あとスカサハ師匠引けました(歓喜
内容はそんなに変わってない
ではどうぞ
誤字脱字ありましたら報告ください
それは立花眞人がお昼を買うべく、念のためG3ユニットを携帯してコンビニに入っていた時に起こった
ういーん、と自動ドアを開けて一組の男女が入ってきた
二人とも右腕に風紀委員の腕章をしており女性は何かシールドのようなものを持っている
そして開口一番
「皆さん、早急にこの場から避難してください!」
女性の風紀委員が凛とした声で店内のお客さんたちに告げた
何事かと思ったのか不安に思った店長と思わしき人が女性の風紀委員に聞く
「あ、あの…うちの店に何か…?」
「重力子の加速が観測されました。この店に、爆弾が仕掛けられた可能性があります」
「ば、爆弾!?」
店長のその一言で店内がパニックに包まれる
恐怖におののいた声で店内を後にするものがいる中で眞人はがさ入れをしている男性の風紀委員に向かって歩き出し
「自分も手伝います」
「! 何を言ってるんですか!?―――」
「自分は
そう眞人は警備員の手帳を見せながら言った
もともと警備員というのは子供たちを守るために組織されたものだ
それなのに爆弾の捜索を子供たちに任せたまま自分だけ逃げ帰るなんてできない
「わかりました…では貴方はお弁当売り場のコーナーを調べてきてくれませんか?」
「わかりました」
短く答えて眞人は弁当売り場のコーナーに行こうとしたとき「きゃ!」という声が聞こえた
声の方に向けるとぺたりと座り込んだ女生徒の姿があった
「どうしました!」
眞人が駆け寄って女生徒に声をかける
「すいません、足を…」
どうやら逃げる際に足首をくじいてしまったようだ
「わかりました、肩を貸しますから、急いで…、…!?」
女生徒に肩を貸そうと屈んだその視線の先
正確には商品が乗っている台の下のスキマに何かがあった
それは愛くるしいウサギの人形
見た目だけは本当に愛くるしい人形だった
しかしそれは不意に捻じ曲がる
中心に強引にねじ込まれるような―――
そして眞人は本能で察知する
「まさか―――!!」
爆発は寸前
一人なら容易に避けれるこの距離だが女生徒がいるこの状況ではそれは出来ない
ならばこそ、と眞人がとったその行動は
「くそっ!!」
自分の足元にあるG3ユニットを迅速に装着し女生徒を守るように自分の身を盾にする
その数瞬後
大きな爆発音がそのコンビニに木霊した
「…ぐ…」
G3ユニットのおかげで幸いにも自分の身は守られた
女生徒の方も怪我はない
その爆発を聞きつけた女性の風紀委員と男性の風紀委員も駆け付けてくる
「大丈夫ですか!?」
「怪我は…!」
心配する二人の風紀委員に駆け寄られ、G3はそれに答える
「大丈夫です、それと、被害状況は…」
言いながらG3は爆発跡を改めて視線をやる
そこにはバランスボールのように大きな焼け焦げた跡があり、周囲の商品はすべて吹っ飛んでいる
もしこれが人になど当たったら…
考えただけで恐ろしかった
これが一週間前に起きた一番最初の
幸いにもその時は立花が居合わせたこともあり怪我人は出なかったがその後も同じような事件が続き次第に八人もの怪我人を出してしまった
◇◇◇
「ふあ…」
アラタが大きな欠伸をする
先述したように虚空爆破事件が続きその調査で正直睡眠の時間が全く取れていないのだ
眼尻に若干の涙を浮かべ前を歩くアラタの隣にいた美琴が口を開く
「…あんた大丈夫? 夕べも遅くまで調べてたんでしょ?」
「仕方ないさ。捜査が進まないんだから、今までの調査に何か見落としがないか確認しないといけないんだよ」
実際黒子は今現在一七七支部で仮眠を取っているほどである
本当はアラタ個人としても手伝いたかったんだがどういう訳か
