ゲーム小説 幻想水滸伝   作:月影57令

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第22話 約束

 竜に乗って一路シークの谷へと。山脈をひとっ飛びに越えて、山の谷間にあるその場所へ。谷にはそこかしこに水晶。綺麗な場所だな。それが余計に原作の悲劇をきわだたせるのだけど。

「じゃあ月下草を探しましょう」

 

「谷の北にあるという話を聞きます。行ってみましょう」

 

 ここにはあの人物もいるはずだが……。と、ありました庵です。頭から脚まで真っ白な服のおじいちゃんが中にいました。

 

「こんなところに人がやってくるとはな……解放軍、か。……ふむ、弟子達四人がな……わかった。わしも人里に下りてみようと思っていたところじゃ。それに弟子達に最後の教えを授ける機会じゃしな」

 

 ということで最高の鍛冶屋。鍛治屋大師匠メースさんが仲間に。先に谷を下ってスラッシュの所へ行っててもらう。

 

 魔物を蹴散らし進む。ここには、はいよる蔦、ロックバスター、ワイバーン、そして清風山で出会ったクィーンアントがザコ敵としてうじゃうじゃ出る。はいよる蔦はその名の通り植物系の魔物だ。ロックバスターはクレイドールの上位互換。こいつからは最高の拳法着である太極の服の素材が手に入る。ワイバーンというドラゴンはパワーグローブの材料を採取できる。そしてクィーンアントは銀の帽子の繊維が、だけど後で買えるからとにかく倒すか逃げるかして奥へと進む、と。

 

 でましたボス敵の魔物。クリスタルコアだ。水色のでっかい玉である。狭い道を塞いでいるので、こいつを倒さないと奥には進めない。だけど……。

 

「皆……下がっていてくれ。呪いの紋章ソウルイーターよ……その力を示せ! 死の指先!」

 

 呪文を詠唱してソウルイーターのレベル一魔法を発動する。父さんの魂を吸収したのでこの魔法が使えるようになった。どんな魔物にも通用するのは試して確認してある。ゲームならボス敵には効かないけどさ、現実にはそんな尺度なんてありはしない。体が大きければ通用しないの? ザコ敵のようにわらわらと数が多くなければ通用しないの? 魂の比重が重ければ通用しないの? 残念ながらそんな「通用しない理由」なんてありはしない。だからボス敵の魔物だろうが、特別な人間相手だろうが、効くものは効く。27の真の紋章を舐めるな。

 

「ぼっちゃん……」

 

 クレオ達が心配そうに見る。

 

「大丈夫だよ。この魔法については研究したからね。体に負担がかかるとかそんなことはないよ」

 

 あっさりとクリスタルコアは撃破(消滅)した。こんな風にソウルイーターを使っているのが知られたら、テッドのおじいさん、テッド、レックナート様に怒られるかな? まあいいや。使えるものは使うのだ。

 

 そうして、一番奥に辿り着いた。

 

 僕は、ついに“その場所”へと辿り着いたのだった。

 

 

     §

 

 

「あれは……あれが月下草でしょうか?」

 

 ミリアさんの言葉通り、水晶の間に咲く花。駆け出そうとしたみなを見て。一人準備をする僕。

 

 その時だった。キュゥゥン、と音を立てて現れる女……。

 

「ウィンディ!」

 

「ほほほ……久しぶりだねぇ。ティル。月下草が気付け薬の材料だとは知っていたのでねぇ。ここで網を張らせてもらったよ」

 

「何だと……! では、貴様が竜を!」

 

 攻撃しようとしたミリアさんがウィンディの雷の魔法だろうか? によって弾き飛ばされた。僕は気絶などしないように油断なく構える。そんなことになったら全てが終わりだ。仲間達も臨戦状態になる。

 

「さあて、ティル。解放軍ごっこも飽きただろう? いい加減にその手のソウルイーターを渡しな」

 

「誰が渡すもんか!」

 

「そう言うと思ったよ。では懐かしい顔と再会させてやろうかねぇ」

 

 再び音が鳴り、少年が現れた。青い服に栗毛の髪――テッドだ。やっと……会えた。体は、無事だ。良かった。

 

「テッド君!?」

 

 ……ついに、この時がきたか。僕は一歩前に出た。

 

「ウィンディ……貴様、テッドを……」

 

 ふつふつと怒りが湧き上がる。

 

「誤解するでないよ。テッドがお前に言いたいことがあると言うのでね、連れて来てやったのさ」

 

 どの口が言いやがる!

