ゲーム小説 幻想水滸伝   作:月影57令

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第17話 百戦百勝の男

「ふむ……」

 

 ただいま正式な仲間になったリュウカンさんに薬を調合してもらっているところ。ちなみにサンプルはスカーレティシア城に斥候として行った、キルキス達の口を塞ぐのに使った三角巾から採取した。僕の行動に抜かりはないよ。

 

「植物、薔薇を基礎とした毒じゃな。大体の予測はついた。材料を集めておくれ。解毒薬を作る」

 

 頼もしいお言葉だ。急いで準備させよう。

 

 

     §

 

 

 薬に浸した布が兵士達に配られる。これを口と鼻に当てていれば大丈夫とのこと。

 

「よし! 皆、スカーレティシア城を攻略する!! 我に続け!!」

 

 僕は今回の戦いで先陣を切る役目に回った。マッシュは反対していたが、敵の兵数が多いこと、攻城戦になること、毒の花粉が薬を上回るかもしれないので短期決戦になることから、リーダーの自分が先陣を切ることで兵士達の高揚を狙ったのだ。当然護衛や親衛隊はたくさんいる。なによりも――。

 

(負けられない。負けられないんだ!)

 

 僕の心は燃えていた。紋章に支配されている彼の為にも、ここは負けられなかった。何より次の戦いが、すぐそこまで迫っているのだ。ここで負けたら解放軍は終わりだ。それが僕を熱くしていた。

 

「行くぞぉっ!!」

 

 城を攻める。と同時に横にはキルキス達エルフを隊長にした弓兵がいる。そこから赤い光を灯した矢が飛ぶ。

 

「火! 火だぁ!」

 

 敵の叫びが木霊する。火計だ。これで二階のバルコニーで剥き出しとなっているあの花を燃やして花粉を飛ばせなくする。

 

 あっという間に敵の城は火だるまとなった。敵の兵士は浮き足立っている。

 

「攻めろ、攻めろぉ!」

 

 檄が飛ぶ。天よ裂けろとばかりに声を張り上げた。中央にフリックさんが進み、右翼はビクトール、左翼はハンフリーが担当する。ハンフリーは寡黙で地味だが着実に敵を崩してくれる。猛将と言っていいほどだ。味方で良かった。

 

「我が真なる風の紋章よ……」

 

「土の紋章よ、敵を飲み込んで!」

 

「私の術が見たいのかい?」

 

 魔法部隊からも続々と紋章魔法が飛ぶ。特に凄いのがルックの風魔法だ。さすが27の真の紋章。普通の紋章の比ではない。

 

 敵はアントワネットに頼る気持ちがあったのだろう。それが通用しないとわかると、ぐずぐずに崩れていった。よし、マッシュに了解はもらっている。城の中に突入だ!

 

 城にはやはり魔物が。ソニエール監獄やこの辺りの平原で出るのと同じ種類だな。そこまで強くない。どかばきと倒しながら中へなだれ込む。まずは二階に行ってアントワネットを本格的に焼き払おう。それで勝利は確定するはずだ。

 

「やめぇろぉおおお。ああ、私のアントワネットがあああ!!!!」

 

 叫び声を上げるミルイヒ将軍がバルコニーに現れた。これで……。

 

 すると、クワンダと同じく右手の押さえて苦しむミルイヒ将軍。

 

「ぐぐぅぅうう、う、腕が……うでがぁ……」

 

 腕から白い光が、上がった。

 

「君は……テオの息子、ティル君じゃあ。何故ここに? ……!? どうして私の城が燃えているのですか!?」

 

「やはり……覚えていらっしゃらないのですね」

 

 僕はクワンダにあったブラックルーンとここ最近の彼について説明した。

 

「そ……んな……私が……」

 

「今のウィンディは王城で好き放題に過ごしているでしょう。そして皇帝陛下はそれをお止めにならない。……ミルイヒ将軍。もし貴方に陛下を諌めたいという気持ちがあるのなら……」

 

 僕は、彼を許容する言葉を吐いた。

 

「…………私も国の有様には薄々ですが気づいておりました。皇帝陛下はあのウィンディに亡き王妃であるクラウディア様の面影を見ているのでしょう……。しかしウィンディは心に悪しきものを持っている」

 

 ミルイヒ将軍は僕に頭を垂れた。

 

