全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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統合したら18000くらいの文字数になってしまったでござる
また短くなるかもだから足しちゃえって浅はかな考えで行った結果がこれだよ!

特に変わってないしな! ちょっとのセリフとキャラいじっただけだし

一応予定では一期終えた後今度は心機一転して超電磁砲の二期を書いてみたいと思ってます

…けど期待しないでね(妥協


#11 AIMバースト

一七七支部にてキーボードを叩く音が単調に響く

先ほどまで映像を見てはいたのだが唐突に砂嵐に見舞われて一切の情報が入ってこない

 

「だめですわ! どのカメラも死んでしまっていますの…!」

 

どう操作しても画面の中の映像が砂嵐のまま変化がなく、なら電話ならどうかとも思ったがこちらもつながらない

暫く考えてそして黒子は徐に立ちあがり扉へ向かって歩き始めた

 

「待ちなさい」

 

が、何かを察したのか固法にその腕を掴まれた

 

「お姉様とお兄様を放ってはおけません!!」

「今のあなたに何が出来るっていうの!」

 

言われた時黒子は苦い表情をした

黒子は幻想御手(レベルアッパー)使用者を捕縛したときに負った怪我や、その連日での疲労が抜けきっておらず、まともに戦う事は難しい状態なのだ

 

「二人を信じなさい。あの二人ならきっと…!」

 

固法に諭され黒子は顔を歪ませる

こんな時に何にも力になれない自分に腹が立つ

そして同様に固法も心配なのだ

なんでもっとうまく立ち回ることが出来なかったのだろう、と自分を責めたくもなる

 

そんな時、唐突に扉が開かれた

 

「カ・ガーミンっ! 日頃頑張っているお前に親友の俺が励ましに―――あれ」

「…開けて早々迷惑をかけるなツルギ」

 

重苦しい空気を破壊するように現れたのは神代ツルギと天道総司の二人だった

天道とツルギは何やらコンビニ袋を携えており中には食材が入っている

差し入れでなにか買ってきてくれたのだろうか

 

「…貴方たち、今お仕事中なのよ?」

「だからそんなお前たちに晩御飯をだな…。む? スィ・ライン、なぜ涙目なのだ」

 

ちなみにスィ・ラインとは黒子の事である

 

「えっ、あ、のっ」

「カ・ガーミンもいないな。遠出でもしてるのか?」

 

取りつく間もなくツルギはテーブルにそのポリ袋を置いた

そしてふとテーブルの上にあったパソコンを見てしまった

 

「む? …天道」

「どうした」

 

ツルギに促され天道も同様にコンビニ袋を置き、その画面を見た

なんてことのない砂嵐

そしてここにはいないアラタ

理由はわからないがこの二人は何かをモニターしていたという事になる

そして涙目の黒子

 

「…固法」

「…何?」

 

天道は固法へと向き直る

向けられた固法は半ば苦笑いを浮かべている

これから何か聞かれるか、もうわかっているようだ

しかしあえて天道は問いかける

 

「何があった」

「…はぁ」

 

半ばあきらめた様子で固法は椅子へと背中を預ける

…なんだってこう鋭いのだこいつらは

 

 

「それは本当かクォノーリ!?」

 

事情のあらましを聞いたツルギが椅子から立ち上がる

同様に天道も椅子から立ち上がった

 

「おそらく事実だろう。…あいつは、一般人である俺たちをできるだけ頼らないようにしているからな」

「…本当は白井さんを行かせてあげたいけれど、彼女は怪我が治ってなくて…あんまり無茶させられないのよ…」

 

言いながら国法はちらりと黒子に視線を向ける

向けられた黒子はじっと下を向いたままでスカートの裾を握りしめている

どことなく天道はツルギに視線をやる

同じようにツルギも天道の方を向いていた

…考えている事は同じようだ

二人はそのまま椅子から離れドアへと移動していく

 

「ちょっと!? どこに行くの!」

「わかってるだろう。友人を手伝いに行くんだ」

「先に断わっておくが止めても無駄だぞクォノーリ」

 

念を押された国法はむぅ、とその場で押し黙った

それになんとなくではあるがそう言われるだろうと思っていた

自分だって美琴とアラタは心配なのだ

やがて固法はふぅ、と一つため息をつき

 

「…お願いするわ、二人とも」

「わたくしからもっ! どうか、お姉様とお兄様を…!」

 

二人からの言葉を受けてツルギと天道は笑みを浮かべこう返した

 

「任せろ。俺たちは天の道を往き総てを司る男と」

「神に代わって剣を振るう男だ」

 

 

一方で美琴たち

今現在目の前で起こっていることに正直ついていけなかった

 

「胎児…?」

「初めて見るぞ…何がどうなってんだ…」

 

体質変化(メタモルフォーゼ)の亜種かなんかかもしれない

しかしあんなの書庫(バンク)にない、というかあってたまるか

仮にあったとしても、あんな形ではないはずだ…!

 

「■■■■■■――――――ッ!!」

 

言葉にならない奇声をその胎児はまたあげる

その余波により、周囲の瓦礫やら何やらが吹き飛んできた

 

「危ない!」

 

アラタは美琴の手を引いて大き目な瓦礫に身を隠しその衝撃波を何とかしてやり過ごす

少ししてその衝撃波が終わったとき、タイミングを計った美琴が雷を掌に形作る

 

「こんっのぉ!」

 

そして一直線に胎児に向かって雷を撃ち出した

その雷は確かに直撃した

だが直撃した破損個所が内側から再生されていき、どういう訳だかその箇所から手が生えた

 

「うえ!?」

「! お、おい美琴、よく見ろ!」

 

アラタの指摘に美琴は注意深くその胎児を見た

よく見ると確かにその胎児は最初に見た時より一回り大きくなっている

…というか絶賛増大中だ

そしてふと、ぎょろりと赤い目が三人を捉えた

その瞬間、胎児の周囲に氷塊が生み出され、こちらに向かって放たれて―――

 

刹那、目の前を横切る黒い物体

それは自分を盾にするように美琴とアラタの前にとまり、放たれた氷塊を防ぎきる

見た目なら完全にクワガタ虫そのものだ

唐突に現れたそれに美琴とアラタは驚きつつ

 

「え!?」

「―――ご、ゴウラム!?」

<早く距離を取って>

 

