ゲーム小説 幻想水滸伝   作:月影57令

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第20話 過去と現在

 僕にとっては既知の出来事だが、皆にとっては未知の出来事だ。リーダーとして冷静に行動しよう。とりあえず起きる。すると草原にいた。飛ばされたのだ。僕の知識通りなら、ここは三百年前の過去のはず。

 

「ううん……」

 

 何とか意識がはっきりしてきたぞ。だけど体が思うように動かない。ゲームでプレイした時から思っていたのだけど、本当に肉体ごと過去に送られたのか。それとも意識だけ、脳の中でイメージしただけのヴァーチャル・リアリティなのか判別がつきにくいんだよね。とりあえず様式美として頬をつねってみる。……痛い。体もぶんぶんと動かしてみて、それからいつもしている革手袋をとって右手にソウルイーターが宿っていることを確認する。……あるな。やっぱりどっちなのか判別できないよ。

 

 とりあえず皆を起こそう。と思った時に、土の匂いが鼻をつく。脳のイメージだとしたらかなり微細に再現されているな。

 

 皆が起きだした。

 

「う……」

 

「ここは……?」

 

「さて、洞窟でないことは確かみたいだよ。どうやら迂闊な誰かさんのおかげでここに来てしまったみたいだね」

 

 ビクトールに向けて嫌味を言ってみる。

 

「う……悪かったよ。だけどまあ、生きてるんだからいいじゃねえか」

 

 比較対象が死んでいることってどうなのさ。

 

「とりあえず、あそこ。少し先に村みたいな集落があるから、あそこに行こう」

 

 ズボンについた土をぱっぱっと払って立ち上がる。そうして僕が先頭に立って、見えている村へ歩きだした時だった。

 

「え……」

 

「! そんな!」

 

「あれは……」

 

 僕とグレミオ、クレオが反応する。村の中に子供がいたからだ。少しだけ跳ねた栗毛に茶色のくりっとした瞳。そしてにこにことした笑顔。僕らはその子に見覚えがあった。

 

「ねえ、お兄ちゃん達が宝物を取りに来た人達?」

 

「宝物っていうのが何かわからないけど、違うよ」

 

「そう、よかった。おじいちゃんがこわーい顔をしてるからさ、心配だったんだ」

 

「君は……」

 

「テッド! こっちへ来なさい!」

 

 怒声が響く。家の玄関に老人の姿。この子のおじいさんだろう。

 

「じゃあね!」

 

 その子――もう面倒なのではっきり言おう。過去世界のテッド――は、そう言うとおじいさんの方に駆け出して行ってしまった。

 

「一体、どういうことです?」

 

「ぼっちゃん……今の子供、確かにテッドと……」

 

「テッドに似ていた気がする……でも、まだわからないよ。とにかく話を聞いてみよう」

 

 二人が入って行った家の扉を叩く。

 

「あのう、もし……」

 

 呼びかける。

 

「なんじゃあ!」

 

 またまた怒声である。余裕なくしすぎだと思うのだが。

 

「お前ら、あの女の使者か!? ここにはお前らの探しているものなぞない! 早く出て行け!」

 

 うわぁ。とりつく島もないとはこのことか。

 

「いえ、違います。僕達は旅人で、偶然ここを訪れたのです」

 

「本当か?」

 

「あの女ってえのは一体誰のことだよ?」

 

 ビクトール、口を挟まないでくれ。話がややこしくなる。

 

「あの女とは酷い言い草だねぇ」

 

 出やがったな! ウィンディ! あ、この場にいるメンバーって誰もウィンディの顔知らないや。僕だけだ。しかしビクトールはウィンディが従えている男の方に気づいた。

 

「ネクロード! こんな所まで現れやがって! ……ところでフリック、こんな所ってここはどこだ?」

 

「俺が知るか」

 

 コントのようなやりとりはやめて欲しい。気が抜ける。ウィンディは三百年前からあいつとネクロードを従えていたのか。

 

「ウィンディ! わしらの村に何の用だ! 貴様が求めているものなど知らんと言っている!」

 

「とぼけたって無駄だよ。ここが隠された紋章の村だってことは知っているのさ。さあ、あんたが持つソウルイーターを私に渡すんだよ」

 

「おいフリック、ここは隠された紋章の村、というらしいぞ」

 

「俺に話を振るな!」

 

 だからやめてってば。何気にピンチなんだから。するとウィンディは合図のように片腕を上げた。すると――。

 

 ゴゥン!!

