やはり俺が恋愛に積極的になるのはまちがっていない。   作:部屋長

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のんびりイチャイチャしてみた〜いろはす〜

 

 カシャッと無機質な音が生徒会室の静かな空間に鳴り響く。音の鳴る方向、というか隣に座っている彼女に視線を向ける。

 

「……何してんの」

 

「えへへー、真面目に仕事してる先輩の写真を撮っちゃいました!」

 

 にこぱーっと笑いながら俺に撮った写真を見せてくる。や、自分の顔なんて見たくないから。

 

「ほらほら、早く仕事してくださいよー」

 

 えぇ……写真撮ってきたのお前なのにそれは理不尽じゃないですかね……。

 はぁとため息を吐きながらパソコンに視線を戻して仕事を再開する。

 

「…………」

 

 カシャカシャ。

 

「むふふー」

 

「…………」

 

 カシャカシャ。

 

「えへへー」

 

「…………」

 

 カシャカシャ。

 

「ふふっ、いいですねー、いいですなー」

 

 ……ナニコレ。今の間に20回くらいカシャカシャ言ってたんだけど。いくらなんでも写真撮りすぎだろ。

 

「……さっきから何してんの」

 

「ほぇ? 先輩の写真を撮ってるんですけど?」

 

 いや、そんなにきょとんとされても困るんですけど……。

 え、なに? 俺が悪いの?

 

「はぁ……仕事終わった。お前も自分の分早くやっちまえ」

 

「はーい」

 

 一色を見ると、普段はあまり見ない真面目な表情をしていた。いつものあざといけどあどけない彼女とはまた違って、それがとても可愛らしい。

 ほむん、俺もいろはすの写真でも撮ってみることにするか。

 こっそりとスマホを構えてからパシャッと音を立てて写真を撮る。音が鳴るならこっそりする意味ないな。完全にアホですねはい。

 

「え、な、なんで撮ってるんですか?」

 

「や、お前だって俺のこと撮ったんだし別にいいだろ?」

 

「うっ、それはそうですけど……」

 

「それに、ほら」

 

 いい表情してんじゃんと言いながら一色に撮った写真を見せる。

 

「うぅ……褒められるのは嬉しいですけど恥ずかしいです……」

 

 頬をほんのりと朱に染める一色。恥ずかしかったのか書類に目線を戻してすぐに仕事を再開してしまった。

 ほんと可愛いな。うん、これはもっと写真撮るしかないよね!

 

 パシャパシャ。

 

「あぅ……」

 

 パシャパシャ

 

「あうぅ……」

 

 パシャパシャ

 

「はうぅ……」

 

 うーうー唸りながら一色は完全に机に突っ伏してしまった。そんなに恥ずかしかったのか……。

 

「ふむ……」

 

 どんな感じか気になったので撮った写真を確認してみる。

 ……うん、これは可愛すぎてヤバい。毎日寝る前に見たら熟睡間違いなしだわ。

 

「ふぅ……わたしも終わりましたよ」

 

 ぐへへへ……と写真を眺めてるうちに(気持ち悪い)、一色は仕事を終わらせていたようだ。

 

「お、早かったな」

 

「ふふん、わたしだって成長してるんですよっ!」

 

 ふんすっと息を吐いた一色は薄い胸を張りながらふふんとドヤ顔をする(可愛い)。

 

「あうぅ……先輩」

 

 一色の声ではっとする。気づいたら一色の頭をくしゃくしゃと撫でていたようだ。

 ……うん、一色が可愛いのが悪いなこれは。

 

「これならもう俺なしでも大丈夫なんじゃねぇの?」

 

 ついさっきの自分の行動が恥ずかしくて思ってもないことを言ってしまう。

 

「先輩はわたしと一緒にいるのが嫌なんですか……?」

 

 一色の顔を見ると、明らかにしょんぼりとしていた。目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。

 やってしまったと、瞬時にそう思った。

 

「……そんなことねぇよ。さっきのはちょっと恥ずかしくて言っちまっただけだから。それにお前が成長してるのってのが本当に嬉しくてな」

 

 言って、さっきと同様もう一度頭をくしゃりと撫でる。

 うーむ……俺、一色と付き合ってから落ち込ませてることが多いような気がするな。

 この前は小町の件で思いっきり泣かせちまったし。

 

「えへへ……しょうがないから許してあげますよ」

 

 頭を撫でられているのが気持ちいいのか、一色は目を細めながら嬉しそうに微笑む。

 

「あっ、そうだ! 先輩一緒に写真撮りましょうよ!」

 

「おう、いいぞ」

 

「せ、先輩が素直だ……。ほんとに先輩ですか……?」

 

 え、そんなに驚く? 目ぱちくりしすぎだろ。

 

「そんなこと言うなら撮らないぞ?」 

 

「いや、撮ります! 絶対撮りますから!」

 

 ぶんぶんと腕を振りながらあわあわと慌てる一色を見て顔が綻んでしまう。本当に俺にはもったいないくらい可愛い彼女だ。

 

「んで、どうやって撮んの?」

 

「んふふー、それならもう考えてますよ。じゃあ先輩はこっちに椅子ごと向けてください」

 

 言われた通りに椅子を向けると、一色はにんまりと小悪魔スマイルを浮かべながら俺の太ももあたりにちょこんと座ってきた。

 まぁこんなことだろうと思ってたから別にテンパったりはしない。普段は対面で俺の上に座ってくるからいつもとは感覚が違うなぁとか柔らかいなぁとか全然思ってないです。

 

「先輩はわたしの首に両手を回して……そうそう……あとは肩に頭を乗せてください」

 

 言われた指示に従ってその通りに動くと自然と彼女との顔の距離が近くなる。すぐに一色は俺に頬をくっつけて来てすりすりし始めた。

 

「ふへへぇ……先輩すべすべだぁ……」

 

顔はよく見えないけど多分だらしないくらいに頬を緩ませているんだろう。絶対可愛い超見たい。

 

「……写真は?」

 

「はっ! いけないいけない。今は写真でしたね」   

 

 今はってことは写真撮り終わったら頬をひたすらすりすりしてくるんですかね。

 

「じゃあ撮りますね!」

 

「おう」

 

「はいっ、チーズ!」

 

 一色は首に回された俺の手にそっと触れながらいつも通りの満面のあざと可愛い笑みを浮かべる。

 そして、カシャッと無機質な音が生徒会室の穏やかな空間に鳴り響いた──。

 

「いい写真ですね」  

 

「そうだな」

 

 スマホの画面を見ながらにまにましてる一色さんです。既にホーム画面に設定したらしい。早い。

 

「これからもいっぱい撮れますよね?」

 

「……おう、もちろんだ」

 

 言うと、俺の頬に自分の頬をぴとっと当ててきた。そしてそのまますりすりしてきた。

 

「えへへ……」 

 

「どうした?」

 

「わたし、やっぱり超幸せです」

 

 一色は本当に幸せそうに言葉を紡ぐ。それがたまらないくらい愛おしくて可愛らしい。

 

「……俺もだよ」

 

 本当にそうだ。俺にはこの一ヶ月はもったいないくらい楽しい毎日だった。

 だからまぁ、これからもこの幸せを噛み締めることにしよう。

 そんな思いを胸に、俺は一色を優しく抱きしめた。

 




たまにはほっこりのんびりのんのんと。「昼休みにただイチャイチャするだけ〜」と同じように別ヒロインでものんびり書こうと思います。

次回は誕生日が近いみんな大好きなあの子のです。その日までに間に合うように頑張ります!

ではでは今回もお読みいただきありがとうございました!

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