クワガタ―――ゴウラムに言われるがまま一度距離を取るべく行動をとった

その時だ

 

「御坂さんっ!」

「アラタさんっ!」

 

ふと自分たちを呼ぶ声が聞こえた

その方向へ視線を向けると意識を取り戻した佐天と初春の姿があった

 

「二人とも!?」

「馬鹿、なんでここにっ…! ゴウラム! 美琴!」

 

その時の動きは早かった

アラタは美琴に視線を送る

彼女は一度頷くと一旦振り向き、追いかけてくる氷塊に向かって雷を放った

その後でゴウラムと共にアラタが駆けつけ、二人をその余波から防ぐ

 

「無事か、二人とも」

 

アラタが問いかけると佐天と初春の二人は大きく頷いた

どうやら特に目立った外傷はないみたいだ

 

「…油断しないで! アイツもこっちに追って…来てない…?」

 

美琴の声に振り向いて胎児の動きを確認してみればどういう事か胎児はこちらを追っかけてはきてなかった

それどころか、まるで何かにすがろうとしている赤子のように生まれた両手を動かしている

それはどことなく、悪夢にうなされているようにも見えた

 

そんな思考の最中にも胎児はどんどん大きくなっていく

いつしか胎児は一回りも二回りも大きくなっており橋の上にその姿を現した

そして橋の上から聞こえてくる銃声

しかしその銃撃に意味はなくむしろ撃たれているたんびにまた大きさを増しているようにも見える

 

 

「天道!」

 

バイクで走っていた二人組

固法からだいぶアバウトな場所しか聞いていなかったが、遠くから視認したその胎児のようなもので確信が持てた

 

「あぁ! 飛ばすぞ!」

 

天道はそう言葉を飛ばし、さらにエンジンをフルスロットルさせる

そんな天道を追うようにツルギも速度を上げた

 

 

「ふ、ははは…」

 

警備員が胎児と銃撃戦を繰り広げている最中、木山春生は自嘲気味に笑みを浮かべた

 

「…すごいな」

 

思わずそんな感想を呟いていた

まさか自分からあんな化け物が生まれ出でるとは思わなんだ

学会にでも発表すれば表彰ものだ

…もはやあれは自分の手に負えるものではない

それは同時に、あの子たちを助ける術が失われたという事だ

 

「…おしまいだな」

 

これまでやってきたことはすべて泡と消えた

もう二度とあの子たちを目覚めさせてあげることは叶わなく―――

 

「諦めないでくださいっ!」

 

絶望しかけていた木山に一人の女の子の声が聞こえた

木山がその声の方へ首を向けるとそこには初春飾利の姿があった

いや、初春だけではない

佐天も、美琴も、アラタも、皆いた

彼らの眼には、まだ色があった

 

 

「AIM拡散力場の…」

 

美琴の聞き返しに木山は頷いた

 

「恐らくは集合体だろう。…仮に、AIMバーストとでも名付けておこうか」

「…AIMバースト…」

幻想御手(レベルアッパー)のネットワークによって束ねられた、一万人のAIM拡散力場…それらが触媒となって生み出された潜在意識の怪物…」

「…つまり、アイツは一万人の思念の塊…みたいなものなのか?」

 

アラタの呟きに木山は頷く

 

「まぁ、そういうことだ…」

 

そして徐に、今も叫びをあげている胎児―――AIMバーストを仰ぎ見た

 

幻想御手(レベルアッパー)の使用者となった人たちは、夢に破れた人たちが大半だろう

身体検査で下された結果を見て、悟ってしまうのだ

能力者なんてものは、夢でしかなかったんだと

どんなに頑張っても、この都市(まち)では〝才能〟という壁が邪魔をしてくる

才能ある人間は才能ない人間を食い物にし、己の欲求を満たすためだけに虐げられる

何時しかそれが日常となってしまうほどに

 

だから縋るしかできなかった

間違っているとわかっていても、そういう力に、縋るしかなかった

 

…あのAIMバーストはいわば被害者たちの心の叫び

憧れ、妬み、嫉み、夢、願い…

彼らの諦めきれない渇望の類が具現化したもの

そう思えると、あの胎児の姿をしたものがかわいそうに感じた

 

「…あれはどうすれば止められる?」

 

それぞれの決意が込められた瞳が木山に向けられる

その言葉を発したのはアラタだ

 

「…それを私に聞くのかい? 今更何を言っても信じるとは―――」

「手錠」

 

木山の言葉を遮って佐天が木山の前に手を見せた

 

「…私と初春の手錠、外してくれたの、木山さんでしょう?」

「…気まぐれだよ。…まさかそんなもので私を信じようなんて…」

「そうです!」

 

今度は元気のいい初春の声が木山の言葉を遮った

そして真っ直ぐ木山の眼を見て

 

「…子供たちを救うのに、木山先生が嘘つくはずないですもん」

 

その初春の顔を

 

「信じます! 木山先生の事」

 

 

―――せんせいの事信じてるもんっ―――

 

 

今眠っている枝先の純真な笑顔と重なった

 

「…聞いてたのか? 二人とも」

 

アラタの問いに佐天と初春は苦笑いと共に首を縦に動かした

 

「…全く」

 

木山の呟きにみんなが顔を向ける

その視線を受けながら木山は口を動かした

 

「…AIMバーストは幻想御手(レベルアッパー)の生み出した怪物…ネットワークを破壊できれば、止められるかもしれない」

 

「…! 初春、あれ!」

「はい!」

 

佐天に促され初春は自分のポケットをまさぐる

そして取り出された掌の上にあったのは一枚のチップ

 

幻想御手(レベルアッパー)の治療プログラム!」

 

「…試す価値はあるわね」

 

美琴の言葉にみんなが頷く

―――希望が見えてきた

 

そして美琴とアラタはちらり、と何気なく橋の上を見る

視界の先に見たのはAIMバーストに向かって銃撃を繰り返してる姿だ

 

 

銃撃をしている最中、聞き覚えのあるサイレンの音が黄泉川の耳に届く

音の方へ向けるとそこにはガードチェイサ―から降りてこちらに走ってくるG3の姿が見えた

 

「馬鹿! 遅いじゃんよ!!」

「すみませんっ! なるべく急いできたつもりなんですが…!」

 

言いながらG3はスコーピオンを構え、うごめく触手に向かって発砲する

しかし効果的な感じではなさそうだ

 

