ゲーム小説 幻想水滸伝   作:月影57令

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第三章 種族を越えて
第12話 エルフ


 レパントさんが仲間になったぞー! 富豪の彼なので、これで財政も少しは楽になるだろうか。リーダーは色んなことを考えなきゃいけないので、大変だ。そして彼が仲間になったのであの人物も仲間にできる。「噂を聞いた」と言ってレパントさんを連れ出しセイカの町へ。テレポート便利。

 

「げぇっ! お、親父……」

 

「シーナ、貴様はまた女の尻ばかりを追いかけおって! 私が性根を叩き直してやる!」

 

 宿屋で女性をナンパしていたレパントさんの息子、シーナが仲間に。やった。彼は魔力も高く物理攻撃も強い。また技や速などステータスも全体的に高いお買い得物件だ。これから旅にはできるだけ同行させよう。最初から雷の紋章を持っているのも大きい。

 

 じゃあ船でトラン城へ。と、城の中からバルカスとシドニアの山賊コンビが現れた。

 

「おうおう。久しぶりだなティル。お互い上手く生き延びられたみたいで良かったな」

 

「お二人はどうしてここに?」

 

「なーに。新生解放軍が旗上げしたって聞いてな。こりゃあ借りを返すいい機会だと思って来た。俺達も解放軍に加えてくれよ。おらシドニア、お前も何か言いな」

 

「ふっ。よろしくな」

 

 相変わらずですねシドニア。

 

「ま、まあいいか。それより聞いたぜ! お前が新しいリーダーなんだってな。すげえじゃねえか!」

 

「まあ……何とか、と言ったところですね。でも軍については任せて下さい」

 

 ドン、と胸を叩く。弱気なリーダーなんて駄目だからね。それに嘘ではない。この時に備えて軍事行動、戦術や戦略の勉強は欠かさなかった。父親が将軍だから、と言えばみな協力してくれたし。十数年、遊んでいた訳じゃないんだ。リーダーである僕が行う実務作業はそんなにある訳じゃない。先に上げた戦術とかも、基本軍師にお任せでいい。だけど、最終的に決定を下すのは僕だ。それには最低限の知識がないと決められない。だから知識だけはつけておいたのだ。

 

「ティル殿。新しい人もだいぶ増えました。今日の夜は宴にしましょう」

 

 山賊二人を迎えていたマッシュからそんな提案がなされる。

 

「お、いいねぇ。パーッとやろうぜ!」

 

 ビクトールが歓喜の声を上げる。

 

「よし、今日は宴だ!」

 

「おっ、話がわかるじゃねえか。さすがリーダー」

 

「ふっ」

 

 そうして宴が催された。一般の兵士さんもいるので、大広間で立食パーティーだ。料理長はアントニオさん。他に料理人も多数いるので、準備はしっかりできたとのことだ。主夫のグレミオも手伝った。

 

「あ、どうですかぼっちゃん。楽しんでます?」

 

「パーン! お前、ちょっとは静かに食え!」

 

「うめぇ……。やっぱグレミオの料理がいっちばんうめぇよ。帝国軍の飯ときたらよぉ!」

 

 パーンもすぐになじんだようだ。

 

「ティル殿、楽しい仲間ばかりですな。やはり来て良かった」

 

 レパントとアイリーンも喜んでくれているようだ。

 

「ティルさん。今夜は月が綺麗だな」

 

 その台詞は勘違いされるよ、タイ・ホー。

 

「ティル様よー。帝国のクソ野郎なんてぶっ潰しちまおうぜ」

 

 随分酔っていますね、バルカス。

 

「やっぱりティルにリーダーを譲って良かったわ。こんなに貴方のことを慕って大勢の人が集まったのですもの」

 

 リーダーの名に恥じないように頑張ります。

 

 さて、宴会も終わりが近づいた。そろそろだな。僕はそっと会場を抜け出して一人になった。そこに、

 

「ティル! 覚悟!」

 

 きたな! 俺はウィンディの放った暗殺者を迎え撃った。だが当然知っているので迎撃する。常に手放さない棍で刀を捌く。

 

「甘い!」

 

 ガカッと刀と棍がぶつかり、火花が生まれる。しばらく耐えれば……。

 

