全ては誰かの笑顔のために   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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#70 それはエンデュミオンの軌跡

各々での戦いに決着がついていく最中、ある男の戦いも決着がつこうとしていた

 

「ぐっ!!」

 

立花眞人の戦いである

G4の鋭く重い一撃が腹部に当たり、頭部を取っ払ったG3こと、眞人はゴロゴロと地面を転がった

しかし根性から食いしばり、眞人は目の前のG4へと再度視線を向ける

こちらに向かってゆっくりと歩いてくるG4こと水城マリア

よく見ると肩で大きく息をしているように見える

彼女の方も限界なのだろうか

 

「―――ぐっ!!」

 

不意にG4の身体から煙が噴き出し、大きく苦しみ始める

やっぱり限界なのだ、彼女も

これ以上G4のスーツを使用しては本当に命に関わる

 

「水城さん!! やっぱりもう限界なんですよ!! これ以上は本当に死んでしまいます!!」

 

眞人は接近して何とか外部から干渉できないかと試みる

G3と一応は同じシステムなのだから、緊急解除ユニットがあってもおかしくないはずだ

確かG3にはGバックルにそのシステムが内臓されていたはず

もみ合いになりながらも、どうにかしてバックルに触れるが―――

 

「! 解除されない!?」

 

あるいは予めオミットされてあるのか

このままでは本当に水城マリアが死んでしまう

どうにかできないか、と考えている矢先、こちらに向かって不意にバトルレイダーが投げ飛ばされてきた

その後そのレイダーを追いかけてバルカンがショットライザーを連射しながら駆けてくる

弾丸の連射を受けてそのままバトルレイダーは機能停止し、ゆっくりと倒れると同時、爆散した

 

「不破さん!」

「悪ぃ、邪魔しちまったな! …っていうか、なんか様子がおかしいが」

「すいません、実は―――」

 

どうにか説明しつつ、襲い来るG4の攻撃を受けながら、要点をかいつまんで眞人はバルカンに説明した

敵と認識してバルカンにも攻撃してきたG4の攻撃をさばきつつ、バルカンは大まかな概要を知る

G4を蹴っ飛ばして軽く距離を取ったバルカンはふぅ、と息を吐きながら

 

「よし分かったっ! 早い話、引っぺがせばいいってことだろ!」

「えぇ! ―――え?」

 

不意にバルカンはそう言った後、ショットライザーをベルトに戻すとG4に突っ込んでいく

そのまま掴み合いに発展しながらも、バルカンは胴体のアーマーの隙間に指を突っ込もうとするが、G4の反撃に合い吹っ飛ばされた

 

「くっそ! なかなかやるじゃねぇか! 刃! ちょっと手伝え!」

 

バルカンは転がって体制を立て直すとすぐ近くで戦闘しているバルキリーへと言葉を投げた

その声を聴いたバルキリーは共闘していたバースにその場を任せるとバルカンの方へ走っていき

 

「お前な、こんな状況じゃなかったらセクハラだぞ」

「人命救助の一環だろうが! 立花、三人ならいけるはずだ!」

「は、はいっ!」

 

そんなゴリ押しな救助方法でいいのだろうかとも一瞬思ってしまったが、この際なんだっていい

バルキリーはその身のこなしを生かしてG4の背中に回り両手を拘束したのち、その隙にバルカンが胴体のアーマーを引っぺがしにかかる

その際、眞人もGバックルの内臓されてるはずの強制解除ユニットが何とか起動しないかと粘った

 

「ぐぅぅぅぅ…!! おぉぉぉぉぉッ!!!!!」

 

雄叫びと共に、バルカンがその両手に力を籠める

ぎぎぎ! と嫌な音をたて胴体のアーマーが引っぺがされた

着装すると同時に装着される身体にフィットする黒いボディスーツがあらわになり、アーマーが剝がされたショックに連動したのかは不明だが、バックルに内臓されてある緊急解除ユニットが作動し他のアーマーが外されていく

G4ユニットが外され、マリアの姿と戻ると同時、気を失って倒れようとしたときにバルキリーが彼女を支えた

 

「…ひどく衰弱してるな、立花さん、早く彼女を病院に」

「わかりました!」

 

バルキリーから気を失っているマリアを預かると、そのまま眞人はG3ユニットを装着したままその場を後にする

ユニットの損傷も多かったし、この選択に間違ってないだろう

 