「くっ…!」

 

これはだいぶ手間がかかりそうだ

内心眞人はそう呟いた

そんなG3の耳に聞きなれた声が耳に届いてくる

 

「来たか、立花!」

「間に合ってなによりだ」

 

現場隊長の矢車と影山だ

状況が状況だけに、二人共それぞれキックホッパー、パンチホッパーへと姿を変えている

二人もそれぞれ拳と足でこちらに向かってくる触手郡を迎え撃っている最中だ

 

「隊長、影山さんも…ご無事なようで!」

 

心を奮い立たせながらG3はスコーピオンを握りなおす

 

 

「あいつは俺と美琴で引き受ける。二人はそれを持って警備員(アンチスキル)の所へ」

 

アラタに促され初春は頷く

そして初春は佐天の方を向き、また頷きあう

美琴とアラタに視線を向けた

 

向けられた二人も同様に大きく頷いた

少し時間が過ぎた後、三人と二人はそれぞれ反対方向へと駆け出していた

 

その背中を追いながら木山は苦笑いを浮かべ

 

「…本当に、根拠もないのに…」

 

かくいう木山も、信じていないわけではない

彼らなら、或いは

 

◇◇◇

 

「っくそ!! 減らない…!」

 

あれから何度もスコーピオンを放ってはいるが触手が減る気配はない

というか増えてきているように感じられる

 

「鉄装さんっ! 黄泉川さんを連れて少し後ろにっ!」

「わ、わかりましたっ!」

 

自分の後ろにいる鉄装にそう言ってG3はさらに前に出る

 

「流石に、堪えるな…!」

「でも、まだまだ…!」

 

肩で大きく息をするキックホッパーとパンチホッパーを尻目にG3は考える

思えば二人はだいぶ前から戦闘を繰り返していたのだ

当然、疲労も蓄積されている

 

「…どうする…!」

 

G3は考える

そんな時―――

 

「でやぁぁぁっ!」

 

そんな叫びと共に自分の前に雷が迸った

眼前の触手が薙ぎ払われ、G3の隣にスタリ、と着地する一人の女の子

 

「アラタ!」

「あぁ!」

 

少し遅れて彼女の隣に一人の男が空中から誰かが飛び降りてきた

片方は女の子だ、そしてもう片方は―――

 

「鏡祢くん!?」

「! その声は、立花さん…!?」

 

思わぬ来客に驚いたがそうも言っていられない

ここに一般人が来ては

 

「ようやく見つけたぞカ・ガーミンっ!」

 

しかし予想とは裏腹に逆にどんどんと人が増えてくる

…一体どうなっているんだ

 

「少々探すのに手間取ったぞ鏡祢」

「天道…ツルギまで!? なんで…」

「水臭いぞカ・ガーミン。友情とは富にも勝る最高の宝だ。手伝わない訳にはいくまい」

「…ったく。…ありがとよ」

 

そう言ってアラタは笑顔を見せる

…いやそうではなくて

 

「アラタ」

 

さらにもう一声

声の方に視線を向けると橙色のコートを着込んだ赤いポニーテールの女性

その後ろには男女二人組もいる

 

「と、橙子!? 来てたのか!?」

「って、っていうかなんでここにいるんだよ!? アラタ!」

「うぇ!? あ、いや、その…」

 

右京翔に指摘されしどろもどろとしているアラタ

そんな彼らに少しだけ苛立ちが募ったG3は多少声を荒らげて

 

「何をしてるんですか! ここは君たちのような子供が来ていい所では―――」

「いや、いいんだ」

 

言葉の途中でキックホッパーに止められた

意味が分からずにG3はキックホッパーを見る

彼はずい、と橙子の前に出て

 

「橙子さん。あの胎児が向かっている先の施設、なんだと思います」

 

不意に投げかけられた問いに考えながらその場のメンツは胎児の先にある施設を見た

そこはいかにもな工場施設

少し考えた橙子は自分の答えを口にする

 

「原子力実験炉、か」

 

その呟きを聞いてゾクリとした

間に合わなかった場合の事など考えたくもない

これは、本当になにがなんでも止めなくては―――

 

「ちょ、何やってるのあの子!」

 

唐突に鉄装の叫び声が場を支配する

向けられた視線の先には階段を駆けあがる佐天と初春の姿があった

 

「…逃げ遅れたのか!?」

「それは違います」

 

黄泉川の言葉にアラタが答えた

え? と向けられた疑念に美琴が付け加える

 

「矢車さん、お願いがあるんです」

 

そう言って事情を説明する

キックホッパーはそれを聞いて頷いて快諾してくれた

 

「…仕方ねぇ。行くか、天道、ツルギ」

 

アラタがそう言うと言われた三人はそれぞれ笑みを浮かべ頷いてくれる

 

「…何を…?」

「ってか、なんで二人もこんなところに…」

 

G3―――立花眞人アリステラと右京の視線はつらい

特に右京の視線がすごく辛いが…そんなことを言ってはいられない

時は一刻を争うのだ、渋っては手遅れになる

 

<STANDBY>

 

ボゴンと地面から這い出るかのようにサソードゼクターが現れ、ツルギの手へと飛び、それを受け止める

同様に空から飛翔してくるカブトゼクターを天道はキャッチし、そしてアラタも腰に手を翳し、アークルを顕現させた

その後右手を左斜め上に、左手をアークルの右側へと移動させ、それを開くように移動させ、そして各々に叫んだ

 

『変身ッ!!』

 

叫びと共にツルギはヤイバ―にサソードゼクターをセットし、ゼクターニードルを押し込み、マスクドの過程をキャンセルする

同じようにベルトにセットした天道もカブトゼクターのホーンを倒し、マスクドの過程を省略して変身する

 

<Change Scorpion>

<Change Beetle>

 

青い複眼と緑の複眼が点滅し、カブトは天を指し、サソードは剣を構える

 

そしてアークルのスイッチを押したアラタも同様に姿を変える

赤い複眼、二本の角

今、G3の前に広がっているのはすべて都市伝説で噂となっていた仮面ライダーたちの姿

 

「…鏡祢くんが―――」

「え、えぇ!?」

 