「降伏いたします。兵を助けてやって下さい。その代わり私の身を差し出します」

 

「……ならば、解放軍リーダー、ティル・マクドールが命じましょう! 貴方は解放軍に参加し、皇帝陛下のお膝元まで辿り着きなさい。それが、貴方がなすべきことです!」

 

 ミルイヒはそれを受け入れた。

 

「伝令! 伝令です!」

 

 その時、トラン城にいるはずのスタリオンが駆け込んできた。

 

「大変です。ティル様、マッシュ様。トラン城に帝国軍が攻めてきます。オデッサさんが急いで戻ってくれと!」

 

「いけない! トラン城は手薄だ! 急いで軍を戻そう!」

 

 僕の号令により、解放軍は吸収したミルイヒ軍と共に引き上げた。同時にミルイヒが囲っていた芸術家の二人、画家のイワノフと吟遊詩人のカシオスも仲間に加わってくれた。

 

 

     §

 

 

「状況は!?」

 

 スタリオンがもたらした情報によると、帝国軍の集団はクワバの城塞を越えて南下してくるとのこと。僕らは一時的な拠点であるガランの関所に戻りつつ斥候を放って情報を得た。もう僕の予想は的中していると言っていいだろう。

 

「ソニア・シューレンさんの水軍なら湖から城を攻めるだろう。カシム・ハジル将軍ならトラン湖の西にあるモラビア城、そこの南にある北の関所を通過してくるはずだ。つまり……今の帝国で解放軍を攻めてくるとしたら、攻めてこられる部隊があるとしたら、一つしかない」

 

「――!」

 

「ま、まさか……」

 

 並んで馬を走らせるクレオとグレミオが顔色をなくした。

 

「ティル殿の予想通りのようです。攻めてきているのは帝国第三軍、テオ・マクドール将軍の軍です」

 

「テ、テオ様が……」

 

 パーンも絶句している。ついにこの時がきた。

 

「伝令であります!」

 

 斥候がマッシュに報告しに来た。

 

「ティル様にお会いしたいという人物がおります。なんでもロッカクの里、そこに所属する忍び、カスミと名乗る者です」

 

 来たか。カスミ。

 

「ロッカクの里といえば、ティル殿が警告していた……」

 

 そう、僕は原作知識でテオに攻められることを知っていたので、クワンダの軍を破り三ヶ月が経った頃に警告を発していたのだ。ロッカクの里を攻めるという情報がある、と。忍者の隠れ里ではあったが、なんとかマッシュは渡りをつけてくれた。これでロッカクの里は壊滅まではしないだろうという読みだった。情報については、解放軍で暇をしていて、普段何をしているのか余人に知られていないクリンの名前を使った。彼を僕個人が動かして帝国軍の情報を掴んだ、と言ってね。嘘も方便だ。

 

「ここに呼んで下さい。話を聞きます」

 

「はっ!」

 

 カスミが連れてこられる。うーむ、こんな時になんだが、実にきわどい格好だ。いや、今は戦だ。

 

「お初にお目にかかります。私はロッカクの里に所属するカスミと申します」

 

「ティル・マクドールです。テオ将軍の襲撃は避けられましたか?」

 

「はい。まずは情報をもたらして頂いたことに深く感謝いたします。ティル様からの警告を聞き、事前に準備を進めていた為、最小限の被害に抑えることができました」

 

 そして戦闘の様子が伝えられる。テオの軍は完全に武装し、他国に鳴り響くほどの精強な軍、鉄甲騎馬兵で攻めてきたとのこと。鉄甲騎馬兵とは、ガルホースという動物に鉄の鎧を着せ、かつ甲冑を着込んだ兵士が乗った部隊だ。ガルホースの能力は馬を遥かに上回る。持久力こそないが、とっさの瞬発力と跳躍力は凄まじいものがある。それほどに強力な鉄甲騎馬兵だが、扱いには特段の注意を必要とする為に、帝国ではテオだけが用いていた。

 

 やがて拠点である関所に将のみなが集まった。

 

「ついにこの時が来てしまいましたね……」

 

「クレオ、俺は……」

 

「パーンさん、気持ちは皆同じです。ぼっちゃんだって……」

 

 自分の感情と平行して僕を心配する三人。

 