「…で、この残ったユニットはどうすんだ?」

「破壊以外ないだろう、こんな命を部品としか見ていない兵器なんて、不要なんだからな」

 

バルカンの問いかけに、中身のないG4ユニットにショットライザーを突き付けてバルキリーが応える

そしてすぐに、バルキリーはショットライザーの引き金を引いてG4ユニットを破壊した

 

◇◇◇

 

目の前の機動兵器やら蹴散らして、一番最初に爆砕ボルトへとたどり着いたのはキバエンペラーとライジングイクサの二人である

爆砕ボルト近辺にも小型の機動兵器がわらわらといるが、ここまで来たら些事だ

 

 

次にたどり着いたのは、ステイルたちだ

 

「さ、もうひと踏ん張りだぜ少年。行けるかい?」

 

響鬼に言われ、ステイルはふん、と短く答える

ここに向かう道中うっかり脇腹にかすり傷を受けてしまい、それを彼は片手で押さえていたのだ

そんなステイルをマリーベート、メアリエ、ジェーンの三人が心配そうに見つめている

 

「馬鹿をいうな。頼まれた仕事は果たすさ」

「そう来なくっちゃあね」

 

ステイルは手に炎を生み出し、オーズこと斎堵もメダジャリバーを構えた

それを見た響鬼もニヒルな笑みを浮かべると同時、音撃棒を構えたのだった

 

 

バナスピアーを振り回し、自分に接近してくるバトルレイダーや自立兵装などを蹴散らしながら、ディケイドコンプリート21は爆砕ボルトの一つに到着する

ディケイドネオ21は通信機を起動させた

 

「こちら門矢士、ボルト前についた。他は!」

<はいよー、こっちもついてるぜー!>

<同じく本郷、俺もまもなく到着する>

<こっちも問題なく到着したぜぇーい!>

 

どうやら自分以外の三ヶ所もたどり着いたようだ

後は警備員である黄泉川たちが間に合ってくれればだが…

 

<すまない、こちら黄泉川…! 申し訳ないが、このままではたどり着けそうもないじゃん…!>

 

報告される彼女の言葉

通信越しに銃の音がとめどなく聞こえるところから苦戦を強いられているのが容易に想像できる

 

<―――大丈夫です>

 

そんな中、ふいにまた別の声が通信に割り込んできた

 

<構わず、5カウントで点火してくださいと、ミサカはお願いします>

<…お姉さま…!?>

 

通信から戸惑ったような黒子の声が漏れてくる

むろん、この声は御坂美琴ではない―――

 

(あいつらか!)

 

仮面の下で士は笑みを浮かべる

アイツらが言うのなら、問題はないのだろう

 

 

「ったく。なンでこの俺がァ、こンなことしなきゃなンねンだァ?」

 

二人の男と、一人の幼い女の子がかつかつと一つの爆砕ボルトの前に歩いてくる

一人は杖をつきながら頭を掻いてそんな言葉を口にした

それを聞いて女の子―――打ち止め(ラストオーダー)が杖をついている男―――一方通行の周りをくるくると走りながら

 

「でもでも、このエンデュミオンが壊れたら、地球が壊れちゃうーって! みんながとっても困っちゃうんだって、ミサカはミサカは当たり前の正論を口にしてみたり!」

 

にかっと笑みを浮かべる打ち止め(ラストオーダー)

け、と悪態をつく一方通行に向かって隣の男―――浅倉涼が一つのデッキを取り出しながら

 

「けどま、リハビリにはもってこいだろ。こういうのは」

「はっ、違ェねェ…」

 

一方通行(アクセラレータ)は浅倉の言葉にそう返すとだらんと手を下げて爆砕ボルトの方を見やる

同じくして浅倉は左手に持ったデッキを前に突き出した

同時にバックルが彼の腰に現れる、半月を描くように右手を動かし

 

「変身!」

 

言葉の後にデッキをバックルにセットする

鏡の割れるような音と共に残像が重なり、浅倉の姿を仮面ライダー王蛇へと変化させた

調子を確かめるように軽く首を回すと、王蛇も爆砕ボルトの方へ視線を向ける

 

 

 

「ワタルくん、迷ってる暇はなさそうだ!」

「うん! 僕たちから行こう!」

「わかったぜー! ―――バッシャーマグナム!!」

 

