ゲーム小説 幻想水滸伝   作:月影57令

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前書き
 皆様のあったけぇ意見によりオデッサは宿星なしのまま仲間にします。
 次は周囲の仲間を集めるターン。
 そして解放軍初めての戦いへと移行していきます。





第11話 コウアン

「ティル様……テオ様のこと」

 

「うん、わかっているよ。クレオ」

 

 今日はクレオとグレミオ、二人とお話だ。内容はもちろん、解放軍のリーダーになって父テオと敵対する形になってしまったこと。

 

「二人はきっと僕よりも考えて解放軍に入ってくれたんだと思う。だけど僕も軽々しく決めたんじゃない」

 

「……」

 

「ぼっちゃん。それは……」

 

 二人の顔をしっかりと見ながら言う。

 

「これはオデッサさんにも言ったことだけどね。父さんに育てられた、大将軍テオの息子、ティル・マクドールならば、帝国の圧政や横暴に立ち向かう。それが父さんの息子として生まれ育った人間の、下すべき判断だと思うんだ。帝国の不正や腐敗を黙って見ているだけの、悪を見過ごす事なかれ主義のティルなんていちゃいけない。僕が僕であるならば、今の帝国から人々を解放する為に立ち上がるのが、『正しいティル・マクドールの在り方』だと思うんだ」

 

 オデッサさんにも、リーダーになった後、父親のことについて少し話をしていたのだ。その時と同じことを言う。

 

「…………ティル様」

 

「きっと僕が悪を見ても立ち上がらなかったら、父さんは怒るんじゃないかな。何をしている、しっかり立ち向かえ、ティル――そう言ってさ」

 

「そうですね。テオ様なら、きっと……」

 

 クレオが優しく笑む。そこに言葉を重ねる。

 

「このままいけば、僕は遠からず父さんとも戦うことになる。そのことはしっかりと覚悟しているよ。いや、戦うんじゃない。僕は父さんに勝つつもりだ」

 

 そう言うとさすがに驚く二人。

 

「できれば最初に説得したい。僕が見てきたこと……軍政官や近衛隊の不正。なんの罪もないテッドを、宮廷魔術師という身分で近衛隊を動かし捕まえたウィンディ。僕らにも罪をきせて反逆者に仕立て上げたこと。それを話して、わかってもらいたいと思う」

 

 そう簡単にはいかないだろうけどね、と諦めたように微笑む。

 

「それが無理なら、父さんが何も聞かずにいきなり戦いを仕掛けてくるようであれば、戦わざるをえない。だったら、僕は父さんに勝たなきゃならない。負ければ収監されて、ウィンディがテッドから譲り受けたこの紋章を奪うだろう。そこに僕の未来はない」

 

 右手の甲をさすりながら、その結末を話す。

 

「だから、僕がテッドとの約束を守り、かつ父さんとまた一緒に過ごせる日々を得る為には、父さんに勝つしかないんだ。勝って、降伏を勧告する。そして、解放軍の牢の中になるかもしれないけれど話を聞いてもらう。最後には帝国を打倒して、父さんが僕を許してくれるなら、また……」

 

 そこで言葉を切る。ぐっと息を飲み込む。

 

「だから、僕は父さんに勝とうと思う。あの大将軍を越えるんだ。その為に、もっともっと強くなりたいと思う。父さんに勝てるように」

 

 父さんを、生かせるように。

 

「ティル様がそこまでお考えならば、私は何も言えません。私は、ティル様に付き従うと決めましたから」

 

「私は、ぼっちゃんの味方です。どこまでいっても、ぼっちゃんの味方でいる。それがテオ様の望みでもあると思いますから」

 

 二人は、僕を認めてくれた。……それにしても、大変だぞ。あの百戦百勝将軍、テオ・マクドールに勝つんだからな、僕はいつか訪れるその日を思い、気持ちを高ぶらせるのだった。

 

 

     §

 

 