「我が里が退避完了した後、頭領のハンゾウ様はこのことを解放軍に知らせるように、と私を遣わしました。テオの軍が南下したということは、既に我が里は……」

 

 故郷を失う形になった、か。確か数年後はある程度復興するはずだが、考えるべきは今だ。

 

「ティル様。私も帝国を正す為、わずかな力ながらも解放軍に参加しとうございます」

 

「わかりました。軍に登用します。以後は任務に励んで下さい」

 

「ありがたきお言葉」

 

 その時追加の情報がもたらされた。

 

「セイカ、カク、そしてコウアンが制圧されたとのことです! そのままこちらに向かって進軍してくると……」

 

「マッシュ、この戦はあまりにも分が悪い。テイエンからトラン城へ退くべきだ」

 

「はい、私もそのように考えます」

 

「しかし、ソニア・シューレンの水軍も憂慮すべきです。そちらはどうなされます?」

 

 レパントの発言。

 

「湖賊の三人に、兵を与えて混乱させてやりましょう。しばらくはもつはずです」

 

 退却しなければならない、しかし……。

 

「報告です! テオの軍がもうそこまで迫ってきております!」

 

「なんだと!?」

 

 場が騒然となる。

 

「鉄甲騎馬兵の進軍速度を見誤ったか……マッシュ、突撃部隊と弓兵部隊を組織してくれ。撤退戦だ」

 

「わかりました」

 

 素早く決断する。全員を撤退させるのは無理だ。引きつつ戦うしかない。フリックさん、ビクトール、ハンフリーの騎馬隊らで突撃部隊を組織する。近辺の地理に明るいレパント隊を伏兵に、そして突撃部隊の背後にはキルキス・ルビィ・ローレライを将とする弓兵を。遊撃としてカミーユとパーンを回した。また魔法部隊としてルックを筆頭にビッキー、へリオン、ジーン、ロッテらが部下を率いて横合いから攻める。

 

「兵士の大部分は退却させるが、今組織させた隊で何とか食い止めます」

 

「采配は任せたよ、マッシュ」

 

 いよいよ父との戦争だ――――!! 覚悟はとっくに完了済みだ! 行くぞ! テオ将軍!

 

「帝国に弓引く大逆人どもよ! 我が子といえど容赦はしない! テオ・マクドールがその名にかけて貴様らを討つ! 死にたい者からかかってこい!」

 

 久しぶりに聞いた父の声は、変わらず威厳に満ちていて、それが僕の心を激しくえぐる。

 

(父さん)

 

 僕に生をくれた人。僕を育ててくれた人。僕に愛をくれた人。それが、今、敵となって。

 

「っぐ。う。……解放軍の意地を見せるんだ! 皆! 最後まで諦めるな!!」

 

 僕は後方でマッシュと共に指揮をとった。

 

 だが、やはり父の鉄甲騎馬兵は強かった。前衛の三隊は壊滅し、弓兵達は手から血が流れるほどに弓を引いた。魔法部隊から致死の魔法が飛んだ。しかしそれでも止められなかった。騎馬隊の、ガルホースの体当たりを受けて多くの兵が落馬し、帝国軍の槍がその胸を貫く。あちこちで悲鳴が上がる。やめろ、やめてくれ。解放軍が死んでしまう――!

 

「っくそったれがぁ! 奴らバケモンだ! こっちの攻撃が通じねえ!」

 

「ビクトール! もういい、引くんだ!」

 

 既に戦線は崩壊していた。もう後は散り散りに逃げるしかない。

 

「ティル殿! 船の用意ができました。退却を!」

 

 マッシュが僕に退却しろという。僕が引かなければみなも逃げられない。

 

「わかった。――――解放軍の勇士よ! 今は引け、引くんだ! 命を繋げぇっ!!」

 

 叫び、馬を走らせる。

 

「うぉぉぉおおおおおおお!!!」

 

 パーンの歩兵部隊が僕らの前に現れた。

 

「しんがりは俺が務めます! ティル様! 逃げて下さい!」

 

「無理はするなパーン!」

 

 クレオが表情を崩して止める。

 

「死ぬつもりなどない。しかし命を投げ出さねばテオ様は止められないだろう。……俺は、ずっと思ってきたのだ。テオ様と戦ってみたい、と。ティル様、今は俺のわがままをお許し下さい」

