楽しんでいただける人がいるかわかりませんがいてくれたのなら嬉しいです
(。-`ω-)
最近マキブオン動物園を購入しました
以上報告でした
少しだけ時間は戻る
具体的には、シャットアウラに鳴護アリサの保護を依頼する少し前
「…これは?」
不意に渡された時計のようなものをレディリーは訝し気に見ながら、目の前の男―――イーサーへと視線を向ける
向けられた視線を軽く躱しながらイーサーは
「万が一の保険のようなものさ。そいつはちょっと別の世界から奪ってきた力だ」
「保険…。そうね、何事も上手く行くとは限らないものね。保険というのは大事だわ」
「そうだろう? 備えあればってやつだ」
その言葉を聞いて、レディリー・タングルロードは受け取った時計のようなものに改めて視線を落とした
そこには、歪ませたような〝黄色い化け物〟のような絵が描かれてあった
◇
そして時は戻って現在
シャットアウラは目の前に寝かされている鳴護アリサを見つめる
命令のままにここに連れてきたはいいが、シャットアウラは一つだけ、確かめないといけないことがあった
傍らに置いてあるアリサのアクセサリーを持つと、自分の持っている欠けたアクセサリーを掛け合わせる
すると欠けていた部分がきっちり埋まり、本来のアクセサリーの姿になった
なんなのだ、この女は…
「…どうしてこのブレスレットを」
誰にでもシャットアウラは呟く
思考すればするほど意味が分からなくなり、考えが纏まらなくなってくる
「やっぱり。あなたたちは惹かれ合ってしまうのね」
そんな時自分を見透かすかのような調子で入ってきたのはレディリー・タングルロードだ
彼女はいつもと変わらない様子でつかつかと歩きながらシャットアウラの隣に立つ
「あの日オリオン号に乗っていたのは、乗客乗員合わせて八十八人。そして事故の直後、生存者八十八人の無事が確認された…」
口元に小さく笑みを浮かべたレディリーは続ける
「誰もが、〝奇跡〟と呼んだわ。―――だけど、本当は一人死亡者がいた」
レディリーはさらに続ける
そしてそれはシャットアウラも知っている事実だ
「オリオン号のパイロット。〝ディダロス・セクウェンツィア〟…貴女の父親。だけど、その事実に気が付いた時にはもはや手遅れ。世界は〝奇跡〟に湧き、八十九人目の存在はなかったことにされて…〝奇跡〟だけが残った」
レディリーは横たわるアリサを見つめながら
「八十八人しかいないあの場で突如現れて…奇跡を演出した少女―――それがアリサよ」
「…貴女はあくまでも奇跡と言い張るのか」
「だって本当は誰も助かるはずなかったのよ。あの事故は」
ぴくり、とこめかみが反応する
「…なんだと」
「ソラならうまく行くかと思ったのよ? だけど貴女の父親以外みんな助かるなんて、これが奇跡でなくて何だというの?。まぁ、思わぬ副産物が手に入ったのだから、結果オーライ、と言えるのかしらね」
「―――お前、なのか」
小さく呟くとレディリーは挑発的な視線をこちらに向けたまま笑みを浮かべている
目の前のこの女が―――元凶…!