それでも納得いかないアラタは自宅で独自に調べてはいたのだが先の欠伸の通り何にも掴めなかった
あしからず、である
「…熱心なのは良いけど、あんまり無理しないようにね」
「…。なんだ、心配してくれてるのか?」
苦笑いと共に美琴に聞いてみる
すると美琴は「ばっ!」と顔を赤くしながら
「馬鹿言うんじゃないわよ! あ、あんたがいないと、その、場の空気が盛り下がるから言っただけよ!」
「はは、そういうことにしとくよ」
全く、という美琴と共にアラタは歩を進めていく
とりあえず、早急に虚空爆破事件の犯人をひっ捕らえなければ、と改めて心に誓う
「はぁい、奇遇ねアラタぁ」
美琴と別れてすぐ
食蜂操祈に遭遇しました
「…なんだ操祈。お前も暇なのか」
「開口一番失礼ねぇもう…。…あら? 貴方、目の下に隈が出来てるわよ?」
そう指摘されてハッとする
一番まずい人にそんなとこを気づかれてしまった
そんなアラタの表情に気づいた食蜂はにやぁ、と唇を歪ませる
それは決して悪い笑みではなくむしろ可愛い部類に入る
しかしその笑みの持ち主が食蜂だというのが問題なのである
「ねぇ、もしよかったらあたしが癒してあげましょうかぁ?」
「断固辞退する」
「即答!?」
確かに幾分か丸くなったといえど、逆にその純真な笑顔がなんか怖い
「そんな即答しなくても、もうちょっと考えてくれてもいいじゃないのよぉ」
「付き合ったら確実に今後の職務に支障が出そうで嫌なんだよ」
職務、という言葉を聞いて食蜂はあぁ…と言った表情をして、そして少し申し訳なそうに顔を俯かせてしおらしくする
「アラタも、風紀委員なんだっけぇ…?」
「…そ、そうだけど」
ギャップが激しすぎるんですけど
先ほどとは一転、急にしおらしくなった食蜂に少しときめく自分がいる
「…無理しちゃだめよぉ? アンタが怪我しちゃったら私のからかう対象がいなくなっちゃうんだからぁ」
前言撤回
ときめいた自分を殴りに行きたい
しかしこんなんでも心配をしてくれている事は伝わったので感謝はしておく
「…まぁ、サンキュ。忠告はありがたくもらっておくよ。お前さんも気をつけてな」
そう言ってアラタは歩き出そうとしたとき彼の背中から食蜂が何か言っているのが聞こえた
「…一応、心配はしてるんだからねぇ?」
「ん? なんか言ったか」
「別にぃ」
◇◇◇
その日、寮に帰り夕飯を天道から貰った麻婆豆腐を食したあと居間にあるテーブルに置いてあるパソコンに向き合い、虚空爆破事件についての調査資料を確認し始める
例の爆弾はいずれもぬいぐるみや女物のカバンなどに仕込まれており、一見しただけではそれを爆弾と判別できない
正直言ってこれが怪我人を増やしてしまう原因だ
しかしあれほどの爆発を起こせるのは少なくとも
今のところ完全に手詰まりだ
今一度本気で考えてみよう
一週間前の爆破事件の後に、被害が起きて
そしてそのあとも連続的に被害者が出て
その時の被害者はみんなして風紀委員で―――
「…ん」
ふと自分が調べた情報に少しばかり違和感を感じた
カタカタとパソコンを操作して今までの情報を洗いざらい確認すると一個の共通点が浮かび上がった
「やっぱりだ。これまで被害にあった連中はみんな風紀委員に所属してる…」
自分で口にし、考える
となると相手は個人的に風紀委員に恨みがあるやつなのか、或いは―――
そう思考をはじめようとしたとき、携帯が鳴った
こんな時間に誰だろうか、とそんなことを思いながらディスプレイを見るとそこには御坂美琴の文字が
アイツから電話をかけてくるとは珍しい、と思いながらまた通話ボタンを押して耳に当てる
「もしもし」
<あ、アラタ。 今大丈夫?>
「あぁ、問題ない。どした?」
<いやね、アラタ明日非番でしょ? 息抜きにどうかなって今日佐天さんと話してたんだ>