 

「…………わかった。ただし、リーダーとして命じる! 必ず帰って来い! 石にかじりついてでも生き延びろ! 待っているからなっ!」

 

「任せといて下さい! 晩飯までには帰りますよ!」

 

 僕らは敗走した。この時の為に三ヶ月の間、パーンと鍛錬を重ねてきた。彼を少しでも強くしようと。彼が生き延びられるようにと。

 

「行こう、クレオ、グレミオ、マッシュ。今は生きるんだ!」

 

 

     §

 

 

「パーンか……そこをどけ」

 

 剣を突きつける馬上のテオ。既に解放軍は壊滅しており、無数の骸が転がっていた。そこに立つ赤い服の男が一人。

 

「どきません。今の私は解放軍の、ティル様の部下なのです。一度は、帝国にすがり、ティル様を裏切ってしまいました。ですがあの方は俺を許して下さった。あの時の喜び、優しいあの方の思い、それが私の心を満たしたのです。それは、それだけは裏切れない自分の気持ちなのです。もう私は、自分がどう生きたいのか知った。だから……もう、貴方と戦うことも躊躇いません。いざ、尋常に勝負!」

 

 パーンはぐっと構えた。

 

「……そうか」

 

 テオは馬から下り、地面に着地する。

 

「お前と戦う日がくるとはな……」

 

「テオ様! 貴方様が出られることはありません。私があの男の首をとってご覧にいれます」

 

 テオ配下の将、アレンが申し出る。しかし――。

 

「よいのだ。アレン。お前もグレンシールも手を出すな」

 

 パーンが鈎爪を構える。彼の胸には今までの人生が去来していた。

 

「いくぞ、真剣勝負だ」

 

「テオ様、参ります!」

 

 血に染まった大地を蹴り、パーンはテオに襲いかかる。ここに、絶望的な戦いが幕を開けた。

 

「さあ、打ってこいパーン!」

 

 パーンの鉤爪が閃き、テオの鎧にあたる、だがテオは小揺るぎもしない。

 

「この程度。こちらからいくぞ!」

 

 テオの剣が走り、パーンの体に剣線が刻まれる。

 

「ぐぅおおお!」

 

 この上ない不利を悟ったパーンが、一撃必殺、捨て身の攻撃を放った!

 

「があああああ!!!」

 

 獣のような叫び声が響き渡った。

 

 躍り込むパーンを迎え打つテオ。そしてパーンの拳が……。

 

 果てのない戦い。それが、草原で繰り広げられた。男達は、自分の信じるものの為に剣(拳)を振るった。血塗れの戦い、それがパーンの命を燃やした。

 

(ぼっちゃん、必ず……)

 

 自分の主を思い浮かべ、パーンは、拳を、握った。

 

「あああっっ!!」

 

 

     §

 

 

 トラン城に戻った僕は、急ぎ首脳陣を集めた。そこでフリックさんとビクトール、ハンフリーにサンチェスさん、そしてオデッサさんが顔をうつむかせる。他にもテオを倒す為に仲間達が参加して頭を悩ませている。僕は皆を見ながら発言する。

 

「皆、僕に考えがあるんだ。火炎槍(かえんそう)を使えないかな?」

 

「――」

 

「火炎槍……!」

 

「秘密工場に届けた、あれね。だけど旧解放軍の施設だった工場は、もしかしたらあの解放軍潰しの時に……」

 

「望みがあるならば手を打つべきです。本格的な戦闘は日を置いて行うことになるでしょう。それまでに火炎槍を持ってこられれば……」

 

「ティル殿、それは?」

 

 マッシュの問いに、かつて自分達が届けたドワーフからの武器、火炎槍を説明する。ドワーフの秘法を応用した強力無比な武器。火の紋章片の力を使い、高温の炎を吹き出す。

 

「そのようなものが……」

 

「確かにあれならば鉄甲騎馬兵に対抗できるかもしれないわ。でも工場のある北にはどうやって行けば……」

 

 北の地は、クワバの城塞より北は帝国の支配下だ。

 

「ゲンとカマンドールさんに、激流も越えられる高速船、新しい船を作ってくれるように頼んでいたんだ。研究が上手くいっていれば完成しているはずだけど……」

 

