全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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おっす。おらアジフライ
おおよそ三ヶ月ぶりくらいでしょうか

生きてます

のんびーり書いていってますので今後ともヨロシク…

果たして新約まで行くのは何時になるのか(はるか未来


#56 出会い/再会

学園都市

人口のほとんどが学生であるこの都市の通路を、三人の人影が歩いていく

ツンツン頭が特徴的な少年と、大きめな安全ピンでつなぎ止めた異様なシスター服を着込んだ少女、そして最後の一人が乱雑に切りそろえた髪を掻いている少年だ

 

名前はそれぞれに、上条当麻、インデックス、そして鏡祢アラタという

当麻はその右手に神の奇跡でさえも打ち消してしまうという特殊な力、〝幻想殺し(イマジンブレイカー)〟という力を宿しており、インデックスは一度見たものを二度と忘れない完全記憶能力というものを保持しており、更にはその頭の中に十万三千冊の魔導書を秘めている女の子だ

そして三人目である鏡祢アラタも体内にアマダムという霊石を宿し、その身を仮面ライダークウガと呼ばれる姿へと変身する能力を持っている

 

道を歩くインデックスを見ながら、不意に当麻が口を開く

 

「…なぁインデックス。ハンバーガーじゃあダメなのか?」

「ダメだよとーま! 昨日はとーってもひもじいおもいをしそうになったんだから! そうじがきてくれなかったらえらいことになってたかも!」

「してないんだからいいじゃねぇか」

「いいとーま。晩御飯を忘れるとね、存在を忘れられたかのような気持ちになるんだよ! ね、スフィンクス」

 

インデックスがそう言葉を紡ぐと、彼女の胸元から飛び出した三毛猫〝スフィンクス〟がなー、と鳴く

そしてその後でスフィンクスの頭を撫でつつも、彼女はアラタの方に視線を向けて

 

「ね? あらた」

「同意を求められても頷きづらいぞ、俺は」

 

インデックスが撫で終わるのを待ってから、今度はアラタがスフィンクスの首筋をごろごろと軽く指先で撫でまわす

するとスフィンクスが気持ちよさそうに目を細めた

その姿に軽く心を癒されていると、やがて当麻が観念したように

 

「…わぁったわかりましたよ。…好きなだけ食え、全く」

「!! ホント!?」

「!! マジで!?」

 

インデックスとアラタの声が重なる

インデックスは歓喜の意味で

鏡祢アラタは別の意味で(主に金銭的な)

 

大きく目を輝かせたインデックスを尻目に、鏡祢アラタは当麻に詰め寄って耳打ちする

 

「おいおい、大丈夫か? そんなこと言って」

「ふふふ。上条さんにそんな余裕があるとお思いで?」

 

ふふふと笑う当麻の顔には笑顔がなかった

それもそうだ、万年金欠の苦学生にそんな金などないことなど少し考えれば秒でわかることだった

 

「…しゃあねぇな。俺もちょっと出すから」

「マジでか! はは、やっぱり持つべきは仮面ライダーだよなぁ!」

「関係ないだろがこのド阿呆」

 

そんな会話を小さい声でしているとはつゆ知らず、ご機嫌なインデックスは周囲に視線を巡らせる

すると、ふととあるビルに設置してあるモニターの映像が視界の中に入ってきた

オービットポータル、宇宙エレベーター…レディリー・タングルロード…

とりあえず気になった単語をインデックスは当麻にぶつけてみることにした

 

「ねぇねぇふたりとも。宇宙エレベーターって―――わぷ」

 

言葉の途中で急に止まった当麻の背中にインデックスはぶつかってしまう

何事、とも思ったが、ぎぎぎ、とロボットみたいにこっちを向いてくる当麻に怪訝な顔をしつつインデックスは当麻の言葉を待つ

 

「い、インデックスサン? 貴方、完全記憶能力を保持してらっしゃるくせになにを言ってるの?」

「ふぇ?」

「あれだよインデックス」

 

不意にアラタが指をさした

その方向にインデックスも目を向けると、天にもそびえ立つかのような大きな建物が見えた

 

「…ねぇとうま、今までもあの建物なんてあった?」

「な! あ、あったよありましたよ! いつ何時も、どんな時もあの場所に! 堂々とあったでしょうが!!」

 

力説する上条当麻

でも実際そう言われると本当にあったっけ? と自分の中で思えてしまうくらいアラタは疑問には思っていた

まぁ口に出すとややこしくなりそうだから、黙っておくとして

 

