ゲーム小説 幻想水滸伝   作:月影57令

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第21話 竜洞騎士団

「が……っ」

 

 ネクロードの首がどん、と地面に転がった。これで確実に奴は死んだ……訳ではないんだな、これが。実はこのネクロードは写し身なのだ。なので本体は倒せていないのだ。まあ奴を本当に殺すのは数年後にやろう。今はこの地方の解放と、

 

「ヒックスーー!」

 

「テンガアール!」

 

 彼女の解放を喜ぼう。

 

 

     §

 

 

 さて、まだ魔物が跋扈する城を歩いて下りてきたぞ、と。

 

「テンガアール……ティル殿。この度は本当にありがとうございます」

 

「解放運動の一環です。あまりお気になさらず」

 

「我ら戦士の村一同、有事の際はかならず駆けつけますぞ」

 

 ……ゲームでは“最後の戦争が終わった後”にやってきたくせに。まあこの世界では連絡して最後の戦争に参加してもらうつもりだ。恩義を感じているのなら、きりきりと働いてもらおう。

 

 皆で連れ立って戦士の村まで帰る。さて、村で休もうとなった時だ。

 

「ティル……いや、ティル様」

 

 かしこまったビクトールは実に気持ち悪かった。やめてよそんな口調。

 

「お願いがあります。俺は長い間追い続けた村の仇、ネクロードをこの手で倒しました。そのことを故郷の村に報告したいのです。一時軍を抜けて故郷に帰ることをお許し下さい」

 

 ビクトールが戦線からの離脱を申し出てきた。当然許可する。

 

「君が解放軍から離れるのは大きな痛手になるね。早く戻ってきて欲しい」

 

「わかってるさ、俺がいなきゃ解放軍もしまらねえ」

 

「よーし、それじゃあその熊みたいな人の代わりにボクが解放軍に参加するよ」

 

「テ、テンガアール。無茶だよ!」

 

 いきなり解放軍に参加するテンガアール。だが魔力が高い魔法使いなので、加わってくれるならありがたい。

 

「何言ってるのさ、君も参加するんだよヒックス。恩を少しでも返すのさ」

 

「え、ええぇー。僕もぉ!?」

 

 ということでヒックスも正式参入です。ビクトールはもういなくなった。よほど故郷に帰りたかったのだろう。

 

「やれやれ、これはこの先が大変だねヒックス」

 

 クレオの言葉で、その場は笑いに包まれたんだ。

 

 

     §

 

 

 トラン城に帰還。瞬きの手鏡は便利すぎる。これに慣れてしまってこの後大丈夫なのだろうか?

 

 と、広間で戦士の村とロリマー地方について報告する。

 

「……という訳で、戦士の村は協力してくれることになったよ」

 

「喜ばしいことですな」

 

 頷くレパント。

 

「ティル殿、こちらにも報告があります」

 

「なんだいマッシュ」

 

 聞くと、北方のカシム・ハジル将軍の軍がこちらに攻め入る構えをしているとのこと。

 

「彼らの軍勢は約八千。更にソニア・シューレンの水上砦には約一万五千の兵力が。双方からの同時攻撃には耐えることができないでしょう」

 

 水上砦の攻撃は湖賊のみながかきまわしてくれていたが、それも限界らしい。

 

「今の僕達じゃあカシム将軍の相手をするだけで手一杯だね」

 

「はい。そこで提案なのですが」

 

「西方にある独自勢力、竜洞騎士団の騎士団長ヨシュアとは旧知の仲です。味方につけるなら同行します」

 

 ハンフリーが珍しく喋る。帝国とは中立の立場である彼らを仲間に引き入れれば、かなり戦いは有利になる。というより、実を言うとこの竜洞騎士団を仲間につけないと、ほぼ確実に解放軍は負けると思う。だから竜洞騎士団を仲間にするのは非常に、非常に、ひっじょ~うに、大事なのである。とにかく大切な同盟なのだ。これがならなければ解放軍は負けるし僕らは死ぬだろう。

 

「彼らを仲間とし、一気に形勢を逆転させましょう。ただ、竜騎士はみな誇り高い。特に団長であるヨシュア殿も。同盟を結ぶにはリーダーであるティル殿が直接出向く必要があるかと……」

 

「僕は構わないよ。早速出発の準備にとりかかろう。竜騎士達に会いに行くんだ」

 

 やれやれ、リーダーも大変だ。あちこちに旅から旅への毎日。しかも戦争が終わっても……と、いらぬ皮算用だった。しかしいよいよだ。いよいよあの場所に辿り着く時がきたのだ。約束を果たす時が。僕は気を引き締めた。