息抜き、か
確かに最近夜更かししまくっているし、こういったときくらい羽を伸ばしたいものである
しかし黒子はどうかわからないが確実に女子は三人という構図になるだろう
その中に男子が自分だけというのは少々心もとない
「おっけー、参加させてもらうぜ。あ、けどちょっとこっちも誘っていいか? 人数は多い方がいいだろ?」
<え? 別にいいけど…誰誘ってくるの?>
「それは明日のお楽しみだ。んじゃま、また明日な」
<えぇ、それじゃお休み。再三言うけど、無理しないでよ?>
その後少しだけ会話を交わし電話を切った
そんな気遣いに感謝しながら誰を誘うか考える
「…大介でも誘ってみようか」
風間大介
高校生ながら〝バーバラKAZAMA〟という床屋兼美容院を経営しており、人気過ぎて予約は一週間待ちとかなんとか
友人というコネで入っているからそういったのはよくわからないが
「そうと決まればさっそく…」
もう一度携帯を取り出し番号を見つけると電話をかける
スリーコール待ってがちゃり、と電話に出る音
<はい! もしもし〝バーバラKAZAMA〟です! 予約ですか?>
底抜けに明るい声が聞こえてきた
声で分かる、こいつは大介じゃねぇ
「てかなんでお前が大介の携帯もってんだよ」
<なんだお前か切るぞクソヤロウ>
「態度変わりすぎだろ」
先ほど電話に出たのは風間が預かっている
両親が蒸発し、途方に暮れていたところを風間に保護されそのまま風間宅に住み着いた十一歳の女の子である
どういうわけか風間にのみ好意的でありその他の人物にはやけに攻撃的(男性のみ)なのである
<ほかのお客様がしっかり予約してんのにアポなしで来やがるお前なんかしらんわよ…あ、ちょ>
何やら電話の向こうでがたがたと騒がしい音が聞こえる
多分大介が自分の携帯を取り返そうと奮闘してるころだろう
五秒くらい待ってまた声が聞こえる
<…ヒカリが迷惑かけた。要件はなんだ>
すっごく疲れた声が聞こえた
むしろ迷惑かけてしまったのはこちらの方かもしれない
「あ、いや。風間って明日暇か?」
<ん? あぁ、問題ないぞ? 遊びの誘いか?>
「まぁ似たようなもんだ。明日来れるか?」
<あぁ、何時だ?>
その後待ち合わせ等について二言くらい話込んだ後、じゃあなと互いに言って電話を切った
しかしヒカリのあの攻撃的なのもどうにかならんだろうか
風間にはやけにデレデレなのに
「…まぁ考えても無駄か」
そう自己完結しアラタはベッドの上に身体をうずめる
心のどこかで美琴たちとの息抜きに、少し期待を覚えながら
◇◇◇
夜
皆が寝静まったそんな時間帯
とある学生寮のとある部屋の中
一人の少年がパソコンの前に腰を下ろしていた
室内は真っ暗で、その場にはただパソコンの光だけがその部屋を照らす
少年はネットサーフィンをしながらヘッドフォンでただひたすらに〝ナニカ〟を聞いている
それは曲と形容できるかどうかさえ微妙なものだ
少年はパソコンの前で歪に表情を歪ませて
(…新しい時代が来る…)
そう心の中で呟いた―――
◇◇◇
翌日
起きてすぐ顔を洗い適当に高校の制服に着替えた後、アラタは大介の待ち合わせの場所に向かう
ちなみにその待ち合わせの場所は、美琴に誘われた場所、セブンスミストである
ほどなくしてセブンスミストの入り口が見えてきた
その入り口にはすでに風間が立っており暇を持て余すように本を読んでいた
おまけに
「遅いぞお前」
「…なんでいんの?」
どういう訳かヒカリも風間に同行していたのである
あって早々敵意むき出しの彼女の頭を風間はこつんとド突きながら
「一緒に行くって聞かなくてな。仕方ないから連れてきた」
そう言ってちらりと風間はヒカリの方を見る
するとヒカリはちらりと風間の方を見やるとアラタを見てフンとそっぽを向いた