「発表は最近だけど、学園都市じゃなきゃ、不可能とまで言われてるスピードだったんだ」

「ふーん…、でさでさ。結局宇宙エレベーターってなに?」

「まぁ、早い話ロケットとかそういうの用いないで、直接宇宙に行くことができるようにしたのが、宇宙エレベーターってわけさ」

 

インデックスの疑問にアラタがそう答える

そしてもう一回ちらりとアラタは宇宙エレベーターを見やる

既に開発はほぼほぼ終わり、あの建物のてっぺんはもう宇宙にまで行っているのだろうが…なんだろう、妙に胡散臭いというかなんというか

光学迷彩かなんかで存在を隠してでもいたのだろうか

 

「おぉ…科学サイドバベルの塔さえも現実のものにしようとしてるんだねぇ…」

 

ほぇー、なんて言葉を紡ぎながらインデックスはその建物を見つめる

当麻もアラタもそれに釣られて、しばらく宇宙エレベーターを見ていたが、不意に曲のイントロが耳に届いてきた

 

三人は一斉にそちらを見やる

 

それは、路上ライブ、というものだろうか

人垣を潜り抜けていった先には、一人の女の子が電子ピアノの演奏しながら、美しい歌声を披露している

 

その一人の女の子が紡ぎ出す美しい歌声とメロディの旋律に、インデックスは一瞬で虜になった

 

「路上ライブってやつか? うまいもんだな」

「あぁ。前聞いた時よりも格段に上手になってる」

「え? お前、あの子と知り合いなのか?」

「知り合いってほどじゃない。以前ちょっとしたトラブルに巻き込まれたあの子を助けただけさ」

 

 

 

 

<♪グローリア>

 

 

 

 

◇◇◇

 

「八十八の奇跡ぃ? …そういえば、そんな事件もあったわねぇ」

 

常盤台のカフェテラスで優雅に紅茶を楽しんでいた食蜂操祈は、取り巻きの女の子からそんな話を聞いた

 

「三年ほど前の話なんです。あのオリオン号の事故でスペースプレーン計画が凍結されて、あの宇宙エレベーターの建設が始まったらしいんです」

「へえぇ?」

 

話を聞きつつも、相槌を入れて食蜂はカップに口をつける

取り巻きの女生徒は話を続けた

 

「なんといっても、世界初の宇宙エレベーターですから。しかも、この学園都市に建設する苦労と困難は並大抵ではありません、そんな苦難を乗り越えて、ついに完成させたのが、あのエンデュミオンなんです」

 

そう言って取り巻きの女生徒は天にそびえ立つあの宇宙エレベーターを手で指した

確か最近そんな発表なんてものがあったなぁ、と食蜂は紅茶を嗜みながら思う

 

「けど、確かに夢のある話といえば、話よねぇ」

「そういえば女王、話を断ち切ってすいませんが、今話題沸騰のアーティストをご存知ですか?」

 

不意にこちらに話を切り出してきた縦ロールの女生徒―――帆風潤子へと食蜂は視線を見やる

 

「アーティストぉ? …うーん、私そっち方面は疎いから、あんまり知らないわねぇ」

「ARISAと言うのですが、私も興味本位で聞いてみたものの、これが中々。宜しかったら女王もどうですか?」

「へぇ? 帆風さんが言うんなら間違いはなさそうね…っと…」

 

彼女から渡されたイヤホンを食蜂は耳に付けてみる

 

「…うん?」

 

なんでだろう、初めて聞くはずなのに初めて聞いた感じがしない

具体的には割と最近聞いた記憶があるような、ないような

 

「…ねぇ、帆風さん。良かったら、このアーティストの画像ってないかしらぁ?」

「? 少々お待ちください…、確か普通に顔を出していたから…ネットを探せばあるかと…。あ、見つけました、この人です」

 

そう言って帆風の携帯に映し出された画像を覗き込む食蜂

携帯の画面に映っていたのは、以前美琴とアラタと一緒に出掛けていた際に遭遇したあの女の子だった

 

「あらぁ。やっぱりあの子だわぁ」

「え? 女王ARISAと知り合いなのですか?」

「知り合いっていうかぁ…ちょっと知人と出かけてる時に色々合ったっていうかぁ…」

「さすがは女王、既にARISAとお知り合いだったとは」

 

あれを知り合いというカテゴリにいれても良いのだろうか

触れ合った時間があまりにも短すぎる

とりあえずテーブルに置いてあった紅茶を改めて口に付けて何となく空を見上げる

なんでだろう、自分にそんな能力なんてないはずなのに、変な胸騒ぎがする

そんなことを思いながらまぁなんか起こっても自分にはどうにもできないと斬り捨てると、紅茶の味を堪能するのだった

 

