この悲しくも美しい世界にて   作:ふがふがふがしす

14 / 17
どうも、特別編抜いたらほぼ一ヶ月ぶりのふがしです。
とりあえずどうぞ。

7月15日、サブタイ変更
旧サブタイ:うつろわざるもの


美しくも悲しい、この世界にて

 

 

 

 サクサクと、ザクザクと音を立てながら、ボクは歩いていた。

 時刻はまだ太陽が登る前で、少し肌寒い風が吹いている。

 今日は何故か、いつもより早い時間に起きちゃったので、眠気覚ましも兼ねて散歩しているのだ。

 足音で分かるように、今歩いているのは舗装された道ではなくて、土で出来た川辺沿いの堤防(…でいいのかな?なんか違う名前があったような気もするけれど)を歩いているのだ。

 まあもっとも、今じゃもうどこの道路もボロボロだから、綺麗に舗装されたままの道なんて、見たことないのだけれど。

 

 相棒は流石にまだ眠いのか、ボクの上着のフードの中で丸くなっている。

 流石にもっと大きくなったら、首が痛くなりそうだから取れなくなると思うけれど、今ならまだ小さいからできる方法だ。

 この子が大きくなったらこういう時、どうしようかなぁ…。

 そんなことを考えながら、ほの暗い世界をただ歩く。

 

 

 そよりと、風が吹く。

 少し冷たいけど、まだどこか寝惚けている今のボクには、心地いい。

 なんとなく目を閉じると、世界のいろいろな声が聞こえてくる。

 さらさらと流れる水の音。

 ざわざわと風と戯れる草の音。

 どこか遠くでは、起きるのが早い小鳥達のさえずりも聞こえてくる。

 …そして、ボクの後ろで気持ち良さそうにいびきを一つ掻く相棒。

 ………。

 なんかひどく残念な気持ちになった。

 

 

 はぁ、と一つ溜め息。

 それと共に気持ちを切り替える。

 目を開けると、さっきよりは少し明るくなってきたように思える。

 空は濃紺から蒼白い色に変わり始めていて、とても綺麗だった。

 空から前方に視線を戻すと、少し遠いところに親子橋が見えた。

 うん、とりあえずあそこまで行こうかな?

 ボクは水のせせらぎや、小鳥の声を聞きながらのんべんだらりと、また歩みを進め始めた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 立派な橋だった。

 こじんまりとした可愛らしい橋と、その倍以上の大きさがある雄壮な橋だった。

 こじんまりとした可愛らしい橋は、大型トラックがなんとか通り抜けれるくらいの、住宅街の路地程度の道幅しかない。

 その倍以上の大きさがある橋は、片側二車線で中央分離帯もある、それは大きな橋だ。

 電灯も設置されている。

 高さも横幅も違う二つの橋だけれど、橋のデザインは同じようになっていた。

 眼鏡橋、になるのかな?

 小文字のnを複数並べて、上に板を載っけたようなデザイン。

 …違うかもしれない。

 まあ、そんな比較的よく見るデザインな気がするけれど、この形はやっぱり様々な過程を経て、洗練されたものの一つなんだろうなと思う。

 機能性を求めると、自然とこんな形になるのかも?

 

 まあとにかく、その二つの橋はそこにあった。

 どちらの橋も、丁寧に頑丈に造られたのか、壁面の塗装やらなんやらが多少は剥がれてるけれど、大きく崩れている部分が無い。

 今にも反対側から車が走ってきそうなくらい、綺麗な状態だった。

 まあ、流石に大きな橋の方にある、電灯はもう点く事は無いようだけれど。

 

 

 親小橋、と表現したのだけれど。

 どうやら、小さい橋の方が親にあたるみたいだ。

 こちらの方が年季が入っていて、多少の補修の跡がある。

 長い間、丁寧に大事に使われていた事が分かる、良い橋だった。

 小柄な母親と、身体の大きな息子の親子に思えてきた。

 もしくは姉さん女房と、気の優しい大柄な旦那さんかな?

 まあ、どちらにせよ仲睦まじそうだった。

 

 

 紫紺の中に悠然と佇む、二つの橋。

 まるで、まだその造られた役目を果たしているかのように。

 その身体を、大きく崩す事なく、泰然とそこに在る親子橋。

 ……まるで、まだ人類がこの世界に居るかのように。

 でも、きっといつか。

 この二つの愛らしい橋も。

 いつか崩れていく時が、来るのだろう。

 それはすぐ先なのかもしれないし、まだまだ遥か遠くのことなのかもしれない。

 でも、いつかは…うつろわずには、いられないのだろう。

 

 

 

 この世界に生まれ落ちたもの、全てはうつろっていく。

 どうやって生きても。

 どうやって死んでも。

 変わらずには、いられないんだろう。

 時は残酷なまでに、平等に、確実に流れていく。

 時は残酷なまでに流れて、そして全てを荒廃させていく。

 

 この世界は、一つの完結を迎えているのだろう。

 だって、成し遂げる事がもうないのだから。

 人間の世界としては、もう変化は無くて、後はもう風化するだけなのだから。

 人間の世界が完結を迎えた時、ハッピーエンドだったのか、バッドエンドだったのかは分からないけれど。

 確かに一つ言えることは、もう終わってしまったのだと言うこと。

 

 

 

 

 光が射す。

 きらきらと優しく。

 じわじわとあたたかく。

 

 

 

 

 ボクが、いろいろなことを考えている間に、日の出の時間を迎えたのだ。

 空はその身に抱える多くの雲と一緒に、真っ赤に、煌々と燃え上がっている。

 世界が、燃えている。

 その景色が、まるでこの世界への追悼の炎に見えて。

 まるで、この世界が荼毘に付せられているようで。

 …一つの別れを、告げられた様な気分だった。

 

 

 

 燃える。

 燃えていく。

 燃え上がる。

 煌々と、爛々と。

 燃え盛る。

 世界が真っ赤に燃え上がる。

 悲しんでいるように、燃え上がる。

 終わってしまった世界を、哀しむように燃え上がる。

 終わってしまった世界が、別れを告げるように燃え盛る。

 今、この瞬間に終わりを迎えるかのように。

 

 

 

 段々と、炎が弱まっていく。

 それと共に、新しい世界が産み出されていく。

 炎の中で、生まれ変わるかのように。

 生まれ変わったかのように。

 少し滲むボクの視界の中で、変わっていく。

 …何時見ても、そこにある空を除いて。

 太陽は、その身体を少しずつ天高くに持ち上げていく。

 あと、ほんの少しの時間でこの炎も無くなるのだろう。

 この世界への別れの炎は、消えるのだろう。

 

 ならこの別れが済む前に。

 別れてしまう前に。

 この世界が逝ってしまう、その前に。

 …遥かな変わらぬ空に、昨日までのボクを捧ごう。

 この世界と共に生きると、決めたから。

 この世界と共に死ぬと、決めたから。

 この世界が少しでも寂しくないように、昨日までのボクを捧げよう。

 

 

 

 ーーただひとつ、うつろわざるものに向けて。




まるで最終回のようだ。
あ、まだ多分終わらないよ?

次回は何時になるかなー。
あ、裏話みたいなのを前の方に追加したんで良かったらどうぞ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。