キバエンペラーは緑色のフエッスルをキバットに嚙ませると、キバットがそれを勢いよく吹き鳴らす

ラッパのような音が鳴ると同時に、バッシャーマグナムが呼び出され、エンペラーがそれを手に持ち、腕のタツロットを操作した

 

<バッシャーフィーバー!!>

 

緑色の絵柄でタツロットのスロットは止まり、キバエンペラーはタツロットを取り外すと銃口にタツロットをセットした

 

<ガチャ!>

 

その後ろで、ライジングイクサとなった名護も残っている警備ロボットを殲滅させるべく、一つのフエッスルをベルトにセットして認証させる

 

<イ・ク・サ・カ・リ・バ・ア ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ>

 

迫ってくる警備ロボットたちに向かって、ライジングイクサはイクサカリバーを振り回し、イクサジャッジメントを叩きつける

爆発と共に警備ロボットが爆散していき、同じタイミングでキバエンペラーもバッシャーマグナムの引き金を引いた

 

「エンペラー、アクアトルネード!」

 

迸る水の弾丸がボルトに向かって突き進んでいく

連なる水の弾丸は容易にボルトを貫いて爆散した

 

 

 

爆砕ボルト前に到達したネオディケイド21は改めて目標を視認する

後ろを見て追手が来ていないことを確認するとライドブッカーから一枚のカードを取り出す

そのまま持っていたバナスピアーを放り投げると横のドライバーへとそのカードを装填した

 

<FINAL ATTACKRIDE DE DE DE DECADE>

 

「はぁぁぁぁぁ…!」

 

そのままゆっくりと空中を浮かぶと、ディケイドの前にエネルギーで出てきた筒のようなものが現れた

そしてディケイドは片足を突き出すとそのエネルギーを通り抜け、ライダーキックを叩き込む

 

「どりゃあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

真っ直ぐ放たれた超強化ディメンションキックは容易く爆砕ボルトを貫き、爆散させたのだった

 

 

 

同じようにボルト前に到達したステイル達御一行

そんな爆砕ボルトを守るかのように、数体のレイダーが現れる

だが今更あんな程度は、障害にもなり得ない

 

「波状攻撃で破壊しよう、俺から行く」

 

最初に前に出たのは斎堵ことオーズ

彼はメダジャリバーに三枚のセルメダルを入れるとスキャナーを刀身に当ててスライドさせた

 

<トリプル! スキャニングチャージ!>

 

そのままスキャナーを戻すとメダジャリバーを構えて、横に一閃

繰り出されるオーズバッシュは空間ごとレイダーの壁を斬り裂いた

そしてすぐに斬られた空間は修復され、何事もなかったかのような状態に戻る

 

「二人とも!」

「オッケー! てなわけで、今度は俺たちだ!」

 

すかさず響鬼が言葉を返し、音撃棒烈火を構え、同じようにステイルもルーンカードと炎を顕現させる

ステイルの周りには燃え盛る炎と共に、魔女狩りの王(イノケンティウス)が顕現し、目の前の破壊すべきものを睨んだ

 

「音撃棒、烈火弾!」

「イノケンティウスッ!!」

 

響鬼の繰り出した烈火弾を取り込みながら、魔女狩りの王は爆砕ボルトへと向かっていく

道中警備ロボットなどもいたが、そんなのは障害にもならずもろとも焼き尽くしてボルトも破壊したのだった

 

 

 

「シャアッ!!」

 

アクセラレータは自身の能力を発動させながら手を地面に突っ込んでベクトルを操作し、ボルトの破壊を試みた

しかしボルト本体には多少大き目なヒビが入った程度であり破壊には至らなかった

 

「ち、まだ本調子じゃねェか」

「問題ねぇ」

 

そう言って王蛇は牙召杖ベノバイザーを取り出すと先端部のコブラの頭を模倣した場所からカードスロットを展開させた

そのまま一枚のカードをブイバックルにセットされたデッキから一枚のカードを取り出す

王蛇のクレストが描かれたそのカードを、スロットにセットしてベノバイザーに読み込ませる

 

<ファイナルベント>

 

電子音声と共に王蛇の近くにベノスネーカーが現れる

王蛇はベノバイザーを打ち止めに預けると同時はボルトに向かって走り出す

そのまま一定の距離を走り助走をつけた状態で今度は大きく後方へと飛び上がり宙を返るとベノスネーカーの放つ毒液と共に、ボルトへ〝ベノクラッシュ〟を叩き込んだ

 