 解放軍の陣容が段々と整ってきた。これで後はあの街とあの仲間が加われば、戦争することも夢ではない。……いや、それは言いすぎか。旧解放軍の人間がこないと駄目だろ。もっと客観的に、冷静に考えるのだ。

 

 そんなことを考えていたある日、マッシュに呼ばれる。

 

「ティル殿、我が解放軍の人員もだいぶ充実してきました。ここでコウアンの富豪であるレパントという人物を仲間に引き入れたいと思います」

 

 ついにきたな。コウアンはこれがあるから、わざと避けていたのだ。

 

「私の紹介だと言えば会ってくれるでしょう。彼は義理堅い男です。必ずや仲間になってくれるでしょう」

 

 とーころが、それが簡単にはいかないんだよなぁ。

 

「とにかく、コウアンに行けばいいんだね。わかった。行ってみるよ」

 

「ぼっちゃん。私はついて行きますからね」

 

「私も連れて行って下さい」

 

「当然俺も連れて行くんだろ?」

 

 グレミオ、クレオ、ビクトールがついてくる。ふむ、あの街での戦闘は……。

 

「ルック、ちょっとコウアンの街まで行くから付き合ってよ」

 

「僕かい? まあいいけどさ。退屈させないでよね」

 

 オデッサさんは城での執務が残っているので来ない。彼女は元リーダーということで、人脈などを生かし、人との折衝や執務を行う副リーダーとして働いてくれている。実にありがたい。ついでに、戦闘要員としてカミーユ、タイ・ホー、ヤム・クーにもパーティーメンバーに入れた。これで八人。現実なのでパーティーメンバーの人数に制限などない。いいねこれ。ただ余り人を増やしすぎると移動速度が遅くなるし、食料や水などの物資も増える。注意してほどよい人数にしないとね。

 

「コウアンに一番近いのは大森林の村だ。ビッキーのテレポートで行こう」

 

 エレベーターで地下に降り、そこでテレポート係りとして待機しているビッキーに送ってもらう。余談だが、彼女が仲間に加わったことで、トラン城からカクの町への移動が船ではなくテレポートになり、船頭の二人は嘆いていた。自分達の腕が腐ってしまう、と言って。だがどう考えてもテレポートの方が便利なので、二人には暇があれば船を出して漁などを行ったり、カクの町からトラン城へと来る解放軍への入隊志願者を送ったりしてくれ、と言ってある。

 

「え~っとえっと。アレ? 呪文はどうだったかな? まあいいや」

 

 かなり不安になるビッキーのテレポートを受け、大森林の村へ。

 

 

     §

 

 

 はい到着。風情もへったくれもない移動だが。現実はこんなものだということだね。では馬を借りて、コウアンの町を目指そう。ちなみに経費節減の為、一頭に二人乗る形だ。さあハイヨーシルバー!

 

 二日かけてコウアンの町へやってきたぞ。すぐレパントさんの屋敷へ行こう。

 

「旦那様は忙しくて誰にもお会いになりません。お暇がないのです」

 

「いつ会えますか?」

 

「さあ、一日後か一ヶ月後か一年後か……いつになることやら」

 

「僕達、どうしてもレパントさんに会いたいんですけど」

 

「いいから帰った帰った! 塩をまきますよ!」

 

 以上、屋敷の玄関前にいた、使用人ジョバンニさんとの会話でした。

 

「なんだい、ありゃあ。マッシュの言うことと随分違うみてえだな」

 

「町の人達に聞き込みをして情報収集をしよう。とりあえず宿をとろうか」

 

 恒例の宿泊である。宿屋に入ると右側には戦士の格好をした女性。左側にはいかにも「こそどろ」とでも言うべき姿形をした男性が立っていた。チェックインの手続きしがてら、男性にレパントについて何か知らないか、と話を持ちかける。

 

「うきききっ。レパントの屋敷に行ったって? そう簡単には会ってもらえなかっただろう。事情があるのさぁ」

 

 ……こいつのこの猿のような言葉(口癖?)には何か意味があるのだろうか?

