若干の戦闘シーンはあります。
霊夢の死の翌日、僕は森の中にいた。
「幻想郷……か……」
歩みを進める。この先にかつて霊夢と過ごした神社があるはずだ。
「お、あれは……」
少し壊れているが、あの神社だ。だいぶ前ながら、記憶に間違いは無かったようだ。
「あなたは?」
突然かけられた訝しむような声。
「私はあの神社に住む者です。神社に用がありましたらご案内しますよ」
普通の人間になら、感知出来ないのであろう。
だが、普通じゃない、人間なら容易に感知出来る。
この声の主から発せられる強い、魔力、とでも言うべきものを。
「神社への用で来ました」
相手には霊夢を死に至らす程の実力を持つ【何か】がいるかもしれないのだ、慎重にいこう。
「では、ご案内しましょう……今日はどういったご要件で?」
……さて、どう答えたものか。嘘つかずに誤魔化せる用事なんて無いなぁ……あ、いや、あるな。
「……僕の妹に人形大好きな子がいまして」
元気にやってるのだろうか……まぁ、また会える日は遠くないだろうけど。
「それはそれは、では人形供養ですか?」
「はい、人形が壊れてしまったらしく……」
これまた事実だ。嘘かどうか探ってる様子もあるし出来るだけ事実で答えておかなきゃ。魔力はまだ張ってるみたいで魔法を使ったらバレるしな。
「そうですか…その人形は今日はあるのですか?無ければ出来れば1度戻って取ってきて頂きたい」
……壊れた人形なんて持ってないよなぁ……ここらが限界か……もっと話を聞きたかったんだが……
「ぐがっ!?」
相手の腹に全力の蹴りを入れた。どうやら身体は以前--転生する前--からの調子のようだ。
「ぐっ……貴様……!」
相手が呪符を懐から取り出そうとしてるのが見える。しかし
「が…ぁ……」
「……遅いな」
やはり下っ端だったか。まぁこの世界の人間に博麗の巫女を上回るような実力者なんていないよな。
「ぐ……」
まだ意識があるのか、なかなかしぶとい……
ゴッ!
「…………」
顎を思いっきり蹴り上げたから流石に大丈夫かな。
男が完全に沈黙したところで、男に歩み寄った。
「ふむ……確かにこれは博麗神社(うち)に置いてあった服だな」
霊夢は人を雇ったりはしないだろうし、母が死んだのは僕が地底に落とされる前のはずだから、母が雇っていた、という事も無いだろう。
「と、なると……」
やっぱり霊夢を死に追いやったのは、近しいところのようだな。
「1番有り得そうなのは……」
近くの里には、確か博麗の分家があったはずだ。そこの当主は、まぁ向上意欲が高いのは感心するけど……本家に対して根に持ってる事があるらしいしな………
「よし、とりあえず滅ぼしにいこう」
軽いノリで呟いたが、本気だ。霊夢を殺したであろうやつをなんとしても突き止める。
「突き止めて、殺す」
霊夢を殺すほどの手練を、幻想郷の脅威となるだろう【何か】を放ってはおけない。何より
「霊夢に手を出した事を……後悔させてやる」
そう、霊夢を殺した相手を、兄である僕が、放置出来る筈が無い。
こうして僕は里へとその足を向けた。
その時、近くの茂みから音が聞こえた。途端に振り返る。
「誰かいるのか?」
見られていたのだろうか?だとしたら少し不味いな。
「あ、あの……」
手を胸の前で交差させ、おずおずと出てきたのは小さな少女だった。記憶の中に見覚えは……無いようだ。
「その、あの、私は霊夢さんに拾われて、神社に住ませてもらってて……」
おどおどと彼女が説明を始めた。なるほど、見られはしたようだが予想外の相手だったようだ。まさか霊夢が誰かと同居しているとは………
「それで、えと、4日ほど前に突然里に行くように言われて……」
ここまでの話を聞くところ、まぁ特に怪しいところもない。敵意も無いようだ。
「理由を聞いたら霊夢さんが、『結界が危ない』って……」
「なんだって!?」
「ふぇ!?」
『結界が危ない』だと!?
当代博麗の巫女の霊夢がそう言った、という事は相当に危ない状況だったのだろうか………
「あぅ……やっぱり信じてもらえないですよね……」
少女が俯きながら呟いていた。
「いや、そういう訳じゃなくて…もっとその時のことを詳しく教えてもらえる?」
「は、はい……でも、その……」
信じてもらえないと思っているのだろうか?まぁ、『結界が危ない』なんて、信じる人はそうそういないだろう。
「大丈夫。君の話は怪しいところもないし、信用してる。だから続きを話して?」
「その……その前に、質問、しても良いですか?」
質問がしたかったのか……内容はある程度予測出来るが………
「『霊夢に手を出した』って、霊夢さんに何か……あったんですか?」
心配そうに聞いてくる。どうやら霊夢にたいそう懐いているようだ。
「あぁ」
「!!霊夢さんに何がっ!?」
さて、どうしたものか………
これほどに霊夢を心配している少女に現実を伝えるのは、気が引けるが………
「………」
真剣な眼差しで問いかけてくる。
嘘は………やめておこうか………
「霊夢は、死んだ」
「……ぇ…」
酷く、ショックを受けているようだ。
「僕が、遅かったせいだ」
「………」
少女は無言で涙を溜めながらこちらを見てきた。
「僕が、ここに来るのが、早ければ」
思い出した霊夢の最後の表情。
「あの笑顔を、守れた、のに………」
霊夢は最後に笑っていた。僕の手の中で、僕を見つめて。
「あの、笑顔を………」
「………」
少女は今にも溢れそうな涙と嗚咽を必死に食い止めていた。
「………」
「………」
双方無言で、5分ほど過ぎただろうか?涙を止めた少女が聞いてきた。
「あなたは霊夢さんとどういう関係なんですか?」
「僕は霊夢の兄だ」
即答する。そして、付け加える。
「妹を守れなかった、最低の兄貴だけどね……」
自嘲気味に微笑む。心の中で更に付け加える。
それも2度も、ね……
「…………え、男の方だったんですか!?」
え、そこ?まぁ確かに女っぽい外見だって言われてきたなぁ。一人称も「僕」だし、女装とまでは言わないまでも女っぽい格好ならした事あるし…今もどちらともつかない服装してるしなぁ……
「……えっと、なんかすみません……」
別に謝らなくても良いんだけどなぁ……
「そういえば名乗ってなかったね、僕は博麗夢垢、霊夢の兄だよ」
「あっ…私は羽山咲李と申します、さき、とでも呼んでください」
少女が一礼する。霊夢がこんな子に育てたのだったら……霊夢はいい子に育ってたようだな……
「…霊夢さんの、仇討ちに行くのですか?」
気を取り直して少女が聞いてきた。
「もちろん」
またも即答する。
「なら……私が知ってる限りの情報をお渡しします」
そう言って少女は話しを始めた。
霊夢が異変に気付いた四日前からの出来事だった。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
次の話は少女、咲季ちゃんの回想話になっております、視点キャラは霊夢なんですけどね。
〜第〇話〜の後の《》の中は視点キャラを指します、基本的に1話毎に変えていきます。
〜設定について〜【主人公】
ここで1度主人公について現時点で分かっている事を整理(?)します
名前:博麗夢垢(はくれい むく)
種族:人間
能力:???
危険度:???
人間友好度:高
主な活動場所:???
はい、まだ全然ですね………
これ以外の情報としては「当代博麗の巫女の兄」、「前世がある」などですね。
情報が全て公開されるのはかなり後になるかと思われます。