◇◇◇

 

やがて目の前の女の子の演奏は終了する

曲を最後まで引き終えて、歌い終わった彼女は座っていた席から立ちあがって、聞いてくれたギャラリーに向かってぺこりと一度お辞儀をして

 

「ありがとうございました!!」

 

と元気よく返事をするとパチパチと大きな拍手が巻きおこる

やがて人垣たちは散っていき、その場にはインデックスと上条当麻、そして鏡祢アラタの三人とライブをしていた女の子が残る

インデックスはまだ興奮が冷めやらないのか、大きく拍手をしながら小さく飛び跳ねているほどだ

彼女はそれに気が付いた後、アラタの顔を見て

 

「あ! 貴方は何時ぞやの! 私は鳴護アリサ―――」

 

自己紹介をしながら歩み出した彼女の足は、地面を張っていた機材のケーブルに引っかかる

ぐい、といきなり足を取られたアリサは勢いよくバランスを崩してしまう

 

「わぁぁぁぁ!?」

 

すかさず当麻が動き、彼女を支えようと抱き止める

しかし思いのほか勢いが強かった彼女の転倒は当麻は受け止めきれず、彼自身もバランスを崩し後ろに倒れこんでしまった

 

「い、いでで…! ―――はっ!」

 

そして当麻は気づく

今の自分の状況がどうなっているのか

外見的には女の子が押し倒した感じにはなってるだろうが、確実に当麻はその体に彼女の胸の感触も伝わっているはずだ

 

「おー当麻。相変わらずのラッキースケベだな」

「ご、ごめんなさい…」

「アラタサン!? て、あの、俺もごめん…!」

 

顔を赤らめるアリサと、その光景を見て茶化すアラタ

同じように当麻も顔を赤らめるが、彼はとあるあくまのことを忘れていた

ゆっくりと近づいて、影が当麻の顔を覆う

それが誰なのかは一発で察した

 

「とぉまぁ…!!!」

 

激おこぷんぷん丸なインデックスがそこにいた

そうだ、当麻は慣れている、そしてアラタも分かっている

こうなった当麻に何が待っているのか

当麻はダメもとでアラタに視線で助けを求めたが、彼はめちゃくちゃいい笑顔でサムズアップをしていた

 

助ける気ゼロ

 

 

 

 

「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

拝啓、お父様

本日も上条当麻は不幸でありました

 

◇◇◇

 

「本当にすごかったんだよ! 感動したんだよ! ね!? とうま、あらた!」

 

片付けを手伝い、四人は陽を避けるべく影のある場所まで軽く移動していた

当麻は手すりによっかかりながら空を見上げつつ、インデックスの方へと振り返る

彼の顔にはインデックスによる歯形が結構ついているが―――まぁいつものことだ

 

「あぁ…俺は、あんまり歌とか聞かないけど、それでも、すごかったっていうのは、わかったよ」

「同意だ。俺は作業とかする時にたまに音楽を聴くけど、聞いててとても気持ちが良かったよ」

「うんうん!」

 

嬉しそうに頷くインデックスを尻目に、当麻は携帯を取り出しながら

 

「お前の曲、携帯に全部落としたんだぜ」

「速いな当麻。ま、俺もCD買ったんだがな」

 

実はこっそり買っていたのである

具体的には当麻が噛まれている時に、割と普通に(ちなみにそこで二度目の邂逅だったアラタとアリサはそこで名前も交換している)

褒められることになれていないのか、アリサは顔を赤くしながら軽く俯きつつ

 

「き、気に入ってくれたのなら、嬉しいな…」

 

少し恥ずかしそうにそう答えた

 

「ふっふーん。私は歌にはちょっとうるさいんだよ。でもでも、ありさのはほんものだね! 詩にスペルを乗せたりとかしていないのに、あんなに大勢の人を魅了してるんだもん!」

「? すぺる?」

 

いやな単語が聞こえたときの当麻の行動は早かった

すかさず彼女の口元を押さえて余計なことを言わないようにした後で、アラタがそれをフォローする

 

「い、いやぁ、とても綺麗な歌声でさぁ! 一瞬、テレパスななにかと思ったぐらいさ!」

「! あはは。それはないかな。私無能力者(レベルゼロ)だし」

「? そうなんだ?」

 