 転生者の面目躍如。船で北西にある町へ向かう為の方策だ。

 

「あれなら試験航行を済ませたぜ。かなりの速度で走るんで、動かすなら俺が必要になるだろうけどよ」

 

 飄々とタイ・ホーが報告してくれる。

 

「よし、それに乗って北のキーロフの町を目指そう。そして更にその北にある工場へ行くんだ」

 

「わかりました。わずかな可能性ですが、それに賭けましょう」

 

 そうしてパーティーを組む。操船にタイ・ホーとヤム・クー。僕の護衛にグレミオとクレオ、そして工場の人間と相対するのにオデッサさん。このメンバーで高速船に乗り込む。

 

「親分、試験航行は済ませたばかりの出来立てほやほやでさぁ。扱いには充分気をつけてくだせぇ」

 

「親分じゃない、ティル様じゃ」

 

 ゲンとカマンドールさんはいつも通りだね。何だか安心するや。

 

「うるせぇなジジイ! とにかく、俺とジジイが精魂込めて作った一品でさぁ」

 

「二人共わかったよ。開発ありがとう。これで解放軍に光明が残った。行ってくるよ」

 

 さあ早速出発だ。

 

 船で湖の北にある激流を越える。すごいな、渦になっている所を真っ直ぐ通過できたぞ。と、キーロフの町に到着。ここにも仲間はいるが、集めるのは後でいい、町を外に出て北に向かって歩く。

 

 ガォオオー!

 

 アームベアという熊の魔物に遭遇。体力が高いので漁師攻撃を行ってもらう。かめの封印球万歳である。魚が機械になったようなうおがみという魔物もいた。こいつも耐久力が高い。何せこいつの外骨格で竜鎧が作れるほどだしね。ちなみに水の封印球も落とす。買えるのでドロップを狙ったりはしないけど。その他にはセイレーンもどきという魔物。こいつは耐久力が高くないので、ほぼ一撃必殺であった。

 

 キーロフから歩いて半日、既に滅んだ村、カレッカに到着した。ここはカレッカ事件(都市同盟との戦争)で滅んだのだ。確かここに……あった。打ち捨てられた旅人が封印球を抱えていたのだ。すまないが貰っていく。カレッカにはホークマン(イーグルマンの別種)、シャドウ(人型の魔物、メテオストライクを決めてくる。食らったら頭が地面に埋まるので必死にかわした)、地獄の番犬という青い炎で体を構成した犬がでた。地獄の番犬以外は体力が多くないので、一撃か二撃で倒せた。番犬は耐久力が高いが、必ず一匹でしか出ないので囲んでぼこった。数が多い方が勝つのだ。

 

 カレッカには人物が二人いた。それぞれ説得する。

 

「解放軍……、マッシュもいるのだな。赤月帝国を倒す……か。いいだろう。私がお前らを勝利に導いてやろうではないか」

 

 軍師、レオン・シルバーバーグが仲間に。マッシュの叔父だ。

 

「あんた……あんたの目は澄んでいるな。あんたみたいな人間なら道を誤ることもないだろう。畑を耕すしか能がない人間だが、それでも良ければ使ってやってくれ」

 

 農夫のブラックマンを仲間にした。トラン城にも畑は作れるよ。

 

 カレッカを通り過ぎて更に半日、秘密工場を発見した。その建物の前でなにやら騒ぎが。

 

「~~!! ……うろついていたくせ。怪しい奴らめ」

 

 一人の女性と二人の男性がそこにいた。

 

「俺もヤキが回ったぜ、こんな大女に捕まるとは」

 

「だ~れが大女だってえ!」

 

「ひぃっ。やめて! ぶたないで!」

 

「あれは……ケスラーとルドンじゃない」

 

 オデッサさんの言葉通り、そこにいたのは虎狼山にいたはずの二人だった。

 

「どうかしましたかお嬢さん。僕はそこの二人と知り合いのティル・マクドールといいます。新生解放軍のリーダーですよ」

 

「久しぶりね、二人共」

 

「お、お嬢さんって、あたいがかい? そんな……」

 

 可愛い反応を示す上背がある女性は、格闘家のロニー・ベルだ。

 

「こんな所で解放軍の新リーダーと出会えるとはな。帝国が山賊狩りをし始めたんで参ってたんだ。俺で良ければ解放軍に入れてくれ」

 

