生命戦維が宇宙へ行きたいなんて思っていると誰が決めた?! 作:柿Pカレー
紅茶を飲み終わった皐月は、徐に立ち上がる。バックからの照明が当たり、女帝や神の如く命令を下す。
「タツ、お前を生徒会会計に任命してやる」
「精々身を粉にして働いて、皐月ちゃんの役に立つのよ」
「うん、僕がんばるよ」
「では、こちらへ」
いつも皐月の傍に控えている老紳士、揃がタツを案内する。
心持ち嬉しそうなのは、今まで会計に関する一切を任せられる人材がなく、この老紳士が一手に引き受けていたからだろうか?
それとも、皐月から引き離すことができたからだろうか?
見送る面々の表情は様々だ。
「皐月様、奴は信用できるんですか?」
「大丈夫よ~。あの泣き虫が皐月ちゃんに逆らうなんて、天地がひっくり返ったってあり得ないんだから~」
「しかし、彼の知り合いの纏流子は皐月様に牙をむいた。彼の存在自体、僕の情報網では閲覧不可となっている。一体どういう人物なんだい?」
「まあ、奴が強いってのは、わかりますよ」
忠臣を自認する蟇郡が疑問を呈し、自身の情報で存在を追えなかった事への興味を犬牟田が抱く。
そんな中、疑問でも興味でもなく、ただ強いと認めた者がいた。
「ほう流石だな、猿投山。わかるか」
「ええ、俺の殺気も笑顔でかわしていましたし、隙を見せたら切りかかってやろうと”見て”ましたが、隙らしい隙はありませんでしたね」
「当然よ、なんたって婚約者候補筆頭なのよ?他の有象無象共にどれだけ狙われていると思ってるの?弱いだけの泣き虫じゃ務まらないわよ」
「それに奴は使える。特に金勘定においては天才といってもいいかもしれん。血は争えんというやつだな」
「血?それは一体どういうことですか?彼は孤児で鬼龍院家に引き取られたことになっていますが?」
「タツ君は本当は宝多財閥の御曹司なのよ。産まれてすぐに難病を患って、万に一つの可能性をかけて病院廻りをしてる時に攫われて、なんでか鬼龍院家に拾われたってわけよ。宝多財閥がタツ君の事を知ったのは皮肉にも婚約者候補のお披露目の時。あの時はすごかったのよね~皐月ちゃん」
「ああ、さすがにあの時は何かの因果を感じたな。タツの方は全く感じなかったようだが」
「そのおかげで末席だったタツ君が筆頭になったよのね~あの時の他の候補者の顔ったらなかったわ~」
それまでは筆頭などおらず、候補同士で牽制し合っていたのだが、ある日末席にいた、気にも留めていなかった者が筆頭に躍り出た。そのせいで、暗殺者に狙われる日々を送っているのだから、タツにとってみれば、因果でも運命でもなく、単なるイジメである。
「ではいずれ皐月様は奴と結婚を?!」
蟇郡が婚約者という言葉に狼狽しながら聞くと、室内の4人から即座に否定された。
「フッ、有り得ん」
「ナイナイ~、苛ちゃんってば面白い冗談~」
「奴が皐月様を見る視線は親愛もしくは家族愛の様なモノしかない、奴自身も皐月様を”お姉ちゃん”と言っていた。恐らく皐月様に本命が見つかるまでの繋ぎの関係」
「今、宝多財閥との関係を強化するのは、鬼龍院財閥にとって悪手になりかねない。あくまで婚約者候補という現在の繋がりが最善。それがわかっていない皐月様じゃない」
皐月は蟇郡を「理解したか?」見つめる。
「はっ短慮なことを申しまして、大変申し訳ありません」
部屋に蟇郡の暑苦しい謝罪が響き渡る。