驚くG3と右京をスルーしつつ美琴はクウガの隣に並び立つ

一度向けられた視線に美琴は小さい笑顔で返し、再び前を前を見る

仮面ライダーたちの視線の先にAIMバースト

その思念(おもい)を止められるのは、自分たちだけだ

 

「翔。お前も早く変身して合流しないか。時は一刻を争うんだぞ」

「え!? あ、はい! 行こう、アリス!」

「う、うん! 橙子さん、私の体を頼みます!」

 

未だ状況を理解できていないが、右京とアリスは橙子に促されるままにダブルドライバーを巻きつけ、メモリをセットしそれを開く

 

<CYCLONE JOKER>

 

少し遅れてサイクロンジョーカーとなったダブルもクウガの横に並んだ

ちらりとクウガを横目に見つつ

 

「…説明は後で聞くぜ、アラタ」

「わかってるよ。さて―――それじゃ行こう、皆」

 

クウガの声に応えるかの如く、彼らは一斉に駆け出した

昏睡している人たちに、未来(あした)を届けるために

 

◇◇◇

 

地上へと飛び出した一行はまず美琴が砂鉄で作り出した剣で先制する

放たれた砂鉄の剣はAIMバーストの触手を容易く切り裂いた、がやはり効果はなくすぐに再生師元に戻ってしまう

しかしそれでもこちらに気を引くことには成功したようだ

 

「アンタの相手は私らよ―――て、うわ!?」

 

言葉など通じんと言った様子でAIMバーストは美琴の方へと波動のような一撃を放つ

慌てた様子で美琴を含めたメンバーは散り散りに回避行動を取った

 

「っくっそ! こっちの話は聞かない感じか!」

「聞いてくれたら幸運だがな。…む、見ろカ・ガーミン!」

 

サソードに促されクウガは彼が指差した一点を見た

視界に入ってきたのは先ほど美琴に切り落とされた触手の一部だ

その触手が何やらウネウネとうごめいていき、そこから成人男性サイズの土人形が生み出された

分かり易く言うなればゴーレムだ

 

「…なんでもありだなおい」

<行こう翔。私たちで相手をしよう>

 

短い会話をした後ダブルがその土人形に向かって走り出し、一体に飛び蹴りをかます

それに続くサソードを尻目にしながらクウガはAIMバーストの方を見る

AIMバーストは自らの頭上で気のようなものを溜めていたところだった

恐らくこの周囲に向かって放つ攻撃のはずだ―――

 

「! まずい!!」

 

思わず振り向いたがもう遅い

付近一帯に放たれた光弾の一発は今まさに階段を駆け上がっている佐天と初春の所へ―――

 

「クロックアップ」

<clock up>

 

その呟きが聞こえたと思ったらその瞬間カブトの姿は消えていた

間に合ってくれるといいのだが―――

 

 

「え?」

「危ない初春!」

 

ドンと突き飛ばされたと感じた時に耳に爆発のような衝撃音が入ってきていた

思わず前のめりになって倒れてしまい、足や手に軽い痛みが走る

 

「い、たぁ…」

 

痛みに堪え視線を向けるとばらばらにひしゃげた階段の手すりや、何かの破片などが周囲に散らばっていた

どうやら下に続く階段がその瓦礫に阻まれてしまったようだ

そして自分の近くに佐天の姿がないことに気づく

 

「! 佐天さん!?」

 

彼女の名前を叫ぶ

どこか、どこかと思いながらきょろきょろと周辺を見回して

 

「初春ー!」

 

阻まれた向こう側から佐天の声が聞こえた

 

「佐天さん!? 無事なんですか!?」

「あたしは大丈夫! それより初春! ワクチンの方は大丈夫!?」

 

えっ、と呟きながら彼女はポケットに手を入れてそのプログラムを取り出す

…うん、どうやら目立った傷はないようだ

 

「先に行って! 初春! あとはあんたに託すわ!」

「え!? でも―――」

「今はもっと優先すべきことがあるでしょう! アンタが助けるの! 昏睡してる人たちを!!」

 

確かにここで止まっていたらAIMバーストと戦っているあの人たちを危険にさらしてしまう

なら自分に出来る事は、足を動かすことだけだ

初春は力強くそのプログラムを握りしめ、意を決したように再び会談を登り始めた

 

「…頼んだよ、初春」

 

呟きながら初春は先ほどの衝撃から庇ってくれた人の後ろに改めて身を隠す

 

「…ごめんなさい、誰かは、わからないですけど…ありがとうございます」

「気にするな。人が歩くのは人の道、それを拓くのが天の道だ」

 

そう言いながらカブトは周囲を確認する

どうやらさっき放った光弾にゴーレムを生み出す触手の一部が組み込まれていたのだろう

 

「安心しろ。お前は必ず守る」

 

そう言われて思わず佐天は顔を赤くする

…あって間もないのにどうしてこう言ったセリフを言えるのか

 

 

階段から抜けて初春は辺りを見渡した

視界には数分前に乗っていた木山の青い車が見える

 

「私だって風紀委員(ジャッジメント)なんだ…!」

 

戦える力がなくても、抗える力がある

そう自分を奮い立たせてまた足を動かしたとき、また爆発音が鳴り響く

どうやら左側の壁にまた光弾のようなものが直撃したようだ

 

その音に足をもつれさせてその場に初春は転んでしまった

だけどプログラムは守り切れた

 

「はは、アラタに似て無茶をする」

 

声が聞こえた

声の方に振り向くと自分を庇うように緑色の仮面ライダー―――キックホッパーがAIMバーストを睨んで立っていた

その周囲には灰色の仮面ライダー―――パンチホッパーとG3もいる

 

「怪我は?」

 

パンチホッパーにそう問われ、初春はない、と首を振る

 

「ならプログラムも無事ですね」

 

G3の言葉に初春は力強く頷く

 

「…よし、何とかして移動するぞ」

 

キックホッパーの視線の先には警備員(アンチスキル)の車両がある

木山との交戦で大体破壊されたと思っていたが幸か不幸は一台だけはその被害を受けることなく静かにたたずんでいた

あの車両ならこのプログラムのデータをこの都市中に流せるかもしれない

しかし、AIMバーストはそれを許してはくれないらしく、再び頭上に再び何やらエネルギーを溜め始めた

 

 

「いい加減にっ!!」

 