「ティル様! この野郎!」

 

 パーンが拳を振りかぶってくる。

 

「おっと」

 

 的確に引きやがった。

 

「解放軍の本拠地に来るとはね。侮りすぎじゃないかしら!?」

 

 ヒュンッとオデッサさんの矢が飛ぶ。さらに後方に跳んで逃げる。

 

「はっはっは。なーにが解放軍だ。本気で帝国に勝てるとでも思っているのか! 愚か者め!」

 

「愚か者はお前らだ! 後で吠え面かくなよ!」

 

 語気荒く言い返す。解放軍を馬鹿にはさせない。

 

「まあせいぜい気をつけることだ。ウィンディ様は常に貴様を狙っているぞ! ティル」

 

 そうして暗殺者は逃げて行った。深追いは禁物である。ちぃっ。せっかくの宴を。だが何とか襲撃を退けられたな。僕は予定通りの襲撃にほっとした。予想外の時に来られるのが一番怖いからな。今後も身辺には気をつけることにしよう。

 

 

     §

 

 

「みずうみ~は~広い~な……♪」

 

 身辺に気をつけるリーダーではあるが、ぼんやりとする時間も大切だ。この地方で仲間にできる108星も仲間にし終えたので、次の展開を待っているのである。同時に釣りなどをたしなむ。お供はヤム・クーで決まり。

 

「ティルさ~ん、釣れやすか~」

 

「う~うん。さっぱり~」

 

 ぼへーっと、のんびりゆったりの~んびり、である。最近は城も大きくなり、三階を利用できるようになっていた。そして新生解放軍への入隊じゃなく、散り散りになっていた旧解放軍のメンバーもぱらぱらと散発的にやってくることが多くなった。噂を聞いて駆けつけてくれたのだ。そんな日々を過ごしつつ、先を思う。これから起こることは拙速を尊ぶので、なおさらだるーんとしているのだ。そうしていると来ました。じゃばじゃばと泳いでやってきた人物。す、凄い根性だな。恐らくカクの町から泳いできたのだろうが、普通は泳げる距離じゃないよ。

 

「ヤム・クー船を~出して~」

 

「あの人を~乗せるんですね~」

 

 ぼんやりしたまま動く。一刻も早く回収してあげよう。と、船に乗ったら目もしゃっきりしてきた。

 

「こんなにずぶ濡れで……とりあえず着替えと暖ですね」

 

「マリーさんの所に運ぼう」

 

 そうして宿屋となっている場所に運び込む。医者もいるが、この人を診せていいものか。湖を泳いで来た人(?)はエルフなのであった。緑の服、秀麗な顔にオレンジの髪、そこからのぞくは尖った耳。間違いない。

 

「この辺でエルフとは珍しいですね」

 

「ね。南東の地帯にはエルフの村があるって噂もあるけど」

 

「どうしたってんだぁ?」

 

 続々と暇な皆が集まってくる。

 

「あまり集まらない! 病人のようなものなんだから」

 

 しっしっと追い払う。ちぇーとか言うな。

 

「人間と接触して船を利用するということができないからといって、ここまで泳いでくるとは。よほど訳あり……というところですかな」

 

 マッシュの冷静な分析。

 

「う、うーん。ここは……」

 

「起きられましたか。ここは解放軍の本拠地、トラン城です。何か用があるならおっしゃって下さい。あ、僕は解放軍の新リーダー、ティルと申します」

 

 礼儀は大事。

 

「ティル……様。噂を聞いたのです。解放軍という帝国と争う集団がいると……」

 

「その噂に間違いはありませんよ。僕らは帝国と戦っているのです」

 

「そう……ですか。では、ティル様。我々を助けて下さいませんか」

 

「助けるとは? それと、貴方のことは何と呼んだらいいでしょう」

 

 そう言うと、エルフの青年ははた、と気づいたようだ。

 

「あ! 僕は、キルキスと申します。私の住む村、エルフの村には、近くにパンヌ・ヤクタ城を帝国軍の大将軍クワンダ・ロスマンが治めているのです。ですが、彼は我々の一族を、エルフを根絶やしにするつもりなのです……お願いです。解放軍のお力を貸して頂けないでしょうか」

 

「任せて下さい。助力致します」

 

