タイトルからわかるとおり、この作品はオリジナル主人公が《μ’s》一〇人目のメンバーに加わるまでをアニメ一期を通して描く作品です。《μ’s》は穂乃果たち九人が究極にして至高、一〇人目が居るとしたらそれは我々ライブライバーだけだと思われる方には合わないかと思いますのであらかじめご了承ください。
なお、この作品は“オリ主”“男の娘”“ハーレム”“主人公最強”“再構成”を含み、かつ他作品三作と世界観を共有しているクロスオーバー作品となります。もちろん多作品のキャラたちも本作品に絡んでくるので、先に挙げたキーワードやクロスオーバーが苦手だという方もご注意ください。
それと他作品三作に関しては現時点での参戦作品の明示は行いません。作品の中で徐々にその作品にまつわるモノやキャラを出していきますので皆様に予想していただくのも一興かと思います。
ちなみに本作品は縦書きで執筆しているので縦書き読み推奨です。
あと、にこ推しの方々に悲しいお知らせです。
《μ’s》の面々は基本的に二桁の話数に入るまでには登場しますが、にこだけが例外で彼女の本作品の初登場はアニメ一期三話に相当するエピソードに入ってからであり、神モブことヒフミトリオよりも遅いと言うありさまです。別に狙ったわけでなくストーリー上遅く成らざるを得なかっただけですのでご容赦願います。
ちなみに私は、かしこい、かわいい、エリーチカこと絵里推しです。
さて、前置きが長くなりましたが注意点は以上になります。
ご了解いただけたでしょうか?
それでは幕を開けるとしましょう。
私めが描く、オリジナル主人公を加え再構成された《μ’s》の物語――《みんなで叶える物語》とくとご覧あれ。
「おはよう」
「おはようございます」
「おっはよう!」
女子生徒たちの華やかな朝の挨拶が飛び交う、ここは《音ノ木坂学院》。永く地域の人たちに愛され育まれてきた歴史と伝統ある元女子校だ。
しかし時代の流れか生徒数減少に歯止めをかけることが出来ず、起死回生の一手となるはずだった共学化も男子の一期生は一人、二期生に至ってはゼロと惨憺たる結果に終わった。
このままではほぼ間違いなく廃校への道一直線だろう。
とはいえ仮に廃校になるとして一介の高校生の身分で何が出来る――と言うことで大半の生徒たちにとって現段階での廃校の話題はあくまで噂レベルであって特別危機感を以てこの話題を語る者はいないのが現状だ。
朝の通学路お喋りに興じる彼女たちの話題に上がるのは人気のドラマの内容だったり、昨今流行のスクールアイドルについてだったり、芸能人のゴシップだったり――。
「あ、ユキウサちゃんだ」
「本当だ。いつもながら今日も綺麗で可愛いね、ユキウサちゃん」
「だねぇ。あたしなんて最初見たときは妖精だ、妖精がいるって思ったもん」
「わかるわかる。ハリウッドのファンタジー映画にそのまま出てても違和感ないもんね」
彼女たちに混じって通学路を歩く銀髪の美少女についてだったりする。
その容姿は彼女たちが話題にあげるだけはある。キラキラと天の川のように煌めく銀の長髪に、曇りない蒼天の空のような澄んだ蒼の瞳。肌は陶磁器のごとき白さと繊細さを合わせ持ち、触れれば消えてしまうような儚さと何者も汚すことをためらう美しさ、それでいて表情は凛々しく引き締まり品の良さと気高さが見て取れる。
なるほど確かに妖精と評するに値する、どこからどうみても文句なし一〇〇点満点の美少女だ。
ただ違和感があるとするなら制服であろうか。
彼女たちと若干デザインが異なるブレザー、リボンの代わりにループタイ、ここまではいい。そこからさらに視線を落とせば見えるのはタータンチェックのスカートのはずだが彼女が履いているのは何故かスラックスだった。
何故皆が羨む銀の妖精はスカートではなくスラックスなのか、その理由は至極単純。
「あれで男の子なんだから世界って本当に不公平だよね……」
「だねぇ。あたし女辞めてもいいかな……」
「こうなればユキウサちゃんを私の嫁にする以外ありえないね。じゅるり」
銀の妖精。ユキウサちゃんこと本名、天城雪兎。
“彼”こそ《音ノ木坂学院》初にして現在唯一の男子生徒なのである。
そんな皆から大注目の彼はと言うと――。
「(うぅむ、今日も皆からの視線が生暖痛怖い)」
表情にこそ出さないが羨望と絶望とちょっぴり斜め上に突き抜けた欲望が混ざり合った視線に若干たじろいでいた。
ご注文は雪兎ですかという展開も見え隠れし始めなくもなかったりしたその時、底抜けに明るい声が木霊した。
「ユキちゃーん!」
「穂乃果!」
昔から慣れ親しんだ愛称での呼びかけに雪兎は自分を呼んだ相手へと笑顔を以て振り返った。
「えへへ、おはようユキちゃん」
「ああ。おはよう穂乃果」