 

 地震のような揺れに、村へ降り注ぐ火の玉。驚く間もなく村の各所にある家を巨大な火の玉が押し潰す。……酷い。ウィンディ。あんたはかつて自分の一族を虐殺されたんじゃないのか。自分がされたことを人にしてどうする。そんなの最低じゃないか!

 

「おほほほ! 村長、あんたが聞き分けのないことを言うから、ユーバーの奴が退屈したようだね。放っておくと村が酷い目に遭うよ。さあ、早く紋章を渡すんだよ!」

 

 だから、紋章を奪う為に虐殺するってお前がやられたことだろう! 自分がされて嫌なことを人にするんじゃない!

 

「……そんなに見たいのなら見せてやろう。呪われし紋章ソウルイーターよ! その力を示し、我が敵を打ち倒せ!!」

 

 キュゥゥンという音と共に、おじいさんの右手から闇が広がった。それはウィンディや僕らをも包み込む――。

 

 寸前でウィンディが白い光に包まれる。彼女が持つ門の紋章を使ったのだろう。そうしてウィンディとネクロードは消えた。

 

「くぅ、逃がしたか」

 

 僕と仲間は急に起きた立て続けの出来事に目を白黒させている。

 

「……旅のお方達よ、すまんが一つお願いしたいことがある」

 

 おじいさんに導かれて家の中に。そこには騒ぎに震えるテッドの姿が。

 

「細かい事情は追究しません。聞いてもわからないでしょうし。それで、頼みというのは?」

 

「勝手なお願いじゃが……この子を遠くへ連れて行ってくれ。あの女の手が届かない場所へ」

 

「わかりました。できるだけのことをしましょう」

 

「ぼ、ぼっちゃん、そんな安請け合いをしては……」

 

「僕にできる責任の取り方をするのさ」

 

 この後のことを考えてそう言う。

 

「ありがたい。では、テッドよ……」

 

「なに? おじいちゃん」

 

「じっとしているのじゃぞ……汝、ソウルイーター、生と死を司る紋章よ。我の下を離れ、この者テッドを汝が新しき主とせよ」

 

 ソウルイーター継承の儀式だ。かつて僕がテッドにされたように、それが行われる。いや、時系列はこちらが先だが。

 

 おじいさんの手から闇が(きらめ)き、テッドを包む、そしてテッドの体全体を覆った闇が右手の甲に収束した。そして闇が消えた時、テッドの右手には僕が今宿している黒き刻印がなされていた。

 

「お、おじいちゃん……これ、何? 僕怖いよ……」

 

 くっ。僕は全て知っていた。転生者として知っていてソウルイーターを継承したのだ。だがテッドは何の予備知識もなく紋章を宿され、これから三百年を生きていくことになる……僕はテッドの生涯を思って眩暈がした。あまりに酷い。この事態を引き起こしたのがウィンディ。そして最終的にテッドを殺すのもウィンディ。まさに彼の人生は彼女によって狂わされたと言っていいだろう。

 

(あまりに、酷い……)

 

 僕はその残酷な現実にうめいた。そしてより一層思った。彼を救わなければ――と。

 

「許してくれ、テッド。お前に辛い運命を背負わせることに。だが、この紋章は使われてはいけないものなんじゃ……」

 

 すみません。この後結構使うつもりです。

 

「旅の方、テッドをよろしく頼みます」

 

「わかりました。“テッド君は僕に任せて下さい”」

 

 僕はそう答えた。時空を越えて、僕はそう約束したんだ。

 

「村長! 出ておいでよ! 酷い目にあわせてやるよ!」

 

 ウィンディ、お前は黙れ。

 

