ラブライブ!~一〇人目の女神様~    作:kurei_jin

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第七話 りんぱな

 

「うわぁ、誰もいない」

「皆帰ってしまってるみたいだね」

 

 歌とピアノが上手いという一年生を訪ねて穂乃果と雪兎は一年生の教室へとやってきたのだが、そこは既にもぬけの殻。一年生は一クラスしかないので教室に行けば特定は容易だと思ったのだが遅きに失したようだ。

 

「にゃん」

「あ、あの、どうかしたんですか?」

 

 そこに廊下にあるロッカーを使用していた一年生だろうか、ショートカットのボーイッシュな女の子と眼鏡をかけた大人しげな女の子が教室の前でどうしたものかと腕を組む雪兎と穂乃果に声をかけてきた。

 そんな二人に穂乃果はこれ幸いと問いかける

 

「あなたたち、もしかして一年生? ちょうど良かった。ねぇねぇ、歌とピアノの上手い子知らない?」

「歌と――」

「――ピアノ?」

「穂乃果、それじゃ言葉が足らないよ。ごめんね君たち、一年生に歌とピアノが上手い子がいるって聞いてきたんだけど誰だかわかるかな?」

 

 穂乃果の質問があまりにも要領を得なかったため揃って首を傾げる一年生二人に雪兎が苦笑しつつそうフォローを入れると――。

 

「にゃにゃ! あなたはもしかして学院七不思議の妖精さん!? こんなところで会えるだなんてラッキーだにゃあ、きっとこれから良いことあるにゃ。拝んでおこう拝んでおこう」

「……僕って一年生の間ではそう言う認識なんだ……」

 

 雪兎を見るや否や、手を合わせ拝み始めるショートカットのボーイッシュな女の子。パワースポットならぬパワーマスコットな扱いに雪兎はガクリと肩を落とした。

 とは言え、その雪兎のフォローの甲斐あってか、目的の情報は眼鏡をかけた大人しげな女の子から聞き出すことができた。

 

「あ、あの……その子、たぶん西木野さんだと思います。妖精さん」

「西木野さんって言うんだ。あ、あと僕は妖精じゃなくてちゃんとした人間だからね。天城雪兎って名前もあるから今度からはこっちで呼んで。そっちの子も」

「天城先輩……ですね。わかりました。あと自己紹介遅れてすみません。私、小泉花陽って言います」

「星空凛です! よろしくお願いしますね、雪兎先輩!」

「うん。花陽ちゃんに凛ちゃんだね、よろしく。それとこっちは幼馴染で同級生の――」

「高坂穂乃果です。よろしくね小泉さん、星空さん」

「さて。一通り自己紹介も済んだところで話しを戻すんだけど、西木野さんだったかな。用があったんだけどこの感じだともう帰っちゃったのかな」

 

 もし学院内にいないなら日を改めるしかなかったが、今度は凛から情報の提供があった。

 

「音楽室じゃないですか」

「音楽室?」

「あの子、あまり皆と話さないんです。休み時間はいつも図書室だし、放課後は音楽室だし」

 

 教室訪問は空振りだったが花陽と凛の情報から名字と行動パターンを得れたのは上々の収穫だ。穂乃果が初めて会ったのも音楽室と言うし、とりあえず得た情報を元に音楽室を当たってみるのが良いだろう。

 

「そうなんだ。二人ともありがとう」

「じゃあ私たち音楽室に行ってみるね!」

「あ、あの!」

 

 そうして感謝の言葉と共に別れを告げ踵を返そうとした矢先、花陽の声が廊下に響いた。

 自分たちを呼び止める声に雪兎と穂乃果は足を止めて振り返る。そんな彼らに、花陽は意を決したように言葉を続けた。

 

「が、がんばってください。アイドル」

 

 花陽の口から紡がれたのはエールの言葉。

 期せずして贈られたエールに、雪兎は感心したように彼女に話しかける。

 

「まだ掲示板に張り出したばかりなのに耳が早いね。ひょっとして花陽ちゃん、アイドル好きなの?」

 

 穂乃果たちがスクールアイドルを立ち上げたのが昨日、雪兎の独断でスクールアイドル結成とライブ開催の告知を掲示板に張り出したのが今朝のことだ。

 学内のこととは言え発信されたばかりの情報を既に仕入れているという事は自分から進んで情報収集を行っていると言うこと。延いては少なからぬ関心があることの証左だ。

 しかして花陽の答えは――。

 

「もちろんです!」

 

 案の定、眼を輝かせ迷いなくそう告げた花陽に雪兎はクスリと微笑むと一つ彼女に提案した。

 

「じゃあ、アイドルやってみる気ない? 《音ノ木坂学院》スクールアイドルプロジェクト(仮)は絶賛メンバー募集中だよ」

「えぇ!?」

「ユキちゃんそれ名案! どうかな小泉さん。私たちと一緒にスクールアイドルやらない?」

 

 不意のスクールアイドルへの勧誘に花陽はたじろぐ。

 

「でも私、声小さいし、先輩たちみたいに可愛くないし、アイドルなんてとても……」

「そんなことないよ! そりゃあユキちゃんの可愛さは別格の銀河級だけど、小泉さんもアイドルで通用するくらいすっごく可愛いよ!」

「そうだよ、かよちん! 憧れのアイドルになれるチャンスなんだよ!」

「で、でも私……」

 

 詰め寄る穂乃果と凛に対し花陽は返す言葉に迷う。

 そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは他ならぬ雪兎であった。

 

「そうだね、急にこんなこと言われても困るよね。ちょっと不躾だった。ごめんね花陽ちゃん」

「いえ、そんな! 誘っていただけたことはすごく光栄です。でもこんな私がアイドルだなんて……」

「自信がない?」

「……はい」

 

 雪兎の問いにか細い声でそう返した花陽に、雪兎は優しく微笑んだ。

 

「そうか。なら無理にとは言わない。でも好きなこと、やりたいこと、叶えたいこと、それがアイドルであるなら僕たちはいつでも君を歓迎するよ」

「天城先輩……」

 

 優しく包み込むような慈愛に満ちた笑みは、まさにフェアリーゴッドマザー。花陽も雪兎の優しさに瞳を潤ませる。

 しかし、ここで話しを終わらせないのが雪兎クオリティ。なぜなら勧誘対象はもう一人いるのだから。

 

「もちろん凛ちゃんもね」

 

 まさか自分までアイドルに勧誘されるなど夢にも思っていなかった凛は雪兎の発言に大声を上げて驚く。

 

「り、凛もですか!? かよちんはともかくアイドルなんて女の子らしいこと凛には無理ですよぉ!」

「そうかな。僕の眼から見ても凛ちゃんはすごく可愛い女の子だと思うけど」

「にゃにゃ、にゃにを言ってるんですかぁ!? それに男の子なのにそんなに可愛い雪兎先輩に言われても説得力ありませんよ!」

 

 顔を真っ赤にして両腕をブンブン振り回す凛の姿に、雪兎は我が意を得たりといった風に花陽と穂乃果に向けてウインクした。

 

「ねっ」

「はい。凛ちゃんは可愛いです」

「うん。星空さんもとっても可愛いよ」

 

 投票結果、賛成多数。

 よって星空凛は可愛いと承認されました。

 

「にゃぁぁぁぁああっ!」

 

 皆から可愛い可愛いと連呼された事によりオーバーフローを起こした凛の叫び声が廊下に木霊する。

 ちなみにこの叫び声は学院中に響きわたり、それを耳にした生徒たちの間で“怪奇! 夕方の校舎に響く化猫の叫び”として新たな七不思議になったとかならなかったとか。

 

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