何やら後ろの方でがぶがぶという咀嚼音が聞こえてきたがするが、アラタは一切気にしないことにする

気にしたら負けでござる

 

「うん。前は悩んだこともあったけど、今は感謝してる」

 

ゆっくりと彼女は語りだす

その真剣な面持ちに、先ほどまでがぶがぶしていたインデックスも彼女の言葉に聞き入っていた

アリサの言葉に、アラタが聞き返す

 

「…感謝してる? どうして」

「だって、能力があったら、きっとそっちの方に頼ってたと思うし、何より歌っていなかったと思う」

「…そんなもんか?」

 

インデックスに噛みつかれたままの当麻もそう問いかけた

っていうかもう完全にインデックスに噛みつかれているのは日常になりつつあるのでスルーしてる感じが凄まじい

というかよく見たら聞いてるインデックスもまだかじっていた

 

「うん!」

 

元気に返事をしながら彼女は軽く前に出て、くるりと身を翻すとこちらに向き直る

 

「私、勉強とかもダメで、唯一できたことが、歌を歌うこと。なら歌おう…そのためなら、何だってして見せようって!」

 

迷いなく言い切る彼女の姿に、いつしか三人は聞き入っていた

どこまでも明るい笑顔で、鳴護アリサは続ける

 

「いつかね、大きな舞台で、大勢の人の前で歌えたらいいなって。―――それが、今の私の夢かなって!」

 

そうしてもう一度笑顔を作り出す鳴護アリサ

どういうことだろう、今いる場所は陽が当たらない日陰なのに彼女から後光がさしている気がする

自分たちが普段やってることが小さく見えるくらいに彼女を花道でオンパレードしているっ

それぐらい純粋に自分の夢を語る彼女の姿は、今の三人には眩しすぎた

 

「あう! とうま! なんだかありさがきらきらしてまぶしいよ!」

「ぐ! 普段の俺たちの日常が荒んで見えるっ…!」

「めちゃくちゃいい子じゃねぇかコノヤローッ!」

 

無意識にそう叫んでしまうくらい彼女は光り輝いていた

そんな彼女の輝きから手で覆いガードしていた時に、不意にアリサの携帯から着信音が鳴った

 

「!」

 

アリサはすかさずいったん後ろを向いて携帯を開き、その画面を見る

そのあとで一瞬驚いたように目を見開くと、もう一度首だけを動かしてこっちを見ると

 

「あ、あの…。いいかな?」

 

本当にいい子である

もちろん断る理由なんかないので、三人は手で〝どうぞ〟というジェスチャーをする

「ありがとう」と短く言葉をかけたのち、アリサは携帯に耳を当てて話し始めた

 

「は、はいっ。えぇ、そうです。………はい………えぇ!? 本当ですか!! はいっ…はいっ! ありがとうございます!」

 

何やらお仕事の話かなんかだろうか

あるいはどこかの大学やら学校やらでライブでもしてほしいという依頼の電話か何かだろうか

電話の内容が予想できないインデックスと当麻、アラタの三人は顔を見合わせて首を傾げる

やがて電話を終えた彼女がゆっくりとこっちを向いた

 

「…オーディション、受かっちゃった」

 

オーディション

言っている本人も思考が追い付いていない感じでそう呟いた

待って欲しい、オーディションというのは、あのオーディションだろうか

具体的にはCDとか自費とかで販売とかするのではなく、ちゃんとしたレーベルかなんかで発表できるあれとかだろうか*1

 

「私、デビューできるんだって!!」

 

やったー!! と全力で喜びを体現する彼女を見て、ようやく当麻達も理解に追いついた

 

「ってことは! プロじゃん! テレビに出られるのか!」

「それだけじゃねぇ、正式にCⅮとかも出るってことじゃん! エイベ〇クスとか!」

「え? てれび? …えぇ!?」

 

当麻とアラタの言葉にインデックスは反応し、目を星みたいに輝かせてアリサの方に少し食い気味に歩み寄った

あまりの勢いに少しアリサも戸惑いつつも彼女に笑みを向ける

 

「すごいよありさ! カナミン*2と同じになれるんだよね!」

「か、カナミン?」

「これは絶対お祝いしないとだね!」

「う? うん」

「私たちこれからごはん食べに行くところだったんだ! 〝とっても豪華〟なごはんを!」

 

なんか知らん間にハードルがバリクソ上がっていた

とっても豪華、な部分を聞いた当麻は冷や汗を流し始める

 

「え、でも―――」

「いいよね!! とうま!!」

 