半ば怒りと共に放たれたその雷撃はAIMバーストの頭上に溜められていたエネルギーごと焼き尽くす

だがその攻撃にも意味はなくすぐ再生されていく

けれども問題はない

注意を引くことが重要なのだ

 

「そろそろこっちにも振り向いてくれない?」

 

美琴の左隣にはダブルが並び、AIMバーストを見つめる

 

「事情はよくわからないけど、あれを止めないといけない、ってことだけはなんとなくわかるよ」

<うん。だから、とめてあげよう、私たちで>

 

迫り来るゴーレムを蹴っ飛ばしながらクウガが美琴の隣に立つ

 

「あぁ。だから行こうぜ、美琴!」

「えぇ。…みっともなく泣き叫んでないで、真っ直ぐこっちに向かってきなさいっ!」

 

美琴の叫びに呼応するかのように、またAIMバーストは嘶いた

 

 

クウガ、美琴、そしてダブル

彼らはAIMバーストを足止めしているが、依然効果はなし

カブトは階段の途中で土人形と交戦しているし、サソードは地上で同様に土人形と戦っている

 

その戦いの光景を見ながら木山はゆっくりと橋の下から歩いてきて思考を走らせていた

 

(…ワクチンプログラムを何とか都市中に流すことで、幻想御手(レベルアッパー)のネットワークを破壊する。…あの子たちがうまくやれば、あの暴走を抑えることが出来るはずだ)

 

だが…、とそこで思考を区切り、再び木山は歩き始めた

 

 

<TRIGGER!>

 

<CYCLONE TRIGGER!>

 

「たぁぁぁっ!!」

 

トリガーマグナムから放たれた風の弾丸は空を飛び、AIMバーストに当たり、破損させる

だがやはり自己修復され、その攻撃は無意味なものとなる

 

「くっそ! やっぱりか!」

<このままじゃジリ貧だよ…>

 

そんなダブルの隣を駆け抜け、クウガが前に出る

AIMバーストはクウガに狙いを定めて一斉に触手を伸ばし始めた

伸ばされた触手を手刀で斬り、蹴りで払い、拳でクウガは砕いていく

だがいずれも全く効果はなく、再び再生されていく

 

「あちゃー…全然効かねぇな…」

 

そのまま何度か触手に向かって徒手空拳を繰り出すがやっぱり再生されてしまう

 

「屈んで! 二人共!」

「え!?」

 

美琴の声が聞こえた時にはもう眼前に大量の砂鉄で生成された鞭みたいにしなるブレードが迫ってきていた

 

「おうわっ!?」

「危ない!?」

 

当然範囲にはクウガはもちろんの事、ダブルも入っていたらしくクウガを見て同じように屈む

自分たちの頭上を通る砂鉄の剣は空を切り、そのままAIMバーストの腕に該当する部分を切り落とす、がやはり腕は再生され、切り落とされた腕からはまた変な土人形が生み出された

 

「ちょっと!? 何すんだよ!」

「ちゃんと忠告したじゃない」

「したけどもさ!」

 

ダブルが立ち上がると同時に美琴に詰め寄りプチ口論となる

クウガとしては美琴の無茶な振る舞いにも慣れてしまっているので正直何にも思わないのだが

 

「状況見ろ右京。今味方同士でそんなこと言い合っても仕方ないじゃないか」

 

アラタに言われて落ち着いたのか、ダブルは一度深呼吸して落ち着かせた

一旦気分を落ち着けて、再びAIMバーストへと向き直った

 

「…けど、ホントにどうすんのよ。はっきり言ってキリないわよ」

 

穿っては再生され、切断しては再生され、引きちぎっても再生される

おまけにそこから変な土人形は生まれるわで収拾がつかない

 

「あの子達がプログラム届けるまで凌ぐしかないだろ? やれるとこまでやらないと―――」

 

<そこで私の出番>

 

迫り来る触手を切り裂き、宙を舞いながら黒色のクワガタがクウガの近くへ飛んでいく

羽根を展開し飛び回るゴウラムを見て、一つクウガは思いついた

 

「右京、俺らは一旦空から牽制してみる」

「え? あ、あぁ。わかった」

「そんなわけで、ちょっとそれ貸してくれ」

「は? い、いいけど…」

 

言葉と共に頷いたダブルはクウガに向かってトリガーマグナムを投げ渡す

それを受け取ったクウガは頷いて叫ぶ

 

「超変身!」

 

言葉と共に今度は赤い姿が緑色へと変化する

緑色の鎧をベースに複眼も緑色へと変わり、手に持つマグナムも緑色特有の武器であるボウガンへと変換されていく

 

「行くぞ、美琴」

「え? えぇ!」

 

クウガが先に乗り、その手を美琴へと伸ばす

美琴はその手を取り、彼に引っ張られる形でゴウラムの上へと乗った

 

「…そんなことまでできるのか」

「そんなわけで、地上は任せたぜ! …うし、行くぞゴウラム!」

「うえ!? ちょ、ま―――」

 

クウガが言うとゴウラムは羽を開き羽ばたかせ上空へと瞬いていく

その時同時にエレキガールの叫ぶような声が聞こえた気がしたが気のせいだろう

 

<任されたね、翔>

「あぁ。…だから、行こうぜアリス」

 

そう言いながらダブルは一本のメモリを取り出して、起動させる

 

<METAL>

 

そしてトリガーメモリを抜き、それを差し込みドライバーを開く

 

<LUNA METAL>

 

そんな電子音が鳴り響き、右は黄色のまま、左半身が鉄のような色へと変化し、背中から一本の武器を構える

それはメタルサイドのウェポン、メタルシャフト

 

「…よし、行くぜ!!」

 

ルナの力で伸縮するメタルシャフトを振るいながらダブルはAIMバーストへと駆けていった

 

 

階段の途中での戦闘

 

幸いにも動きが単調な土人形を倒すのは造作もないことだった

しかし問題はいくら斬りつけても斬りつけても治ってしまうのだ

流石は人形と言ったところか

おまけに場所が場所なだけにライダーキックが使えない

使ってもいいがそれでは佐天を巻き込んでしまう確率もある

 

「ならば…」

 

カブトはクナイガンを構え、静かに態勢を低くする

何か来ると予想したのか土人形が少し身構えた気がした

しかしそれを杞憂と判断したのか二体同時に接近し始める

その時、先にカブトが動いた

 

