ちょっとまだ本編には出せていないキャラも出てますがご容赦を
前回のよりちょっと長くなった
バレンタイン
二月十四日に行われる、大事な人に自分の気持ちを伝えるという、人にとってはとても大切な一日だ
まぁそんな日であろうと学校は容赦なくあるわけで
そしてそんな日付のことを確認するでもなく、特に何にもない平日だと思い込んでいた鏡祢アラタは道中の何となく甘い雰囲気に面食らっていた
「…なんか今日あったっけ」
何かあるからこんなに周囲は甘ったるい感じなのだが
コンビニとかそういうのに入れば気づけただろうがそんなところには一つも入らず、アラタは真っ直ぐ学校へと道を歩いた
◇
そんなこんなで学校に到着する
昨日の疲れが残っているのか、下駄箱に到着するや否やあくびをしてしまった
「なんだ、寝不足か」
後ろからの声に寝ぼけ眼を擦りながら振り返る
そこには下駄箱へと歩いてきていたシャットアウラの姿があった
「あー…そんなところだ。珍しく書類仕事が溜まっちゃってさ」
彼女はアラタの隣へ移動すると靴を抜いてそれを両手に持ちながら
「全く。定期的に処分しないからだ。書類というのは直ぐに溜まっていくぞ? 請け負ったら、その日のうちか、せめて明日には終わらすことだな」
「ご忠告痛み入ります。…黒鴉の元リーダーも、似たような経験がおありで?」
「私はなるべくその日のうちに終わらせてたからな。溜まった経験はない」
そんな他愛のない話をしながら廊下を歩いていく
教室の扉に手をかけるとその扉を開けて教室へと入っていく
「お。おはようだぜぇいカガミーン」
教室に入ると開口一番土御門元春が絡んできた
「おはようさん土御門」
「…おはよう」
アラタの横にいたシャットアウラは短くそんな挨拶を返す
隣にいたシャットアウラに気が付いた土御門は軽くグラサンをずらすと
「おー? シャットんと一緒に登校って、なーんか珍しいにゃー」
「おい、いい加減シャットんやめろと」
「やめとけアウラ、土御門は真面目じゃないといつもこんなんだ、慣れてくれ」
「…納得はできないが、まぁ分かった」
「ところでシャットんは、本日はバレンタインだということをご存知で?」
「あ? あぁ、そういえばそんな日だったな、今日は」
土御門にそう問いかけられ、シャットアウラはふむ、と指を顎に乗せる
それと同時に、彼の言葉からその単語が出て、ようやくアラタは今日が何の日か思い出した
「あぁ、そっか。今日バレンタインデーか」
「そうだぜぇいカガミン、ってか、その口ぶりだと今の今まで忘れてたっぽいか?」
「ちょっと前まで風紀委員の書類仕事してたからな、思いつく暇もなかった」
「あー。まぁそりゃあしょうがないにゃー。仕事はおろそかにできねーもんにゃー」
道理でなんか今日の男子連中が妙にピリピリしていると思った
っていうか教室に入ったとき何人からか殺意じみた視線を向けられた気がする
シャットアウラと一緒に教室入っただけなのに
なぜだ
「…で、あそこで突っ伏してる我が友人はなにしてんのさ」
「あ、かみやんのことか? いやー、ちょい前に〝今年も上条さんはチョコなんて無縁なバレンタインですよー〟とかぬかしてたからにゃー。ちょっとみぞおちに一発ブッコんどいただけだぜぇい」
「なるほど、よくやった土御門」
「…いいのかそれ」
シャットアウラの疑問をスルーしつつ、抜け殻のように机に倒れている上条当麻を見やる
あいつは常日頃出会いが欲しいとかなんだか言ってるがあいつ割と日常的に出会ってるから(非日常も絡んでるけど
隠れているお前のファンがこの高校に何人いると思っている
とか思ってるアラタにも隠れファンがいるのではあるが、本人は知る由もない
「―――よしっ」
そんな中、自分の席に座っていた鳴護アリサが唐突にすくっと立ち上がった
