SHORT STOP   作:寸前×

1 / 1
Departure

ーーー3年前の2月

『ホークスドラ4東條右肘靭帯断裂』

春季キャンプ真っ只中のある日、初めて自分がスポーツ紙の1面にとりあげられたのがこのニュースである。

 

ルーキーとして、一軍キャンプに同行していた東條はブルペンでの投球練習中、肘の激痛に襲われ、全治1年の大怪我を負った。

 

治療方法は唯一、傷ついていない他の腱を肘に移植する『トミージョン手術』と呼ばれる投手生命を左右する極めてリスクの高い手術であった。

 

 

 

結局ルーキーイヤーを術後のリハビリに費やし、身体的にはほぼ完治した状態で2年目に突入することとなる。

 

やっと投げられるようになった2年目は、ストレートの球威こそ戻ったものの、彼の生命線ともいえるスライダーのキレ、コントロールともに戻らず、二軍暮らしが続く。

 

 

 

そして3年目となる今シーズン、春先からウエスタンリーグで好成績を収め、交流戦で初の一軍昇格。しかし一軍では思うように成績を残せず、交流戦終了前に降格。結局その後は一度も昇格できずにシーズン終了となった。

 

 

この日東條は球団事務所で契約更改を終えた。彼の表情は険しく、危機感が滲み出ていた

 

(二年連続の減棒で1年目の1000万から遂に440万まで落ちたか、もうそろそろ首もあぶないな)

 

「おーい東條!契約更改どうだった?」

小柄な男が訊ねてくる。彼は奥居紀明、同い年だが俺とは違い高卒組で、来季8年目を迎える。

「下がったよ、再来年はもうないかもな」

「へへ、おいら2000万の増額で遂に1億の大台だぜ~」

二年連続で打率3割を越え、ホークス不動のリーディングヒッターへと成長した奥居。それに対して俺は実績がなく首の危ない中堅選手。

 

いまや年棒は20倍以上違うが年棒が大して変わらなかった時と変わらず接してくれるいいやつである。

 

 

翌日、突然監督から呼び出しがあり、球場の監督室へ向かった。

「なんでしょうか?」

『突然だがお前はスワローズに移籍となった』

一瞬頭が真っ白になったが、すぐに我に帰ると

『明日から東京に行け!新天地での健闘を祈る』

そう手短に話をされて、監督室から退室した。

 

一体何も取り柄のない自分をトレードで獲得したのか当の本人である彼すら理解できなかった。

 

寮の荷物をまとめていると、奥居がやってきた

「お前スワローズにトレードされたのか?一言も連絡くれないなんて水臭いじゃねーか!まぁとにかくお前はあっちで一花咲かせろよ!それだけだ、またグラウンドで会おう東條!」

俺は静かに頷いた。数時間後球団寮を後にし、新幹線で東京へ向かった。

 

 

 

ーーー翌日、スワローズ球団事務所

『ようこそ東條君!我がスワローズヘ』

とオーナーが出迎えてくれた。

 

『君はこのチームには無いものを持っている、気体しているよ』

と軽く肩を叩かれて、退室した

 

 

 

その後俺は、真中監督に神宮球場に呼び出された

 

『知ってると思うが私が監督の真中だ、よろしく頼むよ東條君』

「はい」

『突然なんだが、君に聞きたいことがある、ただそれには君にも相応の覚悟を持って決断して欲しい』




選手データ
東條傑 25歳 3年目 大卒ドラ4
一軍通算成績 5試合 4回 防御率13.50
平均140km/h前後の速球と、キレのあるスライダーが武器。時折カーブやチェンジアップも投げる。

奥居紀明 25歳 7年目 高卒ドラ3
一軍通算成績 591試合 打率.288 19HR 191打点
俊足巧打の外野手、5年目からレギュラーに定着し、安定した打率と俊足が武器の1番打者。


拙い文章ではありますが暖かい目で見守ってくださるとありがたいです。評価、感想などくださるとありがたいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。