 

 同行者はまたもやクレオ、グレミオ、フリックがついてくる。それにハンフリーがいる。せっかくなのでパーンも連れて行こう。これでいいかな。……ホントはリュウカンさんを連れて行ければ手間が凄く省けるんだけどね。さすがにこの状況で「リュウカンさんを連れて行く」と言ったら頭がおかしい人なのでやらないが。

 

 ちなみにリュウカンさんといえば、リコンの村にいた女性にはちゃんと紹介して子供さんの病気を治してもらった。リュウカンさんも大変だね。解放軍に加わった後は、彼の高い技術を後世に残す為、医師や薬師の一団を集めて弟子にし、毎日教えを受けさせている。いつまでも引退できないんじゃあリュウカンさんが可哀相だから。

 

 よし、旅装も調ったのでビッキーのテレポートを久しぶりに使ってもらおう。竜洞にはまだ行ったことがないから、一番近いアンテイの町へ飛ぶ。

 

 …………アンテイの町へ到着したら、宿屋の前で人だかりが。気になるので覗く。

 

「この野郎! いいから飯代を払いやがれ!」

 

「ンンンンン。ノンノン、先ほど恵まれない子供に上げてしまってないのですよ」

 

 やってるやってる。さて、では歩み出て。

 

「代金を払えないのですか? それなら僕達が払いますよ」

 

「え? あ、あなたは解放軍のリーダー、ティル様じゃあないですか」

 

「ティル? ティル・マクドールですか。これは帝国貴族ともあろうものが失礼をしました。私はヴァンサン・ド・ブール。貴族の端くれでございます。代金を払ってもらえるとは、感謝の極み」

 

 緑と白の衣服に、赤いマントをつけた金髪の男。いかにも貴族といった容貌をしている。育ちが良さそうだ。僕? 僕は前世からの影響でにじみ出る庶民臭だよ。

 

「これはご丁寧にどうも。ティル・マクドールです」

 

「まあ代金を支払ってくれるなら誰でもいいですが」

 

 二百ポッチ支払う。……これぐらい残しておけよ貴族!

 

「ありがとう。心の友ティルよ。私は竜洞騎士団に用事があるので、ではこれで」

 

 ピューっと吹くジャガ……じゃなくてピューっとその場からダッシュでいなくなるヴァンサン。夕飯みたいな名前しやがって。

 

「ぼっちゃんも人がいいんだから」

 

 それは誤解だよグレミオ。竜洞を通るキーであり108星だから助けたんだ。そうでなきゃ見捨てているところさ。そういえば最近軍記帳を開いていないな。父さんとの戦いの辺りは忙しく、戦いが終わった後は呆けていたから。帰ったら見てみるか。

 

「それにしてもあの男、竜洞騎士団へ行くと言っていたな」

 

 顎に手を当ててフリック。

 

「せっかくだ、追いかけてみよう」

 

 ということで竜洞にレッツらゴー。馬を飛ばし、出発してからだいぶ時間はかかったが、竜洞騎士団がある竜騎士の砦、そこへ繋がる洞窟の竜洞へ到着した。

 

「だから! 通せないと言っている!」

 

 まーたやってるよ。かつて会ったフッチ(もう年単位で前の出来事だ)と同じく、竜の翼を模した輪を頭にはめた騎士が二人、洞窟の前に立っている。

 

「おお、なんと嘆かわしい。私は騎士団長ヨシュアの貴重な友! その私を通さなかったら、貴方達、酷い目にあいますよ」

 

「貴様など見たこともないわ!」

 

「……私達がここを任されたのは五年前からだ」

 

「おおう、確か前に訪れたのは五年と一月前でした」

 

「この嘘ツキめ! とにかく通行は許可できん! 竜洞騎士団団長ヨシュア様の命により、皇帝陛下だろうとお通しするなということだ!」

 

「これは……厳しいね。皇帝でも駄目とは」

 

「以前はこうではありませんでした。竜洞騎士団に何か起きているのかもしれません」

 

 とハンフリー。よほどヨシュアと仲がいいんだな。解放軍で活動してきた今までよりも喋っているよ。

 

「仕方ありませんね……おや? 我が友ティルではないですか。貴方も竜洞に用事が? 駄目ですよ。ここの門番は頭が固くてしょうがありません」

 

 ヴァンサンは引いた。頭が固いと言われて睨みつけてくる騎士達。

 