 即答。瞬間や微塵もなく返答する。

 

「お待ち下さい、ティル殿。今の解放軍の力はそれほど大きくはありません。バルカス達が連れて来た山賊を合わせても、生き残った旧解放軍の人数は多くないのです」

 

「それは重々わかっているよ。マッシュ。だけど僕達解放軍の強みは、人々の期待を受けているという点だ。助けを見捨てることなんてできない。それに……少し前から考えていたんだ。帝国軍の強大な力には、エルフやコボルト、ドワーフといった他種族の力も借りて対抗できないか、とね」

 

「ティル殿……」

 

「ぼっちゃん、そんな考えを……」

 

「決まりね。軍を動かすことはできない。だけど助ける。なら少数の手勢で状況を調べるしかないでしょう。ここは私が……」

 

 オデッサさんが乗り気になってしまった。仕方がないので彼女には、旧解放軍の集まり、ハンフリーやサンチェスさんがやってくるかもしれないので、残ってもらうようにお願いする。

 

「僕が行くよ。種族の長に面会するんだ。こちらもリーダーが出向かないとね」

 

「ありがとうございます。僕が案内をさせて頂きます」

 

「もう!」

 

 とオデッサさん。彼女もたいがい行動的なリーダーだ。さ・て。では準備だ。連れて行くのはグレミオ・パーン・ルック・シーナ。そしてキルキスだ。ボス戦を考えればもっと大勢で行きたいのだが、少数で行くと決まったことと、今回の行軍では速度を重視するから人数を絞った。ではテレポート!

 

 

     §

 

 

「凄いものですね……」

 

 大森林の村に到着した。

 

「エルフから見てもそう思えるのかい?」

 

「ええ、このような魔法は聞いたことがありませんでした。すりぬけの札は知っていますが……」

 

 キルキスとは既にフランクに話すようにした。今度は仲良くなるターンだ。で、大森林の村に来た訳だが、まあ当然のように馬を使う。そうそう、マッシュ達には伝令があったらすぐに軍をまとめて出せるように、と言葉を残した。クワンダ将軍の出方次第だけど、即エルフを守れるよう出撃できるようにしておいて欲しい、とね。ここら辺は転生者の面目躍如だ。有効な手札は使える時に使わないと。まあ無茶を言っているのは承知の上だ。何せパンヌ・ヤクタ城の兵数は約九千。そして解放軍の兵数は千にも満たない。とてもじゃないが戦えないよ。だけど旧解放軍のメンバーがくるかもしれないので、その時は出撃準備しておいてね、と言っておいた。

 

「ここから先は魔法の結界があります。私がいれば迷いませんので、はぐれないようにして下さい」

 

「わかったよ」

 

 木々が生い茂る森をぱっぱかと馬を飛ばして奥に進む。ここに出る魔物は、ひいらぎこぞう再び。ひいらぎの精もいる。そして……。

 

「何故、コボルトが……」

 

 犬人間といった風体のコボルト族だ。人間のように二足歩行だが姿は犬そのもの。頭の上に二つの耳がピーンと経っている。

 

「無用な争いは避けよう! 駆け抜けるんだ!」

 

 コボルトを殺してしまうのは、かなりまずい。なので馬に乗っているのをいいことに、走り去った。そうして駆け込んだのは森の出口にある、コボルトの村だった。木の家が何軒か並んでいる。その形は犬小屋そのものだ。やっぱりそうなのか、とくすり笑う。一通り見て回ったが、

 

「これは……。ここは、コボルトの村なのです。解放軍を訪れる時に通りましたが、その時はちゃんといたのですが。今は……」

 

 誰も、いない。コボルトが。僕の知識が確かなら、支配の紋章で精神支配されているはずだ。山賊のように自分の意思で動いているなら仕方ないが、操られたあげく殺す気のない僕達に殺されるなんて最悪なんてものじゃない。

 

「バウウー」

 

 と、一匹のコボルトがやってきた。クロミミ……か?

