六門再編記 ~俺たちの物語~   作:みょこすけ

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今回から第二章ということになります。


第一章で歴史をぶっ壊してしまったために、
ここから先はほぼオリジナルチャートとなります。


なるべく公式キャラなり何なりを出していきたいですが、
ストーリーを捻じ曲げてでも登場させるような無理はしませんので、
あしからず。


2-0 プロローグ ――俺、アングースト、再び登場――

 『とある召喚術師の手記』を拾ってから早半月。

 運命はごくわずかに変わり始めていた。

 相変わらず俺はしがない遺跡荒らしのままだが、隣りには美女がいる。

 まあ、その美女の正体が外見を好きに変えられる不死鳥なのだから、容姿の自慢をしても仕方ない。ずるみたいなものだ。

 アルフレアの火山で不死鳥のエスメラルダを仲間に引き入れて、そこからジオテランの深い森を目指して北上すると決めたまではすんなりと事が進んだ。しかし、そこから先が困りものだった。

 世界の運命を変える旅を続けるには、金も虫も、少し心もとない。

 エスメラルダは「私の羽を提供したほうがよろしいでしょうか?」と提案してきたが、不死鳥の羽を売り払ったことにより、万が一にでもこちらの正体が他人に露見されてしまっては非常に面倒くさいことになる。謹んでお断りした。エスメラルダは「男のプライドですか」とニヤニヤ笑っていたが、そんな上等なものではない。

 

 幸い、ジオテランへ向かうルートの途中にはいくつか目ぼしい遺跡が点在している。

 

 時間の都合上、あまり深くまでは潜れないだろうが、うまくやればテキトーに浅瀬を掬っているだけでもそこそこ稼げるはずだ。問題はむしろ金銭面ではなく、替えの利きにくい虫たちのほうにあった。

 アルフレアではフレイム・ランナーを相手に3匹も虫を死なせてしまった。

 まあ、3匹程度なら全体の一割にも満たない。しかし、失った虫はどれも一騎千金のエース揃いであった。特にランタン代わりに使える煌々蟲(キラキラムシ)を失った痛手が大きい。虫籠に閉じ込めずとも脱走しないように煌々蟲を仕込むのは骨が折れる。

 金と虫。

 どちらも次の場所で手に入れなければ、後々困ることになるだろう。

 そう胸の内で計算しつつ、俺は〈光の都〉帝都ソブリニを迂回してタルドゥの密林へ侵入した。

 

 

 

 

 

 

 湿度の高い沼地が広がっている。

 所々陸地も見えるが、陸には木々が鬱蒼と生い茂っており、そちらはとても歩けそうにない。

 べちゃり、べちゃり。

 ぬかるんだ地面を踏みしめる度に不快な音が鳴ってしまう。後ろから付いてきているエスメラルダは器用に無音で歩いている。さすがは不死鳥だ。沼地を歩く姿も優美に見える。人間の俺には無理な芸当である。見よう見まねでできる限りエスメラルダの歩調をトレースしてみるが、そううまくいかなかった。

 首を傾げながら足を動かしていると、エスメラルダと目が合った。

「沼地を歩くのは初めてですか?」

「ずっとタージケント付近の遺跡で稼いでいたからな。御覧の通り。初めてだ」

「焦らずとも大丈夫ですよ」

 エスメラルダは柔らかく諭すようにそう言った。

 しかし、その姿を見て、むしろ俺はより強い焦りを感じていた。

 『とある召喚術師の手記』によれば、この不死鳥ですら、ダークエルフたちの手で簡単に殺されてしまうのだ。俺はそいつらを相手に立ち回らなければいけない。春のオーブがこちらの手のうちにある限りは〈欲深き帝王〉オルクス3世が復活することはないが、『とある召喚術師の手記』に書かれている最悪の場合には、オルクス3世を倒す必要だって出てくる。

 ――力が、いや。何もかもが足りない。

 表面上は普段通りにダウナーに取り繕っていても、俺は焦りに焦っていた。

 しかし、不死鳥には俺の考えなどお見通しだったようだ。

 エスメラルダはズイと顔を近づけて言った。

「あなたは人間です。いくら焦ったところでオーガに勝る筋力は得られませんし、エルフに勝る魔術も身に付けられません。落ち着きなさい。責任感と向上心を持つことは美徳ですが、あなたはあなたに合ったやり方で試練に挑むべきでしょう」

 エスメラルダの励ましの言葉を聞いても、俺の焦りは薄れなかった。

 相手の目から逃げるように前を向いてから、俺は尋ねた。

「俺に合ったやり方で試練を乗り越えられないとしたら、どうする?」

「あなたが諦めない限り、試練は続きます」

「俺はアンタじゃない。人間だ。すぐ死ぬくせに、死んだら終わり。次はない」

「あなたはそう簡単に死にません。私が護ります」

 背中越しに不死鳥の力強い視線を感じた。

 誰かから守られた経験の乏しい俺は、たったこれだけのやり取りだけで嬉しく感じてしまう。我ながら単純で薄っぺらな人間だと思う。俺の心の中にまだ焦燥感が残っているものの、だいぶ縮んでしまった。

 俺は肩を竦めて言った。

「アンタこそ死ぬなよ。アンタが死ぬと、犠牲者の数が跳ね上がる」

「それに、あなたが悲しみますからね」

「どうだか――」

 そこまで言って、俺はピタリと動きを止めた。

 前方に動く人影が見えた。沼地を物ともせず歩くリザードマン。青い鱗に覆われた皮膚が甲冑の間から覗いている。獲物は薙刀か。腰にも短剣が佩いてある。武者修行を兼ねた縄張りの警備中なのだろう。

 見つかったら面倒なことになる。

 俺は手振りでエスメラルダに事態を伝え、身を屈めた。

 

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