「僕達、どうしてもヨシュアさんと会わなければならないんだ。何か方法はないかな?」

 

 水を向ける。

 

「それならば一つ手段が、ついてきて下さい」

 

 洞窟から右手方向に歩くヴァンサン。とつとつとついて行く。すると土手の中に石碑があった。

 

「これこの通り」

 

 石碑が横に滑って移動する。そのずれた場所、奥にはぽっかりと穴が空いていた。

 

「ここから通っても砦に行けるのです。秘密の抜け穴ですね」

 

「よし、なら利用させてもらおう」

 

「ん? お前はこないのか?」

 

「貴族とは姑息な手を使わないものですよ」

 

「……そうかい」

 

 呆れているパーン。まあ彼は後でも仲間になるし、仲間にならなくても以下略。

 

 ひんやりと冷えた洞の中を通って奥に進む。当然のように魔物が出る。魔力を上げる「魔の紋章片」を落とす闇色の球、かげろう。盾型の魔物マジックシールド、こいつは上手く加工すれば最高級の盾になるが、後で売られているから無視。そして日輪魔王。巨大な仏像のような姿のこいつ。だが攻撃は全然大したことがないレベルだ。ただ耐久力だけが強いので。皆の一斉攻撃で倒す。特にグレミオとパーンの協力攻撃。久しぶりのこれでぼかざくと攻撃してもらう。

 

 すると、進んだ先で崖が。

 

「危ない危ない、落ちるところだったよ」

 

 転生者の知識を舐めないで欲しい。落っこちたりしないよ。左手側に通路があるのでそれで崖下へ降りていく。と、竜がいた!

 

「これは……」

 

「五、六十匹はいるかな。でも皆眠っているようだよ」

 

 クレオの驚きの声に返す。ハンフリーも眉根を寄せて不可解な顔だ。

 

「……おかしい」

 

「そこで何をしている!」

 

 赤い額の輪と、同じく赤い肩当てを右肩にした女性騎士。金髪に同色のマントを羽織っている。こちらに駆けてきた。手には三叉の矛を持っている。

 

「貴様ら、何者だ!」

 

 きつい言葉で詰問してくる。かつっと靴を鳴らして前に出る。

 

「私は解放軍リーダー、ティル・マクドールです」

 

「ティル!」

 

 名乗ったと同時に懐かしい顔が僕を呼んだ。暗闇の中だが目をこらすと、やはりフッチがそこにいた。

 

「フッチ! 久しぶり!」

 

 再会を喜ぶ。

 

「ティル……解放軍のリーダー……」

 

「勝手に領内へ侵入してしまい申し訳ありません。どうしても騎士団長のヨシュア殿にお話があり……」

 

「ヨシュア様に?」

 

 僕達の会話の外で、グレミオ達もフッチと顔を合わせる。

 

「……フッチ君。どうして竜は皆眠っているんですか?」

 

「それは……あの、その」

 

 フッチは困り顔だ。

 

「竜騎士殿。私は元帝国軍百人隊長、ハンフリー・ミンツと言います。是非ヨシュア殿にお取次ぎ願えないだろうか?」

 

「…………わかりました。この状況を知られたからには報告の必要もありますからね」

 

「ありがとうございます。竜騎士殿」

 

「これは失礼を、私は竜洞騎士団副団長を務めるミリアと申します」

 

 ミリアさんとフッチに連れられて、竜の寝床から奥に進み外に出た。そこから少し歩いた先に砦が。

 

「ただいまお取次ぎをして参ります。少々お待ち下さい」

 

 と言われたので待機する。すると二つの出会いが。

 

「クロイツ……」

 

「お前はあの時の隊長、確かハンフリーと言ったな」

 

 赤い鎧にオールバックの黒髪。いかにも精強な戦士といった風な男がそこにいた。

 

「皮肉なものだな。あの時ゲイル・ルーグナー様の下にいた俺と戦った、バルバロッサの部下であったお前が、今は解放軍か。変わったものだな」

 

 彼は継承戦争でバルバロッサの敵方、ゲイルの部下だった男だ。

 

「俺は変わっていない。変わったのは…………。…………クロイツ、あんたに頼みがある。ゲイル・ルーグナーの下、猛将とうたわれたあんたの力を解放軍に貸してもらいたい」

 

「解放軍……か。思想に興味はないが、バルバロッサを打倒できるというのなら、それも悪くはないのかも知れない。……よろしく頼む、ティル殿」

 

 クロイツが仲間に。そして部屋の凹凸の影に隠れていた、全身を赤と黒で染めた(赤色が眩しい。全然隠れていないよ!)忍者が一人。

 