「おじいさん、貴方はどうなされるつもりですか?」

 

「私が囮になります。その間に、テッドを連れて逃げて下され。できるだけ遠く、遠くに……」

 

「ぐぅっ」

 

 僕は目頭が熱くなった。この言葉は、言葉が、テッドが僕に言った言葉と同じだったから。三百年を経て同じことをしたおじいさんとテッド……その最期を思って、僕は涙がこみ上げた。ソウルイーターが、みなを同じ運命に――胸が、苦しくなった。

 

「あなた方は逃げて下され。では、御免!」

 

 おじいさんは表に出て行った。ウィンディ達を引きつけるのだろう。紋章をなくしたおじいさんを見つけたウィンディが怒り狂った結果、どうなるかなんて考えずともわかる。僕はその結末に罵声を浴びせたい気分だった。だが今はテッドだ。家の裏口から彼を連れて、仲間達と共に元いた場所へ駆け出すのだった。

 

 元の場所に戻ってきた。多分だけど元の時代に戻るのはここが大事な場所だろうから。

 

「ねえ、おじいちゃんはどこ? 村の人達も……」

 

 するとクレオが慰めるように言葉を発した。しゃがんで彼と目線を合わせ。

 

「テッド君。君は男の子だ。辛いだろうけれど、君はこれから、もっと強くなって一人ででも生きていかなきゃいけないんだよ」

 

「僕……」

 

 寂しそうなテッドの頭を撫でてやる。

 

「ぼっちゃん。多分これはテッド君が言っていた三百年前の事件なのでしょう」

 

「うん、そしてテッドはこれから三百年の間、一人で旅をしなきゃあいけない……」

 

 ビクトール達が身じろぎをした。

 

「なあ、クレオ、三百年って言ったか? じゃあここは……」

 

「恐らく、私達のいた時から三百年、遡った時代だろう」

 

「ってえことは? どうすりゃいいんだ?」

 

 フリックが困り果てたように言う。それに自分の考えを話す。

 

「あの剣が呪いをかけたんだと思うんだ。そして鍵は僕達が飛ばされてきたこの場所に……」

 

 言い終わる前に気づいた。僕達が倒れていた辺りに小さな祠があり、そこに光が漂っている。

 

「あの光……さっき剣が放った光に似ている。もしかしたら……!」

 

「帰れるかもしれない、ということですね」

 

 ほっとしたように、グレミオ。皆で光の前に移動する。

 

「これで本当に戻れるのか?」

 

 疑うルビィ。しかし他に方法がない。

 

「お兄ちゃん達……どこか、行っちゃうの?」

 

「テッド……ごめん。君を連れて行く訳にはいかないんだ。でもね」

 

 僕はしゃがんでテッドの小さな体を抱きしめた。

 

「“約束”する。いつかどこかで、きっと僕らはまた会えるんだ。それは遠く、遠く離れた時代だけれど、僕と君は仲のいい友達になれる。だから、苦しくても辛くても負けちゃあ駄目だ。覚えておいて、君は決して一人じゃないってことを……」

 

 ぎゅ、と力を込める。

 

「お兄ちゃん……」

 

「ティル。僕はティルって言うんだ」

 

「ティル」

 

 テッドが僕の名前を呼ぶ。そして、別れの時が来た。僕は最後の約束をする。

 

「必ず、必ず助ける。それまで、待っていてくれ……テッド」

 

 あの時と同じ言葉を、言った。そして仲間達を振り向き。光の中へ――。

 

 

     §

 

 

 僕達は洞窟に戻っていた。仲間達と会話して、先ほどのことが夢ではなかったことを確認する。そして行き止まりの道を引き返すと……、

 

「おわっ。こいつ! 皆、こいつに近寄るなよ。今度はどこに飛ばされるかわかったもんじゃねえ」

 

「偉そうに言うな。元はと言えばお前のせいだろ」

 

 ルビィが冷静に突っ込む。

 

「まったくだぜ」

 

 フリックも体をぱきぱきと鳴らしながら言う。そして、剣が語り始めた。

 

「ビクトールよ……お前の心には闇が存在しているな……お前はその闇を生んだ者を倒す為にここに来た」

 

「おう! ネクロードの奴は俺がぶっ殺す!」

 

 ……しかし、この物言いなら剣はビクトールの過去を覗いていたんだよね? ならどうして僕らはテッドの方に飛ばされたんだろう? ビクトールとテッドには関わり全くないけど。単純に真の紋章であるこの剣と、真の紋章であるソウルイーターが反応したってだけかな?

