ていうかこのままだと長くなりそうなのでキリのいいところで区切りました
楽しんでもらえたら幸い
「ぁうっ!」
繰り返されるのは、いつもと変わらない蹂躙劇
なんど挑んだところで、代わり映えのない殺戮ショー
ゴロゴロと地面を転がりながら、ミサカ10032号は一方通行を見やる
「おいおい、お前ら全員繋がってンだろ? いい加減対策とか考えろよなァ?」
ポケットに手を突っ込んで歩いてくるのは一方通行
またこれまでと同じように、雑草でも引き抜くかのように伸ばされようとしたその手は、途中で止まった
一方通行はある一点をじろりと見つめたままで、倒れ伏しているミサカ10032号を見た
そして問う
「…おい、この場合、実験ってェのはどうなっちまうンだ」
「…え?」
釣られて彼女も一方通行の視線を追う
その視線の先には、いるはずのない人物がいた
詰まれたコンテナに手をかけて、ぜぇはぁと息をしている、あのツンツン頭の少年が
いや、よく見れば彼だけじゃない
彼を含めて合計四人、トイカメラの男性と白衣の女性は知らないが、あの黒髪の女性は、美琴―――お姉様の友人だったはずだ
「…どうして、ここにいるのですか…?」
「ちっ。関係ねェ一般人どもなンざ連れ込ンでンじゃねェぞ。それともあれかァ? 浅倉たちの目を掻い潜って来たやつらかァ? どっちにしろ、秘密を知っちまった連中は、口封じとか言うお決まりかァ?」
そう言いながら、一方通行は10032号の顔を足蹴にした
その気になれば、その状態でいとも容易くその命を積むことができただろう
だがそれをしなかったのは、一般人がいる、というこの状態をどうすべきか迷ったゆえに、だ
「…離れろよ」
ぼそりと、しかし、はっきりと
あの一般人はそう告げた
「とっととその子から離れろって言ってんだ! 聞こえてねぇのか三下ぁぁぁっ!!」
◇
「―――何か言ったか」
一方通行がぐるりとこちらに視線を向けながら、そんなことを呟いた
目の前の敵に一瞬目を背けそうになるが、負けじと睨み返しながら、上条当麻は沢白の言葉を思い出す
―――いいかい、最強と無敵の紙一重…君の右手なら、アイツの能力を打ち消して攻撃が届くかもしれない
視線を右手に見やる
幻想殺しを宿したこの右手が通用するかわからないが、もう沢白の言葉を信じて突っ切るしかない
そうやって睨み返していると、不意に空中から羽根が羽ばたくような音が聞こえてきた
「…やっと来たか」
士の言葉と同時、地面に一人の男が着地する
アラタだ
となると、美琴を止めることに成功したのか
ちらりと上を見ると、そこに美琴が乗っていた
美琴は何かを言いだそうとしていたが、乗ってるクワガタの意思なのか、ゆっくりと地上に降り、アラタの隣に歩いてく
アラタは一方通行が10032号を足蹴にしていることを確認すると、ぎり、と拳に力を込めた
「おいおい、なんだ今日は。一足早めのハロウィンパーティーかなんかか」
コンテナの陰から、誰かの声が聞こえてくる
瞬間、ギリッと神那賀の拳が力強く握られた
影から出てきて一方通行の隣に歩いてくるのは、三人の男たちだ
「…よほど命が惜しいと見えるな」
「おりょ? よく見れば前来た雑魚までいんじゃん? 今日は選り取り見取りだねぇ」
「面倒な仕事増やすんじゃないよ。…イライラしてくるぜ…」
三人は口々にそう呟いてくる
するとリーダー格の男…浅倉が一方通行に視線を向けて
「…離れろってよ。離してやったらどうだ? 〝上〟にでもよ」
「…! あァ、なァるほどねェ…そら、ちゃンと受け止めろよ?」
そう言って彼は10032号へと足を付けたまま、反射を発動させて上空へと吹っ飛ばした
このまま何もしなければゆっくりと弧を描いて、真っ逆さまに落下してしまうだろう
だが、そのまま見ているものなどいないのだ
「!!」
アラタは足に力を込めそのまま一度青のクウガへと変身、そして大きく跳躍し、落ちつつある彼女の体を受け止めると、再度その変身を解除した
衣服に、10032号の血が染み込み、己の手を汚す
アラタは拭き取ろうとはせず、そのまま手を握りこんだ
「…どうして」
「うん?」
「どうして、ここに来てしまったのですか、とミサカは問いかけます。関係ない人も巻き込んで、とも、ミサカは、付け加えます…」
か細いようで、それでいてはっきりとした声だった
10032号は彼の腕の中で言葉を続ける
「あなたたちの行動は理解しかねます…ミサカは、必要な機材、および薬品と、資金さえあれば何度でも作り出せる消耗品…作り物の体に、借り物の心…定価にして約十八万に、在庫にして九千九百六十八体が余りある…そんなモノ何かの為に…」