「ティル様、聞いて下せぇ。あっしは普通に宿をやっていただけだってのに、帝国の奴らが……」

 

 ケスラーとルドンが仲間になった。キーロフの町へ行っててくれるように話す。

 

「アンタが新生解放軍のリーダーかい。モースの親父に用なら、工場の中だよ」

 

 案内されて工場の中へ。工場の責任者で鍛冶屋のモースさんに挨拶する。

 

「おお! 久しぶりだなオデッサ!」

 

「久しぶり、モース。元気そうでなによりだわ。彼が新リーダーのティルよ」

 

「よろしくお願いします。早速で悪いんですが、火炎槍は完成していますか?」

 

「おう、あれなら既に六百本も製造しといたぜ」

 

 おおう。予想以上にあった。

 

「六百本。それだけあれば、横一面に広がって使えるわ!」

 

「説明をお願いします」

 

 ものは僕の棍を一回り大きくしたような長柄だ。その尻には紋章片が仕込まれている。柄の真ん中には作動させるスイッチが。先端には炎が吹き出すであろう穴が空いている。

 

「使いやすそうですね」

 

「だが、ずっと放射できる訳じゃない。紋章片の力が尽きれば終わりさ」

 

 それでも六百本あれば、オデッサさんの言った通り一斉放射ができる。テオの部隊はその全てが鉄甲騎馬兵という訳ではない。普通の騎馬隊や歩兵だっているのだ。むしろ鉄甲騎馬兵は少数なのだ。六百なら充分対抗できる。

 

「しかし、運ぶには船団が必要になりますな」

 

 六百本だしね。

 

「それなら俺に心当たりがある。キーロフの町にクン・トーってえ商人がいる。船を貸してもらおうぜ」

 

 タイ・ホーは人脈が広いね。それじゃあ大きな大きな台車を使って皆で火炎槍を運ぼう。と、その前に。

 

「それがしはカゲと申すもの。私をお雇いになるので? それがしは高いですぞ。戦争が終わるまでなら二万ポッチ頂きます」

 

「払いますよ。斥候として雇われて下さい」

 

「それがしの能力に対価を支払って頂けるなら、どんなことでもやりましょう」

 

 工場にいた懐かしの忍者、カゲを雇って仲間に。やっと雇えるよ。

 

 さて、ごろごろと台車を運んでキーロフの町にきたぞ。まずはクン・トーさんの屋敷に行こう。

 

「クン・トーの親父、頼む。船を貸してくれ」

 

「……最近は帝国の取り締まりも厳しいんだがな……しかしおめぇさんには貸しがあったな。いいだろう。貸してやるよ」

 

 船商人クン・トーも仲間に引き入れる。さて、船に火炎槍を運び入れる仕事だ。それはベルとモースに任せて、僕は仲間を集める。ケスラーとルドン、カゲは仲間にしてある。

 

 キーロフの町巡りだ。道路でじゃぶじゃぶと洗濯をしていた素敵な女性、セイラさん。

 

「解放軍か。洗い甲斐がありそうじゃないか。いいよ。よろしくね」

 

 お次は船着場にいた幸薄そうな女の子、メロディ。カレッカで拾った封印球を渡す。

 

「貴方の持っているそれ……音の封印球ですね。それがあれば私も紋章が使える……それを下さいませんか? ありがとう。解放軍ですね。私の音楽が少しでも慰めになれば……」

 

 宿屋にいた遊び人ジョルジュ。

 

「自由に遊べるよう、自由な国にしてくれよな」

 

 そしてクン・トーのお抱え料理人、レスター。

 

「貴方は味がわかる方のようですね。ただ者ではない。よろしい、私も仲間になりましょう。解放軍に至高の料理を提供しましょう」

 

 そして、この二人にもちゃんと勧誘の言葉を吐く。

 

「しょうがないね、あたいも行ってやるよ」

 

「新生解放軍ですか……城に行ってマースとミースの面倒をみてやりましょう」

 

 ロニー・ベルとモースも仲間になってくれた。

 

 よし、仲間集めも終わったので、船出だ。トラン城に戻ろう。

 

 …………………………………………。

 

 戻ったら最初に確認。パーンは帰ってきたのか? 生きて、いるのか? 急いで向かった先には――。

 

「ティル様……何とか生きて戻って参りました。しかしあの戦いは勝ったとは言えません。もしかしたら、テオ様は見逃してくれたのでしょうか」

 

 包帯でぐるぐる巻きのパーン。やった! 生きて戻ってくれた!