 

「何か知っているんですか?」

 

「ここじゃまずい。部屋をとるみたいだからそこで話そうぜ」

 

 部屋に移動して話を聞く。簡単な挨拶を交わして。

 

「さて、どういうことですか?」

 

「へっ、あいつはな。あんた達みたいな帝国に楯突く人間と会いたくないのさ。自分が担がれるのが嫌なのか、なんなのか……それはわからねぇけどな」

 

 クリンと名乗ったその男はどうやらレパントの深いところまでは知らないようだ。

 

「でも、どうしても会って話したいんです。クリンさん、何か手はありませんか?」

 

「ふ、ふふ。手ならあるぜ」

 

「本当ですか?」

 

 どこか信用できなさげにグレミオが聞く。

 

「奴には大事なものが二つある。一つは愛妻のアイリーン。もう一つは奴の持ってる銘刀キリンジだ。そこで、ものは考えようよ。奴の屋敷に入り込んでキリンジを盗み出す。そしたら奴は怒って出てくるだろうぜ。後はどう話すもあんたらの自由だよ」

 

「泥棒の真似事か……」

 

 クレオ、正確に言うなら真似事じゃなくて泥棒そのものだよ。

 

「あんたらにその気があるなら、夜も更けた頃に屋敷の横手に来な。手はずは調えてやるぜ。うききききき」

 

 そう言ってクリンは部屋を出て行く。

 

「さて……どうするんだい? 信用できなさそうなあの男を頼るのかい?」

 

 楽しげに(実際楽しんでいるんだろう)ルック。

 

「信用はできないけど、他に手段はない。ここは彼の案に乗ろう。何が起きてもリーダーである僕の責任さ」

 

 軽く答えて夜を待つことにした。

 

 …………………………………………。

 

 夜半、僕達はレパントさんの屋敷に集まっていた。全員で移動しては目立つので、二人一組で別々に移動する。最終的に八人が集まった。

 

「よく来たな。そんじゃ少し待て」

 

 しゅるしゅる、とロープを操るクリン。たちまち地面と屋敷から塀の外に出て行く木の枝にロープを結びつけた。

 

「さ、それじゃ忍び込みな」

 

「クリンさんは来ないんですか?」

 

「俺はここまで、ここから先があんたらの領分だ」

 

 横から掠め取ろうとしているくせに。しかし利用しているのはこちらも同じ……か。僕は卑怯な転生者。わかっているよ。

 

「わかりました。それじゃあ行ってきますね」

 

 ロープを登り木の枝から屋根の上へ。そこにクリンが穴を開けてあるという話だけど……。

 

「あったよ」

 

 呟いてみなを呼ぶ。そこから屋敷の中へ。

 

「さぁて、そのキリンジってのはどこにあるのかね」

 

 タイ・ホーが面白半分にそう言う。

 

「屋敷の中をくまなく探すしかないね。一つ一つ部屋を見ていこう」

 

 そうして巡回する。と、機械兵だ。

 

「なんですかこいつら!」

 

 槍を構え、ヤム・クー。

 

「警備用の機械兵士みたいだね。ルック、雷の魔法を頼むよ」

 

「やれやれ……」

 

 ドラゴンゾンビから手に入れた雷の封印球はルックの左手に宿してもらっていた。右手には当然真なる風の紋章だ。

 

「雷雨!!」

 

 敵全体に降り注ぐ雷の紋章魔法が機械兵を打ち据える。弱点なのでたっぷり効くだろう。

 

「いくぞ、皆!」

 

 掛け声を置き去りに前へ。棍でダメージを負った敵を攻撃する。グレミオ達も続いて攻撃した。

 

「ふぅ。何とかなったね」

 

「まったく、こんな金にならないことを……」

 

「富豪のレパントさんが仲間になってくれたら、資金も増えますから……」

 

