私事の為、金曜日もネットを利用できません。昨日の感想はできるだけ返しましたが、今日から日曜までも感想は月曜日の朝に返します。すみません。
第19話 吸血鬼
さて、ロリマーの城塞から南下して戦士の村へやってきたぞ。すると、村の入り口で揉めている若い少年少女が。
「危ないよテンガアール!」
額に緑のバンダナを巻いた黒髪の少年が少女を引っ張っている。
「何さ、ホントに言われているように危険があるかなんてわからないじゃないか。もしかしたらお城でいい暮らしができるかもしれないよ?」
と、燃えるような赤毛に黄色い衣服の少女。いや、それは無理じゃないかな。
「それとも、私が危ない目にあったら、ヒックスが助けてくれるのかい? まだ自分の剣に名前もつけられない君が」
戦士の村、その男は一人前と認められると剣に名前をつけることができる。自分の一番大事なものの名前を剣につけるのだ。ちなみにフリックの剣は……まあどう考えてもあの人の名前です。
「そ、それは……でも、きっと皆が助けてくれるよ」
「もう! どうして君はそうなんだい!?」
やれやれ、見事なカップルである。アベックの方がいいかな。あ、死語か。
「テンガアール! こんなところに! ネクロードの奴がいるから外に出たら駄目だといっただろう!」
顔に大きな刀傷。黒い眼帯をした、壮年の男性が出てきた。フリック曰く村長のゾラックさんらしい。
「なんだと!? おい、おっさん! 今ネクロードって言ったのか!?」
ビクトールがゾラックさんに詰め寄る。普段の陽気で飄々とした態度とは別人のようだ。
(無理もないか……僕なんて父一人でこれなんだ。ビクトールは……)
「だ、誰だ貴様は……うおお」
「うるせえ! ネクロードのことを洗いざらい話しやがれ!」
このままでは話も聞けないのでビクトールを引き剥がす。
「すみません村長さん。僕は解放軍のリーダーをしている、ティル・マクドールといいます」
それぞれ名乗る。
「おお! フリックか! 村に戻るとは、武勲を上げたのか?」
「い、いや、まだその途中で……」
もごもごするフリックはさておき、
「我らの仲間であるビクトールはネクロードという人物に何か因縁があるそうですが……とりあえず、詳しい話を聞かせてもらえますか?」
ちゃっちゃと進めよう。そうしてヒックス少年と村長の孫娘テンガアールと共に村長の家へ。
「三ヶ月ほど前のことです。この地方を治める帝国の将軍として、ネクロードという男がやってきたのです。奴めは恐ろしい魔法を使い、死者をゾンビやスケルトンなどのアンデッドに変えたのです」
「ロリマーの城塞で墓が暴かれていたのはそれが原因か……」
冷静に呟くクレオ。
「その集団を引き連れて、南東にある古城を拠点と定めたのです。それから奴は亡者達を従えて近隣の村々を襲いました。そして、襲われたくなければ、村の若い娘達を自分の嫁にさせるので差し出せと……」
「いかにもあいつがやりそうなことだ」
少しは落ち着いたようなビクトール。
「そういうことでしたか……」
事情を聞いた僕らはとりあえず、解放軍としては帝国軍の将軍を倒したいし、村が襲われているというなら助けようということで、今日は村長の屋敷に泊めてもらい、明日の朝にネクロードの城へ出発することになった。
「かたじけない」
「いいんです。僕ら解放軍は、帝国の圧政に対抗する為、そんな状況から解放する為の組織なんです。苦しめられている人々がいるなら放ってはおけません。部外者なので頼るのは不安かもしれませんが、力にならせて下さい」
「ありがとうございます。ティル殿」
それはさておき仲間集めだ。鍛冶屋にいるムースを尋ねる。
「マース、ミース、モースが仲間に……か。いいでしょう。この村を襲っているという敵を撃退したら、解放軍に加わりましょう」
次は村でギャンブルをしている少年マルコ。コップを使ったコインの場所当てをやっていたので、武術で鍛えた動体視力を使い、荒稼ぎする。
「ま、参った……もうからっけつだよ。解放軍の仲間にでもなんにでもなるから、勘弁してくれ」