近くの友人から彼女に視線が集まり、唐突な行動に周囲の視線も集中する
意を決したような覚悟の目を見せて、アリサはゆっくりと当麻の席の前に向かっていく
そんな彼女の気配を察したのか、当麻はゆっくりと上半身をあげながらアリサへと視線を向けた
「…ど、どうしたアリサ?」
当麻の言葉に僅かにびくりと体を震わせながらも、彼女は真っ直ぐ当麻へ後ろ手に持っていたラップされたハート型のそれを当麻に向かって突き出した
目の前に突き出されたそれを、一瞬当麻は理解できなかったが、すぐに思考が追い付く
これってもしかしなくても俺に渡されたチョコでは!? と
「…お、俺に?」
「うん。当麻くんには色々お世話になったし…その、出来れば、これからもずっと一緒にいたい、なー、とか…ごにゅごにょ…」
後半部分は恥ずかしさのあまりかぼそぼそとか細い声になっており、それらの言葉が当麻に届くことはなかった
とりあえず当麻は差し出されたそれを受け取ると感極まった声で
「あ、ありがとうアリサぁ! もらえるだなんて思ってなかったからすげぇ嬉しいよ!」
「よ、よかった! 一生懸命つくった甲斐あったよ!」
そのまま仲睦まじいやり取りを見せる当麻とアリサ
ここが伽藍の堂とか、学生寮とかだったら安全だったろう
だがしかしここは学校、その教室の一室
そしてここには嫉妬に狂う男生徒たちもいる
結果どうなる?
「―――なんでいっつもあいつばっかり…」
「不幸だなんだといってるくせに…」
「今回ばかりは修羅と化すやで…」
『上条ぉぉぉぉぉッ!!』
いよいよ我慢できなくなってチョコ暴徒と化した一部のクラスの男子陣が当麻に向かって進軍し始める
当麻は「いぃ!?」とその殺気を全身に受けてすかさずアリサを巻き込まないために逃走を選択した
「ちょ、ちょっとみなさまがた!? どうして俺を狙うの!?」
「うるせー! 問答無用だコノヤロー!」
「いっつもかみやんばっかり美味しい思いはさせへんっちゅうことやーっ!!」
「意味わかんねぇよ!? ―――だぁもう不幸だぁぁぁぁぁ!!!」
そんないつものフレーズと一緒に当麻は廊下を爆走していく
バレンタインであろうとなかろうとやっぱり当麻は不幸だった
「だ、大丈夫かな、当麻くん…」
「大丈夫だって。アリサだって知ってるだろう? アイツはこういうのに慣れてるから」
「お前、たまに無慈悲になるな」
あたふたしているアリサの横に立ち走っていく友の背中を見ながらそんなことを呟く
そんなアラタを見て、シャットアウラはぼそりと呟いた
まぁ本気で危なくなったら助けるし、問題はないだろう
「そういや土御門はアレに参加しないのか?」
「んにゃ? 嫉妬なんて、モテない男のすることぜよ」
「あーそういえば貰える宛お前あるもんな。なぁシスコン軍曹」
「なっはっは。今日ばかりはそのあだ名も受け入れますたい」
彼には土御門舞夏という妹がいる
妹といっても義理の妹であるのだが、なんか一線超えてる疑惑があるのである
っていうか多分超えてるとアラタは勝手に思ってる
と、不意に土御門の携帯が鳴った
彼は懐から携帯を取ると表情されているであろう名前を見てにんまりと笑みを浮かべ
「ふっ、噂をすればなんとやら。愛しの舞夏からの電話がきたぜぇい」
そのまま土御門はなっはっはとか変な笑いと一緒に携帯片手に教室から出て行ってしまった
「そうだ、シャットアウラちゃん、アラタくんにはあげたの?」
唐突に呟かれた言葉にぶっほぁ、とシャットアウラが噴出した
突然の言葉にアラタは疑問符を浮かべながらも、シャットアウラが口元を吹きながら詰め寄る
「おい、いきなり何言うんだ!?」
「あ、まだあげてないんだ? ふふっ、アラタくんにも見せたかったなぁ、昨日の楽しそうにチョコ作ってるシャットアウラちゃ―――」