「戦うのは、間違ってるってか?」
10032号の言葉に返したのは、士だった
「確かに、お前は作り物かもしれない、心は借り物、傍から見れば人形にしか見えないかもな。…だけどな、少なくともここにいる馬鹿野郎たちは、お前のことをそうは思ってないらしい」
「…え?」
「えぇ、門矢さんの言う通りよ。私たちは、貴方を含めた妹達を人形だなんて思ってない」
「この世界に、たった一人しかいないお前を助けるために、みんなここに来たんだ」
士の言葉に、神那賀と当麻が続いていく
アラタは血に濡れていない方の手で、10032号の頭を軽くなでると、付近にいる沢白の方へと歩いていって、彼女を預ける
「博士、この子を頼んだ。美琴も博士と一緒に離れててくれ。巻き込まないとは言い切れないから」
「了解したよ。あんまり無理しないようにネ」
「さぁ、そいつはできない相談だな」
「だと思った。…行くよ、御坂くん」
「わかったわ」
そう言って沢白は10032号を抱えると、美琴と共にこの場から去っていく
こうして、この場には戦士しかいなくなったわけだ
一方通行はうんざりと言った様子で首を回しながら
「おいおい、団体戦でもやるつもりかよ? 今日は退屈しねェなおい?」
「ホントにな。…やるぞお前ら」
「あぁ。残念だ、こんなことに絡むことがなければ、長生きできただろうに」
「俺は別に残念だなんて思わねぇ―けどね。自業自得ってやつよ」
言いながら一方通行の隣にいる三人は徐にデッキを前に突き出した
すると三人の腰にバックルのようなものが巻かれて、浅倉は右手をゆっくりと動かしながら半月を作るように動かし、芝浦はガッツポーズをするかのようなポーズを取り、手塚は右手を突き出して、各々が叫んだ
『変身!』
叫んでそのまま、デッキを三人がバックルにセットする
そうすると鏡の割れるような音と共に残像が三人に重なり、その姿を変える
王蛇、ライア、ガイ
それがその三人のライダーの名前だ
「…行くぞ。用意はいいか」
「私はいつでも」
「同じく」
士の言葉にアラタと神那賀が同意し、最後に士は当麻へと問う
「それじゃあ、一方通行とやらは任せたぞ」
「あぁ…任された!」
当麻の覚悟の言葉を聞いた士は、懐からマゼンタ色のドライバー…ネオディケイドライバーを取り出すとそれを腰に押し当ててベルトを巻き付けて、ドライバーを開いた
それに合わせて神那賀がバースドライバーを巻き付けて、アラタが腰に手を翳しアークルを顕現させた
そして士はカードを取り出して、神那賀はメダルを弾き軽く中空へと飛ばす
二人がそんな動作をしてる傍ら、アラタは右手を斜め前に突き出し、左手をアークル右側上部に添えて、ゆっくりと開くような動く
それと同時に、士はカードをドライバーにいれてドライバーを閉じ、神那賀がメダルを投入しカプセルレバーを回転させながら、皆が叫んだ
『変身!』
<KAMEN RIDE DECADE>
そんな電子音声が鳴り響く中、三人がその姿を変えていく
士はディケイドへ、神那賀がバースへ、そしてアラタがクウガへと変身を完了させた
クウガは王蛇へ視線を向けて、バースはライアとガイに睨むように見つめる
ディケイドはライドブッカーをガンモードに切り替えて、軽くソイツを叩きながら、牽制目的でひとまず向こうの三ライダーの足元に向けて軽く撃った
当てる気などない威嚇射撃
ガイは多少ビクついていたが、ライアと王蛇はディケイドらへと視線を向ける
すると指でくいくい、と挑発するように動かしていたのが見えた
「…舐められてるな」
「みたいだな…。じゃあアクセラ、アイツは任せる」
「あァ。とっとと愉快なオブジェにでもしてやンよ」
一方通行にそう言って、王蛇は駆け出した
ベノバイザーを取り出して、手始めに挑発なんぞかましてくれたあのバーコード野郎をぶん殴ろうとした時、割り込んできたクウガがそれを迎えうつ
「テメェの相手は俺だ」
「…面白い、せいぜい退屈させるなよ!」
そのまま二人はまた別の場へと戦いながら離れていく
そんな光景を見ながら、バースも同様に駆け出して、メダルを一枚ドライバーに入れるとレバーを回した
<ドリルアーム>
その電子音の後ドリルアームがバースの右手に装着される
とりあえず真っ先に狙いをつけるのは、言動がムカつくサイ野郎だ
突き出されたドリルの攻撃を回避しながら、ガイは煽るように口を口を開く
「おいおい、いきなり熱烈だねぇ!」
「ぬかしなさい! アンタらには、ここで前の借りを返す!」