 

「私の名は星辰剣。27の真の紋章が一つ、“夜の紋章”の生まれ変わりだ。夜の(しもべ)である吸血鬼なぞ、ものの数ではない」

 

「何だと!?」

 

 仲間達は真の紋章ということで驚いている。いや、何気にこの僕らの周辺でも真の紋章持ちって多いんだけどね。僕、バルバロッサ、ウィンディ、ルック、レックナート様、ネクロード、星辰剣、竜洞騎士団団長。あと不明だけど恐らくユーバーも。ほら、多い。

 

「私も長き眠りに飽きたところよ。ビクトール、貴様の闇が気に入った。吸血鬼退治に手を貸そう。私を手に取れ」

 

「おお! わかったぜ」

 

「わかった? わかりましただろう」

 

 星辰剣は偉そうだなぁ。

 

「ぐぅ、はいよ。わかりました。星辰剣様」

 

 ビクトールは台座に脚をかけると中空に浮いている星辰剣を手に取った。

 

「では行こうか。新しき我が相棒よ」

 

「ちっ、剣に相棒呼ばわりされたかねえや」

 

 ビクトールは案外剣を頼りにしてないんだね。僕が自分の棍に相棒だと言われたら(仮の話ね)素直に相棒だと思えるけど。

 

「何か言ったか?」

 

「いえいえ、なんでもありませんよ。……くそっ」

 

 やれやれ。とにかく星辰剣が手に入った。すりぬけの札を使って外に出るとしよう。

 

 星辰剣を手に入れたが、外はもう真っ暗だった。急ぎたいが、夜中に馬を走らせる訳にもいかず、寺院で一泊することに。その際寺院にいた人達を全員仲間にした。

 

 まずはフッケン。彼は既に仲間になっているようなものだが、一応加入の意思を確認させてもらった。

 

 次に盲目の格闘家、モーガン。

 

「見えますよ……貴方の背に大きな空が。私も解放軍に入りましょう」

 

 農夫のゼン。彼には今までに道具屋で買った三つの種を渡して仲間になってもらった。

 

「種があればここでの仕事が終わるのですが。……おお、ありがとうございます。これで私はあなた方の仲間ですな」

 

 司書となるユーゴ。彼には洞窟で拾った本、「戦国絵巻」渡した。

 

「おおー。探していたんだよね。ありがとう。え? 解放軍の城にある図書室の司書になって欲しい? いいよ。行こう」

 

 戦国絵巻を探していたので、渡したお礼に仲間になってくれた。

 

 さて、翌日の早朝だ。皆を起こして戦士の村へ行こう。

 

 ぱかぱかと馬を走らせ昼には到着した。すると一日たって状況が変化していた。やはり急いで良かったな。

 

「おお、戻られたかティル殿。して首尾は……」

 

「ビクトールがネクロードを倒す為の武器を手に入れました。これで奴を倒せます」

 

「おお! そうですか。しかしネクロードの奴めが、こんなものを送ってきたのです」

 

「何々? 『私とテンガアール嬢の結婚式を執り行うので、戦士の村の諸君は参席されたければ私の城まで来るといいでしょう。日時は二日後の夜とする』だと!? ふざけやがって」

 

「急がないとテンガアールの血が吸われちゃうよ!」

 

 安心してくれヒックス。

 

「ゾラックさん。ネクロードの城までは……」

 

「馬を飛ばして二日かかります。今出発すれば二日後の昼には着けるでしょう。そして城を夜までに登る。後は奴を倒すだけです」

 

「わかりました。一緒に行きましょう」

 