「…やれやれだな。留守番が嫌だったとか?」
「かもしれんな。…そら、お前の連れが来たみたいだぞ」
大介が指をさした方向に見知った顔が三人ほど
美琴、佐天、初春の三人である
黒子は予定があったのか、それともまだ何か調べたいことがあったのかその彼女だけはいなかった
初春はこちらを視認すると「アラタさーん」と言いながら手を振ってその数秒後
「!?」
彼女の表情がフリーズした
具体的には風間の姿を確認したときに、だが
初春だけにとどまらず、佐天、揚句に美琴まで驚愕の顔をしていた
「…あんたの言ってた友人って…」
「あぁ、風間大介。俺の同級生だ」
そう言った瞬間、初春と佐天がアラタに食い付いた
目をこれでもか、と言わんばかりに輝かせて
「あ! アラタさん大介さんと知り合いなんですか!?」
「普段は予約しないと入れない超高級なお店の美容院の!?」
「…お、おう」
その剣幕にちょっと引いてしまった自分がいる
…やはり普通は予約しないといけないんだろうか
「初めまして。俺は風間大介。〝バーバラKAZAMA〟を経営している。そして、こっちは―――」
「ヒカリです。大介さんのお手伝いやってますっ」
思いっきり猫をかぶって挨拶する風間家の居候、ヒカリ
実際ヒカリの見た目は普通に可愛い部類に入る
性格を除けばきっと将来は良いお嫁さんにでもなれると思う
ヒカリがそれぞれ挨拶を交わし、自己紹介が済んだ後いざ彼はセブンスミストへ入っていく
そんな彼らを眼鏡をかけた少年の視線が捉えていた
彼の視線の先には初春の右腕につけられている風紀委員の腕章
「―――」
セブンスミストに入っていく初春をただ眼を細めて睨んでいた
「…僕を救えなかった風紀委員は」
彼の手には子供向けのカエルの人形
それは探せばどこにでもありそうなごく普通な人形だった
彼はそれを握りしめ呟く
「―――要らない…!!」
◇◇◇
そんなわけでセブンスミストに入店
セブンスミストははっきり言ってしまえば服屋である
正直言えばアラタは服にはあんまり興味がない
しかしせっかく誘ってくれたのでどうせならなんかジャンパーでも買ってみようかな、と思う今日この頃
「ういはるー! ヒカリさーん! こっちこっちー!」
どういう訳か今日の佐天はテンションが高い
久しぶりに初春と一緒に買い物ができるからだろうか
そんな佐天を見ながら、美琴は初春に問いかける
「初春さんはどこか見たいとことかある?」
「うーん…特に決めてないんですけど…」
「ヒカリは?」
それに便乗し、風間もヒカリに問いかけた
問われたヒカリはうーん、と考える仕草をしたあと
「あたしも今のところないなー」
「うーいーはーるー! ちょっとちょっとー!」
いつの間にかぐんぐん先に進んでいる佐天が手を振りながら初春を呼ぶ
苦笑いをしながら初春は
「な、なんですかー!?」
そう言って初春は佐天の下へと走って行く
ちらりと佐天が入ったコーナーを見てみるとそこは女性ものの下着コーナー
これは流石に一緒にはいけない
女物の下着コーナーに男子二人って気まずすぎる
そんなわけで一度美琴とヒカリと別行動を取る
別行動と言っても付近の服売り場にとどまるだけなのだが
正直買うものがないと暇でしょうがないが、セブンスミストは洋服の種類が豊富で見ているだけでも時間を潰せるほどだ
しかし何が悲しくて男二人で洋服を見なくてはいけないのか
口に出すとたまらなく空しくなるのでお互いあえて口を閉ざす
というか誘ったのは自分か
「お、アラタに風間じゃん」
二人して洋服を見ていたらまた聞きなれた声
声の方向に振り向くとそこには我らが友人、上条当麻の姿が
「当麻、どうしてここに」
「一番無縁そうな奴が…」
「それが出会い頭に級友に言う言葉ですか!?」