クナイモードとなった刀身にエネルギーを込め、通り抜け様にアパランチスラッシュをそれぞれの胴体に叩きこんだ

深々と斬られた二体の土人形は再生能力を失ったのか、それとも再生するためのエネルギーが切れたのか、土人形はその場で崩れ落ちた

 

「…怪我はないか」

「は、はい。おかげ様で…」

「そうか。それは何よりだ。…行けるな?」

 

カブトがそう問いかけると佐天は力強く頷いた

これ以上の心配はなさそうだ

 

「―――頑張れよ」

 

そう言い残してカブトは手すりを飛び越えて、地上で戦っているサソードの方へ加勢すべく駆け出した

その背中を見ながら佐天は瓦礫を見やる

瓦礫は通れないほどでなく、少しばかり小さくなっている気がする

戦っている最中、カブトが切りつけてくれたのだろうか

だとしても有難い

 

「よし。行こう!」

 

自分を奮い立たせるかのように呟いて、彼女はその瓦礫の上を走る

何もできなくても、構わない

今動くことが重要なんだ―――

 

 

「ツルギ!」

 

サソードの耳に聞きなれた声が届く

その方向へ視線を向けるとカブトがこちらに向かって走ってきていた

走りざまにクナイガンにて土人形を切り裂いていきながらカブトはサソードの隣へと駆け寄った

 

「天道!」

「一気に決めるぞ、準備はいいか」

「あぁ! 問題ない!」

 

言葉と共に二人は必殺技の構えを取る

カブトはゼクターのスイッチを押し、サソードはサソードテイルを一度抜いて、再び挿す

 

<One two Three>

 

「ライダーキック」

「ライダースラッシュ!」

 

<Rider Kick>

<Rider slash>

 

そう電子音が鳴った後、カブト自分の前方にいる数体の土人形へと回し蹴りを繰り出し、その背後では同じように数体の土人形に向かってサソードヤイバーを振り抜いた

それぞれの動作が終了したあと、サソードはヤイバーについた血を払うように空を切り、カブトは天を指す

 

「あとはアラタたちを待つだけだ」

「あぁ。任せたぞ、カガーミン」

 

 

「…空からでもあんま効果なし、か」

 

いくつか射撃してはみたが案の定効果はなし

同じように美琴も雷を売っては見たが結果は変わらずだ

 

「それでも、やんないといけないでしょ? 初春さんたちがやってくれるまで」

「あぁ。…行けるか?」

「…ふふ、誰に言ってんのよ?」

「はは。…そうだったな!」

 

お互いに言い合いながら迫ってきた触手にクウガはボウガンを撃ち込む

このボウガンは弓に当たる部分があるのだが、それを引かずに引き金を引けば威力が低いがけん制程度の弾丸が放てるのだ

 

触手がすべて破壊された後、今度は氷の刃が周囲に展開される

いくつもの刃がこちらに向かって放たれる中、美琴は焦ることもなく、雷を展開しそれを砕いていく

ゴウラムもまだ問題はなさそうだ

…大丈夫、まだいける

 

 

警備員(アンチスキル)の車両にて

 

「ああ、そうだ。手段は問わない、これから送る音声データを学園都市中に流すんだ」

 

変身を解いた矢車が携帯を使用して指示を飛ばしている

これが成功しなければもう勝算はない

 

「転送! 完了しました!」

 

初春の声が耳に届いた

よし、後は―――

 

「責任はすべてこの矢車が持つ! とにかく流せ!」

 

矢車のその指示のあと、学園都市中に単調な音が響き渡った

 

 

曲と言われれば確実に十人中十人は首をかしげてしまうだろう

とても曲とは言えないただシンプルな一つの音を聞かせられればそれは曲でなく音だ

だがこの音はただの音ではない

 

「…なんだ、これ。曲か?」

 

思考に埋没しようとしたその時だった

直前までに迫っていたAIMバーストの触手に一瞬気づくのが遅れ、ダブルが囚われてしまった

 

「うわっ!? しまったぁ!!」

 

ご丁寧に両手までしっかり巻きつかれている

これではメタルシャフトが振るうことが出来ない

万事休す、か

 

「右京!」

 

空中からこちらを視認したクウガがその場からボウガンで触手を狙い撃つ

触手の縛りから解放されダブルは地上に降り立った

それと同時に一度彼らは地上に着地する

 

「悪いアラタ! だけどいくらやっても再生するんじゃあ…っ!?」

 

言葉を言いかけてダブルは驚いた

ボウガンを放たれて破損した場所が治っていないのだ

 

<もしかして、今流れてるのって治療プログラム…!?>

 

アリスの言葉になるほど、と納得する

幻想御手(レベルアッパー)も音声ファイルならそれを治すのも音声ファイルなのだろう

そしてそれが意味することとは―――

 

「初春さんたちやってくれたんだ!」

「あぁ! ったく…すげぇよホントに」

 

つまり今のこの時ならば、AIMバーストを倒せるはずだ

しかしこの大きな巨体を一度にダメージを与えるなら―――

 

「美琴!」

「えぇ! これで、戦闘終了(ゲームオーバー)よっ!!」

 

クウガの叫びに呼応して美琴が高威力の雷撃を放電する

その大きな体に放たれた雷は真っ直ぐにAIMバーストを捉え、身体全体を焼き尽くす

声にならない叫びをあげてAIMバーストは身体を黒くしながらその場に崩れ落ちた

 

「…はぁ」

 

ようやく終わったと感じた美琴は短くそう息を吐いた

そんな背中をいつの間にか赤いのに戻っていたクウガが軽く叩く

 

「お疲れ」

「あんたもね…そっちの半分こも」

「半分こっていうな!」

 

ダブルの声を聞きながらどこか笑みを浮かべる自分がいる

とにもかくにもこれで

 

「気を抜くな!!」

 

終わったと思った矢先、木山の声が耳に届いた

いや、というかなんで彼女はここにいるんだ!?