「ありがたい。ではよろしくお願いします」

 

 と、戦士達の準備が少しかかるので、出発までちょっと間があいた。この隙に道具屋へよって眼鏡の青年に話しかける。

 

「僕は戦士になんかなりたくないんだ。本当は飾り窓の職人になりたい……あ! その封印球……それがあれば僕も……貰っていいのかい? ありがとう。解放軍に? わかった。窓職人の僕で良ければ」

 

 ということで、洞窟で拾った窓の封印球で飾り窓職人ウィンドゥが仲間に。

 

 そしてヒックスとも会話する。

 

「僕は駄目なんです。まだ一人前の戦士じゃないから、戦いに参加してはいけないって……」

 

「ヒックス。君は本当にそれでいいのかい?」

 

「でも、僕は……」

 

「テンガアールの式は二日後の夜だ。間に合いたければ、今日の昼には出なきゃいけない。馬の用意はしておいても損はないと思うよ」

 

「それって……」

 

 こっそりと、目に見えない程度に後から出発してしまえということだ。

 

「後は君の気持ち次第さ。テンガアールを大切に思っているなら、答えは一つだろう?」

 

 説得はこれで終わりだ。彼が来るかどうかはわからない。来なくてもネクロードは倒すけどね。別に108星は揃わなくてもいいし、彼が来なくても倒せるだろうし。

 

 さて、ネクロードの城へ出発だ。

 

 

     §

 

 

 城に到着。魔物がいたが、相手にするのは最小限にとどめ、先を急いだ。

 

「ようこそ、戦士の村の諸君」

 

「ネクロード!」

 

 城の門前にいやがった。

 

「この城の中には一定の実力を持つ者しか入れません。まあ試してみるといいでしょう。……それと解放軍の諸君、貴方達の相手もしてあげますよ。ティル、貴方の紋章を奪えばウィンディ様も喜んでくれるでしょうしね」

 

 そう言って城の中に入っていくネクロード。

 

「戦士の村を舐めるな!」

 

 ああ、ゾラックさん無茶はいけない。

 

 ばきっ! と何かが割れるような音がしてゾラックさんを始めとする村の戦士達は門に弾かれてしまった。

 

「僕らが行きます。必ずネクロードを倒し、テンガアールさんを救ってきます」

 

 門を開けることができた僕がそう言う。

 

「すみません……ティル殿」

 

 よし、行こう。

 

「待って下さい!」

 

 来たか、ヒックス。

 

「ヒックス、お前……」

 

「僕も……僕も一緒に……」

 

 そう言って門をくぐるヒックス。

 

「通れたね。一緒に来るかい? ヒックス」

 

「はい! 足手まといにはなりません!」

 

 必殺の封印球を宿したり剣を鍛えたりできないのがもどかしいが、仕方あるまい。

 

「ヒックス……ここへ来なさい」

 

 ゾラックさんがヒックスと相対する。

 

「戦士の村が一人、ヒックスよ。お前を一人前の戦士と認め、剣に名を持つ資格を与えよう。……テンガアールを頼むぞ」

 

「はい!」

 

 いやぁ。会話だけ聞くと凄く爽やかな好青年みたいだ。いや好青年ではあるけどね。

 

「ヒックス。決めたんだね」

 

「クレオさん……はい。僕は戦います」

 

 よし、ではいざネクロードの元へ!

 

 城の中は死者の群れでいっぱいだった。夜までに最上階へ辿り着かないとアウトなので、歩みを優先させる。……なんだかいつもそんな感じだが仕方ない。ゲームのようにほぼ無限の時間がある訳ではないのだから。ここに出る魔物はスペクトという亡霊、こいつらは弱いが必ず三匹で連れ立っているので、二人一組で一匹を倒す。ソーサラーゾンビ、広範囲の魔法攻撃を行ってくる。なお風の封印球を落とすが、買えるものなので無視。ユニコーンゾンビ、一匹で行動する。物理攻撃の突撃と、全体への火による魔法攻撃を行ってくる。星のピアスという自動で回復してくれる素敵アイテムを落とすが、狙っている余裕なぞない。

