とりあえずどうぞ。
7月15日、サブタイ変更
旧サブタイ:うつろわざるもの
サクサクと、ザクザクと音を立てながら、ボクは歩いていた。
時刻はまだ太陽が登る前で、少し肌寒い風が吹いている。
今日は何故か、いつもより早い時間に起きちゃったので、眠気覚ましも兼ねて散歩しているのだ。
足音で分かるように、今歩いているのは舗装された道ではなくて、土で出来た川辺沿いの堤防(…でいいのかな?なんか違う名前があったような気もするけれど)を歩いているのだ。
まあもっとも、今じゃもうどこの道路もボロボロだから、綺麗に舗装されたままの道なんて、見たことないのだけれど。
相棒は流石にまだ眠いのか、ボクの上着のフードの中で丸くなっている。
流石にもっと大きくなったら、首が痛くなりそうだから取れなくなると思うけれど、今ならまだ小さいからできる方法だ。
この子が大きくなったらこういう時、どうしようかなぁ…。
そんなことを考えながら、ほの暗い世界をただ歩く。
そよりと、風が吹く。
少し冷たいけど、まだどこか寝惚けている今のボクには、心地いい。
なんとなく目を閉じると、世界のいろいろな声が聞こえてくる。
さらさらと流れる水の音。
ざわざわと風と戯れる草の音。
どこか遠くでは、起きるのが早い小鳥達のさえずりも聞こえてくる。
…そして、ボクの後ろで気持ち良さそうにいびきを一つ掻く相棒。
………。
なんかひどく残念な気持ちになった。
はぁ、と一つ溜め息。
それと共に気持ちを切り替える。
目を開けると、さっきよりは少し明るくなってきたように思える。
空は濃紺から蒼白い色に変わり始めていて、とても綺麗だった。
空から前方に視線を戻すと、少し遠いところに親子橋が見えた。
うん、とりあえずあそこまで行こうかな?
ボクは水のせせらぎや、小鳥の声を聞きながらのんべんだらりと、また歩みを進め始めた。
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立派な橋だった。
こじんまりとした可愛らしい橋と、その倍以上の大きさがある雄壮な橋だった。
こじんまりとした可愛らしい橋は、大型トラックがなんとか通り抜けれるくらいの、住宅街の路地程度の道幅しかない。
その倍以上の大きさがある橋は、片側二車線で中央分離帯もある、それは大きな橋だ。
電灯も設置されている。
高さも横幅も違う二つの橋だけれど、橋のデザインは同じようになっていた。
眼鏡橋、になるのかな?
小文字のnを複数並べて、上に板を載っけたようなデザイン。
…違うかもしれない。
まあ、そんな比較的よく見るデザインな気がするけれど、この形はやっぱり様々な過程を経て、洗練されたものの一つなんだろうなと思う。
機能性を求めると、自然とこんな形になるのかも?
まあとにかく、その二つの橋はそこにあった。
どちらの橋も、丁寧に頑丈に造られたのか、壁面の塗装やらなんやらが多少は剥がれてるけれど、大きく崩れている部分が無い。
今にも反対側から車が走ってきそうなくらい、綺麗な状態だった。
まあ、流石に大きな橋の方にある、電灯はもう点く事は無いようだけれど。
親小橋、と表現したのだけれど。
どうやら、小さい橋の方が親にあたるみたいだ。
こちらの方が年季が入っていて、多少の補修の跡がある。
長い間、丁寧に大事に使われていた事が分かる、良い橋だった。
小柄な母親と、身体の大きな息子の親子に思えてきた。
もしくは姉さん女房と、気の優しい大柄な旦那さんかな?
まあ、どちらにせよ仲睦まじそうだった。
紫紺の中に悠然と佇む、二つの橋。
まるで、まだその造られた役目を果たしているかのように。
その身体を、大きく崩す事なく、泰然とそこに在る親子橋。
……まるで、まだ人類がこの世界に居るかのように。
でも、きっといつか。
この二つの愛らしい橋も。
いつか崩れていく時が、来るのだろう。
それはすぐ先なのかもしれないし、まだまだ遥か遠くのことなのかもしれない。
でも、いつかは…うつろわずには、いられないのだろう。
この世界に生まれ落ちたもの、全てはうつろっていく。
どうやって生きても。
どうやって死んでも。
変わらずには、いられないんだろう。
時は残酷なまでに、平等に、確実に流れていく。
時は残酷なまでに流れて、そして全てを荒廃させていく。
この世界は、一つの完結を迎えているのだろう。
だって、成し遂げる事がもうないのだから。
人間の世界としては、もう変化は無くて、後はもう風化するだけなのだから。
人間の世界が完結を迎えた時、ハッピーエンドだったのか、バッドエンドだったのかは分からないけれど。
確かに一つ言えることは、もう終わってしまったのだと言うこと。
光が射す。
きらきらと優しく。
じわじわとあたたかく。
ボクが、いろいろなことを考えている間に、日の出の時間を迎えたのだ。
空はその身に抱える多くの雲と一緒に、真っ赤に、煌々と燃え上がっている。
世界が、燃えている。
その景色が、まるでこの世界への追悼の炎に見えて。
まるで、この世界が荼毘に付せられているようで。
…一つの別れを、告げられた様な気分だった。
燃える。
燃えていく。
燃え上がる。
煌々と、爛々と。
燃え盛る。
世界が真っ赤に燃え上がる。
悲しんでいるように、燃え上がる。
終わってしまった世界を、哀しむように燃え上がる。
終わってしまった世界が、別れを告げるように燃え盛る。
今、この瞬間に終わりを迎えるかのように。
段々と、炎が弱まっていく。
それと共に、新しい世界が産み出されていく。
炎の中で、生まれ変わるかのように。
生まれ変わったかのように。
少し滲むボクの視界の中で、変わっていく。
…何時見ても、そこにある空を除いて。
太陽は、その身体を少しずつ天高くに持ち上げていく。
あと、ほんの少しの時間でこの炎も無くなるのだろう。
この世界への別れの炎は、消えるのだろう。
ならこの別れが済む前に。
別れてしまう前に。
この世界が逝ってしまう、その前に。
…遥かな変わらぬ空に、昨日までのボクを捧ごう。
この世界と共に生きると、決めたから。
この世界と共に死ぬと、決めたから。
この世界が少しでも寂しくないように、昨日までのボクを捧げよう。
ーーただひとつ、うつろわざるものに向けて。
まるで最終回のようだ。
あ、まだ多分終わらないよ?
次回は何時になるかなー。
あ、裏話みたいなのを前の方に追加したんで良かったらどうぞ。