蒼の彼方のフォーリズム 彼は挫折の果てに何を見る 作:ソモ産
あまりにも原作が好きすぎて、アニメが始まる前に挙げてしまいました。
まだまだ未熟で、至らないことが多々あると思いますが
温かい目で見てやってください。
お願いします、では。
――あぁ、またこの夢か……――
どこまでも続く蒼い空。
見渡す限りすべてが蒼。そんな空間を、僕は飛んでいた。
――風を切るこの感じ…。すげぇ、気持ちいい…――
風が体を包むような、懐かしい感覚に僕は、思わず首を竦める。
――そういえば、僕飛んでるときのこの感覚、好きだったなぁ――
思えば、小さな頃から空に憧れてたのかもしれない。
どこまでも続いている空を、自由に飛び回ることに。
だから、自分の夢を実現できる
父さんと母さんに、必死で頼みこんでグラシュを買ってもらって
それから、僕は『フライングサーカス』を始めたんだ。
それからは毎日が、楽しくって。夢のような日々の連続だった。
初めてまっすぐ飛べたとき。初めて試合で勝てたとき。
どんな体験も全部が楽しくて、面白くて、毎日飛び回ってたっけ。
それはもちろん、試合に負けた時だって同じ。
今回は負けたけど、次は絶対に負けないぞーって練習をするための力になった。
……あの日までは。
一瞬あたりが暗くなったかと思うと、景色は夕焼けへ。
目を凝らすと、茜色に輝く太陽を背に二つの人影が見えた。
――もう何度目だっけ……、これ。――
一人は、まるで初めて空を飛ぶ楽しさを知ったかのように飛び回り、
もう一人は、世界のすべてに絶望したかのように膝に手をつき、項垂れていた。
あれは、僕が
これまで、何度負けても気が遠くなるほど練習すれば超えられると思っていた。
でも、それは幻想だって実感した日。
才能という高い壁はどんなに練習を重ねたって決して超えることはできないんだ。
そのことを僕に、知らしめたのはフライングサーカスを始めて
~~~~~~~~~~
すがすがしいほどに、晴れ渡る青空。
そんな、新しい生活を始めるのなら今日しかないというほどのそんな良き日。
全国的に有名な高藤学園に入学した僕は、
入学後初めての登校だというのに、学校までの坂を全力で走っていた。
「っはぁ!ざっけんなぁー!?入学早々遅刻とかありえねぇーっての!!」
それもこれも、あの夢を見たせいだ。
自分の傷口をえぐり返すような光景を見せられたら寝つきも目覚めも悪くなるってものだ。
全力で走りながら、腕時計で現在の時間を確認する。
学校の開始時刻8時35分に対して、現在時刻、8時10分。
「ッし!、これならギリギリいけるッ!」
ざっと見てもここから学校までは、走って20分。
全力ならギリギリで間に合うだろう。汗だくにはなるが。
ただ、地面ではなくて空に上がれば余裕をもって学校に…。
「いや、それはねぇな…」
選ぶことのない選択肢が一瞬頭をよぎったが、それをすぐに頭を振って消し去る。
今はただ走ることに集中する。それで学校の校門を目指すのみ!
意識を走ることに切り替えた直後、空から声がかかる。
「そ、そこのあなた!!」
足を止め、声の聞こえたほうへ顔を向ける。
そこには、綺麗な金髪をなびかせた美しい女の子がいた。
来ている制服を見るに彼女も、おそらく高藤の生徒なんだろう。
それにあの慌てた感じ、どうやら彼女も俺と同じく寝坊したらしい。
返事もせずに、ずっと眺めていたからだろうか。
彼女は、目を吊り上げながらゆっくりと俺の前に降り立った。
「ちょっと!!聞こえてます?」
「うぇ!?す、すみません!聞こえてます。」
「まったく!聞こえているなら返事ぐらいしなさい!」
目の前に降りてきたと思ったら、すごい勢いで話し出す彼女。
なんと言うか、押しが強烈…。
それに何となく、雰囲気がお嬢様然としているというか……。
あ!また自分の世界に入ってしまった。
それに、こんなことをしてる余裕なんてない!校門が閉まるまで時間がないっての!