「お前が…!!」
行動に迷いはなかった
彼女は仕込んでるスーツに取り付けてあったユニットからナイフを抜き取ると一直線にレディリーの胸元へとそのナイフを突き立てた
ずぶり、と確かにナイフは心臓を貫き、瞬く間にその活動を停止させ絶命させる
しかし妙な違和感が拭えない
確かに心臓を貫いて殺したはずなのに、なんなんだこの感覚は
「おいおい。ずいぶんなことをするじゃないか、黒鴉の隊長どのは」
癪に障る声色がシャットアウラの耳に入ってくる
そちらの方へ振り向くと、イーサーが不敵な笑みを浮かべながらこちらに向かって歩いてきていた
「…っ」
どう見ても友好的な雰囲気ではない
だがどうでもいい、こいつも確かレディリーに与していたはずだ
そう考えてシャットアウラはナイフを構えながら
「―――ウフフフッ…」
その時、倒れ伏したレディリーの方から確かに声が聞こえた
もしやと思い彼女の方を見ると今さっき突き刺したレディリーがゆっくりと上半身を起こしていたのだ
「…馬鹿なっ!」
「アッハハッ!」
上空からの声が聞こえる
すかさずそちらへ視線を向くと、いつか地下駐車場で交戦したあの金髪の女がシャットアウラに向かって急襲を仕掛けてきていた
「お前はっ!」
あの時の、と声を出す暇もなく、シャットアウラは相手の攻撃の対応に追われる
二撃、三撃と攻撃をいなし距離を開けるとイクサナックルを取り出そうとして―――背後に移動してきたイーサーによって組み付かれた
「ぐっ!」
ぎりぎり、と力を入れられてナックルを地面に落としてしまった
そして地面のナックルをイーサーはさらに蹴っ飛ばし容易に回収できないようにされてしまう
「ナイフで刺されるのはもう何度めかしら? 十六か、十七回目くらいかしらね?」
「…化け物め!!」
憎悪を募らせた目で、シャットアウラは罵倒する
しかしレディリーはそんなことなどどこ吹く風といった感じで横たわっているアリサの近くへと歩み寄った
「そうかしら? 私もたいがいだけど…あなたたちも十分化け物だと―――」
「シャットアウラくんから離れなさい」
また別の声が聞こえる
声の方へと振り向くと、そこにはイクサへと姿を変えた名護の姿がいた
彼はガンモードにしたイクサカリバーを構えながらゆっくりと歩み寄ってくる
「名護さん…!」
「…あら。いたわね。貴方も」
「シャットアウラくんを解放してもらおうか。手荒な真似をする気はない」
じりじりと詰め寄るイクサを、レディリーはただ見つめる
しかしこのとき、イクサ…名護の方にも失念していたことがあった
相手にはもう一人いたということに
ズドン、という背後からの衝撃が突然イクサを襲う
「ぐっ!?」
すかさず振り向くとそこにはボウガンのような武器を構えた歩いてくるザモナスだ
ちっ、と仮面の下で舌を打つ
そういえばアイツの存在を忘れていた…!
「オイタはダメだなぁ…ねぇ? 名護さん」
そのまま何発かボウガンの一撃を貰い、イクサは体制を崩す
体制が崩れている間にザモナスは接近し今度は腹に何度かパンチを叩き込み、最後に蹴っ飛ばすことで距離を開けた
そしてそのままザモナスはウォッチのボタンを押してドライバーを回転させる
<ザモナス タイムブレーク!>
電子音声を受けながらザモナスはそのまま跳躍してライダーキックを放つ
体制を崩しながら、それを見たイクサはナックルを操作し何とか受け止めるべくブロウクンファングを放った
<イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ>
「はぁぁぁぁ!!」
繰り出されるザモナスのザモナスタイムブレークとイクサのブロウクンファング
互いの技がそれぞれ激突し、火花を散らしたが、競り勝ったのザモナスの方だった
ブロウクンファングを突破してイクサにタイムブレークを直撃させてザモナスは地面に着地する
「ぐあぁぁぁぁっ!?」
一方で直撃を受けたイクサは地面を転がりながら変身を解除させられると同時、そのままぐったりと倒れ伏した
どうやら今の一撃で気を失ってしまったみたいだ
「ふふ。愚かな人。関わろうとしなければ何もしなかったのに」
くすくす、と笑いながらレディリーはイーサーたちへと指示を飛ばした
「彼女たちは生かしたまま拘束してあげて。…本当の〝奇跡〟が起こる瞬間を、楽しみにしていなさい?」
「―――お前が何を企んでいようとも、必ず潰してやるッ! 必ずだっ!!」
「ふふ。せいぜい期待してるわ」
最後にシャットアウラはそう吠えるとベルウッドにそのまま連れていかれた
そんな彼女を追うようにザモナスは名護を背負うと歩いていく
それを見届けるとレディリーは鳴護アリサの方へと向き直る
「さて。あとはアナタね」
そういうとレディリーはアリサの顔のすぐ上をなでるようにゆっくりと動かした
するとそれを合図にするかのようにぴくり、と彼女の身体が震え瞼を開く
僅かに戸惑いを見せるアリサの目に、レディリーの顔が映る
「おはよう。貴女にお願いがあるの―――」
―――鳴護アリサさん?