 

「まだ終わっていない!」

 

木山の言葉に三人はもしやと思いAIMバーストの方へと向き直る

彼女の言葉通りAIMバーストはまだ動きを止めていなかった

 

「そんな!? ネットワークは壊したんじゃ…!?」

「あれはAIM拡散力場が生み出した一万人の思念の塊…、常識は通用しない!!」

「はぁ!? 話が違うじゃねぇか!」

 

ダブルが叫ぶ

倒したと思っていたのにこれじゃぬか喜びもいいとこだ

あんなの、一体どうやって倒せば…

 

「核だ! 力場を固定させている核が、どこかにあるはずだ…! それを破壊できれば…!」

 

―――ユルセナイ…―――

 

「!? …今の、は…」

 

不意に唐突に聞こえたエコーのかかった声に美琴たちは一度動きを止める

それはおそらく、幻想御手(レベルアッパー)使用者の心の声だ

 

―――毎日、馬鹿にされて―――

―――レベルゼロって、欠陥品…―――

 

「…」

 

思わず美琴は押し黙る

彼女は努力で超能力者となった人だ

だから、なんとなくだが気持ちが分かるのだろう

 

「…私、佐天さんに謝んないと」

「…え?」

「無責任にあんな事いって…さ。気にしてるかもしれないのに」

 

苦笑いと共に美琴はそう呟く

恐らく、自分の知らないところで何かがあったのだろう

それを聞くのは野暮だと感じたクウガは何も聞かなかった

やがて意を決したように美琴はいまだ行動を続けるAIMバーストを仰ぎ見る

 

「下がって。…巻き込まれるわよ」

 

そして木山に向かってそう言った

 

「構うものか! 私には、あれを生んだ責任が―――」

「教え子」

「…え?」

 

クウガの言葉に木山は目を丸くする

 

「…あんたはよくても、あんたを待ってる教え子たちはどうする気だ?」

「…っ」

 

木山はそう言われて少し顔を俯かせる

彼女が今まで行動してきたのはすべて今なお眠っている子供たちの為だ

その子たちが起きたとき、一番に見せなければならないのが彼女自身の笑顔でなくてはいけないのだ

 

「…こんなやり方以外なら俺たちもいくらでも協力する。…な?」

「当然。…だから、こんなところで諦めないで」

「よ、よくわからないけど、俺も手伝えるなら」

<俺もじゃなくて、俺たちも、でしょ?」

 

状況が飲み込めていないダブルを尻目にクウガと御坂美琴が一度顔を見合わせる

そして少し視線を合わせてお互いに頷くとまずクウガがゴウラムに乗って上空へと飛翔する

その後でダブルがメタルシャフトを構えた

 

「それにね、アイツに巻き込まれるんじゃない。…アタシらが巻きこんじゃうって、言ってんのよっ!!」

 

言葉の途中に美琴らに放たれた尖った触手が貫かんと伸ばされる時、美琴の手から放たれた雷がその触手を焼き尽くす

そのまま放たれた雷は力場のようにAIMバーストを取り囲み、少しずつではあるがダメージを与える

しかしそれでも決定打には至らない

だが

 

「行くのかい!?」

 

美琴の死角から来る触手の攻撃をダブルが伸縮するメタルシャフトで援護しながらそう問いかけた

対する美琴はニィ、と笑みを浮かべて

 

「あったりまえじゃないっ!」

 

その言葉と共にAIMバーストを包んでいる誘電力場がさらに出力を増していく

彼女の電撃は直撃してはいない

美琴が強引にねじ込んでいる電気抵抗の熱で、表面から焼いているのだ

その戦いを見て確信する

 

「私と戦ったときは、全力ではなかったのか…!!」

 

しかしAIMバーストは意地があるのか、妬かれた表面を再生させながらいくつもの触手を束ねて大きな手を作り出す

 

「正直俺は、今も状況が飲み込めてない」

 

<METAL MAXIMAMDRIVE>

 

シャフトにメモリを挿入し、その場でブンブンと振り回す

するとシャフトから生成されていく黄色の輪刀がダブルの周囲を飛び回った

 

「<メタルイリュージョンッ!!>」

 

放たれた光輪は弧を描きながらその大きな手を切り裂いた

 

「けど、あんたらが、すごく頑張ってたってことだけは、わかる」

 

だがまだAIMバーストは抵抗をやめない

今度は周囲に氷の刃をつくりだし、地上の二人に目掛けて撃ち出した

 

「まだ頑張れるよ。もう一度頑張ってみよ?」

 

そう言いながら彼女が周囲に放たれる雷撃は撃ち出された氷の刃を打ち砕く

泣いている子供をあやすように、美琴は優しい目でAIMバーストを見つめながら、一枚のコインを弾いた

その隣でダブルはメモリを変える

 

<LUNA TRIGGER!>

 

ルナトリガーへとチェンジしたダブルは美琴の隣でマグナムを構える

 

「頑張れるなら、頑張ろう。他人の事なんか気にしちゃダメだ。気にしたら止まってしまうから」

「そうだよ。こんなところでくよくよしてないで、自分に嘘つかないで―――」

 

自分の手元に落ちてくるコイン

それを見ながらダブルはトリガーメモリをトリガーマグナムへと装填する

 

「―――もう一度っ!!」

 

飛来したコインを音速の三倍で撃ち出す美琴の代名詞

それが超電磁砲(レールガン)

その一撃に合わせるようにダブルも引き金を一気に引く

 

「<トリガーフルバーストッ!>」

 

真っ直ぐ突き進む超電磁砲に添えるように放たれたいくつもの光弾が重なり合い一つの弾丸となってAIMバーストの腹部を突き破る

やがてそれはAIMバースト内部にある核に衝突し、そのまま貫いて体外に排出した

しかしその核を破壊するまでには至らず、ヒビを入れてコインが先に砕けてしまった

だが特に焦ることない

もう一人、私たちには仲間がいる

 

 

「これで決めるぞ!」

<がってん!>

 

ゴウラムに指示を飛ばし、スピードをアップさせる

速度が上がる中、貫かれた核をクウガは全力で視た

するとまばらな線共に、中心に点があるのが分かった

ならば狙うのはそれ一つ

ある程度速度が出て、態勢を立て直しそして先に自分が飛び出す形で一気にジャンプし、空中で一度回転させ、右足を突き出した

それに追うようにゴウラムも後に続き、彼のすぐ隣に鋭い角を前に出す

 

「おぉぉぉりゃぁぁぁっ!!」

 

咆哮と共に紅蓮の炎を纏ったマイティキックに、ゴウラムのゴウラムアタック

高所からの飛び込みを利用し速度を増したその蹴りはゴウラムの補佐もあって、ヒビの入ったAIMバーストの核に直撃し、それを砕き割る

 