今までならこれくらいふざけるのは普通なのである
しかし今回は違った
「お兄ちゃ~ん」
そう呼ぶ幼女の声が耳に入ってこなければ
アラタと風間は二人してその声の方へと首を動かす
その視線の席にはサイドポニーの幼女が一人
一度彼女の存在を確認した後、ぎぎぎ、とロボットみたいに再び当麻へと視線を戻す
「…お前、いくら、出会いがないからとか言っておきながら…!」
「その…それは流石に、なんだ…まずいんじゃないか?」
「なんて考えしてやがりますかアンタたちはっ!!」
当麻の怒号が耳に入る
まあいきなりロリコンのような視線をされてかつそんな事を言われれば嫌にもなろう
しかしそう判断してしまいそうな状況だったという訳で
「俺はただ、この子が洋服店探してるから、ここまで案内してきただけだ!」
全力でロリコン疑惑を否定する当麻
まぁそんな気はしていたわけだが
「ねぇねぇお兄ちゃん、あっち行きたい」
そんなことを話していると幼女、もとい少女が当麻の服の裾を引っ張り向こうを指した
「っと、わかった。…まぁそんなわけだから、…頼むから変な噂流さないでくれよ?」
「わかってるって。んじゃ、またな」
「おう、またな。アラタ、風間」
そして少女に手を引かれていく当麻の背を見送りながらアラタと風間はふぅ、と息を吐く
アラタが一言
「…あんな女の子にもフラグ立てるとはな」
「フラグかどうかはしらんが、まぁ当麻は誰にでも優しいし、人付き合いもいいからな」
故にとある高校には隠れ上条ファンがいたりする
しかしそれを言ってしまえばここにいるアラタや風間、ここにはいないツルギや天道にもそんな隠れファンがいるのだが、本人たちは気づいていない
◇
先ほどの衣服コーナーに戻ってみると何やら美琴がとある寝巻の前でがっくりしていた
ちょうどその時戻ってきた初春、佐天、ヒカリに視線でどうしたのと問いかけてみるが彼女らも事情は分からないようだ
不思議に思ったアラタは皆を代表し
「…どした?」
と聞いてみた
すると美琴は少し疲れたような苦笑いを浮かべながら
「…なんでもない」
と短く返答した
一体どうしたのだろうか
◇◇◇
お昼ご飯はどうしようか、という話になったその時だ
初春の携帯がけたたましく鳴り響いたのは
「…初春さん、携帯鳴ってない?」
「え? …あ、本当だ」
ヒカリの指摘を受けて初春が携帯を取り出した
通話ボタンを押して耳に当てたその瞬間
<初春!!
あまりの声量の大きさに一瞬怯んでしまったがその単語を初春は聞き逃さなかった
<学園都市の監視衛星が、重力子の加速を観測しましたの!>
「!? か、観測地は―――」
<今近くの警備員を急行させるよう手配していますの! 貴女は早くこちらへ戻りなさい!>
聞く暇もなく黒子は言葉をまくし立てる
時は一刻を争う
思わず初春にしては珍しく
「ですから! 観測地は!」
そう声を張り上げて問いかけた
その声を聞いた電話の向こうの黒子はその観測地の場所を答える
それは想像もできないような場所―――
<第七学区の洋服店、セブンスミストですの!!>
「セブンス、ミスト…」
確かにそれは危険だ
しかし逆にそれはチャンスである
ちょうど自分はいまセブンスミストにいる
迅速に避難誘導すれば怪我人はゼロにできるはずだ
「ちょうどいいです! 今、私そこにいますから、直ちに避難誘導を開始します!!」
そう告げて初春は携帯を切り、ゆっくりとこちらの方を向く
彼女の表情は先ほどまで見せていた遊びの表情は消えうせ、仕事の顔となっている
「落ち着いて聞いてください。犯人の次の目的が分かりました! この店です!」
「な、なんですって!?」
美琴がそう驚いた声を上げる
無論驚いたのは美琴だけではない
アラタも、ヒカリも、表情に出してこそいないものの風間も少しながら動揺している