「おや、私の気配を感じ取れるとは」

 

 あんたがここにいることは知っていたからね。

 

「解放軍のリーダー、どおりで。ティル殿。私も解放軍にお加え下さい。修行の為、戦いたく思います」

 

 忍者フウマも仲間になった。そして少し時間が過ぎて二階にあるヨシュアさんの部屋へ。そこにはかつて会ったバルバロッサにも負けない威厳と優しさが同居した男性がいた。白い胸当てに黒い鎧と灰色の着衣。白髪を一房背中に伸ばしている。

 

「ハンフリー! 久しぶりだな! 今までどうしていたんだ。カレッカの事件が起きた後行方がわからなくて心配していたのだぞ」

 

 確か彼も二百年以上生きているはずだ。それにしては精神に歪みなど見られない快活な男性だった。

 

「すまない、ヨシュア。色々あってな。今の俺は解放軍に身を置いている。」

 

 ハンフリーに紹介されるので、名乗りを上げる。

 

「貴方がティル殿か……噂はかねがね」

 

 そこで同盟について話をする。

 

「む……帝国の悪政は聞き及んでいる。俺も何とかしたいとは思っていたのだが、今は何もできないのだ」

 

「それは、あの眠った竜と関係が?」

 

 ぶしつけだが聞いてみた。すると、やはり眠った竜を知られない為に通行を禁止していたとのこと。

 

「数ヶ月前から突然竜達が眠り込んでしまい。ほとほと困り果てているところなのだ」

 

 蟲のしわ……じゃなかったウィンディの仕業ですな。

 

「竜の専門医がいらっしゃると聞いていますが」

 

 ハンフリーが道行で色々と話してくれていた。その知識でもって尋ねる。

 

「確かに。だが団付きの医者を始め、各所の医者を呼んだが、誰にも治せなかったのだ。神医と呼ばれるリュウカン殿にも使いを出したが、行方知れずでな」

 

「リュウカン殿なら、今は解放軍におります。すぐに連れて参りましょうか?」

 

「お、おお! 何と! それでは申し訳ないが、お願いできないだろうか?」

 

 ということでリュウカンさんが必要なのでした。ゲームだと最初から連れていれば面倒がないんだけどね。

 

 ということで瞬きの手鏡とビッキーが活躍しリュウカンさんを連れて来ました。早速巣にいる竜達を見てもらう。五十匹以上いるので、一匹一匹を確認するのに時間がかかる。ヨシュアさんやミリアさんは固唾を飲んで見守っている。

 

「ううむ……これは……」

 

 竜を診るリュウカンさん。頼りはこの人だけだ。

 

「どうも、竜は病で眠っているのではないようです。何か毒を飲まされているようじゃ。どうやったのかは知らんが、恐らく何者かが竜達に毒を盛ったとしか思えん」

 

「なんと!?」

 

「毒を!」

 

「……………………やっぱり、あの時……」

 

 フッチのポツリとした呟きは僕にしか聞こえなかったようだ。彼には心当たりがあるのか? 人影でも見たのだろうか?

 

「解毒剤は調合できる。できるがしかし、材料が問題じゃ」

 

「材料、ですか?」

 

 わかっているが尋ねる。

 

「一つはシークの谷に生えているはずの『月下草』、もう一つは『黒竜蘭』。そして最後に……」

 

「最後に、何ですか?」

 

 緊張した面持ちのヨシュアさん。

 

「……いや、まずはその二つを集めることじゃ。特に月下草は、発酵させるのに時間を有する。まずはそれを探して来て下され」

 

「なら、僕達が探しに行きましょう。協力させて下さい。ヨシュア殿」

 

「我々としても竜洞騎士団に助力を願う以上、こちらからの協力は惜しみません」

 

 フリックが意気込む。竜が眠っているんだ。騎士達が砦を留守にする訳にもいかないだろう。僕らが適任だ。

 

「……では、すまないがティル殿。お願いしてもよろしいだろうか。せめて副団長のミリアをお連れ下さい。彼女の騎竜であるスラッシュは運良く眠らずにいるのです」

 

「シークの谷へは竜を使って飛んで行くしかありません。スラッシュで送ります」

 

 シークの谷……やっとだ。やっと辿り着いたぞ。その場所へ。後は僕が約束を果たすだけだ。僕は決意を新たにし、シークの谷へと向かうのだった。







後書き
 竜洞騎士団を仲間にするのは非常に大事です。これがないと解放軍は負けます。
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