「デェェェヤァァァッ!!」

 

ヒビ割れたボルトは王蛇のベノクラッシュを受けてトドメを刺されたのか、今度こそ完全に破壊されたのだった

 

 

 

駆け付けた1号はボルト本体を前にして身構える

コイツを破壊すればいい、そう思い返したとき、背後から声が聞こえた

 

「本郷!」

「! 隼人、間に合ったか!」

「あぁ、状況は大体把握している、行くぞ!」

「おう!」

 

短く受け答えすると二人の仮面ライダーはそれぞれライダーファイトの構えを取り、戦意を向上させる

ほどなくして、二人はそのまま同時に跳躍した

空中で一回転し、互いの足を、そのままボルトに叩きつける

 

「ライダー!」「ダブル!」

『キィィック!!』

 

同時に繰り出されたライダーキック

放たれた技を食らって、爆砕ボルトはそのまま破壊し点火されたのだった

 

 

エンデュミオンの外

急造されたテントの下で、初春たちはその揺れを感じていた

 

「なんですの!?」

「退避―ッ!」

 

警備員の声が聞こえる

同時にバラバラとエンデュミオンの上の方からガラス片のようなものが降ってきた

状況を考えると、ボルトを何とかしてくれたと考えるのが自然だが、果たして

 

 

不意に起こった揺れに、まずレディリーが気が付いた

 

「───まさか、解体(パージ)する気!? このエンデュミオンを!?」

 

同時にインデックスは周囲に視線を巡らせて、思考を走らせる

今ならいける

 

(折り重なった術式を解いて、崩す方法を見つける…!)

「───みこと、お願いしていい?」

「えぇ、きっちり守ってみせるわ」

 

美琴から心強い返事をもらうと笑みを浮かべ、インデックスは頭の中の魔導書へ意識を送る

何としてでも、助けるんだ

 

 

「基盤をパージしただと!?」

 

不意に通信が来たシャットアウラはその報告を聞いて驚きの顔を浮かべた

地上のみんながなんとかしてくれたのだ

 

「これで、わかったろ…! できないことなんかないって…!」

 

苦悶の表情を浮かべながら、アリサに支えられている当麻はシャットアウラに向かってそう言い放つ

それでもなお、シャットアウラはガンモードのカリバーを構えたまま

 

「…オリオン号の機長だった私の父は、あの事故でただ一人犠牲になった。私を含め、ほかの乗客は助かったのに…! だから、私は〝奇跡〟を否定するッ! 奇跡なんかに頼らず、自分の力で戦った父の遺志を継ぐためにもッ!!」

「…お前のお父さんは、限りなく可能性が低くてもみんなを助けようとした…」

 

構える彼女に向かって、アラタが少しづつ歩み寄る

 

「ギリギリまで頑張れば。最後の最後まで諦めなければって思いで、戦ったはずだ。だから君が───アウラがここにいるんじゃないのか!」

「ッ!!」

「奇跡は起きたんだ! お前のお父さんは、確かに奇跡を起こしたッ! それを否定するんなら、君を君の父親を、もう一度殺すことになる!」

「───うるさいっ!!」

 

不意にシャットアウラはイクサカリバーをカリバーモードに変形させて、アラタに向かって振り下ろす

済んでのところでそれを回避し、アラタは身構えた

 

「…、」

<レ・ディ・イ><フィ・ス・ト・オン>

 

彼女は無言でイクサナックルを掌に叩きつけると、そのままベルトに装着し、その身をブラックイクサへと変化させた

それを見て、アラタも覚悟を決める

だが戦うのではない、彼女を受け止めないといけないんだ

 

「…変身」

 

呟くと同時、アークルが腰に現れ、霊石が赤く輝き彼の身体を赤いクウガへと変える

拳は握らずに開いたまま、彼女の出方を待つ

ブラックイクサはイクサカリバーを再度振り下ろしてきた

クウガはそのままカリバーを受け止めて、互いの仮面をぶつけ合わせる

 

「やはり落ちるぞ、エンデュミオンはッ!」

「! 何!?」

「はっ! 何が八十八の奇跡だ、何が奇跡の歌だっ! 何が奇跡だぁっ!!」

 