 ぶつぶつと不平を漏らすカミーユをなだめるグレミオ。やっぱりこの二人はお似合いだね。グレミオにも僕以外の人に目を向けて欲しいから、この二人がくっついてくれると嬉しい。

 

 歩いていると、倉庫があった。残念ながらきっちり鍵がしまっていたが。倉庫番はいなかった。もう休んでいるのかもしれないな。

 

 その後も、スロットマシーンという宝箱を模した敵(ミミックみたいなもの)や、再度機械兵に襲われながら屋敷の中を進む――と。

 

「おーーや。こんな時分に客人とはな」

 

 奇妙な格好。それはもう相当に奇妙な格好である緑と赤色の服を身に纏った男。格好というより、これは体型が妙なのだろうか? 上半身は横に膨らんでいるのに、下半身はほっそりとしている。

 

「僕達は……」

 

 事情を話す(泥棒のくせに)。また、聞く。ふむふむ。名前はジュッポでからくり師。

 

「ふぅむ。レパントの旦那をね。まあ頑張ってみてくれよ」

 

「それより、あの妙な仕掛けの機械を止めて欲しいんですが」

 

「大仕掛けなものは止められないよ。その代わり機械兵については、あちきが止めておいてやろう」

 

「お願いします……それと、この事件が終わった後でも構わないのですが、解放軍に来てくれませんか? 機械仕掛けの兵士が作れるなら、是非加わって欲しいです」

 

「ふーん。解放軍ねぇ。レパントの旦那が行くっていうなら同行しようかね」

 

 それで構わない。よし、これで連鎖的に二人の仲間をゲットだ。

 

「じゃあな」

 

 そう言ってジュッポは去っていった。言葉通りなら機械兵を止めてくれるのだろう。これで戦闘せずにすむ。僕は覚えている通りに一階の左側に移動する。確かここに……。あった。ルーレットだ。人間サイズの巨大ルーレットがある。この先にキリンジがあるはずだ。

 

「なんでしょうか? これは」

 

 クレオが疑問の声を上げる。

 

「虎穴に入らずんば虎児を得ず。何事もやってみよう」

 

 簡単に言ってルーレットに乗る。原作をやっていた時から思っていたけどさぁ。これって……。

 

「ひょいっと」

 

 ルーレットの回転が緩やかになった時に向こう側に飛び移ればいいだけだと思うの。

 

「ぼ、ぼっちゃん?」

 

「僕は先に行ってみるよ、グレミオ。敵はもう出ないだろうから、先に行ってキリンジがないかどうか見てくる」

 

 そう言ってさっさか歩く。リーダーとしてはいかがなものかの行動だが、先にキリンジがあることはわかっているのだ。手順をすっ飛ばしても構わないだろう。と、思っていると皆も追いついてきた。ルックは気だるげにしているが。

 

「あった……」

 

 すらり、と鞘に包まれた刀を抜く。レパントが戦闘で使う一級品の刀だ。

 

「さすがに銘刀ですね」

 

 感心したように、クレオ。

 

「は、早いとこ退散しましょうよ」

 

「びびりすぎだぜ、グレミオ」

 

「マクドール家のぼっちゃんが泥棒で捕まったらいい笑いものですよー!」

 

「だってさ? ぼっちゃん?」

 

「ルック、一々楽しまないで。それとグレミオ、もう家は出ているんだから、笑いものも何もないよ」

 

 刀を手に入れたので素早く引き上げる。

 

「遅いぞ、何やってた」

 

「……文句を言うならご自分で行って下さい」

 

 さすがに疲れたのだ。優しく気を使ってなどやれないよ、クリン。

 

 宿屋に戻る。ちなみに、キリンジが飾られていた場所には、宿屋で待つと書き置きを残してきたから、気づいたら早々にやってくるだろう。

 

「さて、疲れたろう。今お茶を入れてやるからな……うききき」

 

「…………」

 

「お茶?」

 

