やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長
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いろは√ラストです!


あざとかわいい後輩と……。【後編】

 
 顔を近づけてきた一色との距離は、鼻先が触れてしまうのではないかというくらいには、近い。さらさらと揺れる亜麻色の髪の匂い、甘い吐息、女の子特有のふにっとした柔らかさが、もてあますことなく俺の心をもぞもぞとくすぐってくる。
 正直、そういうものに慣れていない俺としては、気がおかしくなりそうだ。

「この状況で緊張しないわけないだろ……」

 身じろぎながらも言うと、一色はふむふむと頷く。

「先輩ってほんとに女の子に対する免疫がないんですねー。他の男の子に同じことしたときは、そんなに慌ててなかったですよ?」

「そりゃこんな経験今までになかったからな……って、え?」 

 ……今なんて言った? 他の男の子? 同じことをした? え、嘘だろ……? 
 俺が錯乱状態に陥ってると、一色はイタズラが成功した子どものような表情でくすりと微笑んだ。

「もちろんわたしもこんな経験初めてですよ? もしかしてさっきの信じちゃいましたかー?」 

「はあ……もうなにも信じられないわ……」

 なんで俺はこんな簡単なことなのに騙されたんだろうか……。さっきの言葉を聞いたときは視界がぐにゃりと歪んだレベル。これはあれだな、今日一日で完全に惚れちゃってるわ……。
 一色は俺の肩に添えていた両手を、俺の首に回してさらに密着してきた。

「ちょっ、さすがに近すぎるんだけど……」

「……先輩、聞こえますか?わたし今すごくドキドキしてるんです。これでさっきのが嘘だって……わかりましたよね?」

「わ、分かったから離れてくれ。さすがにやばいから……」

「もー、なんですかその反応は。そこは「嘘で本当によかった。俺もドキドキしてるよ、いろは」って言ってくれなきゃだめじゃないですか」

 俺がそんなこと言ったら吐き気しかしないと思うんだけど……。でもまあ、これくらいなら言ってあげてもいいか。

「俺もドキドキしてるぞ……い、いりょは……」

 ……か、かっこわりぃ。やっぱりやらなきゃよかったわ。つーか、女の子を名前で呼ぶとか、俺にはやっぱ無理だな、うん。いや、まあ、必要があれば慣れなきゃいけないんだろうけども……。
 俺のキョドりっぷりに、はあと一色がため息をこぼす。思わず顔を逸らしてしまう。……ていうか、一色の息ってなんでこんなに甘い匂いすんの? 何食べたらこうなるんだよ。わたあめ? あまりにいい匂いすぎて、商品化したらすげぇ売れそう。むしろ買い占めるまである。

「やり直し」

「あ、はい」

 一色の鋭く低い声に、反射的にそう返してしまった。ふぇぇ……なさけないよぉ……。

「……もう。さっきまでのかっこいい先輩はどこいっちゃったんですかね」

 後輩に敬語を使っちゃうような情けない俺(呼称が長い)を見た一色が、耳元でいじけたような声振りで呟く。

「それ、普段はかっこ悪いってことになるんだけど……」

「そうですね。先輩はかっこ悪いです」

 心がへし折れそう……。この距離で面と向かってかっこ悪いって……。
 一色は目を閉じてから、ふぅと息を吐いて「しかも」と付け足した。

「先輩は葉山先輩みたいに運動も勉強もできないですし、人気者でもないし、むしろぼっちですし、いつも気持ち悪いこと言いますし」

「ひどい言われようだな……」

 否定できないからなおさら辛い……。
 メンタルブレイクしてがくりと肩を落とすと、どうやらまだ続きがあるらしく、一色が俺の頬を何度も軽くぺちぺちと叩いてきた。あの、痛くはないけどくすぐったいんですけど……。

「まだ続きがありますってば。先輩は素のわたしを見せてもちゃんと見てくれます。文句をいいつつも、いつも助けてもくれます。ちょっと捻くれてるけど、本当は優しいのも知ってます。そんな先輩と一緒にいると心がぽかぽかするんです。この気持ちは本物なんです」

「一色……」

 ……まさかここまで言われるとは思わなかった。さっきまでめっちゃ罵倒されてたのに、急にそんなこと言われたら恥ずかしすぎてやばいんだけど……。

「さっきやり直しって言いましたよね?」

 え、やり直しって名前で呼ぶやつ? このタイミングで名前で呼べと? 俺の心臓爆発させるつもりですか? これ字面にしたら疑問符ばっかりだな……。

 はあ……もう覚悟を決めるしかないか……。元々は俺が一色にアプローチしてこうなったんだしな。

「い、いろは……」

「ふふっ、合格です。先輩……大好きですよ」

 くすりと微笑み、一色はゆっくりと目を閉じて唇を重ねてきた。
 ……いきなりすぎて目を閉じることさえ出来なくなり、一色のことをまじまじと見つめてしまった。
 うわ……まつ毛なっが、肌白っ……。こいつこんな可愛かったっけ……。いや、ていうかなんかもう超可愛く見えてきた。というか俺、今日一日で可愛いって思いすぎだろ……。
 唇を離すと、一色は指で自分の唇をなぞり、うっとりとした表情で俺のことを見つめてきた。
 