二人を仲間にして今回は終了。道具屋にもう一人いるが今は仲間にならないのでおいておく。と、道具屋に赤い花の種だ。買って道具袋に入れる。これで種が三つそろったね。
「テンガアールさん? 何をしているんですか?」
村長の屋敷、その廊下の角で隠れながら向こう側を覗いているテンガアールに話しかける。その視線の先にはクレオとヒックス少年。
「あの人……クレオって言ったよね……何話してるんだろう……べ、べつにぼくは気にしてなんかいないよ!」
そう言ってすたこらさっさと立ち去る。素直じゃないなぁ。
「あの……クレオさん。どうしてクレオさんは戦っているんですか? この戦士の村でも女の人が戦う、なんてことはしないのに……」
僕は気にせず盗み聞きを続行。
「何故戦うか……か。それは、男も女も同じじゃないかい? 自分の中に絶対に譲れないものがある……その為に人は戦うんじゃないか?」
「……でも……僕は……戦う、なんて……」
「ヒックス。自分が弱いと思っているうちは強くなれないよ。ちっぽけでも自信を持つことさ」
そうして二人の会話は終わる。と、ヒックスに見つかった。
「う、うわっ。ティル様……あの、僕、なんでもありませんー!」
ダッシュで逃げていくヒックス。しかし僕も随分図太くなった。
与えられた寝室に行くと、みな眠っていた。ビクトール以外は。
「ビクトール」
「ティルか……眠れないぜ。やっと、奴に、ネクロードに出会えたんだからな」
「………………どうしてそこまでネクロードにこだわるんだい? 何か、因縁が?」
知っているが尋ねる。いつも人の世話をしているビクトールだって吐き出したい時があるだろうから。
「……あいつはな、俺の村を滅ぼした相手なんだ。といっても人間じゃないぜ。紋章を使って吸血鬼になった男さ。今でも覚えてるぜ。俺はな、ジョウストン都市同盟のノースウィンドゥってところで生まれ育ったんだ。そして俺が二十一になった時だった。奴がここのように死者を連れて襲撃してきたんだ。そして襲撃によって死んだ俺の家族、友人達もみな、ゾンビになっちまった。俺は近くの町まで買い物に出かけていたから難を逃れたんだ。だけど、そのせいで、俺は知っている奴らを、ゾンビになっていたとはいえ、剣で再び殺すはめになったのさ。……ゾンビになった家族がお互いの肉をかじり合っていたあの光景は、忘れたいと思っても忘れられねえ」
何と壮絶な過去だろう。ビクトールはとても強い。強すぎる人なんだ。それに比べて僕は――。
「やっと。やっと奴と巡り会えた。必ず俺の手で殺してやる………………俺の話はこんなところだ。すまなかったな、つまんねえ話をしちまって」
「ううん。辛い話をしてくれてありがとう。……ビクトール、必ずネクロードを倒そう」
「ああ。お前はもう眠りな。俺はもう少し起きてるからよ」
僕はその言葉に従って眠ることにした。……僕も、いつまでも叶わなかった可能性を考えて落ち込んでいる時じゃない。気を抜いて魔物やネクロードに殺されたら、それこそ目も当てられない。……何て気を抜いていたんだ、僕は。父さんを殺してまで生き延びた命なんだ。簡単に投げ捨てちゃあ駄目じゃないか。……僕はその夜、新たな決意と共に床についた。生きるんだ。生きてあの場所まで辿り着く。それだけが弱い僕を支えていた……。
§
翌日になった。僕達は出立の準備をしていたが……。
「貴様は! ネクロード!」
屋敷の外から叫び声。急いで外に出る、と。
「ふっふっふ。村長、大人しく娘を差し出す気になりましたか?」
紫の髪を後ろに撫でつけ、黒衣に身を包んだ男――ネクロードだ。僕は素早くルビィだけに指示を出す。
「戦士の村を舐めるな! 貴様にくれてやるものなんぞ爪垢一つもありゃせんわ!」
僕らの見ている前で、村長と大人の戦士達が襲いかかった。が、
「ぐわぁあぁぁああ!!」
鎧袖一触。村人達は奴の扱う魔法にやられてしまった。さすがに強いな。
「ネクロード! 覚悟ぉ!」
ビクトールが飛び掛った。僕らも続く。だが――。