◇◇◇
宇宙エレベーター近辺には、大勢の人がにぎわっていた
理由は言わずもがな、鳴護アリサのライブを見るために他ならない
エンデュミオン警備にあたる立花眞人も、当然その場にいた
傍らにはG3ユニットを携えている彼は、どこか鎮痛な面持ちだ
頭の中でリフレインするのは、G4を携えたあの女性との会話
―――ねぇ、貴方はどうして戦っているの?
それに明確な答えも出せないままに、ズルズルと引きずっていたらこの様だ
「いいや。今は目の前の仕事に集中しないと…!」
パンパン、と自分の顔を両手で叩きながら気分を入れ替える
そうだ、今このことについて悩んでいても仕方がない
まずは自分の職務を優先しなければ
「あの、すいません」
「! あ、はいっ!」
背後から声を掛けられる
思考に埋没していたおかげで一瞬反応が遅れてしまったが、問題なく返答ができた
声のした方へ振り向くとそこには一組の男女だった
二人ともスーツを着こなしていて、女性の方が言葉を続ける
「すいませんが、もしかして…立花眞人、どのではないですか?」
「え? は、はい。確かに自分は立花眞人ですが…」
「やっぱり。初めまして、私はザイアコーポレーションの
「不破伊武だ。今回共同で仕事をすることになっているエイムズの隊長をしている」
そういえばそんな話を黄泉川から聞いていた気がする
自分のことばっかりでそう言った重要なことを完全に忘れていた
すかさず眞人はG3ユニットを置いて
「失礼しました! 自分は警備員所属の立花眞人と申します」
気を付けの姿勢を取り、姿勢を正す眞人
それを見たユアは微笑み
「お会いできて光栄です。黄泉川さんからお話は伺ってます」
「! 黄泉川さんをご存じなんですか?」
「えぇ、もっとも、偶にお酒飲むくらいですけど、ね」
そう言ってユアは小さく笑みを浮かべる
その隣の不破伊武とやらは時計を見ながら
「こちらから言っといてなんだが、時間が惜しい。仕事の内容を確認したい」
「わかりました。では黄泉川さんたちの方に向かいながら…」
そう言って三人は歩いて行った
そうだ、悩むのは後でもできる
今はただ、目の前の仕事に全力を捧げよう
◇◇◇
「…アリサはやっぱり…」
「えぇ、インデックスにも聞いたんだけど、帰ってないって」
「…まぁた変なことに巻き込まれるのねぇ、アナタは」
とある病院にて
爆風に巻き込まれて多少なりともケガを負ったアラタは検査入院という名目で病院のベッドの上にいた
隣の病室では当麻も入院しておりそっちにはインデックスもいるだろう
こっちの病室には美琴と操祈の二人がやってきている
ちなみにあの場にいたみのりは大した怪我もなく今は一度燈子の所へと戻っているということを聞いている
そんな時、ガラガラと扉を開けて入ってくる人物が一人
「…おいおい、お前ら何回入退院記録増やす気だ」
「このままだと、ギネスに登録できてしまうかもしれませんよ」
入ってくるのは門矢士と浅上藤乃の二人
士はやれやれといった顔であり、藤乃は笑ってはいるが同時に困りもしているような顔だ
「へーい、かがみん?」
そうしてると不意に扉から同じように入ってきた土御門が入ってくる
グラサンをきらりと光らせた彼は軽く手を上げながら
「悪い、ちょっといいかにゃー?」
◇
「決着は僕たちでつける」
土御門に呼ばれ当麻の病室に入る
そこには既にステイルと霧島斎堵がおり、開口一番ステイルがそう口を開いた
「決着?」
「レディリーは魔術側…こちら側の存在だ。彼女は、 鳴護アリサを核にして術式を構築しようとしている」
「術式? どんな」
「エンデュミオンを用いたかなり大きなやつだぜぇい。使われたら北半球が全滅するくらいのな」
アラタの言葉に土御門が返答する
北半球全滅、という言葉に戦慄する
そんな大規模な大型魔術を、あの社長は仕事の裏側で進めていたのか
「ともかく、これは僕たち魔術師の仕事だ。君たちは引っ込んでいろ」
「けど、相手は宇宙にいるんだ。そこらへんはどうするつもり?」
「…いざとなれば、核を始末する。それでもダメなら、あの塔ごと破壊する」
核を始末する、という言葉を当麻とアラタは聞き逃さなかった
「…それはつまり、アリサを殺すって意味かよ」