笑顔で駆け寄ってきたのは髪の毛をサイドテールに結い上げた同い年の幼馴染にして老舗の和菓子屋《穂むら》の看板娘、高坂穂乃果。
さらに後ろからこちらに駆け寄る影が二つ。
「はぁはぁ……。い、いきなり走るなんてヒドいよ穂乃果ちゃん」
「まったく貴女って人は本当に落ち着きがありませんね穂乃果」
息を切らしながらも脳をトロケさせるような甘い声で穂乃果に抗議する天然っぽい少女は南ことり。
ことりと違い全く息を切らしておらず凛と落ち着き払った大和撫子は園田海未。
「ことりと海未もおはよう」
「うん! おはよう、ゆきくん」
「おはようございます、雪兎」
雪兎からの朝の挨拶にことりと海未も笑顔で応える。この二人も穂乃果同様に雪兎の幼馴染なのだ。
とまぁ、幼馴染四人揃ったところで挨拶もそこそこに連れ立って通学路を歩き出した一行であったが不意にことりが申し訳なさそうに雪兎に頭を下げた。
「ごめんね、ゆきくん。今年の男子入学者ゼロで」
「何故ことりが謝るのさ。そりゃ今年になっても女の園でただ一人の男子生徒っていうのはアレだけれど、ことりが謝らなきゃいけないものでもないでしょ」
「で、でも!」
「理事長の娘だからっていうなら、それこそお門違いだよ。仮に今年の男子入学者ゼロの責任が理事長にあるとしても君が負い目を感じるものじゃない。それに女の子たちの中に男一人っていうのは去年で散々慣れたから今更だよ」
「そうそう。それにユキちゃんの場合、見た目が女の子だから問題ないない」
「そういう問題ではありません穂乃果。いえ、雪兎が女の子よりも女の子なのは否定しませんが」
「穂乃果、海未。君らなぁ」
いかに幼馴染を元気づけるためとは言え、穂乃果と海未のあまりの言いぐさに雪兎はガックリと肩を落とす。
「うふふ。でもその件については私も穂乃果ちゃん海未ちゃんと同意見かな」
「くっ! 昔から延々と言われ続けてきたこととは言え改めて言われると釈然としない……」
ことりからの止めの言葉に雪兎は半眼になってふてくされてみたが、魅力度が当社比で一二〇パーセント増しになっただけであった。
「もぉユキちゃんてば、拗ねても可愛い!」
「ほほほ、穂乃果! 百歩、いや一億歩譲って抱きつくのは良くないけど良いとして、むむむ、胸! 胸当たってるから!」
見た目が綺麗で可愛い女の子でも男の子。
ガバッと後ろから思い切り抱きつかれ、自分にない母性の象徴を押し当てられた雪兎はたじたじだ。
「ああ、ユキちゃんのぷにぷにマシュマロほっぺ。やぁらかい、幸せぇ」
「頬をすりすりしない! ことり、海未、助けて!」
「いいなぁ、穂乃果ちゃん」
「う、うらやま……い、いえ、破廉恥ですよ穂乃果!」
本日も実に平和である。
「よよよ……。もぉ堪忍してつかぁさい」
「よぉっし! 今日のユキちゃん分補充完了!」
陵辱の限りを尽くされ泣き崩れる雪兎に対し、穂乃果は肌をツヤツヤさせながら拳を天高く掲げていた。
そんな穂乃果に自他ともに認める常識人の海未が窘める。
「いけませんよ穂乃果。天下の往来でこのような事をしては」
「うんうん。そのイノシシ穂乃果にもっと言ってやってよ海未」
「そういう事は閨で睦言を交わしながら行うものです」
「そうだよ穂乃果ちゃん。ゆきくんも恥ずかしいだろうから夜になって電気を消してからでないと」
「いや、ちょっと待とう。その理屈はおかしい」
常識とはいったい何だったのだろうか。
しかし雪兎のツッコミ虚しく三人娘は姦しくとんとん拍子に話を進めていく。
「そうなんだ……。あ、じゃあ今度皆でお泊まり会しよう! それなら思う存分ユキちゃんを抱っこしたり撫で撫でしたりできるよね」
「わぁ! 久しぶりのパジャマパーティだね。素敵」
「また人の予定も聞かずに貴女は……。まぁ、いいでしょう。雪兎が参加するのであれば参加しないと言う選択肢は存在しません」
「と、言うわけで私たち四人でお泊まり会をやるよ! やるったらやる!」
「(まずい! このまま話が進めば毎度おなじみ、ぬいぐるみからの抱き枕ルート一直線じゃないか! 何とかして話題を逸らしてお茶を濁さないと)」
人それを悪足掻きという。
ちなみにお泊まり会は穂乃果がやると宣言した時点で覆しようのない確定事項なのだが、あえて教えないのが人情というものだろう。
「は、話は戻るけど共学化しても男子生徒が僕一人じゃあ、いよいよかもしれないね。ことり、理事長は何か言ってた?」
「ううん。学院のことについては何も……。でも何か最近慌ただしい感じがするかも。お母さん新学期は毎年忙しそうにしてるけど今年は輪をかけてお仕事してる気がする」
「ふむ。となるとそろそろかな」
「え、なになに!? ユキちゃん何かあるの?」
「うん。いや、まぁ当たって欲しくない未来予測ってところかなぁ」
「うん?」
しかし、雪兎の予測は本日の全校集会で現実のものになる。