「お茶ー?」

 

「お茶ーーーーーー!!!?」

 

「きへへ、ほら、飲みなよ」

 

「………………」

 

 こんなもの、誰が飲むか。

 

「クリンくん」

 

「へっ?」

 

 口調の変わったビクトールは、妙におかしかった。

 

「きみが さいしょに それを 飲んでも いいよ」

 

 一々言葉を区切りながら話している。くすっ。

 

「へ? ……い、いやぁ、おいらは疲れてないから……」

 

「そんなことだろうと思いましたよ。誰がこんなものを無防備に飲みますか」

 

 男連中でクリンをベッドに縛りつける。

 

「げぇっ、くそっ。こんなもん……こんなもの……ああうっ……よっ……ほっ……はっ…………………………………………ほどいてくんない?」

 

「解放軍に入ることと、もう盗みはしないって約束するならほどいてあげてもいいよ」

 

 こんな時でもスカウトする。まさしくリーダーの鏡のような僕だった。

 

「出てこい! 盗人どもが!」

 

「来たみたいだね♪」

 

 だから一々楽しむなと言っている。

 

「さて、お相手をしようか。皆は後ろに」

 

「貴様か! 盗人は!」

 

 現れたレパントはさすがに一角の人物だった。威厳とオーラが凄い。

 

「実はマッシュの紹介で……」

 

 解放軍だと名乗り、マッシュが軍師であることも明かす。

 

「なんと……マッシュ殿が……しかし、私には家人がいるのです。解放軍に入ることはできません。刀を置いてお帰り下さい」

 

「貴方の力が必要なんです。お人柄も、とても素晴らしい方だとお聞きしました」

 

「…………私が一人であれば話を受けたかもしれません。しかし、私には守るべき者がいる」

 

 ここら辺が潮時か。

 

「わかりました。刀をお返しします。大変なご無礼をお許し下さい」

 

「いえ、すみませんな」

 

 そうして会話が終わろうという時だった。

 

「だ、旦那様ー!」

 

「どうしたジョバンニ?」

 

 ジョバンニおじさん登場。

 

「そ、それが、あの新しい軍政官が奥様を連れて行くと言って……」

 

「何だと!? アイリーンが!」

 

 だだっと駆けて行くレパント。急展開だね。

 

「どうやらまずい事態らしい。レパントさんについて行こう」

 

 皆を引き連れて軍政官(あいつなのはもはや確定)の屋敷へ乗り込む。

 

「なんだ貴様ら! ここを軍政官様のお屋敷と知っているのか!」

 

「くっ、この数ではさすがに手こずるか……ん? お前達、いいところにきた、力を貸せ」

 

 余裕がなくなっているのだろう。ストレートに要求してきたので応える。レパントさんが入るので一人減るとか、後列に回ってしまって攻撃できないとかいうこともなく、僕らは合流した。

 

 敵、帝国兵はルックの雷雨と、クレオの炎の嵐で簡単に片付けた。やはり紋章魔法は強い。幻想の世界だから、直接攻撃より魔法が強いんだよね。だから属性はなるべくそろえておきたい。

 

 そのまま屋敷の二階へ。軍政官の部屋に殴りこむ。

 

「貴様ァ! アイリーンを離せ!!」

 

「…………! 貴様、ティル。私の昇進を邪魔しておいて、ここでの楽しみも奪う気か!」

 

 そこにいたのは、まあ当然のように、クレイズだった。

 

「ふざけるな! 何が楽しみだ! このゲス野郎!!」

 

 いきり立つレパント。敵兵士はもう打ち止めらしいが、アイリーンを人質にとられているのが痛いな。というかホントに人質をとるしか能がないのか帝国軍(こいつら)は。

 

「こっちもあんただけは許せないね」

 

 クレオが強気に睨む。

 

「ふん……動くなよ。私もこの可憐な女性の首が折れるところなぞ見たくはないのでな」

 