 

「おまえら、人間。家族、友達、連れ去った。ぜったい、ゆるさない!」

 

 やっぱりクロミミか。このコボルトも108星の一人(?)だ。

 

「うぅぅー! ゆるさない! くんかくんか。でもじかんない。クロミミ、みんなのびょーき、なおす」

 

 一方的に言うと立ち去ってしまった。

 

「連れ去られた、とか。病気、とか言っていたね。何かあったことは確定かな。もしかしたら帝国軍の仕業かもしれない。とりあえずエルフの村に行って調べてみよう」

 

「そうですね。急ぎましょう」

 

 急いで南にあるというエルフの村へと。ここからは時間勝負だ。

 

「村……というか森の木……だね。しかも大木だ」

 

 そこにあったのは、一本の大木だった。だが、村、という名前が似合うほどの大きさだ。百メートル規模の大木で、そこの上に木製の床が。板が敷かれている。その上にこちらも木で組んだ家々が並ぶ。さすがの大きさだ。縄梯子が降りているので、それを使って登り降りするのだろう。馬を近くの木に繋ぐ。

 

「武器も置いていくようにね」

 

 皆に呼び掛ける。まあ、ああなるのは確定的なのだが、こちらにつけ込む隙を与えてやることもないだろう。

 

 ここでは人間というだけで完全に蔑視されるからな。目的地に直行だ。一番奥にある家を目指す。

 

「あそこが長老の家で……」

 

 言葉が途切れる。家の前には帝国軍の赤い軍服を着た女性が一人。何やら揉めている。

 

「頼む! 私の話を聞け!」

 

 無理だろうね。長老以下普通のエルフは人間を見下しているから。

 

「ふん。お前ら人間がぁ。まともに話などできるのか? 薄汚い人め!」

 

 うわぁ。これだから。全くぅ。

 

「いいか良く聞け! お前らを根絶やしにする恐ろしい計画が進行しているんだ! クワンダは、あの男は……!!」

 

「うるさい! さっさと牢に閉じ込めろ!」

 

「やめろぉっ! 私の故郷も焼き払うつもりなんだ。森が危ないんだ! 話を聞いてくれ!」

 

 哀切、というのはこういうことを言うのだろう。身を切り裂かれるような声だった。

 

「ぼっちゃん……あの人……」

 

「うん。放ってはおけない」

 

 連行される女性達を追いかけて長老の家へ。

 

「長老……ただいま戻りました」

 

「キルキス、貴様……人間なぞ連れ込んでどういうつもりだ? 貴様のいない間にクワンダの兵とやり合ったのだ。貴様は戦いの前に逃げ出した腰抜けと言われているぞ」

 

 うっとうめくキルキス。そこに、ぐすぐすとすすり上げながらキルキスに抱きつくエルフの美少女シルビナ。紫の髪色は綺麗だ。

 

「…………彼女は……その、僕の婚約者です……」

 

 とりあえず僕は黙っていよう。挨拶をしても黙殺どころか即殺(そくさつ)されてもおかしくない雰囲気だ。

 

「キルキスーーー。どうして私を置いていったの? シルビナ、寂しかった……」

 

「い、いや……その、ね」

 

「行くなら私も連れて行って欲しかった。ねぇ? 外はどうだったの?」

 

 キルキスは「遊びに行った訳じゃないから」と言いながらも押されている。

 

「おじいちゃん怖い顔してる……キルキスー謝っちゃいなよぅ」

 

 エルフの長老は白い髪と髭を伸ばし、いかにも威厳のある姿をしている……が、姿だけだ。こちらを見る瞳は怒りに染まっている。

 

「それで? 申し開きがあるなら聞くぞ。言ってみろ」

 

「人間の中にも、帝国軍と戦っている勢力があります。その解放軍の力を借りられないかと思い、僕は……」

 

「愚か者が!!」

 

 怒号が響く。いきなりそれですか。

 

「エルフの村を守る為に、人間などの力を借りるなど必要はないっ!」

 

 うぅむ、やっぱり駄目ですか。

 

「しかし、長老。戦いは長く続き、みなも疲労しています。我らだけでは村を守り切れないと……」

 

「ふん。確かに一時は押され気味だったな。それは認めよう。だが今は大人しいものだ。先日の戦いでもすぐに兵を引きよった。何より!」

 

 長老はじろり、と僕達を睨み付けた。

 

「よく考えてみろ。帝国軍は人間。それと戦う解放軍とやらも人間というではないか! 同じ種族の中で殺し合い、争う。愚かでみっともない下らん種族だ。そうは思わんか!」

 