「え、えっと。それで何か用ですか?早くしないと遅刻してしまうんですが…」
「あ、遅刻!!そうですわ、なぜあなたグラシュを使わないの?遅刻しますわよ!」
「え…」
予想してなかった内容に思わず声が漏れる。
まさか、初対面の見ず知らずの人にこんなことを、言える人がいるなんて。
普通、困ってる人がいるからって声をかけるだろうか。
少なくとも、僕ならいろいろ考えた結果かけられないと思う。
自分のことを優先して、見て見ぬふり。
たぶんほとんどの人がそうで、それが普通なんだって思うから。
でも、そんな難しいことを彼女は平然とやってのけた。
すっごく優しい人なんだろう、そう僕は感じた。
そんな親切な彼女の言葉に、申し訳なく思いながらも嘘の言葉を返す。
自分の身を守るために。
「そ、その、グラシュってなんです?」
「グラシュを知らない?もしかして、あなた最近引っ越してきたばかりなの?」
「あ、あはは、実はそうなんです。」
「そう……。」
僕の嘘を信じて、考え込む彼女。
その姿にまた俺の胸を申し訳ないと思う気持ちが締め付ける。
でも、僕はもう空は飛ばないって、そう決めたから。
つらいことを、思い出さないために。
これ以上、彼女を悩ませるわけにはいかない、
そう思い、僕は学校に向かうため歩き出す。
「そういうわけなので――」
「……わかりました。それなら、行きますわよ!」
脇を、走り抜けようとすると彼女が僕の手を掴んで走り出した。
その先は、高台から少しせり出し、小さな標識がたてられている一角。
「は?あ、あの!?」
「大丈夫です!この佐藤院麗子、困っている方は決して見捨てませんわ!」
ちがう、そういうことではないんだ。
彼女-佐藤院麗子さんはそう自信満々に言い、
目の前の場所-グラシュの停留場へ一直線に向かう
徐々に、停留場へと近づく僕たち。
そのたびに、少しずつ僕の体に力が入っていく。
「ちょ、ちょっと!?」
「さぁ、力を抜いてください!飛びますわよ!」
佐藤院さんの親切心から来る行動は、逆に俺を苦しめる。
やめてくれ!違うんだよ。僕はもう、空は…!
もうすぐ空を飛ぶことを考てしまいさらに力が入る。
そんな思いが佐藤院さんへ通じるはずもなく、
彼女はグラシュの設定を変えると大きな声でこういった。
「我が翼に、蒼の祝福を!!」
「ふぁ!?」
え…、何それ。驚きのあまり、つい変な声が出る。
なんですか、その中学生でも絶対に言わないような恥ずかしいセリフ……。
――まさか、今の起動キー…?――
佐藤院さんの少し痛々しい発言のあと、すぐに僕は浮遊感を感じた。
あ、空に…上がっていく…。
佐藤院さんの起動キーで、一瞬力が抜け自然体になるけれど
彼女と僕の体が空に上がっていくにつれて徐々に、過去のトラウマが頭をよぎる。
思わず、あの光景が頭をよぎり力の抜けた体に再び力が入る。
でも、体に入った力はすぐに抜けていった。
――あんなに嫌なことがあったのに、もう絶対に空なんて飛ばないって思ってたのに。――
風が全身をなでるこの感覚、それと浮遊感。
それをまた感じたら、やっぱり空を飛ぶのは楽しいんだってそう感じる。
「安心してくだ――って、やけに落ち着いてますわね」
「え!?い、いや驚いてますよ!」
佐藤院さんの言葉に慌ててそう返す。
しかし、あれだけ飛ぶのが、嫌だったのに現金な奴だな。
空に上がった途端に、こんなにも楽しく感じてる。
たまにならいいかもな、空を飛ぶのも。
僕の意思は、自分が思ってるよりもずっと弱かったらしい。
それでも、フライングサーカスは絶対に…。
そこまで考えたところで、隣の彼女から声がかかる。