「やめろぉぉぉ!? 恨んでいるのか私を!?」
なんかすぐ近くでシャットアウラとアリサが小声で何かを言い合っている
言い合うというよりはなんか笑みを浮かべて何かを言うアリサにシャットアウラが抗議している感じだ
やがて意を決したかのように不意にシャットアウラがこちらに振り向いてきた
その後ろでアリサが頑張れって小さく応援しているなか、無造作にカバンに手を突っ込むとそこから四角い箱のようなものを取り出す
リボンがラッピングされたかわいらしいものだ
「…こういうのはいささか初めてだ。美味しいという保証はない。…それでも」
言いながら彼女は両手でその箱をきゅ、と握ると僅かに頬を染めながらこっちを伺うように上目遣いでアラタの視線を見据えながら、その両手に持った箱をこちらに差し出して
「一応、私なりに心を込めた。…その、受け取ってくれる、か?」
その言葉を紡ぐのに、どれだけ彼女が勇気を振り絞ったか
それは僅かに、本当にわずかに震えている彼女の指から伝わった
以前は敵同士でもあった彼女が、ここまで素直に自分の言葉を紡いだのだ
なら、こっちもそれに応えなければならない
アラタは差し出されたその箱を受け取って
「…ありがとう、これからもよろしく頼むぜ、アウラ」
短く、それでいて深い感謝を込め、アラタはそうシャットアウラに返答する
それに対して、シャットアウラは笑みを作ることでそれに答えた
いつか見た、本当にうれしそうな、自然な微笑みで
「…しかし、ほかの男子陣がいなくて助かったな」
「そればっかりは当麻に感謝だなぁ…」
彼は犠牲になったのだ
バレンタインという名の、犠牲にな
◇◇◇
「さぁ遼真、これを超受け取ってください」
現在いる場所は鏑木遼真が住んでいるマンションである
そこに唐突に我が最愛なる恋人が扉を勢いよく開けて来訪してきた
別にこれ自体はよくあることだから大して驚きはしないのだけれど、今日はなんだかいつもと格好が違う
なんというか、いつもと同じっぽいのではあるが、おしゃれなのだ
そんでもって彼女はいそいそと靴を脱ぎ捨てると真っ直ぐ遼真の元へと向かい、ハート型の箱を渡してきた
「…バレンタインの?」
「それ以外何があるんですか。相変わらず超鈍感ですね」
直球で好意をぶつけられて、遼真は少し照れ臭い気持ちになる
思えばどうして最愛とこんな関係になったんだっけ
元々最初は雑用としてアイテムに加入してたんだ
けど元々そういった雑務はそこそこ好きだったのであまり苦にはならず、時間が経つにつれてメンバーとも打ち解けてきて、今では浜面仕上という新たな雑用係とも呼べるメンバーも増えた
最も根っからに染み付いた雑用根性は消えず、たまに浜面を手伝ったりしてるのだが
話が逸れた
で、ある時から絹旗最愛のアプローチが強くなってきたのだ
そして、とある任務が終わったとき、たまたま二人っきりになって、映画でも見ようってなって、いい雰囲気になり、その時はもう互いに気を許していたのも相まって―――そのまま一線を越えてしまった
「遼真? どうしたんですか? 考え事ですか? 超可愛い恋人を差し置いて」
「あぁ、ごめんごめん」
考え事していた思考を振り払い、遼真は箱を受け取った
開けていい? と目くばせで問いかけるとこくりと彼女が頷いたので箱を包んでいた袋を破っていく
ぱかり、と箱を開けると市販ではあるが、高級そうなチョコレートと、映画のチケットが二枚
「ふふん、では遼真もそれを確認したことだし、映画に行きましょう、超外デートです!」
ふっふーん、という具合に胸を張ってドヤ顔する恋人に、遼真は笑みを浮かべて返す
とりあえずチョコレートはあとで食べるとして、まずは映画に付き合ってあげよう