 ぐぐ、それを言われるときつい。自分達の中ですら傷つけ合い、他種族とも協調できていない人間。それは確かにそうだった。

 

「もうよい! この者達も牢屋へぶち込め。キルキスは少し頭を冷やすのだな」

 

 そうして僕達は捕まった。まあ予定調和だけど。

 

 

     §

 

 

 兵士達に背中をつつかれながら長老の屋敷、その下にある牢屋へ入れられる。心配はしていないが……。流石に滅入るな。この展開は。そう思いながら階段を下りる。

 

「やっぱり俺達は嫌われているようですね」

 

 とパーン。

 

「あの娘綺麗だったなー」

 

 このシーナ()。今考えるのはそれか。それなのか。

 

「君が言うから抑えたけれど、この後どうする気だい?」

 

 普段の冷笑めいた表情ではなく、不快げに顔を歪ませて、ルック。

 

「まず、あの女性に話を聞くことからかな。それと、閉じ込められたことについては心当たりというか、光明の一つはあるよ。今は待とう」

 

 ホントは今すぐにでも脱出したいのだけどね。時間制限があるから。だけどエルフが自分達以外の種族を信じずに自滅するというのなら、それは確かに自業自得だ。……僕は冷たいのだろうか? 長老はともかく、少しは意識の違うエルフもいるかもしれないのだ。一緒くたに差別的な種族と思って切り捨てるのもなぁ……。だけど話を聞いてくれないのだ。僕にできるのはこの後迅速に行動するくらい、か。

 

 まずやるべきことをやろう。僕は牢屋の中に入れられている女性を横目に見ながら、何故か牢屋に入れられている一人のエルフに話しかけた。……ホントになんで牢屋に入れられているのだろう? 戦いで逃げたからかな?

 

「君は?」

 

 キルキスとは違い青い髪だ。男性だが後ろ髪が長く伸びていて、一つにまとめたポニーテール。服も全体的に青い。

 

「俺? 俺はこの村一の俊足。韋駄天のスタリオン様よ。知らないのか?」

 

「スタリオン……君は何故牢屋に?」

 

 そうしたら予想通りの答えが返ってきた。やっぱり戦闘で逃げ走るだけだったことを追及されたらしい。

 

 呆れながら女性の方に声をかける。というかシーナの奴はこちらなど気にせず女性に話しかけていた。

 

「シーナ! レパントさんに言いつけるよ!」

 

「ちょ、ちょーっと待てよティル。もう少しで名前が聞けそうなんだよ」

 

 あほうめ。

 

「すいません。仲間のシーナが失礼をしたようですね。僕は解放軍を率いているティル・マクドールです。エルフの一人、キルキスに救援の要請を受けたので、エルフを助けにきました」

 

「……話には聞いているよ。マクドール家の子息が反逆者になったあげく、解放軍の新リーダーになったってね」

 

 どうやら僕の噂はそれなりに広まっているようだ。……父さんももう知った頃かな? できればあまり心を痛めて欲しくはないが、無理だろうなぁ。

 

「それにしても、エルフを助けに、か。お互いに馬鹿を見たものだな……ちっ、エルフなんぞを信じるから……」

 

 この女性は意外に口が悪かったりする。

 

「私は帝国軍でクワンダ将軍に仕官していた。だが……三ヶ月ほど前だっただろうか? 将軍はしばしエルフを弾圧するようになったのだ。そんなことをするような人ではないのだが……」

 

 ここであの情報を話せれば楽なのだが、まだアレについては一度も見たことがないのだ。話すことはできない。コボルトについて聞いた後なら開示してもいいかな? しかし不思議な話だ。あの黒幕の奴が、五将軍いるのに二人にしか仕掛けていなかったということが。

 

「命がけで帝国を裏切ったというのに、ここにきてこのザマさ。エルフは頭が固すぎる。私の話を信じようともしないでこの仕打ち。将軍はエルフを根絶やしにする恐ろしい兵器を作ったというのに」

 

「!! それは本当ですか!?」

 

 キルキスが詰め寄る。やっと話が聞けるね。

 