ブラックイクサは頭突きを繰り出しクウガの態勢を崩すとタックルをかましそのままクウガの身体に馬乗りとなる

彼女はイクサカリバーを放ると何度となく、クウガへと拳を叩き込んだ

 

「奇跡なら、奇跡なら救ってみせろよ!! このまま地上に落ちるエンデュミオンからすべての人を救ってみせろ!! お前も、そこの二人もッ!! 奇跡を肯定し、秩序を乱すものはすべて───」

 

その時だった

らら、と歌が響いた

音楽がノイズとなるブラックイクサには、それは苦痛となって彼女に届く

発信源は上条当麻の携帯電話だ

着信音にでも設定していたのか、音量は小さいけれど静かなこの場には響き渡る

クウガは苦しむ彼女をできるだけ優しく放り投げる

ゴロゴロと転がりながら、ブラックイクサはそれでもカリバーのガンモードをクウガに向けて構えていた

 

「…君のやり方じゃあ秩序なんて生まれない。そんなやり方で奇跡を否定しても、何も生まれはしないんだ」

 

ゆっくりとクウガは彼女に向かって歩き出す

 

「ほんの小さな可能性でも何かが手に入るって、そう思って最後まで諦めなかったから! それこそがきっと、〝奇跡〟ってもんなんだと思う。───俺は、君にもう一度親父さんを殺してほしくない」

 

近づいたクウガは、イクサカリバーを持っている彼女の手に触れる

一瞬びくりとなったが、抵抗はなかった

充電が切れたのか、いつしか音楽は聞こえなくなっていた

 

「…音楽ってさ、割と悪くないもんだよ。…お前に言うのも、酷かもしれないけど」

「───はっ。…本当だな」

 

彼女は変身を解除して苦笑いを浮かべながらそんなことをアラタに返す

目尻に僅かに涙を浮かべていた彼女の顔は、どことなく何かを吹っ切ったように感じる

とりあえずシャットアウラはもう大丈夫だろう

問題は───この状況をどうするか

 

「…アウラ?」

 

不意にシャットアウラが数歩進んで、アラタの方へ顔を向ける

彼女は笑みを浮かべると意を決したように、言葉を紡いだ

 

「───らら」

 

それは旋律

わかりやすく言えば、〝音楽〟だ

けど、彼女にとって音楽は毒だったはずじゃ、とアラタの考えを他所に旋律は続く

その旋律を聞いて、同じように旋律を奏でたのは、当麻を支えていた鳴護アリサ

 

「らら…───」

 

当麻に笑みを浮かべて彼から離れると、シャットアウラの声に自分の声を重ねていく

 

◇◇◇

 

シャットアウラは思い出した

オリオン号のあの日、あの時───大事なものをすべて捧げてもいいから、奇跡が欲しいと、あの時願った

 

そして、鳴護アリサ(かのじょ)は生まれたのだ

 

アリサはゆっくりとシャットアウラへ歩いていく

同じように、シャットアウラも歩み寄り、二人はその手を握る

刹那、握られた手のひらから───暖かな光が漏れ出した───

 

◇◇◇

 

 

 

 

聞こえてきた歌声に、レディリーはハッとする

想像と違うこの歌に、動揺する

 

「な、なに、この歌…? ち、ちがうっ! この歌じゃ、私の魔法陣は───」

 

うろたえるレディリーを尻目に、インデックスの隣の美琴は思わずその歌に聞き入っていた

相変わらず、いい歌だと心の中で思いながら、御坂美琴は笑みを浮かべるんだ

 

「崩れていく───私の希望…私の夢がっ!!」

 

何やらレディリーが悲痛な顔を浮かべている

しかし美琴には何の関係もないことだ

周囲を見渡しても邪魔してくる存在はいなさそうではあるし、インデックスも問題はなさそうだ

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

ごうごうと崩れ落ちていくエレベーター内部にて

 

1号たちやディケイドネオ、そしてステイルらはシンプルに走って脱出を目指し、別ルートからやってきた一方通行たちは王蛇が呼び出したベノスネーカーに乗って離脱を図り、キバやイクサたちも黒鴉部隊の手助けを借りて内部からの脱出を敢行していた

 

同時刻、エンデュミオン外部

 

宇宙には眩い光のような、それでいて渦のようなきれいな何かが現れていた

それがなんなのかは常人にはわからないだろう

 

「…隊長」

 

その呟きは黒鴉部隊の一人の呟きだった

何かがあったのかはわかるが、何があったのかはわからない

 

