「勝者、Sクラス!よってこの試召戦争は、Sクラスの勝利!」
鉄人西村の声がSクラスの教室内に響く。
美波が数段も書く上の穂乃香と互角の勝負をし、一時は追いつめたにもかかわらず、それが実を結ぶことはなかった。
「………」
「約束です、島田さん。もう、吉井君に酷いことをするのはやめてください」
「………分かった、わよ」
美波は自分が敗北した事実を受け止め、穂乃香との約束は守るという。
穂乃香は美波の言葉をしっかりと受け止め、自分の目的を果たすと、Sクラスの仲間が待つ方へ駆け出そうと振り向くが、
「あ……」
「えっと、その……」
明久と目があってしまい、さっきまでのやりとりを思い出してしまう。
「あ、えっと、かす……」
「ごめんなさあああああああああああい!!!」
「ええ!?」
穂乃香は顔をゆでダコ以上に赤くして走り出してしまう。
当然、いきなり自分の顔を見て逃げ出してしまった穂乃香を見て、意味が分からないような悲しいような気持ちになる。
「大丈夫ですよ、吉井君」
「え?」
「穂乃香はね、耐えきれなくなるくらい恥ずかしくなると自分の寮に閉じこもっちゃうの」
「今年はまだないと思ってたんだけどなぁ……」
意外な穂乃香の可愛い癖発覚。
「この場は私達に任せてください。君は穂乃香を」
「え?でも……」
「いいっていいって。どうせ静真は今まで出番がなかったから台詞が欲しいんだよ」
「黙りなさい」
今までちょっとした台詞しかなく、試召戦争で召喚もしていなかった静真はせめて戦後対談で出番が欲しいのか、あるいは友人の恋路への応援なのか、明久に穂乃香の元へ行くよう言う。
「いいの……?」
「はい。今の穂乃香には、君が必要ですから」
静真の言葉を聞くと、明久は小さく頷いてから教室を出ていく。
当然、
「……やめろ」
雄二がそれを遮る。明久の幸せを何よりも嫌うこの男が明久の邪魔をしないのは不自然だと……というか、単に明久を(理不尽に)裁けないFFF団が抗議の声を上げる。
「なぜだ坂本!吉井には紐無しバンジーをさせねばならないのに!!」
「……お前らに暴れられるとただでさえ少ない交渉のチャンスが減るからだ。今より悪い設備になりたいのなら別だがそうじゃないなら黙っててくれ」
雄二は自らの試召戦争にかける物と、明久の幸せを天秤にかけ、試召戦争にかける物をとったのだ。この男にとって自分の幸せ(を壊すこと)よりも大事なものが何なのか、明久には分からなかったが、障害がなくなって、明久は再び駆け出す。須川達FFF団は歯がゆそうだったが。
「交渉、ですか?Fクラスに交渉の余地があると思っているのですか?」
「いや、無茶なことを言っているのは分かってる。俺が頼みたいのは、今回の戦争、無かったことにしてほしいってだけだ」
雄二は無茶な交渉と分かってはいても、打倒Aクラスの夢をあきらめることができず、この戦争をなかったことにしたいという。
「……条件があります」
「ちょっと、静真!?」
「お前、それじゃ何のために戦争を仕掛けたか!?」
「言ってくれ」
静真は少し考えた後、条件次第では和平交渉を結び、Fクラスの試召戦争禁止を見逃してもいいという。当然優希と竜が抗議するが、雄二はある程度のことなら受け入れるつもりでいた。
「一つは、これ以上、試召戦争でおかしなことをしないことです。ルールを破っていなければ、人を陥れたり、傷つけていいわけではありません。無論、器物破損もです」
「分かった。代表として、
「……君のような人が本当に2つも上のクラスを倒すとは考えられないのですが」
静真は雄二の台詞に代表としての手腕に疑いを持つ。本気を出せばすさまじいが、基本的には明久と同レベルなのが坂本雄二クオリティーである。
「そしてもう一つ。吉井明久君に危害を加えないことです」
「なんだと?……いや、しかしAクラスを倒した後は明久の幸せをつぶす必要が……わかった、
「キミが吉井君の友人であることに疑問を感じます」
雄二が本当に明久の親友なのか、雄二の言動から疑問を抱くが、さすがの雄二も打倒Aクラスには代えられないのか静真の提案に頷く。
「静真、なんでよ」
「ソイツらに試召戦争をやり直すチャンスをやる意味、あんのかよ」
「ええ、ありますよ」
優希も竜も、明久を攻撃し(というか、雄二の場合は弄び)散々他クラスにも迷惑をかけたFクラスを許すことができず、静真に喰ってかかるが、静真には静馬なりの考えがある。
「穂乃香の言っていたことを思い出してください。彼女は島田さんに、『吉井君に近づくな』とは言いませんでした。島田さんに、吉井君と仲良くしていくチャンスを与えていたのです」
「けど、それは穂乃香が優しいからで……」
「人がやりなおすのに、遅いなんてことはありません。Fクラスの皆さんにも、これを期に、自分を見直してもらいたいのです」
静真の理由は、明久だけでなく、Fクラスの生徒のことも考えたものであり、それが雄二と静真の代表としての実力の違いを大いに物語っていた。
雄二、秀吉、瑞希、美波はそんな静真の行為を決して無下にしないと心に決める。が、一部を除くFFF団は情けをかけた(と勝手に思っている)イケメンメガネを恨み始める。