「御坂さん、風間さん。すみませんが避難誘導を手伝ってくれませんか?」
「え、えぇ」「わかった」
「あ、あたしは―――」
「佐天さんは、ヒカリさんと避難を」
「―――うん」
当たり前といえ少し寂しくなってしまった
自分の親友ががんばっているのに、自分は何にもできない
そんな自分に、ちょっとだけ、嫌悪感
「…初春も、気を付けてね」
短くそう言うと初春は少しだけ笑んで避難誘導に向けて走って行く
その背中を見送りながら、佐天はどこか複雑な表情を浮かべて―――
◇
そのまま爆弾が仕掛けられたことを伝えるとパニックになりかねない
だから店内の人に事情を話し、電気系統のトラブルとしてお客を外に避難させることにした
つつがなく避難誘導も終わり、アラタは店内でほかに遅れた客がいないか歩き回って探す中
「アラタ!!」
出入り口の方から走ってきた美琴、当麻、風間の三人が焦った表情でこちらに向かっているのが見えた
「お前ら! なんで戻ってきた!」
「悪い、けど、あの子がいなくって…」
「…あの子?」
当麻が言うあの子とは、恐らくあの女の子の事だろう
もう避難したものと思っていたのだが、この様子からすると、まさか―――
「いないのか!?」
「そうみたい、アラタ、探すの手伝って!」
「わかった! 俺はこの事をいったん初春に伝えてくる! 探すのはその後でいいか?」
「あぁ、構わない」
風間に後押しされアラタは初春の下へと走り出す
一度初春の下に行く、と言ったのは理由がある
昨日自分が考えた予想
「…もし本当に狙いが風紀委員なら…!」
自分も確かに風紀委員だ
そして、狙いやすさで言えば
真っ先に狙われるのは―――
「間に合ってくれよ初春…!」
◇
「…」
初春は周囲を見渡しほかに人がいないか確認する
どうやらこの周辺に爆弾らしきものは見当たらない
とりあえず、当面の危機は去った、と思っていいだろう
「初春!」
そう自分を呼ぶ声に初春は視線を向ける
そこには自分に向かって走ってくるアラタの姿が見えた
彼の姿を確認して少しだけ安堵している自分がいる
それに少し気恥ずかしさを感じながら自分の下へと近寄ってくるアラタに報告をする
「アラタさん、避難誘導が終わりました」
「あ、あぁ…そのことはお疲れさん…じゃなくて、まだ一人、女の子が残ってるんだ。…疲れてるとこ悪いけど、一緒に探してくれないか?」
「えぇ!? ホントですかそれ!」
「残念ながらマジだ。だから―――」
「お兄ちゃーん!」
そんな会話を交わしていると、件の女の子がこちらに向かってとてとてと走ってきていた
両腕にカエルの人形を持ちながら
当然初春もアラタもその女の子の安否が確認できただけで安堵していたがアラタはそれに違和感を覚えた
…あの子、あんな人形をどこで貰ってきたのだろうか
それ以前にここは洋服店のはず
子供向けのコーナーがあったとして、あんなのはなかったし、それ以前にあったとしても購入などできない
つまり―――
「眼鏡をかけたお兄ちゃんがこれを渡してって」
女の子が差し出したそのカエルの人形を初春が受け取ろうとして
その人形が不意に歪んだ
「!!」
刹那で判断した初春はその爆弾を自分たちの後方へと投げ飛ばしその女の子を守るべく自分の身体で包みこんだ
ここに今、自分と初春しかいない
当麻がいれば彼の右手でどうにかなったろうがそんなことも言っていられない
ならばとるべき行動は一つ
幸いにも初春はこちらを見てはいない
これなら気兼ねなく変身できる
アラタは腰に手をかざす
すると彼の腰に身体の内側から浮き出るようにベルトが顕現した
そして右手を左斜めへと突き出し、左手をベルトの右側近辺にと手を動かし、その両手を開くように移動させる
―――変身!