「なんてゲスな奴だ。こんな奴の命令を聞いてたかと思うと吐き気がしますね」

 

 吐き捨てるグレミオ。心配するなグレミオ。こいつは――。

 

「そうだ、貴様らに懐かしい顔を見せてやろう。おい! 出て来い!」

 

 その言葉に、クレイズとアイリーンさんの背後にある扉から男が出てきた。赤い衣服に銀の胸当て――パーンだ。

 

「パーン!」

 

「ふん。パーンよ、そいつらを捕まえればテオ様の名誉も回復するというものよ」

 

「パーンさん! そんな奴の言うことを聞くんですか!?」

 

 クレオとグレミオが呼びかける。

 

「クレオ、グレミオ……ぼっちゃん……。……………………俺は、あの時の選択が間違っていたとは思わない。今でも正しかったと思っている」

 

「テッドを近衛隊に通報したことがかい?」

 

「……っ! は、い…………しかし、しかしそれでも、俺の心は痛む。俺は自分の思いに正直に生きていきたい。俺の行動が間違っているのか正しいのか、それは時が判断してくれるはずだ」

 

「? ……何を言う、パーン? 早くそいつらを始末しろ」

 

「この! 人間の皮をかぶったゲス野郎! これでも食らいな!!」

 

 ばきぃっと派手な音を立てて、クレイズ――もうゲス野郎でいいや――の顔、頬をパーンの拳が打った。

 

「やっ!」

 

 僕は一足飛びに距離を詰めると、ゲス野郎のひっぱたかれた頬に追撃を食らわせた。アイリーンはたたっとレパントの元へ駆け寄り、レパントに抱きしめられた。心温まる抱擁のシーン。さて……。

 

「ヒ、ヒィ!」

 

 僕の胸には選択肢が浮かぶ。こいつをここで始末するかどうか。だが僕の答えは、

 

「お前に興味はない。さっさと失せな」

 

「ぼっちゃん!? なんでそいつを見逃すんです!? そいつはテッド君を……」

 

「よせ。グレミオ。やはりぼっちゃんの器は私達なんかとは違うらしい。嬉しいね」

 

 こんなゲス野郎を殺したところでテッドが元に戻る訳でも、優しい彼が喜ぶこともない。なら、これでいいんだ。

 

 奴は転げ落ちるように逃げて行った。

 

 さて、残ったのはレパントとアイリーン。そしてパーンだ。僕は少し迷ったが、レパント達に声をかけるより、パーンに近寄った。

 

「パーン、久しぶり、だね」

 

「ぼっちゃん……俺を……俺を、貴方の元で働かせて下さい……今更こんなことを言えた立場じゃないのはわかっています。それでも、自分の心を殺して帝国に居続けることはできません。気づいてしまった自分の心に、背く、ことは……。許しを請える立場でないことはわかっています。ですが、解放軍で働きたいのです」

 

 僕は、何も余計なことは言わず、パーンの肩に手をおいた。

 

「パーン、力を貸してくれ」

 

 万感の思いを込めて、言う。

 

「ぼ、ぼっちゃん……いえ、ティル様。俺のこの命、貴方の為に使わせて下さい……っ!」

 

 パーンの肩を叩いて、グレミオとクレオの方に行かせてやる。

 

「レパントさん……」

 

「ティル殿……私は、これでお尋ね者となるでしょう。覚悟を、決める時がきたのだな。家を、人を守ろうと帝国の横暴に屈してきた。しかし、その見返りがこれだ……」

 

「帝国の腐敗はもはや止まることがないでしょう。外から壊すしかありません。貴方が協力してくれれば力強いです」

 

「うむ。アイリーンよ。お前と夫婦でいるのはこれまでだ」

 

「あ、あなた!」

 

 長い金髪にまだ三十代だろうけど綺麗な相貌。まさしくセレブなマダムだ。こんな愛妻を手放すなんてもったいない。

 

「私は今後解放軍として活動する。もうこの町に戻れるかどうか……」

 