ズドォン、と地面に砲弾のように着地したクウガは自分の周囲を飛ぶゴウラムを撫でながら

 

「…大丈夫、きっとできるさ」

 

昏睡してる人たちを励ますように呟く

レベルゼロの気持ちはわかる

だけど、それでも、俺たちには明日が待っていてくれるのだから

 

だから、ひとまず歩いていこう

自分たちには立って歩ける、立派な足があるのだから

 

 

「…」

 

言葉が出てこなかった

目の前で起こる圧倒的な力を前に木山はただ黙った見ているしかなかった

 

「…これが、超能力者(レベル5)…!」

 

想像などは浅すぎた

自分が予想していたのとは圧倒的に、違うものだった

 

「そして、仮面ライダー…」

 

学園都市を、守るもの

 

 

「…やったな」

「あぁ。流石は我が親友」

 

事の成り行きを見守っていたツルギと天道は口々に言葉を呟く

長い事あったが、これで幻想御手(レベルアッパー)の方はひと段落しそうだ

 

 

「どうやら、終わったみたいだな」

 

ふぅ、と息を吐きながら蒼崎橙子は車に背を預け、その光景を見守っている

 

「あの時の子供が、あそこまで力を使いこなすとはね」

 

昔のことを思い出しながら、橙子はもう一度タバコに口をつける

ひとしきり紫煙を楽しんだ後、改めて己の口から煙を吐いた

 

 

「倒した…!」

 

感極まった様子でG3が呟く

本当に彼らはやってくれたのだ

いや、彼らだけではない

 

「…はふぅ~」

「うを! ちょ、初春!」

 

気が抜けたの背中に倒れそうになった花飾りの女の子を支える黒い髪の女の子

彼女たちの力なくしては止めることは出来なかっただろう

 

「お疲れ様じゃん。立花」

「えぇ、黄泉川さんも、お疲れ様です」

 

そんな黄泉川の後ろではそれぞれ変身を解いた影山と矢車の二人が車両に背中を預けていた

その近くではへたん、と鉄装が地面に足をついて息を吐いている

二人はここまで変身しっぱなしだったからか疲れがたまったのだろう

 

それは眞人も同様だった

そして一つ、目標もできた

仮面ライダーを名乗るには自分はまだほど遠いだろう

けれどいつしか彼らの隣に並べるような、そんな存在になれるように

 

 

全てが終わった夕刻

木山の腕には手錠があった

当然である

彼女は幻想御手(レベルアッパー)事件の容疑者なのだから

 

「…どうすんだい。子供たち」

 

口にするのを躊躇ってどもる美琴の代わりにアラタが問いかけた

木山は一瞬ポカンとした表情になるがすぐに小さい笑みを作り

 

「当然諦めるつもりはない。刑務所だろうとどこであろうと、私の頭脳はここにあるのだから」

 

…心配は杞憂のようだ

安堵した美琴、初春、佐天と顔を見合わせそれぞれ小さい笑顔を作る

 

「ただし」

 

そんな空気を割るかのように木山が口をはさんだ

 

「今後も手段を選ぶつもりはない。気に入らなければ邪魔しに来たまえ」

 

そう言って木山は警備員の車両に乗り込んでいく

…相変わらず、そしてたぶん曲げる気はないだろう

不意にアラタの携帯が鳴り響く

アラタは操作し、耳に当てると少しの会話のあと言った

 

「昏睡してた人たちも、起きてきたみたいだって固法から連絡があった」

「ホント!? …佐天さんと初春さんのおかげだね」

「だな。お疲れ様」

 

二人に言われ、両名は赤面する

 

「そ、そんな。私なんて途中からなんもしてないし…」

「励ましてくれたじゃないですかっ佐天さんはっ! あの言葉で私勇気もらったんですから!」

 

どうやら自分たちの知らない間にまた絆が強くなっていたようだ

そんな時美琴がばつが悪そうに

 

「その、佐天さん」

 

と口をはさんだ

言われた佐天はきょとんとした顔で美琴の顔を見る

 

「…ごめんなさい」

「ふぇ!? なんで急に謝るんですか!?」

「…前に、レベルなんて関係ないって、私言ったじゃない? …あの時、その…自分勝手な言葉を押し付けて…」

「…御坂さん」

 

謝る必要なんてないのに

あの時の自分はただ必死だったんだ

なんの能力もない自分が許せなくって、そして能力に憧れた

けれども気づいたんだ

本当に大切なものに

 

「大丈夫ですよ御坂さん。…それに本当に大事なのは、能力じゃないって…知ることが出来ましたから」

 

そう言いながら彼女は満面の笑顔を作る

燦々と輝く太陽のように眩い笑顔だ

あぁ―――とてもいい、〝笑顔〟だ

 

同じように笑顔で佐天に返していると声が聞こえてくる

 

「…鏡祢。ではそろそろ帰ろう」

「俺と天道で料理を振る舞う予定だったのだ。もちろんウィハールやサ・テーン、ミサカトリーヌにも我々の料理を振る舞ってやろう」

 

なんか名前がすっごい事になっている

ツルギらしいといえばらしいのだが

 

「…けど、そだな。今日はもう戻るか」

 

アラタのその一言でその場の連中はひとまず一七七支部へと戻ることとなった

恐らく黒子辺りが心配してるに違いない

 

 

 

―――こうして、一万人もの能力者を巻き込んだ幻想御手(レベルアッパー)事件は、ひとまず幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

その夜

支部からの帰り道

帰還してからダイブしてきた黒子を美琴と共に制裁し、天道が作った(ツルギは独創的過ぎたのか受けなかった)ラーメンにみんなで舌鼓を打った後特に気にするでもなくコンビニの前に寄った

強いて言うなれば明日のご飯を購入するためだったのだがふと気づく

 

「…あれ?」

 

妙に人が少ない、否、少ないのではない

〝いない〟のだ

こういった時間帯にはまだまだ夜これからですよと言わんばかりに学生諸君がわんさかいるハズだ

それなのに誰もいない、という事は異常だ

不自然な人の消滅、微かに頭をよぎる違和感…

導き出される結論は

 

「…まさか、また魔術か?」

 

教訓

一難去ってまた一難

確かに一つの物語は終わったが―――そちらはこれから始まろうとしているのだから

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