 

 そして二階の隠し通路がある所で出会いました。謎の黒騎士ペシュメルガ。

 

「何だ、お前達は? 解放軍……そうか。私? 私はユーバーという男を追っているのだ。ネクロードは奴の仲間。居場所を知っていると思いここに来た」

 

「ユーバーなら今は帝国軍にいるはずです。彼の仲間であるウィンディが宮廷魔術師をしているので。解放軍に入って下さいませんか? 僕達と一緒にならば戦場で出会えますよ」

 

「解放軍……集の力も必要、か。わかった。仲間になろう」

 

 ペシュメルガが仲間に。せっかくなのでこのままネクロード討伐にも付き合ってもらう。これでこっちは八人だ。まず負けまい。

 

 最上階に到着した。僕が宿した水の紋章で回復だ。個別におくすりや特効薬を使っている暇すら惜しい。一瞬で治せるので紋章を使った。

 

 ジャージャージャー♪ 最上階にはパイプオルガンがあってそれを弾いていやがりましたこの男は。余裕ぶっこいて。これから倒されるくせに。

 

「テンガアール! 助けに来たよ!」

 

「ヒックス!」

 

 テンガアールはウェディングドレス姿だった。この変態めが。

 

「今助けるよ!」

 

「…………これではまるで私が負けるみたいではないですか」

 

 ボス敵なのに戦う前にそんなこと言うな。

 

「その通りだ、お前はここで死ぬんだよ! いくぞ、星辰剣!」

 

 シャキン、と星辰剣を構え、ビクトール。

 

「我が剣テンガアールに誓ってお前をここで倒す!」

 

 戦端が開かれた。まずは――。

 

「まやかしの霧!!」

 

 僕が水の紋章を使って霧を生み出し、ネクロードの攻撃命中率を下げる。更にルビィが左手に宿した土の紋章を使う。

 

「――守りの天蓋!」

 

 これで一回だけだが、全体攻撃の魔法を弾くことができる。

 

「ネクロードぉおおお!!」

 

 戦闘が始まったらビクトールが最初に攻撃する。事前に決めていたことだ。ビクトールは必殺の紋章で三倍になった速度でネクロードに迫ると、一気に斬り下げた!

 

「ぐぉお!」

 

 剣なんて効かないと完全に油断していやがって斬られた、ネクロードの体からドーム状に光が広がる。

 

「くっ、こ、これは……この、剣は……」

 

「ふん、私は真の夜の紋章だ。夜の眷属である吸血鬼ごとき守り、私にとっては薄紙同然よ」

 

「な、ば、馬鹿な……五百年も生きた私が……」

 

「おおおっ」

 

「ネクロード、貴様もここで果てろ!」

 

 フリックとペシュメルガの剣が閃いた。その剣戟が確かに奴の体を切り裂く。星辰剣で攻撃したので、守りが破られているのだ。

 

「こ、こんな、こんなことが……かぁっ!」

 

 奴は雷の魔法を使ったが、守りの天蓋に阻まれた。

 

「なっ!?」

 

「――大爆発!!」

 

 クレオの火の紋章が炸裂した。もう瀕死になったネクロードに、追撃のグレミオ。斧で一撃。当然必殺の紋章つきだ。――そこに、

 

「僕だって、戦士なんだ、食らえっ!」

 

 ヒックスの剣がネクロードの右腕を斬り落とした。右肩を押さえ苦しむネクロード。

 

「ネクロード、これで、これでとどめだ。貴様に滅ぼされた村の恨み、今ここでぇっ!」

 

 ビクトールの星辰剣が、ネクロードの首を、断ち切った。

 







後書き
 いやぉこれは酷い。現実世界だとパーティー人数に限りとかありませんからね。敵も二回行動とか、ボス二体とかじゃないと、八人パーティーは荷が重いというお話。あ、一部Ⅱの魔法も使いました。あまり意味はありませんでしたけどね。だってあそこでネクロードの魔法が当たっても、次のターンで主人公かルビィが全体回復しますもん。
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