心の中でそう発し、右手を左手の方へと動かし、彼はその姿を変化させる
紫色の鎧の姿を持つ姿へと変身した彼は、襲い来る爆風を受け止めるように右手を突き出した
◇
外からでも分かるくらいにその爆発は大きかった
周りの人々がざわつく中、介旅初矢は一人ガッツポーズをしながらその場をゆっくりと離れた
徐々に人混みが少なくなっていくなか、介旅は心の中でほくそ笑む
(いいぞ…すごい、素晴らしいッ…!!)
少しずつではあるが確実に自分はより強大な力が使いこなせるようになっている
疑心暗鬼で使用したが、どうやら大成功のようだ
「…くっくくくく…くはははは…!」
堪え切れなくなって介旅は人気の少ない路地裏に入りながら笑いを吹き出した
もうすぐだ…あと少し数をこなせば…!!
「無能な風紀委員も、あの不良共も…!! みんな纏めて―――ぎゃ!?」
唐突に背中を思いっきり蹴り飛ばされた
介旅はみっともなくその辺にぶちまけられていた空き缶や空のペットボトルの中へと突っ込んだ
訳が分からない、と言った様子の介旅は地面に両手をついて身体を起こす
「よぉ爆弾魔、分かるかな。俺が言いたいことは」
目の前には男がいた
自分と同じくらいの背丈に、乱雑に切りそろえられた前髪
腕には風紀委員の腕章があった
「な、何の事だか。僕にはさっぱり―――」
「けど残念だったなぁ。あの爆発、確かに結構な威力だったけど…死傷者ゼロの、怪我人ゼロ。…つまり被害者なしだ」
「な…!! そんなバカな!! 僕の最大出力だぞ!! …はっ…」
自分で言って失敗した、と介旅は直感する
それでは自白するようなものではないか
「―――へぇ?」
案の定男の目が鋭く光った
大丈夫だ、急いでこの男を始末すれば―――
「い、いやぁ…外から見てもすごい爆発だったんで…」
介旅はちらりと自分の近くにぶちまけられたアルミのスプーンが入ったバッグを見やる
開けられたバッグの中から一本だけスプーンの柄が飛び出していた
「中の人は―――」
言いながら介旅はそのスプーンの柄を掴みとり
「無事じゃないんじゃないかってさぁ!!」
そのスプーンをその男に向かって投げつけた
こうも至近距離だと自分にも被害が及んでしまう
それを危惧してか爆発の威力は弱めにしなければ―――
そう思いながらスプーンは歪んでいき、男の近くで爆発する
ドォォォォン! と大きな爆音が鳴り響き、やった、と介旅は確信する
しかし
「…」
その煙の中から出てきたのは男ではなかった
そうだ、自分は知っている
たまに見た都市伝説のサイトでよく見かける
「…仮面、ライダー…!」
呟くと同時、介旅は後ろに後ずさり、足がもつれて転んでしまった
ごふ、と咳をしながらみっともなく体勢を立て直し
「ふ…ふふふ…! まさか都市伝説のヒーロー様とはね…」
憎々しげに介旅は呟く
その言葉に憎悪と苛立ちを募らせながら
「いつもこうだ。何をやっても、力で地面に、捻じ伏せられる…!!」
その言葉を聞いてか聞いていないのか、二本角の赤いライダー、クウガはゆっくりと歩いてくる
その道中、その姿が人間の姿へと戻っていく
それはさっきと同じ男だった
「…殺してやる…!! お前みたいなのが悪いんだよ!!