「…まぁ、そうなるな」
当麻は拳を握りしめる
彼の中で燃えている感情は、アラタも同様だ
「アリサは…アリサは夢に向かって一生懸命な女の子なんだっ…! どうしてそんな彼女が、北半球をぶっ壊す悪者にされないといけねぇんだ!」
「…なら、やることは一つだな、当麻」
お互いに顔を見合わせて頷き合う
そして当麻はベッドから立ち上がって、アラタもまた自分の病室へと戻っていった
「わわ!? と、とうま、今あらたがスゴイ勢いで…ってとうま!? まだ寝てないとダメなんだよ!?」
いそいそと着替え始める当麻を見ながら、ステイルははあ、と大きい息を吐きながら
「相変わらず、馬鹿な奴らだ」
「ま。それがあの子らのいいとこじゃない」
「はは。だにゃー」
そんなステイルのつぶやきに、斎堵と土御門が笑み交じりでそう返す
正直、そう返すのはわかりきっていたのだから
◇
がらりと自分の病室の扉を開ける
開ける前病室から出てきた士と藤乃はとすれ違う
藤乃は怪訝な顔をしていたが、士はなぜか笑んでいた気がしていた
まぁそんなことはどうでもいい
今は時間がないのだ
「あ、戻ってきた―――って、何してんのよ!?」
「? 戻ったのぉ―――うぇ!?」
部屋にいた美琴と食蜂が顔を赤くして驚きの声を上げる
何故ならば今しがた入ってきたアラタは上半身の服を脱いでいたからだ
二人の戸惑いを無視して、アラタは着替えへと手を伸ばす
「ちょ、ちょっとちょっと! いくら何でもまだ寝てないと―――」
「悪いけどそんな悠長なこと言ってらんない、急がないとアリサが死ぬ…!」
「え!? ちょ、意味わかんないんだけど!?」
そのまま着替え終わりアラタはそのまま部屋を出ていこうとする
「ちょ、アラタっ!」
戸惑いを隠せないまま彼を追いかける美琴とそれを少し後ろから眺める食蜂
そもそも食蜂にとっては展開についていけないレベルである
とりあえず廊下で当麻らと合流するとお互いに頷いて―――
「かみやんたちならそういうと思って、もう用意してあるぜぇい」
土御門の言葉に当麻とアラタが振り向いて首をかしげる
表情を見ると土御門は笑顔を浮かべていた
教室で見るような、そんないつもの笑顔
そんな彼らをこっそりと、御坂美琴によく似た女の子たちが眺めていた
◇
「さて。こいつは、俺も仕事しないといけなくなるかもな…」
通路の壁に背中を預け、当麻らの話をこっそり聞いていた門矢士はそう呟く
彼は壁から離れると歩き始める
刹那、目の前に現れるオーロラカーテンをくぐると、彼の姿はなくなっていた
◇
「ふむふむ。なーるほどー?」
ぴこぴこと女の子が頷くとアホ毛が揺れる
今いる場所はとある病院の中のまた別の病室
アホ毛を揺らしていた女の子―――
「なんか大変なことになってるっぽい? って、ミサカはミサカは大きな声で呟いてみたり!」
そんな
「ちっ…せェなァ…独り言ってレベルじゃねェぞ…たく」
そう言ってごろんと一人寝返りを打つ
それに対して
「おーい、アクセラレーター。缶コーヒー買ってきたぞー」
ちょうどその時、ガラガラと病室の扉を開けて入ってくる人物が一人
浅倉涼だ
「あ! ちょうどいいところにアサクラも帰ってきた! ってミサカはミサカは喜んでみたり!」
「? …どうしたの
それを聞かれると、彼女は天使のようににっこりと笑顔を作るのだった
◇◇◇
独房に一人の男女がいた
一人は名護慶介、もう一人はシャットアウラだ
特に会話などはない
変に喋ると逆に消耗してしまうからだという事を、二人は理解していたからだ
シャットアウラの脳裏には、レディリーから言われた言葉が再生される
―――貴女の父親以外みんな助かるなんて、これが奇跡でなくて何だというの?―――
ギリ、と歯を食いしばる
そんな時、独房の外で何かが殴られる音がした
数秒の後、扉が開かれる
「…名護さんがこんなミスするなんて珍しいですね」
入ってきた人影は一瞬透明になったと思ったらそれが割れるように弾け飛び、そこに一人の青年が姿を現す
見覚えのない男性に、シャットアウラは疑問符を浮かべた
「すまない、迷惑をかけたな、ワタルくん」
その青年の名はワタル、という名前らしい