「くそっ! なんでだ。剣が効かねえ!」
「魔法もまるで通らないよ!」
ビクトールとフリックの剣、グレミオの斧、僕の棍、クレオの火魔法。全て通じない。
そのうち、奴の放つ雷・風魔法にこちらがやられてしまった。
「うぅぅ」
「ぐ、くそっ、ネ、クロード……」
地面に転がる僕ら。実は僕だけはまだ立ち上がれるけど、わざと気絶したフリをしている。僕って魔力高いから、魔法防御力も高いんだよね。当然のようにパーティーの中では最もダメージが少ない。だけどここでの戦闘は負けなければならないから、そのように振る舞う。もしネクロードが止めを刺そうとしてきたら、水の紋章で回復し、仲間だけでも逃がすつもりだった。村人には悪いが見知った仲間と昨日会った村人では、仲間の方が大事だ。
「待って! ぼくが……ぼくがついていけば村の皆を傷つけないでくれるかい!?」
その時、テンガアールが進み出た。彼女の勇気には感服するしかない。血を吸われるかもしれないのに。
「ふふ、いいでしょう。貴方の身と引き換えに、村人は傷つけないと約束しましょう」
律儀に約束を守るネクロード、についていくテンガアール。
「テンガアール! 必ず、必ず、必ず君を助けに行ってみせる! きっと!」
一人前と認められていないので戦っていなかったヒックスが、涙目になりながらも決意を表す。
「ヒックス……うん。待ってるよ……」
テンガアールは連れられて行った。さて、こんな二人のやりとりを見せられては奮起せざるを得ない。ここから最短の日数と時間で、ネクロードの元へと辿り着かなきゃな。ゲームのようにいつまでも時間がある訳ではないのだ。とりあえずハンドサインで待機させていたルビィを呼ぶ。彼に宿した水の紋章で村人や僕達を回復してもらうのだ。僕でも回復はできるけどね、水の紋章が左手に宿してあるから。だけど僕は表面上ネクロードに負けた人間なので立ち上がっては不自然だ。
「――優しさの流れ」
ルビィから水魔法が降り注ぐ。全回復する最高の水魔法だ。これで傷や体力については回復した。
「ふぅ……ありがとうルビィ」
お礼を言いながら立ち上がる。
「俺はお前の指示に従っただけだ。しかし驚いたぞ。俺を待機させるなんてな」
「手強い吸血鬼と聞いていたからね。予想外の方向から攻撃させる伏兵の意味で待機してもらったんだけど、まさか攻撃が一切通用しないとは思わなかったよ」
「ぼっちゃん、さすがですね」
グレミオに褒められるけど残念ながら嘘だ。すまないね。
とりあえず村人は大事をとって休ませるよう提言し、村長と対話だ。
「奴には普通の武器がまるで通用しねえ。どうすりゃいいんだ……」
嘆くビクトール。めずらしくしょげているな。
「村長、吸血鬼にも効果があるような、特殊な武器など心当たりはありませんか?」
「ふぅむ。ここから西に馬を飛ばして半日程度の場所に、クロンという寺院があります。そこでなら、もしかしたら……」
「クロン……あの寺か。あそこの坊主苦手なんだよなぁ」
とフリック。
「何とも頼りない情報だな。しかし今はそれ以外当てがない……と」
頷くルビィ。
「とりあえず向かってみよう」
僕の言葉で馬に乗り一路西へ。やれやれ、ネクロード戦は何とかなったが、これからも苦難の連続なんだ。…………頑張る、か。
§
「また魔物だぜ」
フィールドモンスターも段々と強くなってきたな。現れたのはウィップマンという鞭をもった犬人間(非コボルト)と、犬型の魔物ジャッカルだ。とりあえずウィップマンを優先して倒す。クレオから火の紋章魔法も飛ぶので案外楽に倒せた。
この地方には他にグレイブマスターというゴーレムと、ソーサラーという魔法攻撃を行う魔物がでる。それぞれそれなりの防具を作る材料になるが、テンガアールのことがあり採取なんてしている暇はないので撃破したら即馬を走らせる。
さて、真っ直ぐ西に向かってクロン寺院に到着した。いかにも寺院という感じの建物だな。前世を思い出す。懐かしい。もう十数年以上前になるのだ。
