全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

62 / 84
劇場版始動
まぁ出来はいつも通りだと思いますのでのんびり読んでくだされば


それはエンデュミオンの奇蹟
#55 もう一つのプロローグ


女の話をしよう

 

些細な要因から死ぬことができなくなった、哀れな女の、奇跡の話を

 

◇◇◇

 

三年ほど、前の話である

学園都市の航空事業系企業の中に、オービットポータル社というものが存在する

この企業は世界初のスペースプレーンでの宇宙旅行を実現させたとして、周囲から大変注目を浴びていた

 

そして開業試験飛行を計画、一般からの観客を募り実際にオリオン号で宇宙旅行を実行してみせるなどで、それは大いに盛り上がった

だが、その事件は起きてしまった

 

帰還する直前の出来事だ

幸か不幸か、オリオン号は宙域を漂っているスペースデブリに接触、翼が破損し、エンジンブロックに損傷を受けてしまった

 

乗客は不安に包まれ、恐怖に支配されている中、コクピットではこの状況を何とかしようと奮闘している二人のパイロットがいた

 

「左翼エンジン脱落…もうダメです!!」

「諦めるな! まだ…まだ何か方法があるはずだ…!」

 

機長の顔には、まだ絶望は見られない

彼はこの状況であろうとも、まだ乗客全員を無傷で何とかしようと奮闘している

その甲斐あってか、オリオン号は不安定ながらも飛行を続けていた

 

◇◇

 

「学園都市、第二十三学区に〝スペースプレーン〟オリオン号が不時着。オリオン号は帰還する直前に成層圏にてデブリと接触、エンジンのトラブルに至って、不時着した模様です。幸い乗っていた乗客、乗員八十八名は、全員の無事が確認されました。繰り返します、全員の無事が確認されました―――」

 

機長の奮闘により、オリオン号は無事に不時着した

しかしオリオン号事態は完全に半壊しており、修復は不可能なくらいにボロボロだった

一見、流石に何名かの犠牲者が出てしまったのでは、と思わせる

しかしレポーターが先述した通り、この事故で犠牲者は一人も現れることはなかったそうだ

 

乗客、乗員…のべ八十八名全員が無事、地球に帰還を果たしたのだ

 

 

 

―――コクピットのシートに残る、血痕と、血に塗れたパイロット帽には、触れられないままで

 

 

 

◇◇◇

 

 

三年後

とある研究所が襲われたとの通報を受けて、立花眞人、矢車ソウ、影山シュンの三名はその研究所に足を運んでいた

しかし建物に入るや否や、待っていたのはアリのような怪人からの襲撃だった

 

「クソッ…! こいつらがここの人たちを!」

「考えるのは後だ、まずはこいつらを殲滅させる。準備はいいか、影山、立花!」

「はいっ!」「了解ッ!」

 

矢車の言葉に立花と影山は返事をすると、立花は持っていたカバン型のG3ユニットを操作し、影山と矢車はそれぞれベルトのバックルを展開しながら飛んできたホッパーゼクターを掴む

 

『変身!』

「G3ユニット、着装!」

 

<HENSHIN><HENSHIN>

<CHANGE KICK HOPPER><CHANGE PUNCH HOPPER>

 

そんなゼクターの電子音声を背景に、立花もその身にG3ユニットを身に纏い、仮面ライダーG3としてその姿を現す

そしてキックホッパー、パンチホッパーとなった二人の横に並び立つと、待っていたかのように目の前でアリ怪人が集団を作ってこちらを威嚇するように叫んできた

 

「―――行くぞ!」

 

キックホッパーの叫び、駆け出していく

パンチホッパーとG3もその背を追いかけて、駆け出していった

 

◇◇◇

 

その戦いの光景を、見ているひとりの人間がいた

名前は水城マリア…ここの警備員を務めていた女性である

彼女は最初に吹き飛ばされて、幸運にも気を失い、仲間の亡骸が彼女に覆いかぶさったおかげで偶然にも生き残ることができたのだ

そしてふと意識が戻ったその時には―――辺りはこんな惨状だった

 

今も目の前で三人の仮面ライダーとやらがアリ怪人と戦っている

自分たちが手も足も出なかったアリの怪人を容易く蹴散らしているその姿に、僅かながら嫉妬心を覚えた

 

生き残り、守るために戦った結果がこれだというのか

 

―――いいや、むしろ逆なのかもしれない

 

生きるため、なんてありふれた理由で戦っていては、きっと自分はこのまま前に進めないのではないだろうか

そうだ…だから、死に場所を求めて、戦うことができたなら…

 

何となく、変われそうな気がする

根拠など何もないが…不思議と強く、そう思った

 

◇◇◇

 

「ライダーパンチ!」

 

<RIDER PUNCH>

 

「ライダーキック…!」

 

<RIDER KICK>

 

「GX03、アクティブ!」

 

三者三様の技が、残り三体のアリ怪人に叩き込まれていく

パンチホッパーのライダーパンチ、キックホッパーのライダーキック、そしてG3の高周波振動ブレード、サラマンダーが目の前の相手を撃破していく

爆発を背に受けて、ふとG3が視線を感じて振り返る

 

「…どうした、立花」

「何か見つけたか?」

「…いいえ、何でもありません」

 

気のせいだったのだろうか

あれから少し周囲を見渡してもその原因を発見することはできなかった

G3は首を振って迷いを払い、改めて生存者を探すことに集中した

 

しかし、必死の捜索も空しく、生存者は一人も発見できぬまま―――この任務は終わりを告げた

 

◇◇◇

 

九月の某日、なんてことのない昼下がりにて

 