そう言ってじろりと当麻を見やるインデックス

その眼光は言っている―――拒否ったらかじるぞ

これはもう断れない…そう思った当麻はがっくりと肩を落としたのだった

そんな当麻にアラタも苦笑いをしつつ

 

「…ほら、俺も金出すからさ」

「すまねぇ…」

 

◇◇◇

 

唐突ではあるが、場所は移り変わる

そこは黒鴉部隊と呼ばれる部隊の訓練施設だ

その訓練の教官*3をしているのは、名護啓介と呼ばれる人物である

 

「それにしても、最初に彼が自分を売り込んできたときは驚いたわね」

 

そんな訓練光景を高台の方から見守っているのは、ゴスロリ服を着た少女である

彼女の名前は、レディリー・タングルロード

外見はまさしく少女にしか見えないが、倒産寸前のオービットポータル社を買い取って、宇宙エレベーターの開発までこじつけた天才社長なのである

そんな彼女の左右には、二人の人間がいた

 

「それで、面白半分で採用したら思いの外いい指導するのですもの」

 

そんな彼女の隣にいる二人のうちの一人―――水城マリアはそう呟いた

生き長らえた彼女はレディリーに拾われて、社長秘書という役職を与えられたのだ

 

「貴女も大事ないかしら? 例の彼女の保護任務、貴女にも出てもらうけど」

「問題はありません。試運転にも名護さんに付き合っていただきましたし…後は私次第」

「そう。なら問題ないわ。期待してるわね」

 

そして今度はもう片方の人間にレディリーは視線を向ける

 

「貴方にも期待してるのよ。イーサー」

「わかっているさ。俺たちを招き入れてくれたこと、感謝しているぞ、タングルロード」

 

イーサーと呼ばれた男性は笑みを浮かべながらレディリーに返答する

イーサー…突如として彼もレディリーの前に現れ、自身が率いている組織ごと売り込んできたのだ

戦力は必要だったからというのもあるが、理由の大半は面白そうと判断したからだ

きっとイーサーはイーサーで何かを企んでいるのかもしれないが、それはそれで問題ない

レディリーの目的が達したときは、もう関係などないはずだから

 

 

 

 

 

 

「シャットアウラくん」

 

訓練を一通り終えた黒鴉部隊のうち、一人を名護は呼び止めた

黒い美しい長髪をたなびかせ、その少女がこちらを振り向く

彼女の名前はシャットアウラ・セクウェンツィア

この黒鴉部隊の指揮官…リーダーである

 

「名護さん、何か」

「君用に調整されたイクサナックルが完成した。それを渡そうと思ってね」

「! 完成したのですか!」

 

驚く彼女に名護は懐から黒いイクサナックルとベルトを取り出し、それを直接手渡した

本来イクサナックルは白と赤がベースカラーであるが、彼女に渡したナックルは白い部分が黒鴉部隊をイメージした黒色へと変わっており、シャットアウラ用にいろいろと調整を加え完成したのがこのイクサナックル(ブラック)なのだ

 

「君の能力に合わせてイクサカリバ―にはパレットを打ち出す機構を組み込んである。正直能力とかは俺はわからないが、君なら使いこなすことができるだろう」

「…本当にありがとうございます。わざわざこのようなものを用意していただいて、感謝しかありません」

 

シャットアウラは少し融通の利かないところがある

しかしそれを差し引いてもこの部隊は彼女を信頼しており、彼女もまた部下たちを信頼している

実に〝最高〟な部隊だ

 

「今日の任務で試運転を兼ねるかもしれない。構わないか」

「望むところです」

 

そう言って彼女は受け取ったベルトとナックルを見つめ、ナックルを持つ手に力を入れる

 

「わかった。ではそれまで身体を休めておきなさい」

「了解です。では失礼します」

 

そう言って彼女は黒髪を翻し、その場を後にした

名護はそんな彼女の背中を見送ったのち、ちらりとレディリーらの方へ視線を向ける

 

(…レディリー・タングルロード。事前情報では魔術師の疑いありとのことだったが…。それに隣の男、イーサーと言ったか。アイツに関しては何も得られなかったが…さて)

 

思考しながら、名護は視線を険しくする

そんな視線を知ってか知らずか、レディリー・タングルロードは口元を小さく歪に歪ませた―――

*1
なおここら辺は想像の域を出ないので実際はどうなってるかは知らない

*2
インデックスが好んで見ているテレビアニメ

*3
本人はコーチと言い張って譲らない




イーサーという名前に勘の鋭い方は誰か気づくと思います
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