 

「ティル……久しぶりだな……。すまないけどさ、俺にソウルイーターを返してくれないか?」

 

「なんだって!?」

 

「俺は三百年の間、そいつで不老になって生きてきたんだ……それがないと駄目なんだよ……だからティル……紋章を返してくれ」

 

 こんなことを言うテッドではない。

 

「ウィンディ、貴様、ブラックルーンを使って操っているんだろう!」

 

「知らないねぇ」

 

 にやにやと、ウィンディ。胸がむかむかする笑いだ。

 

「さあ……早く俺に紋章を……」

 

 近づいてくるテッド。ここだ! 僕は右手をかざす、フリをした。

 

「我が身に宿る紋章よ。テッドを、支配の紋章から解き放て!!」

 

 そうして、僕は、“その力”を発動させた。

 

 

     §

 

 

「僕は……僕が求めるたった一つの望みは……テッドを助けたい。ウィンディによって体と心を根っこまで支配するあの紋章を解除する力を、僕にくれ!」

 

「ふぅん……自分の生存なんかじゃなく、他人を助ける為に願いを使うのかい……面白いじゃないか。いいよ。その力を与えてあげよう。だけど、君が“その場所”まで辿り着けなくても、途中で死んだり、違う道に進んでしまって力を使う機会がなくなったりしても、変更はきかないよ。そうなったら無駄になった力を抱えて死んだり、その後を生きたりするんだよ」

 

「それでもいい……あの幻想の世界に行くのなら、彼を助けたい。力を、僕に」

 

「わかった……では酷く限定的なその力を与えよう……頑張って生きてみなよ。そして元の世界への執着を捨ててくれ」

 

 

     §

 

 

 僕は、さもソウルイーターを使うように見せかけて、あの与えられた力を行使した。

 

 白い光がテッドを包む……そして……。

 

「ティ、ティル、俺は……」

 

「テッド!」

 

 駆け寄る。ウィンディに攻撃されるかもしれないので最低限の警戒だけして。

 

「俺……からだが、うごく……解放、されたのか……?」

 

「ば、馬鹿な……!? そんな!?」

 

 ウィンディは支配の紋章を破られたので驚きに目を見張った。

 

「残念だったな。ウィンディ! ソウルイーターは呪われた紋章だが、“生と”死を司る紋章なんだよ。使いようによっては人を生かす為にも使えるのさ!」

 

 という風に、僕は嘘をつく。それでも良かった。嘘つきでも、彼を救えるなら……。

 

「くっ、そんな、まさか……ええい! ソウルイーターよ! 私に宿りなさい!」

 

 だが、ウィンディの企みは、呪われたソウルイーターによって防がれた。

 

 右手が自然と持ち上がり、広がった闇がウィンディを退ける! 今だけはこの紋章がありがたい。

 

「忌々しい、いつかその紋章、私のものとしてみせるよ!」

 

 そう言ってウィンディは門の紋章を使いその場から立ち去った。

 

「やった……やったんだ……テッド」

 

 僕はテッドの体を抱きしめた。小さな、その体を。

 

「ティ、ル……俺……」

 

「テッド……もう大丈夫だ……もう、大丈夫だから……『必ず助ける』って言っただろう。時間がかかったけど……待たせたけれど……助けにきたよ……」

 

 それは欺瞞だけのものだったけれど、確かに僕は彼を助けられたのだ。

 

「ティル……」

 

 テッドは、安らかに眠った。あの時、眠れなかった安らぎを、取り戻すように。

 

 

     §

 

 

 僕らがシークの谷から引き上げて竜洞騎士団の砦に戻った頃、気付け薬のもう一つの材料である黒竜蘭を取るべく、行動している者がいた。フッチだ。

 

 フッチは彼の騎竜であるブラックに乗って帝都グレッグミンスターにやってきた。彼のブラックもまた、難を逃れた竜だった。

 

「黒竜蘭も希少な花じゃ。今は帝都の王城、空中庭園でのみ栽培されておる」

 

 リュウカンのその言葉を漏れ聞いたフッチは、誰にも見つからぬように帝都へ向けて出発したのだ。スラッシュの他にはブラックしか飛べるしか竜がいないのだ。フッチは己の責任感に従ってその行動をとった。そして空中庭園に辿り着く。当然正面から許可などもらえる訳がないので、盗み取るつもりなのだ。

 

 フッチは見張りがいないのを確認すると、夜の闇を振り払い庭園を進んだ。しかし進んだ先には花、花、花の山である。様々な植物があり、どれが黒竜蘭なのか判別できない。

 