「…くだらねぇ。裏でこそこそしてこんなしょうもねぇ事件起こしてるお前に、そんなこと言う資格なんかねぇよ」
「な、なんだと…!?」
コツコツと男は近づいてくる
そして自分の胸ぐらをつかみあげ
「お前はただ、力のせいにしてただ現実から逃げてるだけだろうが。 子供みたいに駄々こねて、そんなんで今が変わるわけないだろうよ」
「…!!」
男の剣幕に介旅はヒッ、と声がうわずってしまう
睨みつけるその眼力に、まるでナイフで突き刺されてような錯覚さえ覚えるほど
アラタは介旅の胸ぐらを掴んで睨みを効かせながら
「まだ幼い子供まで巻き込みやがって。力だなんだと嘆く暇あったら、まず
アラタはそう言って介旅を突き放す
バランスを崩した介旅は茫然とした表情でその場に尻餅をつき、アラタはそんな彼を一瞥すると、踵を返し歩き去っていく
後ろを振り返る事は、なかった
◇◇◇
アラタからの電話を受けてその路地裏に黒子が急行するとそこには戦意を失い佇んでいる犯人と思しき男が座り込んでいた
どういう経緯があって彼がこんな状況になったのかは気になったが黒子はそれは些細なことだと切り捨てた
男を連行したあと、黒子は爆発現場へと戻ってきた
ちなみに初春たちは無傷だったらしくその報告を聞いたときは心から安堵した
そしてその現場を改めて見直す
その焼跡は妙で、初春たちのいた場所のみが無傷という変な跡だった
「…初春はお兄様が守ってくれたといっていますが…お兄様ってそう言った能力ありましたっけ…?」
◇◇◇
夕刻の帰り道
アラタは一人、学生寮への帰路についていた
ちらり、とアラタは先ほど爆弾魔の胸ぐらを掴み上げた右手を見やる
相手の爆風を防いだときにできた火傷の傷が、微妙に右手を照らしている
…ほっとけば治るのだけど
「アラタ」
声が聞こえた
後ろを振り向くと美琴がこちらに走ってきていた
「爆弾魔、貴方が捕まえたんだってね。黒子が言ってたわよ」
「まぁ実際に捕まえたのは黒子だけど。俺は動きを止めただけだ」
そっけなく答えるアラタに美琴はちょっと違和感を覚えた
その違和感で思い出したことを直接美琴は聞いてみることにした
「…ねぇ。一個聞いていい?」
「ん? なんだ?」
初めて聞いたときはおぉ、と思ったが冷静に考えるとアラタは
何かテーブルのようなものを盾に使ったのなら問題はないかもしれないが付近にそんなものはなく、仮にあったとしてもあの爆発を防ぐことはできないだろう
じゃあどうやってアラタは初春とその女の子を守れたのだろうか
「…アラタって、無能力者、だよね?」
確認するように美琴は声を絞り出す
聞かれたアラタ本人は普通に「あぁ」と頷いた
「…じゃあ、どうやって初春さんと女の子を守ったの? …あの爆風、とても防げるなんて思えない」
それを聞かれたとき、アラタはどんな表情をしていただろうか
間髪入れず美琴は言葉を続ける
「あんた、もしかしたら何か隠してんじゃないの? 事件の有無に関わらず、結構眠たそうだし、たまに怪我してるし…私たちの知らないところで―――」
「美琴」
低く、それでいて普段のアラタが決して出すことはない声色に一瞬ビクッと身体が震えた
アラタは美琴に視線を合わせ、静かに言う
「…そのうち話すよ。…だから、今は何も聞かないでくれ」
どこか儚げで、そして切なさが垣間見えるその横顔に、美琴はそれ以上何も聞けなかった
そして直感で美琴は悟る
―――あぁ、こいつはまた一人で背負ってるんだな
力になってやれるかはわからない
それでももう彼は友達なのだ
アイツは無駄に明るく振る舞うから普通にしていては彼の悩みはわからないだろう
けどせめて、自分だけはわかってあげれたらな、と思わずにはいられなかった
…けれどこんなことを今考えてもしかたない
「ねぇ、アラタ」
「ん?」
「ゲーセンいかない? 息抜きと、変な事聞いたお詫びも兼ねて」
「え、別にいいけど、お前門限は―――」
「いざとなったら黒子呼ぶわ! ほら、行くわよ!」
困惑するアラタの手を引いて美琴は足早に駆け抜ける
ただ引っ張られるアラタは前を行く美琴を軽く苦笑いをしながらついていく
底抜けに明るい彼女の気遣いに心から感謝しながら―――