「いいよ。映画の後はどうする?」
「それはその時になったら考えましょう」
そうと決まれば善は急げだ
遼真はとりあえず壁にかけてある上着を取ってそれを羽織ると最愛と一緒に部屋を後にしようとする
そんな時、不意に右の二の腕がきゅ、っと掴まれた
「…最愛?」
掴んできたのは誰であろう最愛
彼女は少し頬を染めながら、視線をこちらへ向けて
「えっと…ですね? できれば…今日はずっと…超一緒にいたい、です…」
ちらりとこちらを伺うように遼真の方を見てくる最愛
一瞬思考が停止しかけた
ウチの彼女すごい可愛いんですけど
ロリコンだとか言われてもいいや、俺は最愛が好きなのだと改めて認識する
「…そんな心配しなくてもいいよ。今日だけじゃなくて―――ずっと一緒だから」
「遼真…だから超大好きです、愛してますよ、遼真」
◇◇◇
「はい、翔。バレンタインのチョコレートだよ」
伽藍の堂にて
中央のソファにてくつろいでいたら不意にアリステラが自分に向けてラッピングされた箱を差し出してきた
そういえば今日はバレンタインだということを忘れていた
学校も終わり、夕方は所長―――蒼崎橙子からのお仕事をこなし終わって休んでいた時、アリステラが思い出したように渡してきたのだ
「あ、ありがとうアリス。…っていうか、貰うまでバレンタインのこと忘れてたよ」
別に翔もバレンタインのことを完全に忘れていたわけではない
しかしアラタのクラスで友人の上条当麻がクラスメイトに襲撃される様を見て、意図的に忘れるようにしていたのだ
「本当は、帰るときに校門で渡したかったんだけどね、その…周りがちょっと怖かったっていうか…」
どうやらその光景はアリスも見えていたらしく、変な笑いを浮かべている
遠い目をしていた彼女の顔は、その襲撃を思い出していたのか、冷や汗も流れていた
「いやいや、私の目の前でやってくれるな、君たちは」
そんな光景をニヤニヤと机の上で見守っている一人の女性
メガネを外し、曰く冷酷で男性的、とも呼べる性格にスイッチしている女性の名前は蒼崎橙子
彼女はコーヒー片手に初々しい(?)翔とアリスのやり取りを眺めていた
「か、からかわないでくださいよ橙子さん」
「からかってなどいないさ。市販のチョコを溶かして、そこにナッツとかを合わせた程度の簡素なものだが、込められた気持ちは本物だ。正直、私は嬉しく思ってるんだよ。アラタが連れてきたあの女の子が、今では好いた異性に素直に思いをぶつけているっていうこの目の前の行動にね」
「も、もー! 橙子さん! そんな冷静に分析しないでくださいよー! 恥ずかしいじゃないですかー!」
両腕をぶんぶん振りながら橙子に詰め寄るアリステラ
そんな彼女をはははと笑いながら撫でくり回す橙子に、思わず翔は微笑んだ
思えば初めて彼女と会ったときは、酷いものだった
彼女をあの施設から救い出すことができて、本当に良かったと思っている
「そ、そういえば、橙子さんは誰かにチョコ渡さないんですか?」
「うん? まぁ私も、市販のではあるが、翔にあげるやつと、アラタと幹也の分だけだがな」
「えー、橙子さん手作りとかはしないんです?」
「悪いがそんな気にはなれんな。市販でもそこそこいいのを買ったし、あの二人にはほかに貰える宛もあるからな」
言われてみれば確かにと翔は思う
あんまり会ったことはないけれど、確か幹也という人は結婚していたと聞いていたし、アラタは風紀委員の方で同僚の女の子からそこそこ貰えるはずだろう
…ちょっとうらやましいと思ってる自分がいた
「さて。そろそろ出るぞ、用意はいいか? 二人とも」
「っと、もうそんな時間ですか。翔?」
「問題ないです、チョコは戻ってから食べます」
「そうしてくれ。それじゃあ、行くとしよう」