「私も詳しい内容は知らないんだ。名前は“焦魔鏡(しょうまきょう)”という。何でも熱を放射することで、森すら一瞬で焼き尽くせるという話だった。それでは! 私の生まれた村まで焼かれてしまう! ……だから、ここに来たというのに……エルフに何とか防いでもらおうと思ったんだ」

 

 北東にあるドワーフの方に行けば良かったですね。でもそっか、行っても信じてもらえないか。ドワーフの長も頭固いからなぁ。

 

「ぼっちゃん。これはまずいですよ。早く手を打たなければ、エルフが全滅などということにも……」

 

「ああ、何としても阻止しなければいけないね」

 

 僕は牢屋の鉄格子に近づくと、カタカタと音を鳴らした。気づいてくれ!

 

 すると、ガタッと階段を降りるような音がした。そして……

 

「シルビナ……」

 

「おじいちゃんが会っちゃいけないって言うの……だけど、私、どうしても聞きたいことがあるの」

 

 これが僕の光明。キルキスを助けようとするシルビナだ。

 

「どうしてキルキスはそんなに人間にこだわるの? 人間なんてすぐに死んでしまう生き物なのに……」

 

 すぐ死んじゃうとは酷い。本当だけどさ。しかし僕は不老だけど。

 

「シルビナ、良く聞いて。人間は僕達エルフやドワーフを嫌っている。僕らは人間を蔑んで、ドワーフは僕らを馬鹿にする……そんなの、悲しいじゃないか。やりきれないじゃないか。僕達に何の違いがあるっていうんだい? 何故、この世に生を受けた存在としてお互いを許し合い、認め合えないんだ? 僕にはそれがわからないんだ。とても、悲しいんだ……」

 

 しかしキルキスはこの考えをどこから学んだのだろう? それとも完全に自分だけで考えついたのかな。それが謎だ。

 

「キルキス……ごめんなさい。私はやっぱりわかんないよ。理解できないよ。人間なんて信用できないし、ドワーフはこわいわ」

 

 それが普通のエルフなんだろうな。キルキスは例外も例外だ。凄く純粋な心持ちのエルフなのだ。そしてシルビナは普通のエルフの方だ。だけど……、

 

「でも……でも! わたし、貴方を信じてみる。貴方の考えじゃなくて、貴方を信じる。貴方の信じるものを私も信じられるように、がんばる!」

 

 これがシルビナ。いい女だなぁ。相手と同じ考えになるんじゃなくて、違う考えのもとで、違う考えだけど、信じる。それができる女なんだ。シルビナは。

 

「これ、牢屋の鍵。こんなことしたら、シルビナが牢屋に入れられちゃうかも……」

 

 かちゃっと音がして鍵が開けられた。

 

「はっはぁっ! こーのスタリオン様の逃げ足の速さ、今こそ魅せてやるぜ!」

 

 スタリオンがもの凄いスピードで牢屋を出て階段を駆け上がって行った。さすがの早足である。

 

「キルキス、行こう! 彼女の言った焦魔鏡を止めるんだ!」

 

「……方法が、あると?」

 

 と帝国軍の女性。

 

「僕に心当たりが、ティル様、ここから北東にドワーフらが住む鉱山があるのです。彼らならそのような技術、何か知っているでしょう。話を聞きに行く価値はあります」

 

「よし、行こう。……貴方はどうします?」

 

「私も、同行させてはもらえないだろうか。この森を、守りたいのだ。足手まといにはならない」

 

「どうします? ぼっちゃん」

 

 気持ちがわかるのだろう。パーンが神妙な顔で聞いてくる。

 

「もちろん構いません。ところで、貴方のお名前は?」

 

「……これは失礼した。私はバレリア。帝国軍にいた時は、『烈火のバレリア』と呼ばれていた」

 

「バレリアさん。一緒に、戦いましょう」

 

 108星の宿星がある。だけど一人として軽んじることなどできない人間なんだ。意思を持ち、守りたいものがある。こうして、一人一人手をとっていくんだ。一緒に、戦う為に。

 

「よし、ドワーフの鉱山へ急ごう!」

 

 僕達は共に出発した。「キルキスを待ってる」というシルビナを残して。きっと、この二人を……!







後書き
 バレリアが中々名乗ってくれないので、キーボードを打ちながらやきもきしました。
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