「っと、わたくしとしたことが自己紹介がまだでしたわね。
わたくしは佐藤院 麗子ですわ、今年から高藤の1年生です。あなたは?」
「あ、あぁ。えっと笹原 蒼汰、同じく高藤の1年です。こちらこそよろしくお願いします。」
軽い自己紹介を済ませつつ、佐藤院さんは学園へと向かって飛ぶ。
その飛行姿勢は、とても綺麗で安定していた。
これならきっとフライングサーカスをやっても結構戦えるんじゃないんだろうか。
なんて、久々に空を飛んでいるからだろう、そんなことまで考えてしまう。
なんだろう、今日はなんかいろんなことが起こるようなそんな予感がする。
――――――――
「さ、着きましたわ。」
「ん、ありがとう。」
僕の予想より、5分早く学校に到着し、
佐藤院さんと一緒にコンクリートに足をつける。
僕の久しぶりの飛行体験は15分ほどで終了。
もしこれ以上飛んでたらどうなったんだろうか。
ふとそんなことを考えてしまった。
「まだ時間がありますが、それでも始業まであと少し。早く教室に行きましょう。」
「そうですね。」
2人で、並んで校舎まで向かう。
その道中も、何気ない話を続けつつ進む。
どうやら、最初の印象通り、いやそれ以上に佐藤院さんは人がいいみたい。
なんだろう、お嬢様っぽい雰囲気なんだけど親しみやすいというか…。
しばらくの間他愛ない話をしていると、1年生が割り当てられた階へ到着した。
「わたくしのクラスはこっちのようですわね。笹原さんは?」
「僕は、逆みたいですね。」
「あら、そうですか。
笹原さんとは仲良くなれるような気がしていたのですけれど、仕方ありませんね」
佐藤院さんはそういって、少し名残惜しそうな顔をしていた。
けれども、それも一瞬ですぐに先ほどまでの明るい表情をしてこう言った。
「けれど、クラスが違うからと仲良くしてはいけないなんてことありませんわね。
笹原さん、これからもよろしくお願い致しますわ」
「佐藤院さん…。こちらこそよろしくお願いします。」
そう笑顔で言われ、思わず僕もうれしくなり同じように返事を返す。
でも、彼女がいい人だってわかるたびに、すっごく心苦しくなるなぁ…。
それになぜだろう、これからすごいことが起こりそうな予感がする。
そんな不安を感じたまま、僕たちはそれぞれの教室へと向かった。
この予感、気のせいだといいんだけど…。
彼女と別れ、自分の教室に着いてからは、時間が経つのが速かった。
そして、クラスメイト達とも友好を深め放課後。
教室にいる誰もが、これからの学校生活をより豊かにするために各々交流を取り始め
僕もそれに倣い、近くの人へ話しかけようとした。
そのとき、教室の後ろのドアが勢いよく開いたかと思うと、澄んだ声が教室中に響き渡った。
「お聞きしたいのですが、このクラスに笹原 蒼汰さんはいらっしゃいますか?」
「は!?」
声の主は、忘れるはずもない、今朝一緒に来た佐藤院 麗子さん。
さっそく、僕に会いに来てくれたのはうれしいんだけどさ。
もう少し、静かに入れないかな!?
君のおかげで、クラス中の視線が僕に釘付けだよ!!
クラスメイト達の視線が動いたことに気づいたのか、佐藤院さんは僕に顔を向ける。
「やっと見つけましたわ!笹原さん!」
「あ、あぁ。うん、今朝ぶりだね佐藤院さん。」
彼女は、少し笑顔を見せつつ僕に近づいてきてそう言った。
…ん?待てよ。今、彼女やっと見つけたって言ってたような……。
ま、まさか!!
「も、もしかして佐藤院さん…。ほかのクラスにも探しに行ったり、した?」
「えぇ、4クラスほど。でも気にしないで下さい。
わたくしが朝聞き忘れてしまったのが悪いのですから」
やっぱりですかー!佐藤院さん!