そう言ってカバンをもって蒼崎橙子は扉の方へ歩いていき、ドアノブを捻って扉を開けて外へと歩く
そんな彼女の後ろをアリステラと翔が追いかけるように歩き出す
橙子に見えないように、こっそりと、その手を繋ぎながら
◇◇◇
「はいアラタ、バレンタインのチョコレート」
一七七支部に顔を出すと、待っていましたと言わんばかりにずい、と固法がラッピングされた四角い箱を突き出してきた
そんな固法に追従するかのように、佐天や初春、黒子と言った女性陣もアラタの元へと歩み寄り、それぞれ手に持っていたチョコを渡してくる
「はい、私たちからもバレンタインのチョコですよ!」
「しっかり味わってくださいね! 手作りですから!」
「日頃の感謝も、わたくしたちになりに込めてますので、どうかお受け取りくださいな」
そんな一言コメントと共に、三人からもチョコを受け取る
なんだか一気にチョコが増えた
あの後学校でシャットアウラから貰った後、吹寄から一つ、ひよりからも一つ、更には先輩である雲川芹亜からも当麻に渡してくれというお願いついでに自分も一個貰った
そして更に学校から出たときに出待ちしていた食蜂操祈からも一つ貰っている
支部に来て一気に貰えてしまったな、家に戻ってからゆっくり食べよ、と呑気に考えながら受け取ったチョコをカバンに壊れないようにそっと入れながら
「とにかくありがとう、家に戻ってゆっくり食べるよ」
「味の感想も後で聞かせてくださいね、アラタさんっ」
「ホントはカカオから作るっていう案もあったんですけどね! さすがに時間がかかるってことで、白井さんに止められました…」
がっくりと項垂れる佐天を尻目に黒子がコーヒーを入れながら
「当たり前じゃありませんか。豆から作るのに何時間かかると思ってるんです?」
「えー? でもでも、一度やってみたくありません? 豆をゴリゴリすり鉢で潰すの楽しそーだなって思って」
「じゃあ、次回のバレンタインは、涙子のマジもんの手作りチョコが食えるって感じかな?」
「あ! いいですね、みんなで来年作りましょう!」
めっさ佐天がヒートアップしてる
それを見て初春が苦笑いし、黒子がはぁ、とため息をついた
固法もまたふふ、と小さく苦笑いしながらムサシノ牛乳を一口飲む
「…あれ、そういえば黒子、美琴はいないのか?」
「お姉様なら、今日は用事があるとのことなので来れるかはわからないって仰ってましたわ」
そもそも気軽に風紀委員の支部に一般生徒が来ていいものでもないのだけれども
まぁそこんところはゆるゆるなので大した問題ではない
それにしても用事か、それなら仕方がない
浮かれた気分も一度ここでリセットして、アラタは改めて目の前の仕事へと取り掛かった
◇◇◇
「どうぞ、士さん。バレンタインの義理チョコです」
「…どうしたんだ、藪から棒に」
とある病院の宛がわれた士の自室にて
特にやることもなかったし復習もかねて教本を読み返していたら浅上藤乃がチョコを片手に自室に入ってきた
「バレンタインって言ったじゃありませんか。本当は簡単なものを手作りして皆さんにお配りしたかったのですが、時間がなかったので市販のチョコを用意して配ってるんです。ですから、士さんも、ね?」
「なるほど。…ま、貰えるのなら貰っておくか」
タダでもらえるならそれに越したことはない
ちょうど小腹も空いていたことだし、のんびりかじりながら復習の続きをするとしよう
受け取りながら、そういえばと思い出したことを聞いてみる
「そういえば、頻繁に入院しに来るアイツらにも配る予定なのか?」
「アイツら? …あぁ、上条くんとアラタくんのことかな?」
頻繁に、という士の言葉は割と間違ってないと思っている
特に上条当麻の方ははっきり言って来すぎと士ですら思ったほどだ