「だけど……俺がやらなきゃ……」

 

 強い気持ちで一つ一つ花を確かめる。と、紫の花が見つかった。

 

「これかな……リュウカンの爺さんが言っていたのと似てる気がする……これが黒竜蘭でいいのかな……」

 

「そうだな、それが黒竜蘭だ」

 

 突然の言葉。驚くフッチ。

 

「だ、誰だ!」

 

「誰だとは挨拶だな。少年よ、お前こそ誰なのだ。ここが皇帝の庭と知らぬ訳でもあるまい……む、その風体……竜騎士か?」

 

 現れたのは黄金の皇帝バルバロッサだ。彼はフッチが竜騎士であることをすぐに見抜いた。

 

「あ、貴方が皇帝陛下……」

 

「眠れぬので夜風に当たってみれば、花泥棒に出くわすとはな」

 

「お、いえ、僕は竜洞騎士団第九階位のフッチです」

 

「見習い騎士か……それで、ここに何の用だ?」

 

 フッチは仕方ないので正直に答える。

 

「皇帝陛下、黒竜蘭を採りに来ました。竜が眠ってしまい、気付け薬として必要なのです。お願いします。どうか黒竜蘭を……」

 

 フッチは竜の事情を話した。眠ってしまったこと。それが誰かの毒によるものだと。

 

「そうか……それは、また、ウィンディの仕業だな……」

 

 バルバロッサはすぐにその可能性に思い当たった。

 

「少年よ、早くここから立ち去るのだ。私が優しい気持ちでいられるうちに……」

 

「は、はい。わかりました!」

 

 言ってフッチは黒竜蘭を持って駆け出す。

 

「ふぅ……ふぅ。あ、あれは本当に陛下だったのかな。だけど迫力は本物だった……それにしては聞いた話より優しい感じだったけど……」

 

 呟きながらブラックに乗るフッチ。そして飛び立とうとしたときだった。

 

「おや、間に合ったかい」

 

 急に女が出現した。薄紫のドレスに青いマント。ウィンディだ。

 

「! 誰だか知らないけど、黒竜蘭は貰っていくよ。じゃあね!」

 

 ブラックが飛翔する。夜空ぐんぐんと飛ぶのだ。しかし――。

 

「お仕置きが必要だねぇ。それ!」

 

 ウィンディの放った光がフッチを狙う。光の球体はブラックを執拗に追いかける。必死に逃げるブラックだったが、

 

「うわぁぁぁあああ!」

 

 逃げ切ることができず、球体を食らって、ブラックに乗ったフッチは気絶した。

 

 

     §

 

 

「うぅ……」

 

 うめくフッチを見る。彼が黒竜蘭を持って帰ろうと、帝都に行ったことはすぐに気づかれた。そして戻ったスラッシュと騎士団のみなが捜索したところ、(ふもと)の森でブラックとフッチが発見された。そしてフッチの手には黒竜蘭があり、それから二日、調合された薬で全ての竜が目を覚ましたのである。

 

「…………は」

 

 と、フッチが目を覚ました。ヨシュアさんとミリアさんが顔をのぞきこむ。

 

「大丈夫かフッチ」

 

「ヨシュア様……ここは……」

 

「砦だ。お前は無事黒竜蘭を持って帰って来てくれたのだ」

 

 ヨシュアさんがこの二日に起きたことを説明する。するとフッチは安堵した。しかし……。

 

「…………ねえリュウカンさん。薬には三つの材料が必要なんでしたよね、最後の一つは大丈夫だったんですか?」

 

 気づいてしまった。焦るリュウカンさん。

 

「そ、それは……」

 

「リュウカン殿、私が話しましょう。フッチ、薬の調合について、決断したのは私だ。恨むならば私を恨みなさい」

 

「恨む、って何ですか?」

 

「最後の材料として必要なのは『竜の肝』だったのだ。そしてその肝を取り出した竜は……」

 

「――!! ま、まさか……」

 

「フッチ……私達が見つけた時、ブラックは既に息絶えていたの……」

 

 ミリアさんが沈痛な表情で呟く。

 

「私のことを恨んでもいい。だが、それが最善の方法だった……」

 

「そんな! まさか、そんな!」

 

「ブラックは……死んだのだ」

 

「ブラック、ブラック!! うわぁあああ!!」

 

 フッチの泣き声が部屋に木霊した。僕は見ていられなかったが、僕には責任がある。なので、ずっと彼の傍についていることにした。

 