ワタルはシャットアウラと名護の拘束を解くと、シャットアウラの方に何かを差し出してくる
それは掴まる際に落としたイクサナックルだ
「それは―――」
「君のでしょ? 黒鴉の人たちが予備を持ってきてくれたんだ」
渡されたナックルを受け取りながら調子を確かめる
問題はない、独房の中で体力の回復に努めていたから体力も万全だ
ふと、シャットアウラは名護の方を見る
「…そういえば、いつ仲間を呼んだんですか?」
「靴に仕込みがあってね。万が一と思っていた仕掛けが、功を奏したみたいだ」
…この人は無駄に用意周到だ
思わず、本当に思わず小さく苦笑いをしてしまった
「黒鴉の人たちの助力もあってこそですよ。今も外で待機してます。シャットアウラさん」
「あぁ。助かる」
ワタルにそう短く返答してシャットアウラは外で待機している部下と合流する
後ろにワタルと名護がいるのを確認すると会話を切りだした
「状況は」
「レディリー達はすでに宇宙に発ったようです。作戦は第四フェーズへ移行…
「…
「できてます」
◇
彼女たちの後をついていき、たどり着いたのはポッドのある部屋だった
中心にある天高くそびえる塔を奔るように、ポッドがいつでも発射できるように準備されている
いつものスーツの上から宇宙服を着込んだシャットアウラはそれに乗り込むと、ちらりと己の部下を見やった
「私はこれから決着をつけに行く。…誰も上にあげるな」
言いつつ、彼女は部下の後ろにいる名護へと視線を向ける
そんな事を言われると予想していたのか、名護は頷いて
「…無茶はしないようにな、シャットアウラくん」
「…ありがとうございます。では、行きます」
そう短く会話をなした後、ポッドはまっすぐ上に向かって射出された
射出されたポッドはすぐに見えなくなり、レールを駆け抜けていた音も聞こえなくなっていく
彼女を見送った名護はワタルへと視線を移し
「ではワタルくん、我々も我々の戦いをしよう」
「分かっています、名護さん」
頷いて二人は外へと歩く
彼女が彼女の戦いをするのなら、自分たちは自分たちの戦いをするまでだ―――
◇◇◇
宇宙エレベーター
すでに建設された内部では大勢の観客で賑わっている
その観客の大勢は、鳴護アリサのコンサートを楽しみにしているのが大半だ
老若男女問わず、鳴護アリサの歌を聴くためだけに、ここに集った人たち
そんなある一室にて
鳴護アリサは宙空にふわりと浮きながら、体育座りのポーズをしていた
現在いる場所は宇宙、故に自分の身体は無重力だ
「…奇跡」
何の気なしにアリサはその言葉を口にする
あの時、あの場所で目を覚ました時、レディリーから言われた言葉
―――私の為に歌ってくれない? 貴女の奇跡の歌を―――
ぎゅ、と拳を握りしめる
そして彼女は、呟いた
どこまでも自分に優しくしてくれた、大好きなツンツン頭が特徴な一人の少年の名前
「当麻くん…」
…どうしてこうなってしまったのだろう
ただ自分は歌が好きだったから、それを聞いて人たちが喜んでいるのならばそれだけでいいと思っていたのに
「まだ悩んでいるの?」
その時扉が開かれて。そこからレディリーはこちらに向かって宙を移動してきた
彼女の表情には、僅かなながら
「道端で歌っていた貴女に、こんなに大きな舞台を提供してあげたというのに。嫌ならそれでも構わないわ。ただそうなった時、この会場に来てる客は全員死ぬことになるけど」
アリサの表情は見えない
しかしある決意をした彼女はかつ、とガラスに足をつけレディリーを見る
真っ直ぐと彼女の眼を見て、アリサは己を鼓舞するように宣言した
「歌います。けどそれは自分の為でも、ましてや貴女の為でもない…!」
覚悟を持った瞳を、アリサは向ける
「私の歌を楽しみにしてくれている皆の為です…!」
その言葉を聞いたレディリーはまた小さく微笑む
構わずに、アリサは続けた
「あの人たちのために、私は歌います。…貴女が何を企んでようと、…その企みを上回る、奇跡の歌を―――!」
ハッキリとした自分の意志を、鳴護アリサはレディリーに向かって叩きつける
奇跡だなんだなんて関係ない
自分の歌を楽しみにしているあの人たちに報いるために、歌うだけだ―――!