 だけどそれで引くようなアイリーンではない。強い女性なのだ。

 

「……………………あなた、私がそんな程度の女だとお思いですか? どこまでも、あなたについてゆきます」

 

「辛い旅になるぞ」

 

「あなたと夫婦の縁を結んだ時から、覚悟、できています」

 

 柔らかく笑むアイリーン。……いいなぁ。この人は伴侶を手に入れられたんだ。ソウルイーターを宿して不老になった僕は……。

 

「ティル殿、私も解放軍に加わり戦いましょうぞ。よろしく頼み申す」

 

「こちらこそ。歓迎しますよ」

 

「ありがとうございます。レパントも本心では貴方たちに力を貸したくてうずうずしていたのです」

 

「少し時間を頂きますが、トラン城に向かいます」

 

 とのことなので引き上げる。

 

 

     §

 

 

 と、その前に仲間集めじゃ。まぐまぐと仲間を集めるのじゃ。

 

「あっしはただの倉庫番でさぁ」

 

 レパント屋敷の倉庫番、ロックと会話。戦闘メンバーではないが、がっしりしたガチムチ男だ。

 

「解放軍で大きな倉庫を作る予定なんです。是非倉庫番をやってくれませんか?」

 

「そ、そうですか。ティル殿、このロック、以前から解放軍に加わりたいと思っていました。わたくしめも仲間に……」

 

「喜んで」

 

 にこり、と微笑んで迎える。

 

「あ、ありがとうごぜぇます。さ、さ、早速大きな金庫をつ、つ、つ、作りやしょう!」

 

 しかしどもりすぎ。

 

 ジョバンニさんとジュッポは自動的に仲間になってくれる。クリンはこの後縄をほどかないぞときょうは……お願いをする。

 

 そして宿の女戦士、ローレライにも話しかける。

 

「ふーん。解放軍に、ねえ……」

 

 この人はシンダル族という一族の遺跡などを探している人だ。軍に入ってくれるとありがたいが……。

 

「いいだろう。あんた強そうだしね」

 

 二つ返事でOK。やったね。鍛えていた甲斐があったというものだ。

 

 じゃあこれでコウアンの町は大丈夫。

 

 次はコウアンの西にあるガランの関所に足を伸ばす。と、棒術のお師匠様がいた。

 

「おお、ティル。噂は聞いているぞ。まさかお前が解放軍のリーダーとはな……しかしテオの奴がなんと言うか……よし、この師匠が力を貸してやろう。わしがいれば百人力だ」

 

 カイ師匠ゲット。しかしこの世界にはあの協力攻撃なんてないのだ。まあ一般兵の練武をしてもらおう。最終的にもそういうポジションに収まる人だし。

 

 最後にカクの町からトラン城へ船で出発する前に、カクの宿屋にいる女の子――メグに声をかけた。

 

「えっ君達解放軍なの? しかもジュッポおじさんまで……ね、ねえティルさん。私も解放軍に入れてくれないかな?」

 

 メグは運のステータスが高かったはずだけど……さすがにこの現実世界でクリティカル発生率が高いとかないよな。まあ砦を盛り上げてもらおう。

 

「いいよ。仲間になってくれ」

 

「わーい。やったー」

 

 さて、仲間が増えたな。また軍記帳を開くのが楽しみだ。

 







後書き
 便利アイテム、竜印香炉はスルーで、移動中に使えない理屈が思いつかないのよ。移動中も使えるとなると強力すぎるしなぁ。

 クレイズは殺しませんでした。作者の私は見逃すとクレオが褒めてくれるので。主人公はやはり必要以上に人殺しをしたくないから。恨みつらみで戦うのが解放軍ではありません。それはやっぱり重要だと思います。

 しかしステータスとか協力攻撃の、世界との兼ね合いが上手くいかない。やっぱりゲーム部分は強く出せないなぁ。基本原作設定を遵守したいのですが。
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