「えへへ、キス……しちゃいましたね」

「……そうだな」

 これ以外返答の仕様がないだろ……。

「わたし、初めてだったんですよ?」

「そ、そうか」

 そう言われ、一色の口元につい目がいってしまった。視線に気付いた一色は、一度くすくすと笑った後、ずいっと顔を寄せてくる。

「はい。ですから……」

 一旦そこで区切ると、頬を赤く染め、瞳を潤ませ──。

「……責任、とってくださいね」

 あの日の帰り道と同じ言葉だ。あの時も一色は同じ意味合いで言ったのだろうか。まあなんにせよ、俺の答えは決まってるんだけどな。

「……わかった、責任はちゃんと取る」

 そして、今度は俺から一色の唇を重ねた。また一色のことを見たら本当に心臓が爆発すると思ったから、今回はちゃんと目を閉じた。まあ、もう既に一色の唇が柔らかすぎて心臓爆発しちゃってるんだけどね!

「んっ……ふ、ふふ、せ、先輩にしては上出来ですね!」 

 ここに来て上から目線ってなんなんだよ……。

「はあ……少しは先輩を敬うとかないのかよ……」

「あっ、そうだ」

 見事にガン無視された。なんのことだ? と疑問に思っていると、一色は「ちょっと痛いですよー」と言い、俺の首筋をちゅうっと吸ってきた。

「な、なにしてんの?」

「これで先輩はわたしのものです!」
 
 えへんと胸を張りながら、制服のポケットからコンパクトミラーを取り出し、俺の首筋を映し出した。
 まさかと思いつつ鏡を覗いてみると、くっきりと、彼女が吸い付いた箇所に赤い印ができている。
 ……マジかよ。こいつこんな目立つとこにつけたの。真正面とか、っべーわ。いろはすマジぱないわー。思わず戸部になってしまった。

「まあそんなのがなくても、もう俺はお前のものなんだけどな」

 一色の頭を撫でると可愛らしく「あう」と唸った。

「今のはずるすぎですよ……。やっぱりあざとすぎです……」

 なんで毎回俺があざといって言われるのかよく分からんな。というか一色が我慢するのをやめた後からは、いつも通りあざとかったし。まあそれも今じゃ可愛いと思ってしまうわけで……。
 あ、そうだ。

「一色、ちょっと我慢しろよ」

「ふぇ?」

 きょとんとして首を傾げる一色の白く細い首筋に、俺も吸い付く。

「ひぁっ! ちょ、せ、先輩、だめぇ……」

 跡をつけたことを確認して顔を離すと、一色はうっとりとした恍惚の表情を浮かべていた。え、なんでそんな表情してるのん? これ痛いだけじゃないの?

「えへへ……これでわたしも先輩のものですね」

 自分の首をさすり、照れながら微笑んだ。うん、めっちゃ可愛い。
 ここで一つ気づいたことがある。一色は自分で攻めるときはいつも通りあざといんだけど、俺から攻めると途端にデレデレになると言うことだ。
 ふむ、なら試して見るかと思い、一色を力いっぱい抱きしめて耳元で囁いた。

「いろは……」

 吐息混じりの俺の声に一色は「ひうっ」と言い、びくびくと震えた。お前どんだけ敏感なんだよ……。

「は、はぁい……な、なんですかぁ?」

 ううむ、なんて言うべきか。あ、そういやまだ言ってないことがあったな。
 ……言うの恥ずかしいな……。
 でも俺だけ言わないのもおかしいし、どうせすぐに言えって騒ぎ出すと思うしな……。
 
「愛してる……」

 いつもより声を低くして、それでいて優しい声音で囁けた……と思いたい。くっそ恥ずかしい……。
 一色は今までで一番顔を真っ赤にして、とてもか細い声で「私もです」と頷いてもう一度俺に唇を重ねてきた。

「えへへ……これからもずっと一緒ですよ、せーんぱいっ!」

 満面の笑みを咲かせる一色を見て、自然と口元が緩む。
 柄にもなく、あざとい後輩となら、あざと可愛い恋人となら──。
 不思議と、そう思えた。



お久しぶりです!これでいろは√は終わりです!あれ?タイトル回収してなくね?気にしたら負けです!(白目)

いろは√は何人か別ヒロインを挟んでからアフターやりたいと思います!

多分次のヒロインはポニテが可愛いあの子です。他の方の作品を見てもいろはが人気なのは明確なので、是非別ヒロインのも見てもらえたら嬉しいです!

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!







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