◇◇◇
「…まさかそんなことが裏で起こっていたとはね」
<あぁ。先日誘拐された子があのエレベーターにいるみたいでね。なんでもその子を核とした大型の魔術とやらを実行しようとしてるみたいだ>
ちらり、と天へとそびえる宇宙エレベーターを男は見やって、電話相手に男性が受け答えする
彼の持っている携帯からは女性の声が聞こえていた
<とりあえず宇宙には私んとこの奴が連れと一緒に止めに行く。すまないが、貴方には地上の方を手助けしてほしい。何か用意していないとは言い切れないからね>
「分かった。地上の援護は引き受けよう」
<助かる。それではまた後で>
そう言って電話は切れた
男性は携帯をしまうと停めてあった〝サイクロン〟へと向かおうとしたところで―――
「…お前が本郷猛、だな」
ふと呼び止められる
声のした方へと振り向くと、妙な恰好をした男性が一人ゆっくりと歩いてきていた
その男はサングラスのようなものをしており、その男がどこを見ているのかはわからない
「―――いかにも。俺は本郷猛だ。…そういうお前は何者だ」
じりじりと身構えながら、男性―――本郷猛は問いかける
だが男は懐から一つのドライバー…ジクウドライバーを取り出してそれを腰に押し当てて装着する
その後でまた懐から時計のようなアイテムを取り出してウェイクベゼルを動かして、ライダーの顔を形作りながら
「言う必要はない。…これから消える奴にはな」
<ジオウ!>
そのままライドオンスターターを押してウォッチを起動させてドライバーに装填して、上のライドオンリューザーを押したのち、ドライバーを回転させた
<仮面ライダー ジオウ!*1>
そんな電子音声とともに、男の姿がライダーの姿へと変える
顔にあるわかりやすいライダーの文字の複眼、まるで時計の留め具のような恰好をした仮面ライダー…ジオウの姿が現れる
だが〝本来のジオウ〟とはわずかながらに差異がある
〝本来〟ならピンク色である各所のカラーリングが、灰色となっているのだ
さしずめ、量産型ジオウといったものか
「…問答無用というわけか。ならばこちらも容赦はしない」
言葉ともに、先手を仕掛けたのは量産型ジオウの方だ
鋭く突き出された鉄拳をいなし、本郷はその腹部に膝蹴りを打ち込んでその背中に肘を叩き込む
そのまま回し蹴りを繰り出して距離をとり、本郷は右手を腰に添え、左手を斜め右に突き出す
「―――ライダー…!」
そのまま円を描くように左手を動かしつつ、最初の構えを入れ替えるように右手を斜め左に突き出し本郷猛が叫ぶは原初の叫び
「―――変身!」
刹那、風が吹き荒れる
その男に寄り添うように風が学園都市に巻き起こる
地面に落ちる葉が舞い起こり、のぼりにつけてある旗はパタパタと勢いよく揺れる
タイフーンが回転し、まばゆい輝きとともに本郷猛は〝変身〟する
現れたその〝仮面〟は一瞬暗い色をしたのちに、明るい彩色へと変化し、深紅の複眼が発光し、目の前の敵を見据えた
それは、全ての始まり
それは、永遠に終わることのない、〝正義の系譜〟
その名は―――
「
―――仮面ライダー
今回の1号の変身は昭和対平成をモチーフにしてます