ラブライブ!~一〇人目の女神様~    作:kurei_jin

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第三話 スクールアイドル

「見て見て見てぇぇええっ!」

 

 そう言って数冊の雑誌を机の上にドンッと置いたのは眼をキラキラと輝かせた穂乃果だった。

 

「穂乃果、これはいったい――」

「アイドルだよ、アイドル!」

 

 雪兎の問いかけに間髪入れず答えた穂乃果は雑誌を開き、そこに写された少女たちを指さしながら三人に説明を始める。

 

「こっちは大阪の高校で、これは福岡のスクールアイドルなんだって! スクールアイドルって最近どんどん増えてるらしくて人気の子がいる高校は入学希望者も増えてるんだって! それで私考えたんだ! 私たちで――」

「穂乃果、ストップ」

 

 思い立ったら猪突猛進、無鉄砲。そんな穂乃果の畳みかけるようなマシンガントークに雪兎が待ったをかけた。

 

「んもぉ、何だよユキちゃん! いまからが良いとこなのに!」

「いや、廃校を阻止するための学校アピールとして皆でスクールアイドルをやろうって話はわかった」

「えっ、何でわかったの!? もしかして心を読まれた!? やっぱりユキちゃんって本物の妖精さん!?」

「いやいや、誰だってさっきの話を聞けば想像つくから。て言うか、そのネタはもういいから」

 

 あれだけ言われて逆に気がつかない方がどうかしていると思うのだが、まぁそれは良いとしよう。雪兎が話を止めた理由は他にある。

 

「それよりいいの、穂乃果?」

「何が?」

 

 まだ異変に気がついていない様子の穂乃果に雪兎は教室の出入り口を指さし言ってやった。

 

「海未が逃げたよ」

「「えっ?」」

 

 どうやらことりも気づいていなかったらしい。

 二人が雪兎の指さす方へ視線を向けると、そこには雪兎の言うとおり今まで隣にいたはずの海未が抜き足差し足で教室から脱出を図ろうとしていた。

 

「ッ、いつの間に!? 海未ちゃん、まだ話終わってないよ!」

「うぅ、恨みますよ雪兎……」

 

 逃げそびれた海未が恨めしそうに雪兎を見やるが、そんな事はどうでもいいと言わんばかりに穂乃果が言葉を続ける。

 

「そんなこと言ってないで、いい方法思いついたんだから聞いてよぉ」

「はぁ……。私たちでスクールアイドルをやるとか言い出すつもりでしょう」

「ユキちゃんに続いて海未ちゃんまで! 何で分かったの!?」

「誰だって想像つきます!」

 

 雪兎と全く同じ答えを返す海未に、穂乃果は揉み手ですり寄ると彼女の肩を抱きながら拳を天に突き上げた。

 

「だったら話は早いね。今から先生のところに行ってアイドル部を――」

「お断りします」

 

 穂乃果の《音ノ木坂学院》スクールアイドル設立宣言を待たずに海未は穂乃果の案を一刀両断に切って捨てた。

 高々と天に突き上げられたままの拳が虚しい。

 海未のお断り宣言にしばらく拳を掲げたまま固まっていた穂乃果であったが、再起動を果たすとスクールアイドルの雑誌を開きながら海未に詰め寄る。

 

「何でっ!? だって、こんなに可愛いんだよ! こぉんなにキラキラしてるんだよ! こんな衣装、普通じゃ絶対着れないよ!」

「そんな事で本当に生徒が集まると思いますか!?」

「えっと、それは人気が出てくれば……」

「その雑誌に出ているようなスクールアイドルはプロと同じ位努力し、真剣にやってきた人たちです。穂乃果みたいに好奇心だけで始めても上手く行くはずないでしょう」

「うぐぐぐ……」

「はっきり言います。アイドルはなしです!」

 

 それだけ言うと海未は弓道の部活動に向かうため踵を返したのであった。

 

「ぐぅの音も出ない正論だったね」

「あぅっ……!」

 

 完膚なきまでに論破され這い蹲る穂乃果に雪兎の総評が突き刺さる。

 だが、海未の言ったことは全てが的確で正しいのだから仕方ない。

 確かにスクールアイドルは最近の流行に乗り人気で実際に入学希望者増に寄与しているスクールアイドルもいる。《UTX学院》のスクールアイドル《A―RISE》が最たるものだ。しかし、栄光を掴む者の裏にはいつだって数えきれぬ敗者の存在がある。

 世はまさにスクールアイドル戦国時代。

 そこにアイドル素人の自分たちが乗り込んでいっても討ち死にするのが精々であることは火を見るよりも明らかだ。

 とは言え、その事が分からないほど穂乃果はバカではない。たとえ勝算が低くても挑戦する価値があると思ったからこそのスクールアイドルなのだ。

 

「うぅっ……。やっぱりユキちゃんも反対?」

 

 なのだが、ああもキッパリ海未に断られたのが堪えたのか、穂乃果は自信なさげに雪兎に是非を問う。

 

「僕? 僕は賛成かな。スクールアイドル」

「本当っ!?」

 

 海未と同じく反対されるものだとばかり思っていた雪兎の答えは意外にも賛成だった。

 

「うん。スクールアイドルに憧れて入学した子なら高い確率でスクールアイドルになってくれる。そしてそんな子を見て憧れた入学者がまたスクールアイドルにってサイクルが出来れば中長期的に生徒を確保できるからね。まぁスクールアイドルが一過性の流行で終わらなければって前提条件があるけど、他にアピールポイントが乏しい《音ノ木坂学院》では現状最も有効な手段だと思うよ。賭けてみる価値はある」

 

 そう、この方法なら中長期的な眼で見ても生徒数を確保し続けることが出来る。もちろん雪兎の語った条件が崩れればその限りではないが、それでも現状考え得る中での最善策だと雪兎も判断した。

 

「だから僕からも海未を説得してみるよ。あの子だって理を説けばきっと非現実的なプランじゃないってわかってくれる。そうしたらきっと穂乃果の力になってくれるよ」

 

 そう言って微笑みかける雪兎の姿に、感極まった穂乃果が両手を広げ真正面から雪兎に抱きついた。

 

「うぅぅ、ユキちゃぁぁぁああんっ!」

「うわぁ!」

「ありがとうユキちゃん! もぉ、大好き!」

「ほほほ、穂乃果!? 嬉しいのはわかるけど軽々しく抱きついちゃダメだよ! 僕は男の子で君は女の子なんだよ!」

「そうだね、ユキちゃんは男の娘だね。すんすん、はぁ。ユキちゃんいい匂い。くんかくんか」

「っ!? ちょっ、どさくさに紛れて何やってるのっ!? ことり助けて!」

 

 今までほぼ空気と化していたことりに助けを求める雪兎だったが――。

 

「穂乃果ちゃん、次はことりの番だからね」

 

 返ってきた答えは無情とも言えるものだった。合掌。

 

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