に関わっていけばいいんだ。だ、だって関わったばかりの女子相手に積極的になるとか恥ずかしいし……(気持ち悪い)。
××××××
……と、思っていたわけなのだが。
「あ、あの、比企谷君?」
「……ん、なんだ」
「い、いえ、何だか暗い顔をしていたので……」
「元々こんな顔なんですが」
「あ、ご、ごめんなさい……」
そこで謝られたら何か本当にショックなんだけど……。八幡完全に心へし折れちゃいましたよ。
まぁ葉月の言う通り、今の俺は普段以上に浮かない顔をしているんだろう。目もいつもの倍は腐ってそう。
何で俺がこうなったかと言うと、朝の手紙のやり取りから彼女とは全く話していなかったのに、昼休みになった途端驚くことに葉月から話しかけてきたからだ。
『あ、あの、比企谷君……っ!』
『ど、どうした?』
『よ、よければ私と、その、一緒にお昼どうですか?』
『……よ、喜んで?』
『あ、ありがとうございます……』
きっと彼女なりに勇気を出して言ってくれたんだろう。顔めっちゃ赤かったし。
それに、何か彼女が俺に対して用があったから昼の誘いをしてきたと思ったから俺もそれに乗ったわけなのだが。
「……おいしい」
何でこの子は美味しそうに弁当を食べてるんですかね……。
「なぁ、葉月」
「は、はい、何ですか?」
「何か俺に用事でもあんのか?」
「へ?」
聞くと、葉月はきょとんとした表情で首を傾げる。え、何か俺変なこと言った?
「いや、昼誘ってきたのだって何か話あったからじゃなかったのか?」
「え、えっと、比企谷君は忘れちゃったんですか? 男の子に慣れる練習をするって話」
「ああ、なるほど……」
こ、この子本当に大丈夫なのかな……。何か律儀すぎて一周回ってチョロさしか感じないんだけど……。
「その練習って意味で、今日は昼誘ってくれたのか?」
「そ、そうです。頑張りましたっ」
小動物を連想させる小柄な彼女がやってやったぜみたいな感じでちょっとだけドヤ顔をすると、見てるだけで何だか和んでしまう。
「頑張ってくれたのはよく分かるんだけど、教室で誘うのはちょっとな……」
「あ、わ、忘れてました……ごめんなさい……」
「い、いや、そんな落ち込まなくても……」
……うん、話変えるか。葉月なりに頑張ってくれたんだしそこは責めちゃいけないしな。
「その、なんだ。葉月が昼誘ってくれたのは素直に嬉しかった。ただあれだぞ? そんな簡単に男を誘うのは減点だな」
「そ、そうなんですか?」
「そうそう。男なんてあれだぞ? ちょっと優しくしてもらっただけで、あれ? これ俺のこと好きなんじゃね? って勘違いする生き物だからな」
「へ……?」
珍しく俺が饒舌気味に語ると、葉月の身体がぴたりと固まる。しかし、すぐにみるみるうちに顔を真っ赤にして、短めの黒髪を揺らしてわちゃわちゃと慌て始める。
「ど、どうした?」
「そ、その、わ、私はまだ比企谷君のこと、そ、そんなふうには見れていなくて……え、えっと、い、今はまだ……その、もっとお互いを知り合う時期じゃないかと……」
もじもじと指を合わせながら葉月が小さな声でぽしょぽしょと呟く。恥ずかしそうに俯いた彼女はううっと小さく唸りながら両手で顔を覆ってしまった。
「……まぁ、うん。とりあえずあれだ。あんまし簡単に男を誘ったり逆にほいほい付いてくのはやめたほうがいいな」
「わ、分かりました」
うん、とりあえず男子に慣れる関連の話はおしまいだな。何か聞いちゃいけないようなことも聞いちまったし。
……本当に勘違いさせるような発言は気をつけてもらいたい。今後の可能性を匂わせる発言とか高度なテクニックすぎませんかね……。
「普段食ってるやつとはよかったのか? 多分だけど急に断っちまったんだろ?」
「は、はい。ちょっと別の人と食べるって言ったら、よく分からないですけど応援されちゃいまして……」
「そうなのか。謎だな」
「なぞですね」
いやいや、葉月さん? あなた鈍感系主人公なんですか? それ確実にからかわれてますよ。
「比企谷君こそよかったんですか?」
「や、俺は普段からここで一人で食ってるから平気だ。何なら昼以外もずっと一人まである」
「そ、そうですか……」
あ、な、何かごめんね? まだ自虐ネタするには関わりが浅すぎたよね……。
しかし、葉月は引いてると言うよりは少し眉根を寄せて難しい顔をしていた。ふぅ……と一息吐くと、意を決したようにこちらをじっと見つめてくる。
「……じゃあ、毎日は難しいですけど、たまにでいいので私と一緒に食べませんか?」
「は? マジで? つーかさっきも言ったけどあんまり勘違いされるような発言はな……」
「でも、比企谷君は勘違いしませんよね?」
「……そうだけど」
言うと、葉月はほんのりと頬を朱に染めながら見慣れてきた恥ずかしそうな表情で聞いてきて。
「ならやっぱり、たまにでいいんで私と一緒に食べませんか? その方がきっと楽しいですよ」
「お、おう……」
「じゃあ決まりですね」
少しだけ嬉しそうにくすりと微笑む葉月に、俺は顔を逸らして頷くしかなかった。
や、やだ……昨日もそうだけど葉月さんって急にイケメンになるからほんと困る……。
このままだと葉月の男子に慣れる練習というか、俺が葉月に落とされないようにする苦行に変わりそうな気がするんだけど……。
お久しぶりです!そして久しぶりのオリキャラ√でした。葉月ちゃんに関しては自分もまだ書くのに不安定なものがあるのでぜひ感想とかいただけたら嬉しいです。
https://novel.syosetu.org/108198/
年末からこのすばssの2作目を書き始めました。内容はこの積極的シリーズと似たような感じなので、このシリーズが好きな方はぜひぜひ。読んでくれたら嬉しいです……!
ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!