 僕は、この展開を知っていた。しかし竜を目覚めさせるには一匹の竜を犠牲にせざるを得ない。そして黒竜蘭が要るのも確かだった。だから「そのままにした」。見捨て、たのだ。事前にリュウカンさんなどに忠告することも考えた。しかし黒竜蘭はどうやっても盗んでくるしかない。そしてフッチがリュウカンさんから盗み聞いた時より一日、いや半日でも遅く空中庭園に辿り着いていれば、ウィンディは途中で現れるのではなく、待ち構えていたろう。それでは黒竜蘭を盗めない。だから、こうするしかなかったのだ。

 

 これが、僕がテッドを一度は見捨てた理由、その二つ目だ。帝国軍との戦争に勝つには竜洞騎士団が仲間になっていないといけない。竜洞騎士団を仲間にするには眠った竜を治すしかない。治す為には黒竜蘭が必要。黒竜蘭を手に入れるにはウィンディが王城にいない時に掠め取るしかない。ウィンディが王城を空けているのはテッドを連れてシークの谷に来ている時しかない。テッドを連れてシークの谷にウィンディを来させるには、テッドがウィンディの支配下にあって捕らわれていなきゃならない。テッドが捕らわれるにはあの時に捕らわれる必要がある。…………という訳だ。物凄い連鎖があって竜洞騎士団が必要だったのだ。彼らがいないと解放軍は戦争に負ける、将は全て捕らえられ反逆罪で死刑だろう。つまりこの国を解放するには、解放運動をしている皆を死なせない為にはテッドが一度捕らわれなければならなかったのだ。なんとも迂遠なことだが、そういうことなのだ。

 

 テッドがウィンディの支配下にいない状況にすることは、やろうと思えばできた。しかし、そんな風に原作と違う行動をとって、原作と違う未来になったら、竜洞騎士団が解放軍に協力しなかったらどうする? その時になってから「原作通りにしときゃ良かったー!」と嘆いても遅いんだ。原作と違うこと、つまりテッドを場当たり的に助けるようにして、その結果解放軍が負けたら? そんなことになったら目にも当てられない。大勢の人が死に、帝国の圧政で民衆が苦しむことになったら、その責任を誰がとるというのだ。僕にはとてもそんな責任は背負えない。背負えなかった。だから一度、テッドを見捨てた。大勢の人達の為に、仕方ないとうそぶいて。……わかっている。わかっているよ。自分が嘘と虚構と欺瞞にまみれたクソ野郎だということは。だけど、他に手段がなかったのだ。これが僕にできる最善だった。最善、だったのだ。

 

 だけど、時間がかかったけれど、僕はテッドを助けることができた。辛い思いを味わわせてしまったけれど、約束を守ることができたのだ。ブラックは犠牲になってフッチは悲しみに沈んだけれど。また、悲しみが生まれたけれど。

 

 ………………………………。

 

 それから、フッチはずっと塞ぎこみ、泣き続けた。竜騎士の砦は悲しみで包まれた。自分達の竜が復活したことを喜ぶ感情はあったが、ずっとフッチのすすり泣く声が部屋から聞こえてくるのだ。仲間の竜騎士達は喜びをあらわにせず、フッチをそっと見守った。

 

 少しばかりの日数が過ぎ、僕らはヨシュアさんに面会していた。

 

「これはティル殿……此度はありがとうございました。貴方達のおかげで無事竜が目覚められた。感謝の言葉もありません」

 

「ヨシュア、では?」

 

 ハンフリーが確認する。

 

「ああ、またお前と肩を並べて戦えるな。ティル殿、我ら竜洞騎士団は解放軍に助力いたします。共に帝国を倒しましょう」

 

「ありがとうございます。ヨシュア殿」

 

 ぺこりと頭を下げる。やった。これで戦争に勝てる見込みが出てきた。見込みだけでまだ勝てるとは決まっていないけどね。

 

「それで……実は貴方とハンフリーに頼みがあるのです」

 

 きたか。

 

「それは?」

 

「フッチ、入りなさい」

 

 呼ばれてフッチが部屋に入ってくる。まだ目が赤い。

 

「フッチ、お前は私達の為に良く働いてくれた。お前とブラックのおかげで、竜達は目覚めたのだ。だが、お前も知っている通り、我が騎士団には掟がある。――竜を失った竜騎士は、竜洞を出なくてはならない。ブラックを失ったお前はここに置いてはおけない」