退院してすぐそのあとにまた入院しに来たときはさすがに変な笑いが出た
「えぇ、アラタくんにはお仕事終わったら渡しに行く予定だし、多分アラタくんの近くに当麻くんもいると思うから、彼にも渡す予定ですよ? …それがどうしたんです?」
「あぁ、いや。何となく気になったから聞いてみただけだ」
士に渡し終わって士の部屋を後にする藤乃の後ろ姿を眺めながら、士は頂いたチョコの封を開けて一口かじる
どうやらビターチョコだったらしく、確かな甘みとほのかな苦みが口腔に広がっていく
…しかし、こういうチョコを食べると、牛乳が飲みたくなる
とりあえず舌で舐めて溶かしながらのんびり頂くとしよう
「…それにしても、案外アイツ等もモテるんだな」
まぁモテてるかどうか実際は知らんけども
パキン、と貰ったチョコの小気味よい音と共に、士は貰ったチョコに舌鼓を打ちながら再度教本へと視線を戻すのだった
◇◇◇
「おっすー。アーラタッ」
一七七支部での仕事最中、夕食を買いに外に出たら御坂美琴と遭遇した
どうやら用事は終わったのか、いつものカバンを手にした彼女は手を振りながらアラタの方へと歩み寄る
「美琴。用事は終わったのか?」
「えぇ。お陰様でね。アンタは?」
「俺は夕飯買いに出ただけだよ。まだ仕事残ってるからさ」
「そうなんだ?」
そこから他愛もない会話を美琴と交わしていく
コンビニで出た新発売のゲコ太の食玩だったり、いつぞやのガチャガチャでまた新しいゲコ太のが登場したり、コンビニの菓子で美味しいのはやっぱりあれ等エトセトラ
なんでもない時間ではあったが、普通に流れるこの時間が、やっぱり好きだと実感する
やがて夕飯のパンも買い終わり、支部へと真っ直ぐ帰るだけになったが、ふと、美琴がアラタの前に歩み出て、くるりとこちらに視線を向けた
「そだ。多分支部に行っちゃうと渡すタイミングなくなると思うから…今渡しておくね」
彼女はカバンの中にいそいそと手を入れると何やらを探すようにガサガサと手を動かした後、そこから四角い、正方形のラッピングされた箱を取り出した
中央に結ばれたリボンが、風に吹かれて少しだけ揺れる
「はい、ハッピーバレンタイン。…一応手作りだかんね、これ」
少しだけ頬を染めてこちらに向けてくる美琴の顔に、少しだけ目を奪われる
世間では学園都市最強の超能力者だとか、常盤台の電撃姫だとかなんとか言われているけど、やっぱりアラタにはそうは見えないのだ
彼女もまた、どこにでもいるごく普通の女の子であると、アラタは改めて実感する
アラタは歩み寄ってその箱を受け取ると
「…ありがとう、家でゆっくり頂くよ」
「えぇ、しっかり味わって食べなさい。…まぁアンタのことだから、他にも何個か貰ってるかもしれないけど…」
美琴は一度後ろを向いた後、後ろ手に自分の手を組んでから、ちらりとこちらを伺うみたいに視線を向けて
「い、一応、気持ちと心は、負けてないつもりだから」
彼女の頬は珍しく真っ赤になっているようだった
そんな美琴にアラタは歩み寄りながら軽く頭を撫でながら先を歩くと
「ま、これからも頼りにしてるぜ、美琴」
「―――えぇ、この美琴さんに任せなさいっ」
彼女は朗らかな笑顔を作り、前を歩くアラタの横へと歩いていった
その時、不意に美琴の方から手を握られる
少しだけアラタはびくりと驚いたが、ゆっくりとその手を握り返す
繋がった手の温もりは、いつまでも、暖かった―――
一組だけR18になりそうな展開のやつらがいますが、需要なさそうなので多分R18は書きません
需要があれば書くかもしれないけど期待しないでね
・シャットアウラと鳴護アリサ
何時になるかわかりませんが、一応あの劇場版ももっかい書こうと思ってます
現在のと昔のじゃ出てるキャラ違うしね