そしてその景色を見ていたのは黒鴉部隊だけではない

地上にいた初春や佐天たちもその光景を見ていたわけで

ハッと気づいたように初春がパソコンへと視線を落とす

 

「! エンデュミオンが落下コースから外れていってる…! 地上への落下は、回避されましたッ!」

 

 

やがて歌が終わる

当麻を支えながら、アラタは〝二人〟の元へと歩みだす

アリサは地面に落ちていたアクセサリーを拾い上げた

いつの間にか、二つに欠けていたそのアクセサリーはひとつの形へと戻っていた

彼女は拾ったアクセサリーをシャットアウラの方に差し出す

シャットアウラは一瞬驚いたような表情をして、アリサの顔を見たが彼女の笑顔に後押しされるとそのアクセサリーを懐にしまった

 

「おつかれ」

 

アラタの声

その声色に二人は振り返る

やり切った歌姫たちに、当麻とアラタは手を差し伸べた

 

 

当麻はアリサへ、そしてアラタはシャットアウラへと

 

「帰ろう」

「俺たちの都市(まち)に」

 

 

その後インデックスたちと滞りなく合流できた当麻とアラタたち

シャットアウラもいたことに一瞬怪訝な顔をされたがなんとなく察してくれたのか苦笑いと共に何も聞かないでくれた

とりあえず帰るときもバリスティックスライダーに乗って戻ればいいのだろう

っていうかこれが動かないとマジで帰れない

行きも帰りも設定してあるからボタン押すだけで大丈夫とは土御門も行っていたし、いざとなれば携帯で土御門に聞けばいい

 

「とりあえず当麻から先に乗ってくれ。ボロボロだろお前。あ、あと発射まで時間かかるだろうからボタンも押しといて」

「わかった。───いてて…」

「だ、大丈夫? 当麻くん」

「だいじょうぶだよありさ。いっつも無茶して心配かけてくるんだからむしろこれくらいは良い薬かもなんだよ」

「なんてこと言いやがるんですかこのインデックスさんは!」

「…いつもこんななのか?」

「んー…どうなの? アラタ」

「いつもこんなんだよ」

 

すっかりいつもの調子を取り戻し朗らかな空気の中、一番最後にアラタが乗り込むとして、皆をスライダーに乗せていく

ボタンも押されたのかスライダーにもエンジン音のようなものが聞こえガタガタと特有の揺れのようなものが発生する

問題なく発射できそうだな───そう思った矢先、足音のようなものがかすかに耳に聞こえてきた

 

視線を向ける───そこにいたのは、レディリー・タングルロードだった

 

「…レディリー・タングルロード…?」

「…───そうね、保険というものは、大事だわ」

 

そう言って徐に取り出した丸い時計のようなデバイスのような、〝ナニカ〟

彼女はそのままボタンであるライドオンスターターを押し込んでそれを起動させる

 

<ゼロワン>

 

発光したと同時、そのデバイスをレディリーは自身の身体に押し当てる

そのデバイスはレディリーの身体の中に取り込まれ、一瞬の後にその姿を異形の怪人へと変質させた

 

「───マジかよ」

 

予想外の出来事が起こった

コイツをあのままにしておけば、バリスティックスライダーに攻撃されてしまうかもしれない

必然的に、誰かが残らねばならない

考える必要なんてなかった

アラタは扉を閉めるボタンを押すと、閉まりきる前にスライダーから飛び降りた

 

「おい、お前いつまでそこに───!!?」

 

いつになっても来ないアラタの様子を見に来たのかシャットアウラの声が最後に聞こえてきた

思わずシャットアウラが追いかけるが、間に合わず扉が閉まりきる

閉まりきる直前に見えた黄色い怪人の存在を視認したことにより、アラタが飛び降りた理由も理解できた

 

スライダーの内部からシャットアウラの声が聞こえるが、分厚い装甲に覆われてなんて言っているか分からない

 

「いいの? アナタだけが残っても」

「問題ねぇ。残らなきゃあ、スライダー(こいつ)が発進できないんでね」

 

近づいてくる怪人───アナザーゼロワンに対し、アラタは身を変える動作をする

 

「変身」

 

赤きクウガへと変身すると、そのまま身構え臨戦態勢を取った

発射してこの場を後にするバリスティックスライダーを背景に、もう一つの戦いが始まろうとしていた───

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