 

 酷い掟もあったものだと思うが、これはつまり、「新しい竜を探しに行け」ということなのだろう。実際にこれから数年後、フッチは新しい竜を見つけるはずだ。その出会いをサポートするのも僕の責任、か。

 

「はい、わかっています。ブラックはきっと、あの時僕をかばって……」

 

「フッチ、自分を責めないで」

 

 ミリアさんが慰める。

 

「いいんです。僕は、ブラックが僕をかばってくれたんだと、そう思いたいんです……」

 

 僕はフッチに言葉をかけなかった。例え未来を知っているとしても、気軽に「新しい竜はきっと見つかるって」なんて言えない。それに彼は……いや、これは言うまい。それは新しい物語にとっておこう。

 

「ハンフリー、お前にフッチを頼みたい。お前とティル殿のいる解放軍ならば、安心して任せられる」

 

「わかりました」

 

「……わかった。よろしくね、フッチ」

 

「元気、出せよ。俺が剣術を教えてやるからさ」

 

 フリック、フッチの武器は槍だよ。いや未来では剣、刀を使うんだけどね。

 

「この戦いが終わったら、僕も、竜を探すよ。フッチ」

 

 そんなことしか言えない。でも、「その時」には僕も駆けつけるよ。きっと。

 

「うん……ありがとう」

 

 それでもフッチは健気に答えてくれた。どうやら、僕はまだまだ死ねないらしい。

 

 そうして、僕らは竜騎士の砦を後にした。

 

 

     §

 

 

「ここが解放軍のトラン城かぁ」

 

「うん、皆いい人ばかりだから、きっと温かく迎えてくれるよ」

 

「お前は?」

 

「もちろん僕もさ、テッド」

 

 テッドにはあの後、僕が歩んだ道を全て話した。そして解放軍に入ってくれた。僕達は瞬きの手鏡を使うのも味気ないということと、ミリアも仲間になって解放軍に籍を置いてくれることになったので、彼女は騎竜であるスラッシュに乗ってトラン城に来るという事情で、僕達全員はスラッシュに乗ってトラン城へ戻ってきたのである。

 

「まさかティルが解放軍のリーダーになるなんてなぁ」

 

 父テオとの戦いも聞かせた。その時はとても信じられないような顔をしていた。

 

「まぁね。でももう戦いも終盤さ。次には北の関所を攻略してカシム・ハジル将軍を打ち破る。そうしたら帝国の砦で一戦交えて、後は帝都に乗り込むだけさ」

 

「はぁ……なんだかすげぇ話だなぁ」

 

 テッドにはもうソウルイーターがない。なので、普通に歳を重ねていけるはずだ。まあそこら辺も話をしなくちゃいけないけどね。

 

 さて、トラン城に戻った僕は軍記帳を開いた……おお、ちょうど108星は100人か。ぴったりだね。

 

 

 

 現在の仲間、102人――。

(うち宿星でないオデッサとテッドが2人)

 







後書き
 テッド生存であります。転生特典は「テッドを支配の紋章から解き放つ」でした。物凄く局所的な特典です。書いた通り、主人公が死んだり違う過程を歩んだりしたらなんの意味もない特典です。それだけにかの人物(?)は気に入ってその通りの力を与えましたが。救う人物をテオにするかテッドにするかで迷いましたが、テッドの死に様があまりに酷いことと、操られていた彼と違ってあくまで自分の信念の元自由に行動していたテオを比較して、テッドを助けることにしました。

 そしてブラックは救えないというね。やはりあのタイミングで採りに行くしか黒竜蘭を手に入れられることはなかったでしょうし、ブラックが生きて戻ってもどの竜か殺さなくてはならないですしね。フッチならば後の時代ではぐれ竜が見つかるというのも大きいです。他の誰かだったらあの竜は手に入らないかもしれないですから。

 そしてテッドを一度見捨てた理由について。物凄く面倒なことですが、シミュレーションすると、あそこでテッドが捕らわれないと解放軍が負ける。その確率が非常に高いのです。カナンの口を封じたり、テッドにソウルイーターを使わせなかったり、そういうことはやろうと思えばやれました。でもそうすると解放軍が負けて主要メンバー皆殺されて帝国の横暴や腐敗は続くというね。どうしようもなかったのです。

 つまり、テッドが捕らわれること、黒竜蘭を手に入れること、ブラックが犠牲になること。これら三つは解放軍が勝つことに密接に絡み合い、必要不可欠だったりする、というのが私の考えです。
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