その日、特にやることもなかった鏡祢アラタは、御坂美琴、そして食蜂操祈の三人でのんびりと歩いていた

別にデートだとかそういう話ではない、っていうか食蜂に至っては勝手についてきたのである

美琴は苦い顔をしていたが、断る理由も特にないので、割と珍しい組み合わせで適当に街を歩くこととなった

 

「…しっかし、私の近くに食蜂さんいるのって冷静に見ればエライことよねぇ」

「そうねぇ。いつの間にかそこそこ仲良くなっちゃったし」

「絶対に仲良くなんかなれない、なんて思ってたけど、人生ってわっかんないわよね…」

「中学生とは程遠い話すんなお前ら」

 

先を歩く二人の常盤台生に向かってアラタはそう呟いた

御坂美琴と食蜂操祈―――二人とも学園都市の誇る超能力者(レベル5)の七人のうちの二人で、美琴は第三位の超電磁砲(レールガン)、操祈は第五位の心理掌握(メンタルアウト)ともいう常盤台のツートップなのである

…なんでこんな二人と俺交流持ててんだろう、とたまに冷静になることもあるが、巡り合わせには感謝せねばなるまい

 

「んー、それはそうと、ちょっと空腹力がしてきたわねぇ」

「あれ。もうそんな時間…あ、ホントだ、どうする? コンビニとかでなんか買う?」

「俺は別にいいけど…操祈は?」

「私も大丈夫よぉ。友達と一緒にいるときまで、自分の食の好みを押し付ける気はないわぁ」

 

割と早めに話が決まり、じゃあその辺のコンビニとかでなんか買うか、という結論になった

そんな訳で早速レッツゴー、としたところでふと、三人の耳に声が聞こえてきて、足を止める

 

―――歌だ

 

三人して視線を見ると、そこには一人の女の子が歌を奏でていた

俗にいうストリートライブ、という奴だろう

 

「…へぇ。結構上手じゃない」

「ホントねぇ、中々の歌唱力だわぁ」

「確かにな。アカペラであそこまで人を惹きつけるって相当だぜ?」

 

すっかり空腹も忘れ、三人して彼女の歌に聞き入っていた

なんだろう、聞いてるだけで心が癒される、というのはこの事なのだろうか

と、気分よく聞いていた時に、〝雑音〟が混じってきた

 

「あのよぉ? 困るわけ。こんなところで勝手に弾き語り? とかしてくれるとさぁ」

「わかる? 場所代ってのがね? 発生しちゃうのよ。マネーよ? わかる?」

 

スキルアウトである

彼らは数人で徒党を組み、その女の子に詰め寄っていた

 

「あ、あの…」

「なんだなんだ? 俺たちみたいなのとはお話もできないってか?」

「い、いえっ、そんなことは…」

「それじゃああっちでマネーの話しようか? ねっとり、じっくりと…ねぇ」

 

全く持って度し難い連中だ

ちらりと美琴と顔を合わすと彼女は頷いて、食蜂もやれやれといった様子で苦笑いを浮かべる

ともかく、お仕事の時間のようだ

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

凛とした美琴の声が場に響く

スキルアウトの一人が不機嫌な様子を隠す気もなく、こちらに向かって振り向いた

 

「ああ? んだテメェら。ガキはすっこんでな」

「そう言われてすっこめんタイプの人種なんでな。このまま引き下がるならよし、引き下がらないなら―――」

「ちょおっと、不幸力発揮しちゃうわよ? 貴方たちがぁ」

 

美琴の言葉に続き、アラタや食蜂の言葉がスキルアウトに突き刺さる

おまけに冷静に鑑みればその男は極上の美女を連れている野郎にも見え、ついでに嫉妬心を沸き上がらせる

 

「へへっ…ちょうどいいや、よく見りゃあお前が侍らせてる女どもも中々じゃねぇか」

「誰が侍らせてるだ! 誤解を招くような言い方やめろぉ!?」

「そ、そうよ!? アタシら友達よ友達!?」

「私は別にそっちの意味でも全然オッケーなんだけどぉ?」

 

何気ない突っ込みの羅列

しかしぶっちゃけスキルアウトの面々からしてみればイチャついているようにしか見えない

いい加減スキルアウトの連中はキレた

 

「イチャイチャしてんじゃねーぞコノ野郎!!」

「イチャイチャなんかしてねーよ眼科行けやコラァ!!」

 

◇◇◇

 

あの後激情して襲い掛かってきたスキルアウトの方々をアラタの拳や美琴の雷撃などであっさりと終わらせると、反省の意味合いも込めて食蜂が能力で軽く洗脳し小一時間正座をさせた

 

「ったく…ほんと名前負けしてるわよねこの都市」

「そうかしらぁ? 刺激力満載で楽しいとは思うけどぉ」

「いつもの事だ。…あと、アンタ怪我はないか?」

 

二人の言葉に短く返し、アラタは歌っていた女の子ぬ声をかける

女の子は安堵したように息を吐くと笑みを浮かべて

 

「ありがとうございます。その、皆さんもお怪我はないですか?」

「大丈夫だよ。この程度は日常的に―――」

 

そう言おうした直後であった

人垣を掻き分けながら、大人の声が耳に届いてきた

 

「すいません! 道を空けてください!」

 

警備員―――アンチスキルだ

 

「うげ、ヤベェぞ警備員だ」

「え、本当!?」

「さ、流石に職質力とか勘弁したいわねぇ…という訳だから、私たちはお暇するわぁ」

 

三人は口々にそう呟いて、最後に食蜂が女の子にそう断ると駆け足でこの場を去っていく

だんだん小さくなっていく三人の背中を見ながら、女の子―――鳴護アリサは呟いた

 

「また、会えるかな…?」

 

 

 

 

歌と奇跡

化学と魔術

そして、生きるか、死すか

 

それぞれの思惑や想いが絡み合い―――物語が綴られる

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。