きっと、さっき同じことをほかの教室でもやったんですよね、わかります。
はぁ、最初の登校日からほとんどのクラスで僕の名前が知れ渡るって、どんな仕打ちですか……。
当の佐藤院さんは、そんな俺の気持ちなどつゆ知らずに話を続ける。
「さて、それじゃあ行きますわよ。」
「どこに行くんです?」
「そんなのグラウンドに決まっているじゃない。」
そう言って今朝と同じように僕の手を掴み、歩き出す。
それを見たクラスメイト達は、なぜか声を上げる。
あぁ、また面倒な噂が広がっていく……。
もう、ここまで来たらどうにでもな~れ~……。
流れに任せることにして、佐藤院さんに手を引かれるままにグラウンドへ。
「さ、それじゃあ始めましょうか!」
「始めるって、何をですか?」
「あなたのグラシュの練習ですわ。引っ越してきたばかりなのでしょう?」
……あ。
そう言えば、今朝佐藤院さんにそんな嘘ついてたね…。
どうしよう、ここまで来て嘘でしたなんて言えない。
そんな僕の逡巡に気づくわけもなく、佐藤院さんはグラシュ指導のための準備を進めていく。
「さ、それでは実際に一人で浮いてみましょう。
一度空中でのバランスのとり方を知る必要がありますし。」
「い、いや…。えっと…」
本当にどうしよう。
ここで誤魔化して、今日は逃れられても明日以降もきっと彼女はやってくるだろうし。
かと言って、このまま教えてもらうにしても、
彼女を馬鹿にしているような気もするし……。
やっぱり素直に謝ろう、それが一番いい。
そう決心すると同時に、凛とした声が俺と佐藤院さんへ届く。
「君たち新入生だよね。
悪いけれど、今日は部でグラウンドを使うから、どいてもらえるかな?」
声のしたほうへ、目を向けると長身の男子生徒が立っていた。
あの話しぶりからすると、先輩なんだろう。
そんなことを考えていると、ふと違和感を感じる。
あの先輩、なんか僕のほう見てないか…?
「申し訳ありません、すぐに移動しま―。
あ、あの失礼ですが、真藤 一成選手ではないですか?フライングサーカスの」
「うん、僕は真藤 一成で間違いないよ。
それにしても、選手だなんて恥ずかしいなぁ。」
フライングサーカスの選手…か。
確かに言われてみれば、その男子生徒―真藤 一成先輩の
腕や足周りにはしっかりとした筋肉がついていた。
筋肉の付き方や佐藤院さんの声のトーンから真藤先輩は相当な選手なんだろう。
そこまで考えたところで、僕の全身に一種寒気が走った。
―なんだ今の感じ、鳥肌が―
俺のことを置いて、2人の会話は続いていく。
「そんなことありませんわ!真藤 一成と言えば、
わたくしたちの世代のFCプレイヤーの間では、憧れですもの!。」
「はは、そんなことを面と向かって言われたのは初めてだよ。」
2人の会話が進むにつれて、さっきの鳥肌は徐々に強くなる。
―なんなんだよ!これ、さっきから止まんない…!―
「ということは、君もFCやってるんだね。いいなぁ、彼に教えてもらえるなんて」
「え?あ、あの彼って笹原さんのことですか?
彼は最近こちらに引っ越してきたばかりでグラシュの使い方も知らないのですが…」
ここまで話が進んで、さっきの鳥肌の正体がはっきりとわかった。
この人は、僕の選手時代のことを知っている!!
それだけは!せめていうにしても自分の口から言わなければ!!
そう思った時にはもうすでに遅かった。
「グラシュの使い方を知らない?君こそ何を言ってるんだい。
笹原 蒼汰と言えばジュニア時代で、いくつもの大会で入賞している有名選手じゃないか。」
「え……?」
彼―真藤 一成先輩の一言がむなしくもグラウンドに響き渡った気がした。
はい、読了ありがとうございます。
改めまして、ソモ産でございます。
今回の小説でごぜーますが、
のんびりとやっていこうかと思います。
まぁ、これまでの作品を更新していないわけなんですがねww
あ、やめて、石投げないでw
数少ない読者の皆様方、マジ恋、ダン町ともに少しずつ書いておりますゆえ
長い目で見てくださると幸いでございます。
まぁ、こちらの作品の続きのほうが先に投稿されるとは思いますがw