「さて、あのクソ坊主は生きているかな……」
フリックは子供の頃だいぶ悪ガキだったらしい。悪戯をして叱られたんだとか。
「お待ちしておりましたぞ、星主殿」
つるっぱげ……じゃなかった――いや禿げているけどさ――住職のフッケンだ。つるつる頭に手のひらほどもある大きな玉の数珠を首から下げている。朱色の袈裟が鮮やかだ。
「ティル殿、ですな。天魁星の宿星をお持ちの星主殿。ずっとお待ちしておりました」
「フッケン殿、ですね。お話はフリックから聞いています。どうして僕の宿星を?」
「もちろん存じております。ティル殿は天地の宿星を導かれるお方。お仲間の方々も全員宿星を背負っておいでだ。さて、宿星のお話はまた後日に致しましょう。今の貴方達が求めるものはここにありますぞ」
「っ! ホントか!?」
ビクトールが身を乗り出す。
「ええ、こちらです……」
案内された先にあったのは崖にぽっかりと空いた穴、洞窟だった。過去の洞窟。いよいよだな。だが覚悟しなければならない。知識通りにことが運べば、あいつらと遭遇するのだ。過去に飛んだ先で殺されて死ぬなんて笑えない。
「ここ……ですか。わかりました。貴方の言葉を信じて行ってみます」
「お気をつけて……」
フッケンは頭を下げた。……眩しい。
洞窟の中は暗いので、松明で歩く先を照らす。テンガアールの件があるので、暗いが急ぎ足で先へ向かう。ただし宝の回収はしっかりと。封印球と本はしっかり手に入れさせてもらった。と、
「ほっほっほ。こんな所まで人がやってくるとはの」
紫のローブに杖、白髪の老人と見事な魔法使いの格好である。
「貴方は?」
「わしはクロウリー。魔法使いじゃよ」
聞いたところ体に百の紋章を宿しているらしい。馬鹿みたいに強いお方なので当然スカウトする。
「解放軍か……まあ偶には人の世で力を振るうのもいいじゃろ」
そう言うとビッキーのようなテレポート魔法で城に飛んで行った。
「…………」
「…………」
キミタチ、何か言おうぜ。僕まで変な目で見ないで!
ざかざかと歩く。魔物も当然出る。暗いというのに。寺院に宿泊できるベッドがあったので、紋章魔法を連発しても良いのだが、眠る時間はテンガアール以下略なので無駄撃ちなんてしない。ほどほどに節約である。まあ使うときは使うよ。
ここで出る魔物はバンシーという耐久力が低い奴、ウィスプという光球型の魔物。ちなみにこいつは体の動きを速める「速の紋章片」というアイテムを落とすが、当然その為に乱獲する時間なんて以下略。そして最後に魔術師の島でルックが呼び出したクレイドールという魔物が出る。だが今はもうザコなのですぐに倒せる。こいつは鎧の原料を落とすが略。
そして、洞窟の最深部で僕らはそれと出会った。白い台座に剣がある。といっても切っ先を下に向けて台座に突き刺さっているのではない。なんと切っ先を上に向けて、台座の上数十センチのところにぷかぷかと浮いているのだ。もちろん何かに吊るされていたりしない。一体どうなっているのやら。
「これは一体……?」
困り顔のグレミオ。
「吸血鬼を倒せる武器が欲しいというのが僕らの望みだから、これがそうなのかもね」
「ふーん、どれ」
「ビクトール、無闇に近づくと……」
無遠慮に近づいたビクトールをクレオが諌める。すると、剣がわずかに揺れた。そして、
「我が眠りを覚ます者よ、呪いを受けよ」
「何ぃ!」
ビクトールが叫ぶが、もう遅い。剣の柄から白い閃光が放たれた。僕達は剣の柄に当たる部分に人の顔を模したものがあることに気がついた。それが僕達を睨んだかと思うと、光に包まれた……。
後書き
過去の章なので、ビクトールの過去に触れて少し復活する主人公。まだ本調子ではありませんがね。
ネクロード戦の負け戦闘では、ぼっちゃんが中々戦闘不能になってくれないので、もどかしい。ホント魔力高いですからね、ぼっちゃん。
ゲームとは違うので、ゆったり行動してテンガアールが血を吸われたりしたら取り返しがつきません。その為、少しばかりうざいくらいに急いでいることを強調しました。