 

「父さんの思惑はわからないけど、とにかく今は休んでいなよ。パーン。もうまもなく本格的に戦うからね。……ありがとう。生きてくれて」

 

 それまでには気合で治します、とパーン。大怪我しているんだから大人しくしていなさい。

 

「元気だね。良かったね」

 

「無茶をして」

 

「本当ですよパーンさん」

 

 クレオとグレミオも嬉しそうだ。やった。僕の行動が少しでも影響しているならこんなに嬉しいことはない。きっと父さんも……!

 

 火炎槍を兵士に配り、使用方法も教え込む。戦の準備が着々と進行していく中で、僕はカイ師匠に頼んで稽古をお願いした。戦争には多分勝てる。だけど問題はその後なのだ。稽古は厳しさを極めた。だがその甲斐あっていくつか奥義を(さず)かった。体はあざだらけで手の皮は手袋をしていたのにずる剥けになったが。

 

 

     §

 

 

 自分のベッドで寝ていたらレックナート様。不法侵入はやめて下さい。テレポートしてくれるなら広間とか船着場にテレポートして、歩いて部屋を訪ねてきて下さいよ。

 

「ティル……貴方は、迷っていますね。父親との戦い……それでも、貴方は進まねばならない」

 

「……それは、そうかもしれませんが……」

 

「そろそろ、私とお姉様……ウィンディのことを話しましょう。我が姉、ウィンディと私は“門の一族”の生き残りなのです。私達の一族はその昔に、ハルモニア神聖国によって虐殺の目に遭いました。門の紋章を欲する、ハルモニアの為に……」

 

 紋章の為に虐殺、か……。

 

「姉は門の紋章の片割れ、表の門の紋章を継承しました。だがそれでは飽き足らず、私が持つ裏の門の紋章も狙っているのです。真の紋章が持つ強大な力を得ようと……。ティル、貴方の右手、テッドから受け継いだその紋章を見なさい。その紋章、“ソウルイーター”は27の真の紋章、その一つです」

 

 この世界に存在する全ての紋章は、27の真の紋章から生み出されたものだ。その為、27の真の紋章は、恐ろしい力を秘めている。

 

「ウィンディは、真の紋章を狙っているのですね」

 

「ええ、世界にある他の真の紋章を探し求めたのです。そして、見つけたのがソウルイーター。貴方のもっているそれは、まだその本当の力を見せてはいません」

 

 原作と違って人の魂を喰らってないからね。

 

「姉が二つ真の紋章を手に入れてしまったら、復讐の為、世界に(わざわい)を振りまくでしょう。真の紋章は、人間が扱うには大きすぎます。ですが、貴方なら姉を止められる」

 

 僕にそんな重責を背負わせないで欲しい。姉妹なら止めてよ。ああ……そういやこの人ウィンディには敵わないんだった。少しは力を磨いてくださいよ。

 

「そろそろ、時間です」

 

 時間って何の? あ、魔術師の島に結界を張って引き籠もっているんだったか。外に出たらウィンディに狙われるから時間がないってことね。

 

「お願いです。決して負けない心を持ちなさい……」

 

 消えるレックナート様。やれやれだな。

 

 そうして、再び父との戦が始まる――。







後書き
 パーンを生存させるかどうかで一週間ぐらい悩みました。主人公がこれを見越して三ヶ月鍛錬していたので、生き延びる展開が自然かな、と思ったのです。しかし、無理して108星をそろえなくてもいいや、という気持ち。それと、そろっていなくても戦い抜けることや、戦死者がでることも描写した方がいいだろうか、と色々とね。悩み考えたんですよ。最終的にはこうしました。納得されない方もいるかもしれませんが、これが俺のSSです。

 セイラさん。何故か好きです。お気に入りです。ラストバトルにも連れて行ったり。オデッサも好きだけど性格ならセイラさんかなぁ。マイナー好きな俺です。それはそれとしてカスミも好きです。好きですが、単体で好きというより、カスミ×ぼっちゃんが好きですね。このカップルは心が浄化されます。
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