そのまま戦闘を始める二人を尻目に、ディケイドとライアはゆっくりと互いを目の前に捉えながら歩いて距離を詰めていく
「やれやれ。血気盛んなやつらが仲間だと、色々大変だな」
「同感だ」
言いながらライアはデッキから一枚のカードを取り出すと、それを左腕につけてあるエビルバイザーにセットする
<スイングベント>
するとどこからともなく鞭のような武装がライアの手元に現れた
ライアがそれを構えながら、ディケイドもライドブッカーをソードモードに切り替えて身構える
「…こちらに言葉はいらないな?」
「あぁ。俺もそっちの事情に興味はない」
短く言葉を交わしたのち、エビルウィップとライドブッカーが交差した
◇◇◇
一方通行が軽く地面とトン、と蹴る
刹那地面から砂が爆発し、当麻に襲い掛かってきた
たとえるなら、まるでそれはショットガンだ
反応が僅かに遅れ顔を手で覆うが、大小さまざまな小石が当麻を襲う
「どうしたァ! そんな速度じゃ百年遅ェぞおらァ!!」
痛みに耐えながら、一方通行は次の攻撃行動へ移る
地面に設置されてある鉄道のレールを反射して強引に引っぺがすと、それを適当に捻じ曲げ放り投げてくる
あんなのを食らっては流石にひとたまりもない
地面にレールが突き刺さり、その衝撃で砂塵が巻きあがる
視線の先で懸命に動いて躱していた辺り、アイツはまだ生きているだろう
(…気に入らねェ)
弱いくせに一丁前にほざきやがる、目の前の男に苛立ちが募っていく
なんなんだ、なんでこいつはここにいる
いきなり人の実験を邪魔しに来て、デカい口叩いて何をしてくるかと思えば、能力を使うそぶりも見せることはない
もしかして、こいつは…?
砂塵を吸い込んでむせている目の前の男はゴホゴホと呼吸を整えながら、視線だけは一方通行の方を向いている
その視線が気に食わなかった
「おいおい、お前。もしかして
今までもこういう馬鹿はよくやってきた
だがそういう愚か者は適当にあしらい、手か足のどちらかを吹っ飛ばしてやれば、己の無力さを思い知り、後悔と絶望の命乞いとかをしてきたものだ
「お前、自分が〝最弱〟ってことを理解してねェみてェだな? そんなに死に急ぎたきゃァよォ…望み通りにしてやンよ…」
一方通行がだらりと両腕を下げ、その手を開き、歩いてくる
「死に方ぐれェ選ばせてやる。…右か? 左か? それとも…両方か?」
刹那、一方通行が飛びかかってくる
ここしかない、と当麻は判断した
今までは間接的に周囲の何かを吹っ飛ばしてくるという攻撃方法ゆえに、当麻は攻勢に出れなかった
だが、直接殺しに来る今みたいな状況なら、届くはずだ
「う、おおぉぉぉぉぉっ!!」
当麻は叫びながら、己の右手を固く握り、真っ直ぐ、ただがむしゃらに突き出した
◇◇◇
この戦闘の意味が、いくら考えても分からない
御坂妹10032号は、目の前で起こるそれぞれの戦いだどうしても理解できなかった
「…なんで、こんな…」
「意味わからない、と言った顔だネ?」
どうやら無意識に声を発していたようだ
横にいる白衣の女性…沢白が御坂妹を覗き込んでいた
「自分に価値がない、そうさっき君はいった。けどね、それは間違いだよ。誰かをそんな風に思える時点で、君は立派な、この世界に命を貰った人間だ」
「けど、私は機材を用いて作られた、お姉様の劣化コピーです、とミサカは―――」
「だからなんだ!」
言葉の途中で、不意に彼女が大声を発して御坂妹の言葉を遮った
「コピーだかなんだか知らないが、君は! 今を〝生きて〟いるだろう! 君を守るために立ち上がって戦う理由なんてのは、そんなもので十分なんだ! 確かに君は何万と作られているだろう、だけど、今ここにいる〝君〟は一人しかいないだろうが! どうしてそんな単純なことがわからないッ!!」
きっとここに神那賀がいれば、驚いたかもしれない
基本彼女はあまり感情を表すことはない
だいたいアラタや神那賀と一緒にいるときに出る感情は喜怒哀楽の喜と楽の二つだ
めったに表さない、怒と哀の感情を爆発させている
沢白凛音は許せなかった
人間のクローンを生み出すという禁忌も、そして生まれた命を理不尽に殺すようなこんな実験も
「…沢白、さん…?」
「あぁ、ごめんごめん。ついカっとなってしまった。…外野の私たちは信じるのみだからネ、みんなを」
軽く咳をして調子を整えると、沢白はまた変わらない笑みを浮かべてくる
釣られて美琴も小さく微笑むと、ちらりと、王蛇と戦闘しているクウガを見た
互角の殴り合いを繰り広げるクウガに向かって、美琴は小さく呟く
「…信じてるからね。…アラタ」